だい)” の例文
それで、百姓村でもずいぶんふるい歴史れきしをもった村があり、なんだいつづいたかわからないような百姓家が、方々に残っているわけです。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
この遷都せんとは、しかし、今日こんにち吾人ごじんかんがへるやうな手重ておもなものでなく、一をくだい慣習くわんしふによつて、轉轉てん/\近所きんじよへお引越ひきこしになつたのである。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
そも女人をんなは、一だい五千くわん、七千餘卷のどのきやうにもほとけになれないときらはれてゐるが、法華經ほけきやうばかりには女人によにんほとけになると説かれてゐる。
エヘヽヽ此辺このへんでは如何いかゞさまで。書生「ヤーこれいのー幾許いくらぢや、うむそれは安いの、うてかう。銭入ぜにいれからだいはらつて立帰たちかへりました。 ...
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
自分は十だいから花前と懇意こんいであって、花前にはひとかたならず世話せわにもなったが、自分も花前のためにはそうとう以上いじょうにつくした。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
あれこそはひとりこの御夫婦ごふうふだいかざる、もっとうつくしい事蹟じせきであるばかりでなく、また日本にほん歴史れきしなかでのりの美談びだんぞんじます。
と、そのとたんに、蛾次郎は、一だいの泣き声をあげてお時のひざにそのきたない顔を、むちゃくちゃにコスリつけていった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
八幡太郎義家はちまんたろうよしいえから三だいめの源氏げんじ大将たいしょう六条判官為義ろくじょうほうがんためよしといいました。為義ためよしはたいそうな子福者こぶくしゃで、おとこ子供こどもだけでも十四五にんもありました。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それというわけは、大多根子おおたねこから五だいもまえの世に、陶都耳命すえつみみのみことという人のむすめ活玉依媛いくたまよりひめというたいそう美しい人がおりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
同一おなしみづ医者いしやうち死絶しにたえた、さればかやうな美女びぢよ片田舎かたゐなかうまれたのもくにがはり、だいがはりの前兆ぜんちやうであらうと、土地とちのものは言伝いひつたへた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「お前のお母さんの為めに、私の息子が二十年間も子供もなく、男の一生がだいなしになってしまった。」と云うのであった。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
私もその家はおとずれてみたことがあるが、嫁のだいが変ってからは何等なにらのことも無いような風である。真箇まったく妙なことがある。
白い光と上野の鐘 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)
一度だいをはらうと、黄色い財布からチャラチャラと一つあまさず出して、すっかり勘定をしてからでなければ仕舞わない。
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
そこにはロシヤのいはゆる「千八百八十年だい知識階級インテリゲンチヤ」であるところのラアネフスカヤをはじめ、老若ろうじやくの男女たちの十人があつまつて舞踏ぶとうけうじてゐる。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
そして、やはり、自分じぶんは、や、はたけて、みんなといっしょになってはたらきました。このひとだいも、また無事ぶじごすことができたのであります。
武ちゃんと昔話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「きみはいつか、ぼくまでがだいのはらってない品物の正札しょうふだを切り取るようなことになるといけないと心配しているのだ」
そこで僕がなにだいは構いませんから、お気に入ったら持っていらっしゃいと云う。客はそうも行かないからと躊躇ちゅうちょする。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
本郷の菊富士ホテルと云ふことは今宿いまじゅくのうちでもだいのうちでも知つてゐる筈、一寸ちょっときいてから来ればよかつた。うちからは四五日前たよりがあつた。
僕んところは親のだいから音痴おんちなんです。(語調をかえて)何か御用? 奥田先生なら、ついさっき帰ったようですよ。
春の枯葉 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「うちの親父おやじは、がんこでしようがないのですよ。そのうち、わたしだいになりますから、そしたらわたしがあなたの井戸いどることを承知しょうちしてあげましょう。」
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
えん王、しゅう王、せい王、しょう王、だい王、みん王等、秘信相通じ、密使たがいに動き、穏やかならぬ流言ありて、ちょうに聞えたり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「それではだいって来ました。そっちは三十三せんですね。おり下さい。それから私の分はいくらですか。」
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
へんだ、へんだと思っていたんだけど……やっぱりあの男はわるい魔法まほうをつかうんだわ。おっかさんのだいからのだいじな家具かぐに、悪霊あくりょうをふきこんだんだわ。
こづかいがなくなると、ズーフの字引じびきをうつします。あちこちのはんから、字引じびきをうつしてくれという注文ちゅうもんがありますので、そのうつしだいをかせぐわけです。
「これはこのたび奥州気仙沼けせんぬまは何とか何兵衛の女房お何が生み落しましたる血塊童子でござい。だいは見てのお戻り、しゃい、いらっしゃい。カチカチイ。」
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
だいは勿論一銭である。しかし彼はこの時ほど、マツチの美しさを感じたことはない。殊に三角の波の上に帆前船ほまへせんを浮べた商標は額縁へ入れてもい位である。
あばばばば (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
まことまをしかねましたがわたしはこれで御免ごめんねがひます、だいりませぬからおりなすつてと突然だしぬけにいはれて、おもひもかけぬことなれば阿關おせきむねをどつきりとさせて
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
隣家の大原も前日までは来会のつもりなりしが今朝に至りて大阪より電報達し両親と叔父おじ叔母おばが帰り来るとの知らせにおだい嬢のため引留められて出る事かなわず。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
一代ならず宮方のおんために討死をして名を後代に揚げようとはなさらず、御分ごぶんだいになって未練のふるまいをなさると云うのは、くちおしいではありませんか
三人法師 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
渡し置ん此品は身延みのぶ山代だい貫主くわんしゆの極ある日蓮上人直筆ぢきひつの曼陀羅なり一時もはなされぬ大切の品なれ共金の引替ひきかへの爲あづけんと申かれ思操こゝろざし信實しんじつかんじ命にも替難かへがたき大金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
太史公たいしこういはく、司馬しば兵法へいはふむに、(三六)閎廓くわうくわく深遠しんゑんにして、(三七)だい征伐せいばついへども、いま其義そのぎつくす※あたはず、其文そのぶんごときは、また(三八)すこしくはうせり。
後でくわしく聞いた話ですけれど、二人の怪人の戦慄せんりつすべき暴行について、小田原署の署長さんは一だいの智慧をふりしぼって、あの非常手段をやっつけたのでした。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこでかねおとたにからたにひゞけて、何處どこいへへもつたはつてきました。そのかねおとは、としとつた和尚をしやうさんのまへだいにもき、そのまたまへだいにもいてたのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
その当時とうじ、まだ二十だい青年せいねんで、あの石狩平野いしかりへいやを走る列車れっしゃ車掌しゃしょうとして乗りこんでいたおじからきいた話なのです。以下いか、わたしとか自分とかいうのは、おじのことです。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
とりわけてこれとふ……何處どこもみんなおんなじですがね。……だが、あのほしくにへあそびにつて、よひのうつくしい明星樣めうじやうさまにもてなされたのだけは、おらが一しやうだい光榮くわうえい
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
すこしのことで二だいも三だい仲直なかなほりが出來できないやうな實例ためしいくらも世間せけんにはるもんだからね
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
〔所で〕ややもするとその男が病気とか何とかう時には、男のだいをして水も汲む。朝夕あさゆうの掃除は勿論もちろん、先生が湯に這入はいる時は背中せなかを流したり湯をとったりしてらなければならぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「そうか、なんにしても有難い、だいはいくらでも取らせるぞ、早く料理をしてくれ」
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
だいくとはたして二十錢だといふ、よろこんでり、石は又もや雲飛の手にかへつた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
小野は丹後国にて祖父今安太郎左衛門いまやすたろざえもんだいに召し出されしものなるが、父田中甚左衛門じんざえもん御旨おんむねさかい、江戸御邸より逐電ちくてんしたる時、御近習ごきんじゅを勤めいたる伝兵衛に、父を尋ね出して参れ
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
正面には一間に一間半位の小さい家をかいて、その看板に「御かみ月代さかやきだい十六文」とかいてある。その横にある窓からは一人の男が、一人の髯武者ひげむしゃの男の髯をつて居る処が見える。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
だい相恩そうおんの旧藩主の為めに命を捨てる機会のなかったのを残念と感じ、せめて息子をお役に立てたいと言って、私に医学を勧めました。私が又孝子の亀鑑と来ているでしょう。それで……
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
人に頭をさげさせるだけで、自分の頭をさげたことのない八だい有徳院うとくいん殿も、このとき、このこけ猿に面と向かったときだけは、おのずと頭のさがるのをおぼえたと申し伝えられております。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
すれば、雅楽多堂が転業したので、だいの替つたのでないことはあきらかだ。
十年…… (新字旧仮名) / 久保田万太郎(著)
「だが今あすこを出ちゃ損だよ。あの身だいを人に取られちゃつまらないよ」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
マーキュ はて、禮法れいはふにかけては一だい精華ピンクともあがめられてゐる乃公おれぢゃ。
「ああ、いいとも……。だいだけ渡しておいて、あしたまた来る。」
放し鰻 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そやけど、わてはもう先のない身体からだだすやろ、冥途あのよ良人うちのに会うて、せがれ名前替なまへがへに誰に口上言うて貰ふたんやと訊かれた時、成駒屋はんやでは良人うちのが知りまへんやろ、あの人は一だい俳優やくしやだすよつて……。
つてからも三四だい主人しゆじんかはつたのであつた。
「五十銭だね。おぶだいは。」
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)