ごと)” の例文
結婚なども「つまらないこしらごと」と見、家のうちに多くの子孫をかかえて、その子孫繁栄のために、あくせくしている一般の風をも
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれども自分じぶんでそれをやったおぼえはございませぬ。きょうとはちがって東国とうごく大体だいたい武張ぶばったあそごと流行はやったものでございますから……。
「ああははは、風の又三郎ぁ、いゝごと云ったな。四月になったら新らし着物買ってけらな。一向泣ぐごとぁなぃぢゃぃ。泣ぐな泣ぐな。」
ひかりの素足 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
わらごとではい、なにてもころだと、心中しんちういろ/\苦悶くもんしてるが如何どうない、破片はへん獸骨じうこつ、そんなところしか見出みいたさぬ。
『何ア莫迦だつて? 家のごとかまねえで、毎日飲んでつて許りゐたら、高田の家ア奈何どうなるだべサ。そして万一捕縛おせえられでもしたら……』
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
当人には悲劇に近い出来ごとかも知れないが、他人にはそれ程痛切な感じを与へないと覚悟しなければなるまい。其積りで運動したらからう。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
神職 言語ごんご道断、ただごとでない、一方ひとかたならぬ、夥多おびただしい怪異じゃ。したたかな邪気じゃ。何が、おのれ、何が、ほうほう……
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「左様なことを言わずにもう一丁融通致せ、新手あらてを入れ替えて、貴様と太刀打ちをしてみたい、ごと仇を取って見せる」
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
で、恋なればこそごとなき身を屈して平生ひごろの恩顧を思ふての美くしき姫を麿に周旋とりもちせいと荒尾先生に仰せられた。荒尾先生ほとほと閉口した。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
と言つて、障子を引明けると、庭にある枝振えだぶりの松がうまく立花のなかに取入れられたさうだ。流石に池坊式でこれにはこしらごとわざとらしさがある。
このとき、あちらでは、にぎやかな音楽おんがくひびきがこっていました。なにかのもよおごとがあるとみえるのです。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
だんだんやまふかはいっていって、あるむらの中にはいりますと、なにかおいわごとがあるとみえて、方々ほうぼうでぺんたらこっこ、ぺんたらこっこ、もちをつくおとがしていました。
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
平安の都で世迷よまごとに身をやつしている連中の中で、この丘のこっち側の世界の素晴しさに気の付いてる奴は、一体何人いるだろうかね? それにほら、見たまえ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
きはめし此九助みな是迄これまでの約束ごとコリヤお節是が一しやうの別れぞと聞てお節は殊さらに絶入たえいるばかりに泣伏を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
女「いえ、春見のお嬢様でございますが、一寸ちょっとお目にかゝりおごとをしたいと仰しゃってゞすが、お手間は取らせませんから、ちょっと此の二階へおあがんなさいましよ」
人をるとか自殺するとか、捕縛されるとか、人間の激情無上なるきわどいところなどが、どうして不自然な殊更なママごとらしき感の起らぬように演ずることが出来ましょう
竹乃里人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ロッセ氏が、或るごとを、ここで告白するのでなければ、どうにもならないのであった。
自分は伯林ベルリンgarçonガルソン logisロジイ の寐られない夜なかに、幾度も此苦痛をめた。さういふ時は自分の生れてから今までした事が、上辺うはべいたづごとのやうに思はれる。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
そして、まつたくこれほどあそきることをらないあそごともちよつとほかにはささうだ。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
はてさてどくなとふとまゆせて、おまへにすればたつた一人ひとり同胞きやうだい善惡よしあしともにけてかねばならぬやくわらごとにしてはかれまい、何事なにごと相談さうだんつて樣子やうすたらばからう
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
賓人まれびとよ、わらごとではありませぬ、こくといふのは、一年中いちねんちゆうでも一番いちばん不吉ふきつときなのです、ほか澤山たくさんあるのに、このこの刻限こくげん御出帆ごしゆつぱんになるといふのはんの因果いんぐわでせう
ごとくきゃ、此畜生こんちくしょう! あらいやばん、此方こなたのそくしゃあか、冗談ぞうだんしんさんな」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ごとなんぞは、それはそれとして、——今からもう十何年か前の、そう、たしか夏の初めだったと思う、その頃はまだ柏木かしわぎと呼ばれていたあの方が始めて私に御文をよこされたのである。
かげろうの日記 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
広東カントン奉行の取り扱いをもって済ませるつもりであったのがそもそもの誤算であったと言い、政府で取り扱うまいとしたところから破裂に及んだと言い、広東奉行が全くのこしらえごとをして
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「どうもしやしません。かあちやんはね。いまかんがごとをしてゐたの」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
「番頭どんともあらうものが、いやはや又ごとも無え事を云つたものだ。何でこんな間抜野郎に、鼠小僧の役が勤るべい。大方胡麻の蠅も気が強えと云つたら、つらを見たばかりでも知れべいわさ。」
鼠小僧次郎吉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ずいぶん閉口した——と大したこしらごとらしくもなく言うのです。
「だんだんこッたらごとばかしていられなくなるど。」
不在地主 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
地球の出来ごとは 火星からは、みんな見えるのですよ
人を囚へて惡逆の淵に突きおとす人生のまがごと
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
ごとはもとより一つ初詣
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
で。犬の沙汰などは些事さじとするも、万が一、さるひそごとが公となってはまずい。あとの処理はこの憲房にまかせられ、早うここを
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つい数分間前すうふんかんまえまで、平和へいわで、何事なにごともなかったよるであったが、きゅうおもいがけぬできごとのために、みんながねむりをやぶられ、そればかりかうちそとと、ちりぢりになって
火事 (新字新仮名) / 小川未明(著)
をとこらしくおもときあきらめておかねさへ出來できようならおりきはおろか小紫こむらさきでも揚卷あげまきでも別莊べつさうこしらへてかこうたらうござりましよう、うそんなかんがごとめにして機嫌きげんよく御膳ごぜんあがつてくだされ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
るのがさだまりごと、……ひとうんひとつづゝてんほし宿やどるとひます。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彼等はその大人げない侍が、ごと、矢を射損じたと見たからそれで
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ぢや地きうの出来ごとは なんでもみえるんだなあ
「働いだごと無えから分らないさ。」
不在地主 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
あらましごとねがひにと
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
さげもらひ度思は道理もつともなりさぞ其方が心には殘念ざんねんなる事にあらん是も所謂いはゆる過去くわこの約束ごとならんか然共餘り苛酷むごき仕方しかたゆゑ其方が胸中きようちうさつし入る尤も嘉川家の事に就て大分たいぶん入組たる筋あれば近々きん/\評定ひやうぢやうも是有るべしシテ又其方が願ひし時娘の死骸なんとして渡さばやと尋ねられしかば吉兵衞なみだむせびながら其儀は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
(ひとは御主君の軍略の才のみ知って、経済的な御頭脳は余り認めないが……経済といわず、この君に対しては、ひそごとは少しもできない)
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのくる太陽たいようは、よほどふかかんがごとがあるとみえて、終日いちにちかおせませんでした。
煙突と柳 (新字新仮名) / 小川未明(著)
から/\とをとこわらふにすこはづかしく、かんがごとをしてあるいてたれば不意ふゐのやうにあはてゝ仕舞しまいました、よく今夜こんやくださりましたとへば、あれほど約束やくそくをしてまつてくれぬは不心中ふしんぢうとせめられるに
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
けれど、藤夜叉とのひそごとも、余人よじんならぬ右馬介一人の胸にたたまれているぶんにはと、そこは腹心の郎党のよさ、ひそかに多寡たかはくくられる。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何事なにごとゆめのようで、意外いがいであった、この一にちのできごとおもしていたのでしょう、をぱちくりさして、ふといくちばしで、きずのついているらしい、つばさしたのあたりをなめながら
縛られたあひる (新字新仮名) / 小川未明(著)
おもたまふぞとさしのぞかれ君様きみさまゆゑと口元くちもとまでうつゝをりこゝろならひにいひもでずしてうつむけばかくたまふはへだてがまし大方おほかたりぬれゆゑのこひぞうらやましとくやらずがほのかこちごとひとふるほどならばおもひにせもせじ御覧ごらんぜよやとさし
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
まだ太閤殿下在世のさかりだった。茶会が流行はやごとで、大坂城でも、醍醐だいごでも、度々秀吉の催しがあり、諸侯も側衆も、それにはよく同席したものである。
大谷刑部 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なにかねがいごとがあるとき、このあおたまにむかって、真心まごころをこめておねがいすると、そのこころかみさまにつうじてかなえられるというので、おかあさんはこのあおたまを、とてもだいじにしていました。
青い玉と銀色のふえ (新字新仮名) / 小川未明(著)
づる大黒傘だいこくがさうへゆきつもるといふもなきばかりすみやかに立歸たちかへりて出入でいり車宿くるまやど名殘なごりなく出拂ではらひて挽子ひきこ一人ひとりをりませねばおどくさまながらと女房にようばう口上こうじやうそのまゝのかへごとらばなにとせんおたくにおあんじはあるまじきに明早朝みやうさうてう御歸館ごきくわんとなされよなど親切しんせつめられるれど左樣さうもならず
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
とるにたらぬ噂とは思うていたが、将と将とのあいだに、もし、さような反目はんもくがあるとせば、これは三軍の亀裂きれつ、ゆゆしいひがごとだ。案じられぬわけにゆかん。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)