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大黒傘
お
齒ぐろ
溝の
角より
曲りて、いつも
行くなる
細道をたどれば、
運わるう
大黒やの
前まで
來し
時、さつと
吹く
風大黒傘の
上を
抓みて、
宙へ
引あげるかと
疑ふばかり
烈しく
吹けば
おゝ
氣味が
惡るいと
首を
縮めながら、四五
軒先の
瓦斯燈の
下を
大黒傘肩にして
少しうつむいて
居るらしくとぼ/\と
歩む
信如の
後かげ、
何時までも、
何時までも、
何時までも、
見送るに
出づる
大黒傘の
上に
雪つもるといふ
間もなきばかり
速かに
立歸りて
出入の
車宿名殘なく
出拂ひて
挽子一人も
居ませねばお
氣の
毒さまながらと
女房が
口上其まゝの
返り
事に
然らば
何とせんお
宅にお
案じはあるまじきに
明早朝の
御歸館となされよなど
親切に
止められるれど
左樣もならず