事実じじつ)” の例文
旧字:事實
その容疑ようぎのもとは、中内工学士なかうちこうがくし場合ばあいていて、金魚屋きんぎょや老人ろうじんとのあいだ貸借関係たいしゃくかんけいがあり、裁判沙汰さいばんざたまでおこしたという事実じじつからである。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
もとより龍太郎も忍剣も、この奇怪きかい事実じじつが、意味いみもないものだとは思わなかったが、そうまでの落としあなとは気がつかなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それにきては本邦ほんぽうならび欧米おうべいある霊媒れいばいによりて調査ちょうさをすすめた結果けっか、ドーも事実じじつとしてこれ肯定こうていしなければならないようであります。
わたし危険区域きけんくいきせんをこえない範囲はんいでよくさうふう悪戯あくぎためしをするのであつたが、しかしまた事実じじつさうかもれないとおもはれないこともなかつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
兼吉は、腕力わんりょくでは花前によりつけないから、五郎に加勢かせいたのんだのだ。事実じじつは兼吉が牛をたたいたのかもしれないが、ふたりのいいじょうはそうであった。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
真実しんじつ事実じじつ実際じっさい、まったく、断然だんぜん俄然がぜん……ナニ、そんなに力に入れなくてもよろしい、このお蓮様、ほんとに伊賀の暴れン坊にまいっているんだ。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
このくににきたひとは、くろひとあかいそりのはなしを、不思議ふしぎ事実じじつとして、だれでもかされるでありましょう。
黒い人と赤いそり (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかしこんな心遣こころづかい事実じじつにおいても、普通ふつう論理ろんりにおいてもかんがえてればじつ愚々ばかばかしい次第しだいで、拘引こういんされるだの
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
かかる次第しだいにして小栗等が仏人をいて種々計画けいかくしたるは事実じじつなれども、その計画は造船所の設立、陸軍編制等の事にして、もっぱ軍備ぐんびを整うるの目的もくてきに外ならず。
温泉いでゆまちの、谿流けいりうについてさかのぼると、双六谷すごろくだにふのがある——其処そこ一坐いちざ大盤石だいばんじやく天然てんねん双六すごろくられたのがるとふが、事実じじつか、といたのであつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
過日御示おしめし被下くだされそうろう貴著瘠我慢中やせがまんちゅう事実じじつ相違之廉そういのかどならぴ小生之しょうせいの所見しょけんもあらば云々との御意ぎょい致拝承はいしょういたしそうろう。昨今別而べっして多忙たぼうつきいずれ其中そのうち愚見ぐけん可申述もうしのぶべくそうろうまず不取敢とりあえず回音かいおん如此かくのごとくに候也。
この前にもその後にも、他人についてこれに類した事実じじつをしばしば目撃したが、こういうことが果たして強い証拠であろうかと思うと、何となく人を動物視したくなって来る。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ことに旧政府時代の外交がいこうは内治に関係かんけいすることもっとも重大じゅうだいにして、我国人の記念きねんそんすべきものもっとも多きにもかかわらず、今日すでにその事実じじつを失うは識者の常に遺憾いかんとするところなりしに
きるとは、ふたたびわれかへるの意にして、ふたゝびわれに帰るとは、ねがひにもあらず、のぞみにもあらず、気高けだかき信者の見たる明白あからさまなる事実じじつなれば、聖徒イノセントの墓地によこたはるはなお埃及エジプト砂中さちうに埋まるが如し。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
金貨きんか空中くうちゅうぶということは、事実じじつだったらしい。
いまの名残なごりきあおられた落葉おちばが、まだ一ひら二ひらちゅうっているのでもわかる。わしがこの源氏閣げんじかく附近ふきんにおりたのは事実じじつにちがいない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
じいさんのべるところはまだしッくりわたくしむねにはまりませんでしたが、しかしそれがかたならずわたくし好奇心こうきしんをそそったのは事実じじつでございました。
飢餓きが戦争せんそう奴隷どれい差別さべつ、みんな人間にんげん社会しゃかいのことであって、かつて鳥類ちょうるいや、動物どうぶつ世界せかいにこんなようなあさましい、みにくい事実じじつがあったであろうか。
太陽と星の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
べつに怨恨えんこんなどいだいてはいないのだとこたえたが事実じじつとしては青流亭せいりゅうてい女将おかみおなじく、いつもよるになつてから老人ろうじんたずねるのがつねで、あるとき、ひどくはげしい口調くちょう
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
それは事実じじついなかはらなかつたが、たれからも好感こうかんをもたれないわたしとIとのことかんして、さうつたとすれば、それはS、Hひさうなことだとはおもはれた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
自分はなんらおかしたつみはないと考えても、それがために苦痛くつう事実じじつかるくなるとは思えないのだ。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
もしもかかる事実じじつを以て外国人に云々しかじかくわだてありなど認むるものもあらんには大なる間違まちがいにして、干渉かんしょうの危険のごとき、いやしくも時の事情をるものの何人なんぴとも認めざりしところなり。
きみ彼等かれらしんじなさるな。うそなのです。わたし病気びょうきうのはそもそもこうなのです。二十年来ねんらいわたしはこのまちにいてただ一人ひとり智者ちしゃった。ところがそれは狂人きちがいであるとう、これだけの事実じじつです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
われらは、ともすると、くもつてくもわするゝ……三本木ぼんぎは、柳田国男やなぎだくにをさんの雑誌ざつし——(郷土研究きやうどけんきう)と、ちかくまた(郷土会記録きやうどくわいきろく)とにをしへられた、伝説でんせつをさながら事実じじつほとん奇蹟的きせきてき開墾地かいこんちである。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いや、それだけならいい! それだけの事実じじつだったなら、まだ地上の人々も、こうまではきもをつぶさなかったにちがいない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
最後さいご玉手箱たまてばこはなし、あれも事実じじつではありませぬ。べつにこの竜宮りゅうぐうければむらさきけむりちのぼる、玉手箱たまてばこもうすようなものはありませぬ。
なんでゆめのもんですか。みんな事実じじつですよ。この公園こうえんには、くろ百合ゆりはないたり、不思議ふしぎ毒蛾どくががきたりしたために、人間にんげん大騒おおさわぎをしていますよ。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
一人ひとりのそのわか女性ぢよせいにさういふふうはたらきかけてつたのは事実じじつであつた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
にんともに、老人ろうじんうち時々ときどき出入でいりしているという事実じじつがある。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
一切いつさい事実じじつだ、と老爺ぢゞいこたへたのである。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
また、めったにあめをわないので、紙芝居かみしばいのおじさんにとって、けっしていい得意とくいでなかったのも事実じじつです。
花の咲く前 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ほんとうに、ペストや、コレラがはいってきたよりもおそろしい、防禦ぼうぎょのできない事実じじつであったからであります。
白い影 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ぼくは、うまにもなれば、おとこのたちばにもなってかんがえたのです。なんという、矛盾むじゅんした、いたましい事実じじつでしょうか。おとこに、うまくるしみをわからぬはずがない。
道の上で見た話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
たとえ、それが事実じじつであっても、このなかでは、まだ少年しょうねんしん同情どうじょうするものがなかったのです。少年しょうねんは、またおもそうにめるあしきずりながら、あるいていきました。
つばめと魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
さらに、事実じじつげると、先日せんじつのこと、おとこは、かきのにとまった、すずめをねらっていました。このをまぬかれた老木ろうぼくで、えだり、すずめなどのいいあそ場所ばしょでした。
春はよみがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
事実じじつ、おじさんは、方々ほうぼうへでかけたし、ぼくたちのらないまちで、めずらしいものをたり、いろいろの人々ひとびととあって、いたおもしろいはなしを、ぼくたち兄弟きょうだいにしてくれたのでした。
緑色の時計 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いく世紀せいきかのあいだには、うみりくとなったり、またりくうみになったりして、おどろくような事実じじつがあるにちがいないが、それよりも、人間にんげん生命いのちのはかなさというものを、よりつよかんじられる。
アパートで聞いた話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
事実じじつかねさえあれば、新高山にいたかやまいただきにあったというらんも、このはいるのですが、ここでわたしかんがえたことは、自然しぜんというものが、はたして、かねえるものであるかということでした。
らんの花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「この金属きんぞくを、分析ぶんせきしてみなければ、わからぬことだ。おなじ金属きんぞくでつくったものなら、この一つだけが、くさらぬというわけがあるまい。」と、博士はかせは、科学者かがくしゃなら、空想くうそう事実じじつとして
うずめられた鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ものにおびえるようなつきは、幾回いくかいとなく、ゲリゾン注射ちゅうしゃや、ぶどうとう注射ちゅうしゃや、ときには輸血ゆけつをもしなければならなかったので、そのたび苦痛くつううったえて、さけ事実じじつかたるのであります。
雲と子守歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
うみなかげてぬほどの勇気ゆうきもなく、いたずらに、みぐるしとしってれるようにんでしまうことが、そのうつくしいくらべたら、どんなにか陰気いんきで、またくら事実じじつでありましたでしょう?
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
監督かんとく恐縮きょうしゅくして、いまあった事実じじつこたえました。
白い影 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ああ、何人なにびとが、つぎのような事実じじつろう。
奥さまと女乞食 (新字新仮名) / 小川未明(著)