竿さを)” の例文
「この塔の高さと、同じ竿さをを拵へて貰ひ度いが、三四本物干竿を繼いでも構はない。寸法だけは、六間二尺——間違つてはいけない」
船頭は竿さをを弓のやうに張つて、長い船縁ふなべりを往つたり来たりした。竿さをを当てる襦袢じゆばん処々ところどころ破れて居た。一竿ひとさを毎に船は段々とくだつて行つた。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
鹿しかはおどろいて一度いちど竿さをのやうにちあがり、それからはやてにかれたのやうに、からだをなゝめにしてしました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
「そんな、めんだうなことをしないでも、たゝけばいゝのだ。」と、いつて、竿さをでたゝいておおとしになつたことをおもひ出したのである。
賢い秀雄さんの話 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
太綱ふとづな一端いつたん前齒まへばくはへてする/\と竿さをのぼりてたゞち龍頭りうづいたる。蒼空あをぞらひとてんあり、飄々へう/\としてかぜかる。これとするにらず。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
高田たかたしろ大手先の広場ひろばに、木をかくけづり尺をしるしてたて給ふ、是を雪竿さをといふ。長一丈也。雪の深浅しんせん公税こうぜいかゝるを以てなるべし。
しやしつゝお光は泣顏なきがほ隱し井戸端へ行き釣上つりあぐ竿さをを直なる身の上も白精しらげよねと事變り腹いと黒き其人が堀拔ほりぬき井戸のそこふか謀計たくみに掛り無實の汚名をめい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
此處こゝなりれます。』と老爺ぢいさんぼくそばこしおろして煙草たばこひだした。けれど一人ひとり竿さをだけ場處ばしよだからボズさんはたゞ見物けんぶつをしてた。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
むらひとはめい/\おもち竿さをさきにさしてそのいてべたり、子供こどものお清書せいしよけむりなかげこんで、たかそらにあがつてかみきれながめたりしました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
かしこにて、腹や傷めむと叱らるゝ老母の目を盗んでは、ひそかに庭の青梅竿さをに落して心を洗ふ様なる其味を賞せし事はかなはずなりたれど、わが幸福の増しこそはすれ。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
おつぎはほりちかくへたがやしてときると與吉よきち竿さをいとがとれてた。おつぎはきしあがつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
このさい竿雜巾さをぞうきん竿さをさき濕雜巾ぬれざふきん結付むすびつけたもの)の用意よういがあると、もつと好都合こうつごうである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
あるなつ日盛ひざかりに、二人ふたりして、なが竿さをのさきへ菓子袋くわしぶくろくゝけて、おほきなかきしたせみりくらをしてゐるのを、宗助そうすけて、兼坊けんばうそんなにあたまらしけると霍亂くわくらんになるよ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
はるかへかりが、かへつてしまつたのちはないても、どもはかり姿すがたえないので、『がん/\竿さをになれぼうになれ』といふ童謠どうよううたふことも出來できないでゐるそのどものさびしい氣持きもちを
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
春の日のうららにさして行く船は竿さをしづくも花と散りける
源氏物語:24 胡蝶 (新字新仮名) / 紫式部(著)
しやぼん玉を吹くによけれど、竿さをとはしがたし
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
とも竿さをおし、かぢとりて
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
路次ろじの隅、竿さをかけわたし
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「浪人者といつても、すつかり町人になり濟まして居ますよ。二三年前から品川の沖釣おきづりで心安くなつて、竿さを先三尺の附合ひで」
黒猫はさう言つたかと思ふと、すぐどこへか行つて、長い外套ぐわいたうと、長靴ながぐつと、三味線さみせん竿さをの短かいのとをもつて来ました。
幸坊の猫と鶏 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
襦袢じゆばんをも脱棄てた二人の船頭は、毛の深い胸のあたりから、ダクダク汗を出しながら、竿さをを弓のやうに張つて、頭より尻を高くして船縁ふなべりを伝つて行つた。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
かり着替きかへぬれ着類きるゐ竿さをに掛け再び圍爐裡ゐろりはたへ來りてあたれば二日二夜のくるしみに心身しんしんともつかれし上今十分に食事しよくじを成して火にあたゝまりし事なれば自然しぜん眠氣ねふけ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それからおとなりのあかかきはうつて、たつたひとつだけたかいところにのこつてたのをなが竿さをおとしました。もうおとなりのえだには一つもあかかきがありません。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
兵隊は一列になって、崖をなゝめに下り、中にはさきに黒いかぎのついた長い竿さをを持った人もありました。
イギリス海岸 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
そのかせとはほそき丸竹を三四尺ほどの弓になしてそのつるに糸をかけ、かせながら竿さをにかけわたしてさらす也。
病氣びやうきくない、』『あめりさうですから』など宿やどものがとめるのもかず、ぼく竿さをもつ出掛でかけた。人家じんかはなれて四五ちやうさかのぼるとすでみちもなければはたけもない。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ずゐ沈光ちんくわうあざな總持そうぢ煬帝やうだいつかへて天下第一てんかだいいち驍捷はやわざ達人たつじんたり。ていはじめ禪定寺ぜんぢやうじ建立こんりふするときはたつるに竿さをたか十餘丈じふよぢやうしかるに大風たいふうたちまおこりてはた曳綱ひきづないたゞきよりれてちぬ。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
午餐過ひるすぎからおつぎは縫針ぬひばりいととほして竿さをけて與吉よきちたせた。與吉よきちほか子供こどものするやうにはりげててはまたみづげて大人おとなしくしてる。しばら時間じかんつとまたねえようとぶ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
長き竿さを
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「いや、動くな、——川の中に竿さをが一本立つて居た筈だ、——その竿を見定めて置いたのが良かつたのだよ、暫らく待て——」
見て氣のどくにや思ひけん其衣類そのいるゐではさぞかし難儀なんぎなるべし麁末そまつなれども此方の衣服いふくかし申さん其衣類は明朝みやうてうまで竿さをにでも掛てほし玉へとのこる方なき心切なる言葉ことばに吉兵衞はます/\よろこび衣類を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あひだには與吉よきち背負せおつてはやしなかあるいてたけ竿さをつくつたかぎ枯枝かれえだつては麁朶そだたばねるのがつとめであつた。おつぎは麥藁むぎわら田螺たにしのやうなかたちよぢれたかごつくつてそれを與吉よきちたせた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それを友伯父ともをぢさんはよくつてましたから、ほそ竿さをさきかへるにくし、んではちにつきさうな塲處ばしよに立てゝ、べつにするちひさなにくにはかみきれをしばりつけてしてきました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
雪竿といへば越後のこととして俳句はいくにも見えたれど、此国に於て高田の外无用むようの雪竿さをたつところ昔はしらず今はなし。風雅ふうがをもつて我国にあそぶ人、雪中をさけて三ころ此地をふむゆゑ、越路こしぢの雪をしらず。
細い竿さをの割に
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「後學の爲だ、その竿さをを見るがいゝ。俺は石の地藏樣にばかり氣を取られて、此竿に氣が付かなかつたのだよ」
外から人目を避けて一間半もある竿さをを持込めないとすると、下手人はこの納屋の二階から、何うして向うの部屋の格子へ綱を引つかけたか、その道具が何處にあるか
惡戯いたづらをした奴がありますよ、糸も針も滅茶々々だ。こんな掛けやうをされちや、竿さをがたまらない」
「自分の爲に人まであやめたからさ。娘心は不思議なものだ、投銛から紐を解いて、竿さをだけ窓から捨てゝ翌る日門松へ隱し、紐は藏の中へ入れたのさ、——それにしちや、逃出した吉三郎は薄情だ」
竿さを先三尺の附き合ひらしく、八五郎は愛想よく言ひました。