をは)” の例文
あらをはつたとき枯葉かれはおほいやうなのはみなかまでゝうしろはやしならみきなはわたして干菜ほしなけた。自分等じぶんら晝餐ひるさいにも一釜ひとかまでた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
汝が名誉を恢復するも此時にあるべきぞ。心のみ急がれて用事をのみいひるとなり。読みをはりて茫然たる面もちを見て、エリス云ふ。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
蝙蝠かはほりをなおそれそ。かなたこなたへ飛びめぐれど、入るものにはあらず。神の子と共に熟寐うまいせよ。斯く云ひをはりて、をぢは戸をぢて去りぬ。
と。すですること(二九)はいをはりて、(三〇)田忌でんきひとたびたずしてふたたつ。つひわうの千きんたり。ここおい孫子そんし威王ゐわうすすむ。
掛るに家老本田外記中村主計かずへ進み出一通り挨拶あいさつをはる時兩人は何等の御用に候や伺ひ奉つらんと申ければ小左衞門はかたち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
斯くて稿ををはつて、一八七九年の春から清書に取掛とりかかつて行つたが、一八八二年の冬、或雑誌に、ジヨン・ペインの訳本が刊行されると云ふ予告が出た。
今夜もし君の処へ行つたら、俺の仕事はきつと呪はれて滅茶々々な失敗にをはるだらう。だから俺は行く事を控へる。それはたしかに「悪所通ひ」だからね!
彼はつひに心を許し肌身はだみを許せし初恋はつごひなげうちて、絶痛絶苦の悶々もんもんうちに一生最もたのしかるべき大礼を挙げをはんぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
セツキスのない芸術家になりをはせようとしたこの女優は、象牙の塔から滑り落ちるやうな思ひで、また「女」に帰つて来た。そして恋しい男のあとを追うて死に急いだ。
正慶二年(北朝年号)二月二日、赤坂城へ向つて、武恩に報ぜんがため、討死つかまつりをはんぬ
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「イエス・クリストよ。神の子よ。我等に御恵みめぐみを垂れ給へ。」先づかう唱へて、それからじゆを一つじゆした。頌がまだをはらぬうちに、どこからか雀が一羽飛んで来て地の上に下りた。
今日の有樣にては後進の學生日に増加すと雖ども、學問を以て靜に身ををはらんとする者は甚だ稀なるが如し。蓋し其の靜なるを好まざるに非ずと雖ども、靜にして依頼すべき中心を得ず。
帝室論 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
彼時に年二十七、而して其年三十に及んでは既に全く稿ををはれり。知るべし日本の文学史に特筆大書して其大作たるを誇るべき日本外史は実に一個の青年男児に成りたるものなることを。
頼襄を論ず (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
積薪せきしん夕餉ゆふげ調とゝのをはりてりぬ。一間ひとまなるところさしめ、しうとよめは、二人ふたりぢてべつこもりてねぬ。れぬ山家やまがたび宿やどりに積薪せきしん夜更よふけてがたく、つてのきづ。ときあたか良夜りやうや
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
欺かえてみ伏せる時に、吾その上を蹈みて讀み度り來て、今つちに下りむとする時に、吾、いましは我に欺かえつと言ひをはれば、すなはち最端いやはてに伏せる鰐、あれを捕へて、悉に我が衣服きものを剥ぎき。
いやはなしませぬはなされませぬおまへさまころしては旦那だんなさまへみませぬといふはまさしく勘藏かんざうか、とおたかことばをはらぬうちやみにきらめく白刄しらは電光いなづまアツと一聲ひとこゑ一刹那いつせつなはかなくれぬ連理れんり片枝かたえは。
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
遮莫さもあらばあれ、わがルーソー、ボルテイアのはいに欺かれ了らず、又た新聞紙々面大の小天地に翺翔かうしやうして、局促たる政治界の傀儡子くわいらいしとなりをはることもなく、おの夙昔しゆくせきの不平は転じて限りなき満足となり
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
鵞目てうもく一結ひとゆひ白米しらよね、白小袖一、送りをはんぬ。
これで事実はをはつてゐる。
神童の死 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
大豆打でえづぶちにかつころがつたてえに面中つらぢうめどだらけにしてなあ」剽輕へうきん相手あひてます/\惡口あくこうたくましくした。群衆ぐんしふ一聲ひとこゑをはごとわらひどよめいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
所謂伊沢分家は今の主人あるじめぐむさんの世となつたのである。以下今にいたるまでの家族の婚嫁生歿を列記して以て此稿ををはらうとおもふ。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
聲未だをはらざるに、我等は黒點の泡立てる巨濤の蔭に隱るゝを見たり。果せるかな老漁の目は我を欺かざりき。一群の人は周章の色を現せり。
しかし第一の「徳川家康篇」だけは幸ひにも未成品にをはつてゐない。いや僕の信ずる所によれば、寧ろ前人をむなしうした、戞々かつかつたる独造底どくざうていの完成品である。
大久保湖州 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ぬいながむるに是も亦違もなき天下三品さんぴんの短刀なりと拜見しをはりて大膳にもどし成程御證據の二品は慥なれ共天一坊殿に於ては僞物にせものに相違なしといふ此時このとき天忠席を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
帝自らもいかにも気持がよささうだつたが、側近くに居並んで聴いてゐた侍臣達も、ほとほと感に堪へてゐる様子だつた。曲がをはると、玄宗は庭の花樹を指さした。
独楽園 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
捕縛が「その場けとしては」とも角不成功にをはつた事を思ふと、もうその後を「どうなつたか」と追究して考へる気にはなれなかつた程満足な自意識に酔つてゐた。
龐涓はうけんはたしてよる斫木しやくぼくもといたり、白書はくしよすなは(五五)りてこれてらす。其書そのしよいまをはらざるに、せいぐん萬弩ばんどともはつす。ぐんおほひみだれ、(五六)相失あひしつす。
絶えてこれを知る者あらず。およそ人生箇々ここの裏面には必ず如此かくのごとき内情もしくは秘密とも謂ふべき者ありながら、さいはひに他の穿鑿せんさくを免れて、瞹眛あいまいうちに葬られをはんぬるためしすくなからず。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
此處こゝさへはなれてつたならばんなうつくしくところられるかと、ういふこと是非ぜひともかんがへます、で御座ございますから、わたし矢張やつぱりそのとほりのゆめにうかれて、此樣こん不運ふうんをはるべきが天縁てんえんでは
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
同じ戦場にて命をとどめをはんぬ
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたくしはさきに蘭軒を叙しをはつた時、これに論賛を附せなかつた如くに、今叙述全く終つた後も、復総評のためにことばを費さぬであらう。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
をはりて姫は衆人に向ひて謝辭をべ、再びこゝに來んことを約せり。姫はこよひもあまたゝび呼出されぬ。歸途に人々の車を挽けるも亦同じ。
みなみいへではすこしばかり養蠶やうさんをしたので百姓ひやくしやう仕事しごとすべ手後ておくれにつたのであつた。村落むら大抵たいてい田植たうゑをはけたのであわてゝ大勢おほぜいやとうた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「言、未だをはらず。門たちまひらく。数人有り。一巨桶いちきよとうかうして出づ。一吏文書を執つてその後に随つて去る。衆即ち裸婦を擁して入る。賈もまた随つて入る。」
鴉片 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
僕の方から云はせれば、君こそ単に基督のお弟子としてのみをはる事は惜しくてならないのですが。しかし僕は、君が自由思想家になる事を君に勧めようとは思ひません。
須磨子も一旦は「死」の悲しみを突きぬけて、芸術に生きよう、抱月氏の愛をまつたうするためには、女性を捨てて芸術家になりをはせよう、それより外に道は無いと思ひ込んだらしかつた。
かの妨げられし恋は、破鏡の再び合ふを得て楽み、吾がさかれし愛は落花のかへる無くしてをはらんのみ! いで、吾はかくて空くうづもるべきか、風にりて飛ぶべきか、水に落ちて流るべきか。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
わたしよりねがふことゝいふことばきもをはらずそれならばおはなしありおくださりますかとあやしの根問ねどひおたかさまおまへさまのおむねひとうかゞへばわけのすむことほかでもなしまことねえさまにおなりくださらぬかと決然きつぱりいはれて御串戯ごじやうだんわたしこそまこといもと思召おぼしめしてとふを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
浴しをはつて榛軒は犢鼻褌とくびこんを著け、跳躍して病人だまりの間を過ぎ、書斎に入つた。上原も亦主人に倣つて、こんを著け、跳躍して溜の間に入つた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
絶頂新秋生夜涼ぜつちやうのしんしうやりやうをしやうず鶴翻松露滴衣裳つるはひるがへつてしようろいしやうにしたたる前峯月照一江水ぜんぽうつきはてるいつかうのみづ僧在翠微開竹房そうはすゐびにあつてちくばうをひらく。」題しをはつてのち行く事数十里、途上一江水いつかうすゐ半江水はんかうすゐかざるを覚り、ただちに題詩の処にかへれば
広沢は五十幅目ををはると、草臥くたびれたやうに筆を投げ出した。
六日目は谷もをはりの日である。此日は極めてはやく行つた。
炭焼のむすめ (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
逍遙子おほいに後沒理想の論を説き、説きをはりて書をわれにおくりていはく。沒理想に關する論辨はこれにて一旦いったん止むべし。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
云ひをはると共に、利仁は、一ふり振つて狐を、遠くのくさむらの中へ、はふり出した。
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
されど物語のをはりしとき、彼は色を正していさむるやう、この一段のことはと生れながらなる弱き心より出でしなれば、今更に言はんも甲斐なし。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
逍遙子が前の三派、後の二派に就きては既に論じをはんぬ。これよりは其批評の標準を措いて、其批評の手段に及ばむ。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
日の要求に応じて能事のうじをはるとするには足ることを知らなくてはならない。足ることを知るといふことが、自分には出来ない。自分は永遠なる不平家である。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「いや。けふは修行中の草鞋穿わらぢばきだから御免かうむる。焉馬あつたら又はう。」をはつて壽阿彌は、岡崎町の地藏橋の方へ、錫杖しやくぢやうき鳴らして去つたと云ふのである。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
此日には刀自の父榛軒が壽阿彌に讀經どきやうを請ひ、それがをはつてから饗應してかへす例になつてゐた。饗饌きやうぜんには必ず蕃椒たうがらしさらに一ぱい盛つて附けた。壽阿彌はそれをあまさずに食べた。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
わたくしは壽阿彌の手紙と題する此文を草してまさに稿ををはらむとした。然るに何となく心にあきたらふしがあつた。何事かは知らぬが、まさすべくして做さざる所のものがあつて存する如くであつた。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)