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掩
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おほ
ふりがな文庫
“
掩
(
おほ
)” の例文
その主觀の情は、唯
半
(
なかば
)
掩
(
おほ
)
はれてかすかに響きいづるのみ。(同所)是れ豈逍遙子が所謂、我を解脱して世間相を寫すものにあらずや。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
眼
(
め
)
に
掩
(
おほ
)
ひ
被
(
かぶ
)
さつてる
眉
(
まゆ
)
は
山羊
(
やぎ
)
のやうで、
赤
(
あか
)
い
鼻
(
はな
)
の
佛頂面
(
ぶつちやうづら
)
、
脊
(
せ
)
は
高
(
たか
)
くはないが
瘠
(
や
)
せて
節塊立
(
ふしくれだ
)
つて、
何處
(
どこ
)
にか
恁
(
か
)
う一
癖
(
くせ
)
ありさうな
男
(
をとこ
)
。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
人心観想の黙移実に驚くべきかな。近体新声の耳目に
嫺
(
なら
)
はざるを以て、倉皇視聴を
掩
(
おほ
)
はむとする人々よ、詩天の星の宿は
徙
(
のぼ
)
りぬ、心せよ。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
院長
(
ゐんちやう
)
の
某
(
なにがし
)
が
媒
(
なかだ
)
ちをしたのだといふ
噂
(
うは
)
さもあつた。
人々
(
ひと/″\
)
はたゞ
彼女
(
かのぢよ
)
も
弱
(
よわ
)
い
女
(
をんな
)
であるといふことのために、
目
(
め
)
を
蔽
(
おほ
)
ひ
耳
(
みゝ
)
を
掩
(
おほ
)
うて
彼女
(
かのぢよ
)
を
許
(
ゆる
)
した。
悔
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
夜が大鳥の翼のやうに
市
(
いち
)
を
掩
(
おほ
)
つてゐる。此二三日雪が降つてゐたので、地面の蒼ざめた顔が死人の顔のやうに、ドルフに見えた。
聖ニコラウスの夜
(新字旧仮名)
/
カミーユ・ルモンニエー
(著)
▼ もっと見る
「あ!」と叫びし口は
頓
(
とみ
)
に
塞
(
ふさ
)
がざりき。満枝は
仇無
(
あどな
)
げに口を
掩
(
おほ
)
ひて笑へり。この罰として貫一は
直
(
ただち
)
に三服の吸付莨を
強
(
し
)
ひられぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
媼は痩せたる
臂
(
ひぢ
)
さし伸べて、洞門を
掩
(
おほ
)
へる
蔦蘿
(
つたかづら
)
の
帳
(
とばり
)
の如くなるを推し開くに、
外面
(
とのも
)
は暗夜なりき。濕りたる濃き霧は四方の山岳を
繞
(
めぐ
)
れり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
さうすると
麥
(
むき
)
を
刈
(
か
)
つた
跟
(
あと
)
の
菽
(
まめ
)
や
陸穗
(
をかぼ
)
が
渇
(
かつ
)
した
口
(
くち
)
へ
冷
(
つめ
)
たい
水
(
みづ
)
を
獲
(
え
)
た
樣
(
やう
)
に
勢
(
いきほひ
)
づいて、四五
日
(
にち
)
の
内
(
うち
)
に
青
(
あを
)
い
葉
(
は
)
を
以
(
もつ
)
て
畑
(
はたけ
)
の
土
(
つち
)
が
寸隙
(
すんげき
)
もなく
掩
(
おほ
)
はれる。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
近衞家
(
このゑけ
)
の
京武士
(
みやこぶし
)
は、
綺麗
(
きれい
)
な
扇
(
あふぎ
)
で、のツぺりした
顏
(
かほ
)
を
掩
(
おほ
)
ひつゝ、
片手
(
かたて
)
で
鼻
(
なは
)
を
摘
(
つ
)
まんで、三
間
(
げん
)
も
離
(
はな
)
れたところから、
鼻聲
(
はなごゑ
)
を
出
(
だ
)
した。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
一
日
(
にち
)
、ペエエル・ラセエズの大墓地へ
入
(
はひ
)
つて
行
(
い
)
つたら、文豪ミユツセの墓に一株の柳が青んで文豪の彫像を
掩
(
おほ
)
うた
其
(
その
)
枝にメルルが
啼
(
な
)
いて居た。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
「幸に
濃妝
(
のうせう
)
をもつて妾が
雙頬
(
さうけふ
)
の
啼痕
(
ていこん
)
を
掩
(
おほ
)
ふを得るも
菱華
(
りやうくわ
)
は独り妾が
妝前
(
せうぜん
)
の
愁眉
(
しうび
)
を
照
(
てら
)
さざる殆ど稀なり」という文体である。
婦人と文学
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
そして、二人共出來ずに、豐吉だけ誇りかに手を擧げた時は、美しい藤野さんの顏が瞬く間暗い
翳
(
かげ
)
に
掩
(
おほ
)
はれるのであつた。
二筋の血
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
僕の如きも現に
欺
(
あざむ
)
かれて居た
一人
(
いちにん
)
のだ、そりや君、酒は飲む
放蕩
(
はうたう
)
はする、篠田の偽善程恐るべき者は無い、現に其の
掩
(
おほ
)
ふべからざる明証の一は
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
吼
(
ほ
)
ゆる
荒熊
(
あらくま
)
と一しょにも
繋
(
つな
)
がれう、
墓
(
はか
)
の
中
(
なか
)
にも
幽閉
(
おしこ
)
められう、から/\と
鳴
(
な
)
る
骸骨
(
がいこつ
)
や
穢
(
むさ
)
い
臭
(
くさ
)
い
向脛
(
むかはぎ
)
や
黄
(
き
)
ばんだ
頤
(
あご
)
のない
髑髏
(
しゃれかうべ
)
が
夜々
(
よる/\
)
掩
(
おほ
)
ひ
被
(
かぶさ
)
らうと。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
昼か、
夜
(
よる
)
か、それもおれにはわからない。唯、どこかで
蒼鷺
(
あをさぎ
)
の啼く声がしたと思つたら、
蔦葛
(
つたかづら
)
に
掩
(
おほ
)
はれた木々の
梢
(
こずゑ
)
に、薄明りの
仄
(
ほの
)
めく空が見えた。
沼
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
長い/\山国の冬が次第に
近
(
ちかづ
)
いたことを思はせるのは
是
(
これ
)
。其朝、丑松の部屋の窓の外は白い煙に
掩
(
おほ
)
はれたやうであつた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
我は既に魂等全く
掩
(
おほ
)
ひ
塞
(
ふさ
)
がれ玻璃の中なる
藁屑
(
わらくづ
)
の如く見え
透
(
す
)
ける處にゐたり(これを詩となすだに恐ろし) 一〇—一二
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
それに、此間は越戸の大山を主峰とした小さな山脈で
掩
(
おほ
)
はれてゐるので、海は全くその路から見えなかつた。しかし、松は次第に多くなつて行つた。
伊良湖岬
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
幸
(
さいはひ
)
に一
杯
(
ぱい
)
を
酌
(
く
)
みて
歇息
(
やす
)
ませ給へとて、酒をあたため、
下物
(
さかな
)
を
列
(
つら
)
ねてすすむるに、赤穴
九一
袖をもて
面
(
おもて
)
を
掩
(
おほ
)
ひ、其の
臭
(
にほ
)
ひを
嫌
(
い
)
み
放
(
さ
)
くるに似たり。左門いふ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
「一寸手を受けて下さい。こゝから。」と、青木さんは変なところから、手の平に何かを
掩
(
おほ
)
うてお出しになる。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
途端わたくし敏雄を抱きあげて袂で顏を
掩
(
おほ
)
ひました、
不憫
(
ふびん
)
ぢやありませぬか。お兄さまもよく/\罪の深い方ぢやありませんか。それでも人間と言へますか。
業苦
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
が、妖雲が、天日を
掩
(
おほ
)
はんとするとき、却つて天日の光が、冴え渡るやうに、
和気清麻呂
(
わけのきよまろ
)
が、宇佐八幡から
二千六百年史抄
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
一種の苦い感じが夕立雲の空に拡がる如く急に心頭に
掩
(
おほ
)
ひかぶさつて、折角の感興も之が為に台なしにされたとかで、氏は
直
(
たゞち
)
に之を日本人の排外思想と
見做
(
みな
)
し
露都雑記
(新字旧仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
彼の文中には屡々「妻女にのろき」、「眼を皿にして」など言へる洒落たる文字あれども、
而
(
しか
)
も是れ彼が正直にして多感的なるを
掩
(
おほ
)
はんとする
狡獪
(
かうくわい
)
手段なるのみ。
明治文学史
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
私と別れることよりも、私が京都へ行くことに決心したその心根を察して、いぢらしくなつたのであらう、父はその大きな筋張つた、節くれ立つた手で顔を
掩
(
おほ
)
うた。
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
春先きから夏へかけて美しい柔かな葉が
繁
(
しげ
)
つて、柱から羽目から屋根から
凡
(
すべ
)
てを、まるで緑色の
天驚絨
(
ビロウド
)
の夜具を頭からすつぽりひつかぶつたやうに
掩
(
おほ
)
ひ隠してしまつた。
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
車上
(
しやじやう
)
の
人
(
ひと
)
は
肩掛
(
かたかけ
)
深
(
ふか
)
く
引
(
ひき
)
あげて
人目
(
ひとめ
)
に
見
(
み
)
ゆるは
頭巾
(
づきん
)
の
色
(
いろ
)
と
肩掛
(
かたかけ
)
の
派手模樣
(
はでもやう
)
のみ、
車
(
くるま
)
は
如法
(
によほふ
)
の
破
(
や
)
れ
車
(
ぐるま
)
なり
母衣
(
ほろ
)
は
雪
(
ゆき
)
を
防
(
ふせ
)
ぐに
足
(
た
)
らねば、
洋傘
(
かうもり
)
に
辛
(
から
)
く
前面
(
ぜんめん
)
を
掩
(
おほ
)
ひて
行
(
ゆ
)
くこと
幾町
(
いくちやう
)
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
丸髷
(
まるまげ
)
や
島田
(
しまだ
)
に結つて帽の代りに髮の形を美しく見せる樣になつて居る場合に帽は却て不調和であるけれども、
束髮姿
(
そくはつすがた
)
には何うも帽の樣な上から
掩
(
おほ
)
ふ物が必要であるらしい。
巴里にて
(旧字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
掻いたあとは、赤くみみずのやうに
腫
(
は
)
れ上り、それが腕全体を
掩
(
おほ
)
ひ、やがては体にまで及んだ。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
私は
鎧戸
(
よろひど
)
を締め、雪が吹き込まないやうに
扉
(
ドア
)
の下には莚を置き、火をよく備へ、そして一時間近く
爐
(
ろ
)
に坐つて耳を
掩
(
おほ
)
ふ嵐の狂亂に聞き入つてゐたが、やがて蝋燭を
點
(
とも
)
して
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
『
然
(
さ
)
うかい、さうかい』と
云
(
い
)
つてグリフォンは、
自分
(
じぶん
)
の
番
(
ばん
)
が
來
(
き
)
たと
云
(
い
)
はぬばかりに、これも
亦
(
また
)
長太息
(
ためいき
)
を
吐
(
つ
)
きました、それから二
疋
(
ひき
)
の
動物
(
どうぶつ
)
は
其
(
そ
)
の
顏
(
かほ
)
をその
前足
(
まへあし
)
で
掩
(
おほ
)
ひ
隱
(
かく
)
しました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
どうかと氣遣つた天氣は次第に晴れて大空の大半を
掩
(
おほ
)
つてゐた雲は追々に散らけ、梅雨上りの夏の來たことを思はせる暑い日が赫々と前甲板の上を蔽ふたテントの上に照りつけた。
湖光島影:琵琶湖めぐり
(旧字旧仮名)
/
近松秋江
(著)
山と水と寂寞として地に横はり、星と月と
寂寞
(
じやくまく
)
として天にかゝれり。うるはしの
極
(
き
)
はみかな。願はくは月よ傾かざれ、星よ沈まざれ、
永久
(
とは
)
の夜の、この世の
聲色
(
せいしよく
)
を
掩
(
おほ
)
ひつゝめよかし。
清見寺の鐘声
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
秋
(
あき
)
の
日
(
ひ
)
が
暮
(
く
)
れた。
彼女
(
かのぢよ
)
の
屍體
(
したい
)
は
白布
(
しろぬの
)
に
掩
(
おほ
)
はれて、その
夜
(
よ
)
屍室
(
ししつ
)
に
搬
(
はこ
)
ばれた。
彼女こゝに眠る
(旧字旧仮名)
/
若杉鳥子
(著)
其晩
(
そのばん
)
夫婦
(
ふうふ
)
は
火鉢
(
ひばち
)
に
掛
(
か
)
けた
鐵瓶
(
てつびん
)
を、
双方
(
さうはう
)
から
手
(
て
)
で
掩
(
おほ
)
ふ
樣
(
やう
)
にして
差
(
さ
)
し
向
(
むか
)
つた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
履きたり母は
縁
(
ふち
)
のほつれし竹の子笠を
被
(
かぶ
)
りたるが何故にや
腮
(
おとがひ
)
の濡るゝまで仰向きたり思へばこれ
脊
(
せな
)
の子を濡らさじと小さき笠を
後
(
うしろ
)
へ
掩
(
おほ
)
ふ爲なりしまだ其下にも
跡
(
あと
)
の子を入れんとにや
後
(
うしろ
)
さまに右の手を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
と
唱
(
とな
)
へ
出
(
いだ
)
す
節
(
ふし
)
は
泣
(
な
)
くがごとく、
怨
(
うら
)
むがごとく、いつも(
應
(
おう
)
)の
來
(
きた
)
りて
市街
(
しがい
)
を
横行
(
わうかう
)
するに
從
(
したが
)
うて、
件
(
くだん
)
の
童謠
(
どうえう
)
東西
(
とうざい
)
に
湧
(
わ
)
き、
南北
(
なんぼく
)
に
和
(
わ
)
し、
言語
(
ごんご
)
に
斷
(
た
)
えたる
不快
(
ふくわい
)
嫌惡
(
けんを
)
の
情
(
じやう
)
を
喚起
(
よびおこ
)
して、
市人
(
いちびと
)
の
耳
(
みゝ
)
を
掩
(
おほ
)
はざるなし。
蛇くひ
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
趣向歌の臭味に
掩
(
おほ
)
はれないで、鋭い感覚が写されてゐるのである。
女房文学から隠者文学へ:後期王朝文学史
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
契沖は代匠記で、「歌ト云ヒ詩ト云ヒ声ヲ呑テ涙ヲ
掩
(
おほ
)
フニ
遑
(
いとま
)
ナシ」
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
緑林
掩
(
おほ
)
ふ連山と怒濤轟く海洋と 155
イーリアス:03 イーリアス
(旧字旧仮名)
/
ホーマー
(著)
彩羽
(
あやは
)
もてしばしは
掩
(
おほ
)
へ
春鳥集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
海を
掩
(
おほ
)
ひし
未刊童謡
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
然れどもゾラが言の如く、美に代ふるに實を以てし、術に代ふるに批評と試驗とを以てするときは、矛盾の
迹
(
あと
)
つひに
掩
(
おほ
)
ふべからざるに至らむ。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
日本服の上に花の附いた帽を
被
(
き
)
て
面紗
(
おもぎぬ
)
を
掩
(
おほ
)
ふた晶子の異様な姿に
路路
(
みちみち
)
人だかりがする、
西班女
(
エスパニヨル
)
だなどと評して居る者もある。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
そして、二人共出来ずに、豊吉だけ誇りかに手を挙げた時は、美しい藤野さんの顔が瞬く間暗い翳に
掩
(
おほ
)
はれるのであつた。
二筋の血
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「どうしてつちつたつて、
俺
(
お
)
らがにや
分
(
わか
)
んねえよ」おつぎは
恨
(
うら
)
めし
相
(
さう
)
に
然
(
しか
)
しながら
周圍
(
しうゐ
)
に
憚
(
はゞか
)
る
樣
(
やう
)
にして
小聲
(
こごゑ
)
でいつた。
袂
(
たもと
)
は
顏
(
かほ
)
を
掩
(
おほ
)
うた
儘
(
まゝ
)
である。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
僧官のうちなる一人、
迺
(
すなは
)
ちこれを取りて、ベルナルドオが前に進み給ひぬ。我友は此時
跪
(
ひざまづ
)
きたるが、もろ手に面を
掩
(
おほ
)
ひて、この冠を頭に受けたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
貫一は彼の説進むに従ひて、
漸
(
やうや
)
くその心事の火を
覩
(
み
)
るより
明
(
あきらか
)
なるを得たり。彼が千言万語の舌を
弄
(
ろう
)
して
倦
(
う
)
まざるは、
畢竟
(
ひつきよう
)
利の一字を
掩
(
おほ
)
はんが為のみ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「銀子さん、
皆様
(
みなさん
)
は私の独身主義を
全然
(
まるで
)
砂原の心かの様に思つて下ださいますけれど、——
凡
(
すべ
)
ては神様が御承知です」梅子はハンケチもて眼を
掩
(
おほ
)
ひつ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
昔は
姜度
(
きやうと
)
の
子
(
こ
)
を
誕
(
たん
)
するや、
李林甫
(
りりんぼ
)
手
(
しゆ
)
書を作つて
曰
(
いはく
)
、聞く、
弄麞
(
ろうしやう
)
の
喜
(
よろこび
)
ありと。客之を視て口を
掩
(
おほ
)
ふ。蓋し
林甫
(
りんぽ
)
の
璋字
(
しやうじ
)
を誤つて、
麞字
(
しやうじ
)
を書せるを笑へるなり。
骨董羹:―寿陵余子の仮名のもとに筆を執れる戯文―
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
掩
漢検準1級
部首:⼿
11画
“掩”を含む語句
掩隠
掩蓋
上掩
掩護
掩蔽
掩護物
掩蔽物
打掩
貝掩
窓掩
掩殺
掩映
掩撃
掩堡
雨掩
掩々
虚誘掩殺
蔽掩
自恨羅衣掩詩句
掩体壕
...