“面紗”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
ヴェール31.4%
おもぎぬ11.4%
ヴエール11.4%
めんさ5.7%
めんしゃ5.7%
ヴェイル5.7%
かおぎぬ2.9%
ヴエエル2.9%
べール2.9%
ベール2.9%
ヱエル2.9%
ヴェエル2.9%
ヴエイル2.9%
ヴォアール2.9%
ヴヱール2.9%
ヹエル2.9%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
顔の前に短く垂れた面紗ヴェールのように、空虚・無目的性をこの人生の前面に装飾的にかけて、その気分を持って廻るのであったら
私たちの社会生物学 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
日本服の上に花の附いた帽を面紗おもぎぬおほふた晶子の異様な姿に路路みちみち人だかりがする、西班女エスパニヨルだなどと評して居る者もある。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
アルバノ、フラスカアチの少女の群は、髮を編みて、しろがねにて留め、薄き面紗ヴエールの端を、やさしくもとゞりの上にて結びたり。
彼少女は粗暴なる少年に車をかれて、かつおそれ且は喜びたりき。彼少女は面紗めんさきびしく引締めて、身をば車の片隅に寄せ居たり。
そこでうまうまおびき出し、麻酔剤で無理に眠らせ、面紗めんしゃを冠ぶせて輿へ載せ、これこそ拙者の姫でござると瞞してくれてやったのさ。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼女の死の前後の苦しい経験がやっと薄い面紗ヴェイルのあちらに感ぜられるようになったのもこの土地へ来てからであった。
城のある町にて (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
修道女が応接室に呼ばれる時には、それがたとい院長であろうと、前に述べたとおり、口だけしか見えないように面紗かおぎぬを顔の上に引き下げる。
即ち、この明智は芸術家芥川氏の武器であり、甲冑であり、時には自分を鮮に韜晦させる面紗ヴエエルである。
「樋口一葉、若松賤子しずこ——小金井きみ子は、宝玉入の面紗べールでね、洋装で素敵な写真よ、その写真が並んだ中に、たしか、あの顔、あの姿が半身で出ていたんだ。」
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何時、富岡に振り返られても、旅空の女の淋しさを、上手にみせる哀愁の面紗ベールを、ゆき子はじいつとかぶつてゐた。その面紗の後で、ゆき子はひとりで昂奮かうふんして、やるせなげに溜息ためいきをついてゐるのだ。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
私は運命のせばまりしと共に、胸狹くなりしを自ら覺え居候。さて見苦しき假住ひに御尋下され候時、我目を覆ひし面紗ヱエルの忽ち落つるが如く、君の初より眞心もて我を愛し給ひしことを悟り候ひぬ。
鼠色ねずみいろ外套がいとうを着て、帽子をかぶって、その上に青色の面紗ヴェエルを掛けて、女は窓に立っている。註文ちゅうもんした馬車の来るのを早く見付けるためである。大抵五分置き位に、男はもう馬車が来はしないかと問う。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
組み合せた二本の痩せた手が前額を支へて、顏の下部に黒い面紗ヴエイルをかけ、骨のやうに白く、全く血の氣のない額と、絶望に曇つた無表情な眼、空洞うつろな動かない片眼のみが見える。
黒い面紗ヴォアールをつけた若い未亡人、松葉杖をついた傷痍軍人、しょんぼりした子供たち……喪服を着たものしずかな人達が
黄泉から (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
肉づきのいゝ、しかし輪廓のすつきりした姿だ。そしてカルロを撫でゝから頭を上げて、長い面紗ヴヱールを後へ刎ねのけたとき、彼の眼の前には、非の打ち處のない美しい顏が、花のやうにパツと開いた。
十二時頃になるとキキイを除いた三人の女は、派手はで身装みなりをして大きな帽の蔭に白粉おしろいを濃くいた顔を面紗ヹエルに包み、見違へるやうな美しい女になつて各自めい/\何処どこへか散歩に出てく。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)