面紗おもぎぬ)” の例文
日本服の上に花の附いた帽を面紗おもぎぬおほふた晶子の異様な姿に路路みちみち人だかりがする、西班女エスパニヨルだなどと評して居る者もある。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
さうしてかの柳河のただ外面うはべに取すまして廃れた面紗おもぎぬのかげに淫らな秘密を匿してゐるのに比ぶれば、凡てがあらはで、元気で、また華やかである。
水郷柳河 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
壻この約を婦に聞きて、婦の衣裳を纏ひ、婦の面紗おもぎぬを被りて出でぬ。好くこそ來つれと引き寄せ給ふ殿の胸には、匕首あひくちの刃深く刺されぬ。これは昔がたりなり。われも此の如き貴人を知りたり。
さうしてかの柳河のただ外面うはべに取すまして廢れた面紗おもぎぬのかげにみだらな秘密をかくしてゐるのに比ぶれば、凡てがあらはで、元氣で、またはなやかである。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
午前三時と云ふのに東の空はもう赤紫を染めて、船から倫敦行ロンドンゆきの汽車に乗移る旅客りよかく昨夜ゆうべろくろく眠らなかつた顔があらはに見える。自分は白い面紗おもぎぬを取出して顔をおほうた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)