“ヴェール”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
面紗47.8%
覆衣8.7%
面衣8.7%
薄紗4.3%
4.3%
紗幕4.3%
薄衣4.3%
覆面4.3%
面布4.3%
面帕4.3%
面覆4.3%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
土耳古トルコ婦人はいつの場合でも面紗ヴェールで顔を隠すそうです。顔やうなじが焼けなくて手首だけ焼けるのはそのためでしょう」
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
覆衣ヴェールのやうな春霞とよくいふが、彗星はあれで春霞よりもう一枚上手うはてに軽いわけさ
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
表面は氷で青白いけれども、何となく底の下から緑いろの水のうるみを感じさせている湖水は、うごめく春の兆しを月光に見破られまいと強いて面衣ヴェールを緊くしているようにも取れます。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
薄紗ヴェールの幕が再び次々にり上って行く。場面は、竹林を出たばかりの所で、小高い丘陵きゅうりょうの一端の感じ。遠い丘陵が幾つか連なっているのが夜空に遥かに黒く浮んで見える。——
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
額縁舞台には緑色の薄紗ヴェールが幾重にもれ下っている。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
たとえば、緑柱玉の輝きをヴェールすかしてながめたような、淡いあわい海緑色ヴェル・マレエの、それ自体、冷涼たる輝きをもった……ヤヌッセンが Bérylベリイル と呼んでいるある異様な微光だった。
地底獣国 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
北太平洋名物の紗幕ヴェールのようなガスの深いある真夜中のことであった。
灯台鬼 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
それはごく薄い、やっと見えるか見えないぐらいの、薄衣ヴェールのようなものだったが、しばし悲しいやき印の跡を、覆うているかのように見えた。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
その眼をなおよく見んために覆面ヴェールを引き裂こうとした刹那せつな、このたびはその蠱惑こわくから脱せんとつとめ、主宰的精神の魔法の網を、スフィンクスの顔にふたたび投げかけようとしていた。
花柳界で行われるお座敷の芸というものは大概たかが知れたものである。勝負は俄に断じ難い。ところがお品はわたしに眼くばせして面布ヴェールを脱ぐことを命ずる。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そして多くの燐れな新参の僧侶が誓言を述べに呼ばれる時には、面帕ヴェールをずた/\に裂く決心をしてゐながら、阿容々々とそれを取つてしまふのも亦確にかうした訳からである。
クラリモンド (新字旧仮名) / テオフィル・ゴーチェ(著)
面覆ヴェールのような霧が、落葉松の森に往き来して、今来た路はもう見えなくなってしまった。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)