こほ)” の例文
水をわたすがたたるゆゑにや、又深田ふかたゆくすがたあり。初春しよしゆんにいたれば雪こと/″\こほりて雪途ゆきみちは石をしきたるごとくなれば往来わうらい冬よりはやすし。
私たちの血管の血までもこほらすほどのカナダらしい氣温の朝夕もいつか過ぎ去り、私たちは、もう遊技いうぎ時間をお庭で過すことに耐へられた。
法願ほうぐわんこほさうかねげてちらほらとおほきかたまりのやうな姿すがたうごいてるまではちからかぎつじつてかん/\とたゝくのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その頂上てうじやうにはふるむかしから、大理石だいりせきのやうにかたくて真白ましろゆきこほりついてゐて、かべのやうにそゝりつ、そこまで、まだ誰一人だれひとりのぼつたものがない。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
あらぬ方を見る利吉の視線を追つて行くと、物蔭にチラリと白いもの、——長崎屋の娘のお喜多が、其處からこほるやうに視線を送つてゐるのでした。
こほ手先てさき提燈ちやうちんあたゝめてホツと一息ひといきちからなく四邊あたり見廻みまはまた一息ひといき此處こゝくるまおろしてより三度目さんどめときかね
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ツの壁越かべごしですが、寢臺ねだいわたしこほりついたやうにつて、じつ其方そのはうますと、きました、たかかべと、天井てんじやう敷合しきあはせのところから、あの、女性をんな
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そらるとこほつてゐるやうであるし、うちなかにゐると、陰氣いんき障子しやうじかみとほして、さむさがんでるかとおもはれるくらゐだのに、御米およねあたまはしきりにほてつてた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其度毎そのたびごとに總身宛然さながら水をびし如く、心も體もこほらんばかり、襟を傳ふ涙の雫のみさすが哀れを隱し得ず。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
六月の二十三日と云ふのに海峡の夜風はこほる様に寒い。生憎あひにく良人をつとも自分も外套を巴里パリイに残して来たので思はず身をふるはすのであつた。仕合しあはせな事に浪はまつたく無い。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
日輪天の磨羯まかつつのに觸るゝとき、こほれる水氣ひらを成してわが世のそらより降るごとく 六七—六九
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
内端うちは女心をんなごゝろくにもかれずこほつてしまつたのきしづくは、日光につくわう宿やどしたまゝにちひさな氷柱つらゝとなつて、あたゝかな言葉ことばさへかけられたらいまにもこぼれちさうに、かけひなか凝視みつめてゐる。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
嵐烈しく雪散る日辿り着きたる平泉、みぎはこほれる衣川を衣手寒く眺めやり、出羽にいでゝ多喜の山に薄紅うすくれなゐの花をで、象潟きさかたの雨に打たれ木曾の空翠くうすゐに咽んで、漸く花洛みやこに帰り来たれば
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
しじにうつ櫓の音こほりてくる夜は荒磯ありその蠣も附きがたからむ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
降り乱れみぎはこほる雪よりも中空なかぞらにてぞわれはぬべき
源氏物語:53 浮舟 (新字新仮名) / 紫式部(著)
……むなしく吾等はこほり果て、た!
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
冷やかにこほれたるごとし
寂寞 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
軒下の垂氷つらゝと共にむねこほ
北村透谷詩集 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
こころ余れど身がこほる。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
鼻がぴたりとこほりつく
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
かのうつくしきこほ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
柔肌やははだこほる地の下の
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
なんだこほ威海湾ゐかいわん
寡婦の除夜 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
勘次かんじもおつぎもうす仕事衣しごとぎにしん/\とこほしもつめたさと、ぢり/\とこがすやうなあつさとを同時どうじかんじた。與吉よきち火傷やけどつめたさがみた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
夢は私の耳の傍へ近づくか近づかない間に、骨の髓もこほる程の恐ろしい出來事におびやかされて怖氣おぢけづいて逃げ去つた。
お内儀の顏は冷たくて、空笑ひさへこほり付いて居りますが、その言葉は驕慢けうまんで戰鬪的で容赦を知らぬものでした。
夫婦ふうふきてふたゝ天日てんじつあふぐのは、たゞ無事ぶじしたまで幾階いくかいだんりる、そればかり、とおもふと、昨夜ゆふべにもず、爪先つまさきふるふ、こしが、がくつく、こほつてにくこはばる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
穴二ツも三ツも作りおくゆゑ、をりよき時は二疋も三疋も狐を引抜ひきぬく事あり、これこほりて岩のやうなる雪の穴なればなり。土の穴はかれがものなれば自在じざいをなしてにげさるべし。
松花江スンガリーすずきこほれる春早き哈爾賓ハルビンの朝のいちに行くなり
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
朝の書斎はこほれども
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
くりやに酒のこほる真夜中
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
見ると井桁ゐげたの下のあたり、流しから溢れた水がこほつて、水垢離でも取らなければ、と思ふほどの濡れやうです。
おつぎは手桶てをけそここほつた握飯にぎりめし燒趾やけあとすみおこして狐色きつねいろいてそれを二つ三つ前垂まへだれにくるんでつてた。おつぎはこつそりとのぞくやうにしてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「なぜ、水がこほつてたから、爪のお掃除も顏を洗ふことも出來なかつたと云はないんだらう。」と思つた。
みちすがらあしこほり、火鉢ひばちうへ突伏つゝぷしても、ぶるひやまぬさむさであつたが
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
春陽の頃はつもりし雪もひるの内はやはらかなるゆゑ、夜な/\狐の徘徊はいくわいする所へむぎなど舂杵つくきねを雪中へさし入て二ツも三ツもきねだけのあなを作りおけば、夜に入りて此あなこほりて岩の穴のやうになるなり。
眼先まなさきに友のしかばねこほれるを月夜つくよ堪へつつ七夜ななよ経しとふ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「二月始めの寒い晩。北窓と東側の雨戸の敷居に水を流してこほらせ、南側の雨戸の臆病窓から手を出して、外に干してあつた冬がこひのわらに火を附けたんだ」
猶以なほもつねんために、べつに、留桶とめをけ七八杯しちはちはいおよ湯船ゆぶねたかさまで、こほるやうな水道すゐだうみづ滿々まん/\たゝへたのを、ふなべり積重つみかさねた。これは奧方おくがた注意ちうい以外いぐわい智慧ちゑで、ざぶ/\と掻𢌞かきまはして
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あかあかと末広すゑひろひかりこほれば
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
此處はこほり付いて開かず、東側の雨戸も恐ろしく頑固に凍り付いて居たが、勘兵衞はそれを叩き破つて、おろ/\するお關を蹴飛ばすやうに、自分も漸く這ひ出して
ぐつすりと寢込ねこんでた、仙臺せんだい小淵こぶちみなとで——しもつきひとめた、とし十九の孫一まごいちに——おもひもけない、とも神龕かみだなまへに、こほつた龍宮りうぐう几帳きちやうおもふ、白氣はくき一筋ひとすぢつきいて
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はとすく節々ふしふしこほおと
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ガラツ八の八五郎は、霜解しもどけのひどい庭を指しました。それに昨夜は暖かでこほらなかつたので、下手人が外から來たとすれば、足跡を殘さずには近づけなかつたでせう。
若狹鰈わかさがれひ——だいすきですが、それ附木つけぎのやうにこほつてます——白子魚乾しらすぼし切干大根きりぼしだいこわんはまた白子魚乾しらすぼしに、とろゝ昆布こぶすひもの——しかし、なんとなく可懷なつかしくつてなみだぐまるゝやうでした
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
え、われをこほらしむ。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
無法者で力自慢だが、敷居へ水を流して、こほらせる智慧がありさうもない——となると二十三の七之助、いやにニヤニヤした、鼻の先に猿智慧がブラ下がつて居るやうな野郎かも知れませんね
かんつきそこはひつて、しろこほつたやうにもおもへます。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「大きな聲でも出さなきや、へそまでこほりさうですよ。驚いたの驚かねえの」
「さう、こほらなかつた樣だが——」