屹度きつと)” の例文
独逸ドイツ屹度きつと最後の独逸人となるまで戦ふだらう、露西亜ロシア人もまた最後の露西亜人となるまで戦ふだらうが、唯英吉利イギリス人は——さうさ
あるひ屹度きつと、及第の通知が間違つてゐたのではないかと、うつたへるやうにして父兄席を見ると、木綿の紋付袴もんつきはかまの父は人の肩越しに爪立つまだ
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
もつちやんだつて屹度きつと何とかしてくれるに違ひない。」と私はさきに久しぶりで佐賀へ青服を着て帰つて来た友達をも頼みにしてゐた。
ある職工の手記 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
女等をんならみな少時しばし休憩時間きうけいじかんにもあせぬぐふにはかさをとつて地上ちじやうく。ひとつにはひもよごれるのをいとうて屹度きつとさかさにしてうらせるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
否、宗教ばかりではない、何につけても、それにはまり込んで了へば、屹度きつと芸術はそこから逃げ出して行つて了ふやうなところがある。
黒猫 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
それからまたどく』としるしてあるびんから澤山たくさんめば、それが屹度きつとおそかれはやかれからだがいになるものだとふことをけつしてわすれませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
秋野が預るとすると、男だから、つは土地者ところものだけに種々いろいろな関係があつて、屹度きつと何かの反響さしひびきが起る。孝子はそれも考へたのだ。そして
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
やつぱり、此方こちらが思ひ出せないのだ。そのなかには、また屹度きつとあの人達と顔を合せる機会があるに違ひない。屹度機会が来るに違ひない。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
とうさんのおうちにも出入でいりのお百姓ひやくしやうがありまして、おもちをつくとか、おちやをつくるとかいふには、屹度きつと手傳てつだひにれました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そのあやしい、うみうへではよく眩惑ごまかされます、貴下あなた屹度きつと流星りうせいぶのでもたのでせう。』とビールだるのやうなはら突出つきだして
嫁入よめいり支度したく忙殺ばうさつされるのみならず、屹度きつと貧殺ひんさつされるだらうとかはなしになると、子供こどものない宗助そうすけみゝには夫程それほど同情どうじやうおこなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
造るのよむろん! そしてそれが貴方の胸の中の恋人に似れば似る程それは屹度きつとまるや様のやうに神々しく美しくなるのだわ。
この石の下には、屹度きつとかにが居るよ、さ、おツさんがかうして、石を引起して居るから坊やは自分で蟹をつかんでお捕り……」
熊と猪 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
御訪ねをすると屹度きつと大人のお煩ひになることを恐れますが、でも小生の止むに止まれぬ願を更めてお胸にお止め下さいまし
生前身後の事 (新字新仮名) / 中里介山(著)
屹度きつともなくおなほりでせう。』と、ニキタはまたふてアンドレイ、エヒミチの脱捨ぬぎすてふく一纏ひとまとめにして、小腋こわきかかへたまゝてゝく。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
毎日うして二人で働いてゐたが、時々飛入りに手伝に来る職人があつた。此奴こいつが手伝に来ると、屹度きつと娘を叱り飛ばす、さうしてミハイロに調戯からかふ。
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
彼女はひどく才の勝つた女で、屹度きつと一生のうちに郷里の人の驚くやうな女になつてやらねば、とは束の間も彼女の胸に斷えたことのない祈願であつた。
姉妹 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
「緑ちやん今夜ははずれだね。屹度きつとこれから好いよ。それに女の人が一枚入ると、がらりと変つて来るよ。はあちやん助勢して、取りかへしなさいよ。」
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
差出すに於ては返金へんきんは申に及ばず御褒美ごはうびとして知行ちぎやう百石づつ下し置れる樣拙者せつしやどもが屹度きつと取り計ひつかはすべし若し御家來に御取立をのぞまずば永代えいだい倉元役くらもとやく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
是非ぜひ吾助ごすけ拜見はいけんたければ、此頃このごろ姉樣ねえさまにおねがひなされ、おてをいたゞきてたまはれ、かならず、屹度きつと返事へんじ通路つうろ此處こヽにをしへ、一日いちにち二日ふつか
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わし屹度きつと改心かいしんさして見せるから、まアそんなに心配しないがいゝよ。なに世の中は案じるよりむが安いさ。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ところが、ふとした拍子ひやうしで此樣な死態しにざまをするやうになツた……そりや偶然さ。いや、屹度きつと偶然だツたらう。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
僅に殘つた親友の大川をはじめ二三の人々は、亨一の將來を氣づかひ、あの儘にしておけば彼は屹度きつと終りを全くすることが出來なくなると云つて、其前途を危んだ。
計画 (旧字旧仮名) / 平出修(著)
今般、当村内にて、切支丹きりしたん宗門の宗徒共、邪法を行ひ、人目じんもくまどはし候儀に付き、私見聞致し候次第を、逐一ちくいち公儀へ申上ぐ可きむね、御沙汰相成り候段屹度きつと承知つかまつり候。
尾形了斎覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
屹度きつと持參ぢさんこと、とふ……けだ發會はつくわい第一番だいいちばんの——おたうめでたうござる——幹事かんじとんさんが……じつ剩錢つりせんあつめる藁人形わらにんぎやうよろひせた智謀ちぼう計數けいすうによつたのださうである。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
貴方は今に綿丈けになつた布団は掛けなければならなくなるでせう屹度きつと。それでも悲しまないでね。
獄中の女より男に (新字旧仮名) / 原田皐月(著)
けふはわたしなにはれたのがよくよく、くやしかつたとみえまして、めると、しくしくきながら、またつたんです。屹度きつと酒屋さかやへです。わたしさけにくみます。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
博士は「日本人は約束を守る誠実な国民だ。も一度来ると云へば屹度きつとこの通りに来る。加之おまけに二人の詩人をれて来た。ことに日本婦人がツウルへ来た事はこれが始めであらう」
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「お、お前、吃驚してのう、さあ屹度きつと京の誰かが死んだのに違ひないちて見たら、お前!」
厄年 (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
たしかに小説になる。無信仰の現代に産れて、信仰にあくがれる主人公は面白い、屹度きつと書ける。辰馬が喜びさうな小説が出来よう。尤もこの事に付いては、是迄深く考へもしなかつた。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
屹度きつと従来の誤解を慚愧ざんきなさるに相違ありませんよ——僕はう云ふ好人物をきずつけねばならぬかと思ふと、如何にも自分ながら情なくなつて、いつそ自分の探偵と云ふことを白状して
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
お母さんは若い時には容色きりやうのいゝ方でしたつてね。お醫者さんのお婆さんがよくさう云つてたつて、お米さんが何時か私に話してゐましたよ。私も屹度きつとさうだつたらうと思ひますよ。
母と子 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
本当ほんたうに困るぢやアないかね、わたし義理ぎりあるなかだから小言こごとへないが、たつた一人のにいさんを置去おきざりにしてかへつてるなんて……なに屹度きつと早晩いまにぶらりとかへつてるのがおちだらうが
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
あのふか山岳さんがくおくには屹度きつとなにおそろしいものがひそんでゐるに相違さうゐないとかんがへた。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
上山から魚を買つて夜道すると屹度きつと道が分からなくなるといふこともいはれた。夜更けてから、ほうい、ほうい、といふこゑがその山道あたりから聞こえるのはさうまれなことではなかつた。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
磔刑柱はりつけばしらの上にて屹度きつとおもてもたげ、小さき唇をキリ/\と噛み、美しく血走りたるまなじりを輝やかしつゝ乱るゝ黒髪、さつと振り上げて左右を見まはすうち、魂切たまぎる如き声を立てゝ何やら叫びいだせば
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
わたしはかうしてみなさんにかこまれてゐると、氣持きもちいサナトリウムにでもてゐるやうですよ、私達わたしたちためにも、病院びやうゐんやサナトリウムが設備せつびされてゐたら、此間このあひだくなつたSさんなんか、屹度きつとまた
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
板倉屋のお絹は、その頃御藏前中の人氣者で、下谷淺草中の若い男は、お絹を垣間かいま見るのを、何よりの樂しみにし、板倉屋の前を通る若い男達は、一度は屹度きつとつまづいたとさへ言はれてをりました。
いや、いや、屹度きつと開けぬ積りぢやな。好し、それなら此方こなたにもする術があるぞよ。——(菊枝に。)やいの、女子よ。そなたは少時しばらく此処に待つておぢやれ。——何、此方にもする術があるぢやまで。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
「知らなくつて。それ、其所に木につ掛つて居るのがリツプさ。」と云はれて、リツプは驚き乍ら、人の指ざす方を見れば、成程自分によくた、同じ様に貧乏らしい、屹度きつとまた同じ様に無性な男が
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
愚なる私の心得違こころえちがひさへ無御座候ござなくさふらはば、始終しじゆう御側おんそばにも居り候事とて、さやうの思立おもひたち御座候節ござさふらふせつに、屹度きつと御諌おんいさめ申候事もかなひ候ものを、返らぬ愚痴ながら私の浅はかより、みづからの一生を誤り候のみか
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
あれは屹度きつと物言はぬ幾千年の魚だらう
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
一瞬ののちに、わたしは屹度きつと
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
また子供はチビの圭一郎の因果が宿つて並外れて脊丈が低かつた。子供が學校で屹度きつと一番のびりつこであることに疑ひの餘地はない。
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
「そんぢや、わし蜀黍もろこしかくしてとこ見出めつけあんすから、屹度きつとんにきまつてんだから」といふこゑあとにしてはたけ小徑こみちをうねりつゝつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
『もうないから、萬望どうぞはなして頂戴ちやうだいな』とあいちやんは謙遜けんそんして、『二くちれないわ。屹度きつとそんな井戸ゐどひとくらゐあつてよ』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「この鐘楼しゆろうの石段は屹度きつと一つだけ土にでも埋もれてゐるんぢや無からうか。今一つづつ踏んで居るのに、うしても段拍子だんびやうしに合はない。」
「それはあるわよ……。屹度きつとあるわよ。でなくつちや生きてゐられないもの……。私と同じね……。それで、明日あす貴方行くの?」
アンナ、パブロオナ (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
「だが、私は気になります。私は唐沢さんが自殺しやしないかと思つてゐるのです。何うもやりさうですよ。屹度きつとやりますよ。」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
弦月丸げんげつまるには、めづらしく澤山たくさん黄金わうごん眞珠しんじゆとが搭載とうさいされてます、眞珠しんじゆ黄金わうごんとがおびたゞしく海上かいじやう集合あつまる屹度きつとおそたゝりがあります。