かぎり)” の例文
すべて無邪気な遊戯のかぎりつくしてさかづきを挙げたが、二時間には大風おほかぜの過ぎた如く静まり返つて再び皆アトリエの中に絵筆を執つて居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
この新意匠はおおいに世の好評を博し豊国以後もその門人国貞国政また菊川英山きくかわえいざんら皆これに倣ひて同じ図案を反復する事そのかぎりを知らず。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しかるも我國わがくに財源ざいげんにはかぎりあり、兵船へいせん増加ぞうかにも限度げんどあり、くにおもふの日夜にちや此事このこと憂慮ゆうりよし、えず此點このてんむかつてさくこうじてる。
口の届く所ならむ事も出来る、足の達する領分は引きく事も心得にあるが、脊髄せきずいの縦に通う真中と来たら自分の及ぶかぎりでない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
石畳いしだたみ穿下ほりおろした合目あわせめには、このあたりに産する何とかいうかに甲良こうらが黄色で、足の赤い、小さなのがかずかぎりなくむらがって動いて居る。
星あかり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
銭穀せんこく取扱とりあつかひだけは全く予定した所と相違して、雑人共ざふにんどもは身につけられるかぎりの金銀を身に着けて、思ひ/\に立ち退いてしまつた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
友より得る所にはかぎりがある。故に友に過大の要求をなすべきではない。この事をヨブは今学んだのである。彼は余りに友を信じ過ぎていた。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
合ふさるさの気立けたたましく、肩相摩けんあひましてはきずつき、轂相撃こくあひうちては砕けぬべきをも覚えざるは、心々こころごころに今をかぎりあわて騒ぐ事ありて、不狂人も狂せるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
くささらつちからつてくので次第しだいつちせてく。だから空手からてでは何處どこつても竊取せつしゆせざるかぎり存分ぞんぶんやはらかなくさることは出來できない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
時をえ他の一切のかぎりを超え、己が無窮の中にありて、その心のまゝに己をば諸〻の新しき愛のうちに現はせり —一八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「篠田さん、最早もう決して弱き心は持ちませぬ」と梅子も今は心めつ「何時と云ふかぎりも御座いませぬから、是れでお別れ致します、只今の御一言を ...
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
ひととなれ』とは先生せんせい訓言くんげんでした。ひと碌々ろく/\としてぬべきでない、ちからかぎりつくして、英雄えいゆう豪傑がうけつとなるを本懷ほんくわいとせよとは其倫理そのりんりでした。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
豊前中津なかつ領などの山奥では、材木の運搬を山男に委託することが多かった。もっとも彼ら往来の場処にはかぎりがあるらしく、里までは決して出てこない。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
家の内といふものはさう何から何までしようとしたつてかぎりがないものだからね。——久男ちやん、今度はこのおねえちやんに伴れて来てお貰ひなさいよね。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
以上は紛れもなき事実で、現在これを目撃した人の談話はなしをそのまま筆記したものである、しかしそれが果して池袋の祟であるや否やは勿論保証のかぎりでない。
池袋の怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
たまたま知らぬ地にみ迷ひ足を引きずりてやうやうに夜山を越え山下に宿を乞ひたるなどはこのかぎりにあらず。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
っと風が吹くと路次は六ツかぎりに木戸をしめっちまうんで湯が早く抜けちまっても困らア職人は、の親父は腰が抜けてるてえからおらア可哀想でならねえ
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お登和や、あんまり沢山お盛りでない。もしや大原君の腹の皮が破裂すると大変だ。しかし大原君、君の腹の容積にもかぎりあるだろうが、よくそんなに入るね。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
かつかぎりある士族の内にて互に縁組えんぐみすることなれば、縁に縁を重ねて、二、三百年以来今日にいたりては、士族はただ同藩のよしみあるのみならず、現に骨肉の親族にして
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
遥に/\悠々と拡がつてゐる海や、その上をかぎりなく広大に掩うてゐる秋の朗かな大空を見詰めてゐると、人間の世のあさましさが、しみ/″\と感ぜられて来た。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
第二十八条 日本臣民ハ安寧秩序あんねいちつじょさまたケス及臣民タルノ義務ニそむカサルかぎりおいテ信教ノ自由ヲゆう
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
「限りなしといふ」とは、寿命がかぎり無いというのであるが、この結句は一首の中心をなすものであり、据わりも好いし、恐らく、これと同じ結句は万葉にはほかになかろうか。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
されども人智はかぎり有り、天意は測り難し、あにはからんや、太祖が熟慮遠謀して施為しいせるところの者は、すなわち是れ孝陵こうりょうの土いまだ乾かずして、北平ほくへいちり既に起り、矢石しせき京城けいじょう雨注うちゅうして
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
特にそれが深いと言い得るようになったのは、自分の知れるかぎりではつい近頃の事である。
望岳都東京 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
小生なども其つもりにて、日々勉学いたし候事に候。物書くこともあながち多く書くがよろしきには無之これなく、読む方を廃せざるかぎり休居やすみおり候ても憂ふるに足らずと存じ候。歳暮御忙しき事と御察し申上候。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
(右の方に向き、耳をそばだてて聞く様子にて立ちおる。)何だか年頃としごろ聞きたく思っても聞かれなかった調しらべででもあるように、身に沁みて聞える。かぎりなきくいのようにもあり、限なき希望のようにもある。
ぐればぐるほどなほこひしさのすばかりで、どちらにもかぎりい。
気力次第にわり、両眼自ら見えずなりたれば我今これまでと思いて、自らまなこじなばあるいはこれかぎりなるべし、力の続かんまではと心励まし、がみをなし、一生懸命吹雪に向いて見張みはりしため
お前はこの机に濁った燈火がいぶっているかぎり
越前守殿見られ家持いへもち五兵衞其方は質屋渡世とあるが質物しちもつは何ヶ月限りに貸遣かしつかはすやと申されければ五兵衞は平伏へいふくなし御定法通り八ヶ月かぎりに預り置候と申に越前守殿然らば浪人大橋文右衞門が質物しちもつばかり五ヶ月限りながれにいだせし由是には何か仔細しさいの有ことなるや有體ありていに申立よと云れしかば五兵衞は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
小六にもちょうどそれと同じはばかりがあったので、いられるかぎりは下宿にいる方が便利だと胸をきめたものか、つい一日一日と引越をさきへ送っていた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ひろでもおよかぎり芥子粒けしつぶほどのおほきさの売薬ばいやく姿すがたないで、時々とき/″\けるやうなそらちひさなむし飛歩行とびあるいた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こういう混淆こんこうが個々の方言領の境目に発生することは、単語の運命ともいうべきものであるが、自分の知るかぎりにおいてはそういう入会地いりあいちは数多くあって
鐵車てつしや進歩すゝみ兎角とかくおもはしくない、運轉係うんてんがゝり水兵すいへいも、此時このとき餘程よほど疲勞つかれてえたので、わたくしかんがへた、人間にんげん精力ちからにはかぎりがある、いまからかゝる深林しんりん突進とつしんするのは
其れに支那人の勢力がペナンかぎり此処ここまで及んで居ない所から不潔と悪臭とに満ちた支那人まちまつたく見ないのが好い。流石さすが黒奴くろんぼの本国だけ黒奴くろんぼが威張つて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
はるかに/\悠々とひろがっている海や、その上をかぎりなく広大に掩うている秋の朗かな大空を見詰めていると、人間の世のあさましさが、しみ/″\と感ぜられて来た。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
おつぎは一ぱいんでひよつとふりかへつたときうしろたけはやしつよ北風きたかぜ首筋くびすぢしつけてはゆきつかんでぱあつとげつけられながらちからかぎりあらそはうとして苦悶もがいてるのをた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
数多あまたの学生連に喝采かっさいせられながら、しおれる前に、吸い取られるかぎりの日光を吸い取ろうとしている花のようなヴィルトン夫人に連れられて、南国をさして雪中を立とうとする
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
く水は再びかえらず、魯陽ろようほこは落日を招きかえしぬと聞きたれど、何人も死者を泉下より呼起よびおこすべきすべを知らぬかぎりは、われも徒爾いたずらに帰らぬ人を慕うの女々めめしく愚痴なるを知る
父の墓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
たとへば日雇賃ひようちんにても借家賃しやくやちんにても其外そのほかもの貸借かしかり約束やくそく日限にちげんみないづれも一ウヰークにつき何程なにほどとて、一七日毎ひとなぬかごときりつくること、我邦わがくににて毎月まいつき晦日みそかかぎりにするがごとし。その一七日のとなへごと
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
こは長きも二十行をかぎりとし短きは十行五行あるは一行二行もあるべし。病のひまをうかがひてその時胸に浮びたる事何にてもあれ書きちらさんには全く書かざるには勝りなんかとなり。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
第六十一条 行政官庁ノ違法処分いほうしょぶんリ権利ヲ傷害セラレタリトスルノ訴訟ニシテ別ニ法律ヲもっテ定メタル行政裁判所ノ裁判ニ属スヘキモノハ司法裁判所ニおいテ受理スルノかぎりラス
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
何時の間に貴女あなた其様そんな弱き心におりでした、——先夜始めて新聞社の二階で御面会致した時、貴女と同じ不幸におちいつてるひと、又陥りかけてる女が何千何万ともかぎりないのであるから
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
これ切り参りませんという銭貰いじゃアねえ、金が有ればつかってしまい、なくなれば又借りに来る、れだけの金主きんしゅを見附けたのだから僕の命のあらんかぎりは君は僕を見捨みすてることは出来めえぜ
くらやみに向ひてわれは目を開きぬかぎりもあらぬもののしづけさ
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
かぎりなきあやふさのうちに、二人ふたりかぎりなくうれしくへり。
流石さすがの毒竜の魔力まりきかぎりあれば次第に疲れ
鬼桃太郎 (新字新仮名) / 尾崎紅葉(著)
これをかぎりの命の火2775
……聞く人一しおいたわしく、その姿を見おくりけるに、かぎりある命のうち、入相いりあいの鐘つくころ、しなかわりたる道芝のほとりにして、その身は憂き煙となりぬ。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かくては所詮しょせん、我わざの進まむこと覚束おぼつかなしと、旅店の二階にもりて、長椅子ながいす覆革おおいかわに穴あけむとせし頃もありしが、一朝いっちょう大勇猛心をふるひおこして、わがあらむかぎりの力をこめて
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)