見守みまも)” の例文
それで、かれは、じっとして見守みまもっていました。ふねから、ひとがおりて、みぎわあるいて、ちいさなはこなみのとどかないすなうえにおろしました。
希望 (新字新仮名) / 小川未明(著)
我家の庭に蝿を見るは毎年五月初旬なるを思ひ、茫然ばうぜんとこの蝿を見守みまもること多時、僕の病体、五月に至らば果して旧に復するや否や。
病中雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かたがたわたくしとしてはわざとさしひかえてかげから見守みまもってだけにとどめました。結局けっきょくそうしたほうがあなたのめになったのです……。
彼は笑顔をして、彼女を見守みまもった。彼女は心の底では、自分で言ってるとおりに、今すぐにクリストフと別れたくは少しもなかった。
番頭ばんとう幸兵衛こうべえは、かべ荒塗あらぬりのように汚泥はねがっているまつろうすねを、しぶかおをしてじっと見守みまもった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
しゅねがわくはおんてんよりたまえ、なんじ右手めてもてたまえるこの葡萄園ぶどうぞの見守みまもらせたまえ、おとなたまえ。
決闘 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
塩梅あんばいだ」と宗助そうすけ御米およねかほながらつた。小六ころくもしばらくあによめ樣子やうす見守みまもつてゐたが
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そして、せめてこんや一晩ひとばんは、このおばあさんのなきがらを見守みまもっていてあげようと思いました。
礼子はただがたがたふるえて母を見守みまもっている。母はほとんど正気しょうきうしなってものすさまじく、ただハアハア、ハアハアといきをはずませてる。はっきりと口をきくものもない。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
アデェルを連れて、客間に行くべき時が近づいてるのを、私はをのゝきながら見守みまもつてゐた。
さうして彼女かのぢよなにらずに、婦人達ふじんたち見守みまもられながら、しづかに寢臺車しんだいしやはこばれた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
「こら、なにをいうだ。」とおじいさんは林太郎をまじまじと見守みまもっていましたが
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
ま寂しき父とはめや日あたりを鶉見守みまもりひたぶるに
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
そして、今もしゅうねく彼を見守みまもり続けていた。
「だれだい?」と、少年しょうねんびかけて、その三にんをじっと見守みまもりました。すると、一人ひとりとしちゃんで、一人ひとりしょうちゃんでありました。
町の天使 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それでも彼女は、クリストフがなすことや書くものをいっそうの注意で見守みまもった。様子にはそれと見せずに、好んで兄にその話をさした。
わしじつはそなたのこえましたのじゃ。』と良人おっとはじっとわたくし見守みまもながらポツリポツリかたしました。
ここぞとばかり、いきせきってけた群衆ぐんしゅう苦笑くしょうのうちに見守みまもっていたのは、飴売あめうり土平どへいだった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
わたしはたけ落葉おちばうへに、やつとからだおこしたなり、をつとかほ見守みまもりました。が、をつといろは、すこしもさつきとかはりません。やはりつめたいさげすみのそこに、にくしみのいろせてゐるのです。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ほかの商人たちは、このあきないがどうなることかと、じっと見守みまもっていました。
兎角とかくするうちやく時間じかんつた。醫者いしやはしばらく經過けいくわかうとつて、夫迄それまで御米およね枕元まくらもとすわつてゐた。世間話せけんばなし折々をり/\まじへたが、大方おほかた無言むごんまゝ二人共ふたりとも御米およね容體ようだい見守みまもことおほかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ま寂しき父とはめや日あたりを鶉見守みまもりひたぶるに
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
清吉せいきちは、じっさいについて、これをろうと、すこしはなれた電柱でんちゅうのところにって、往来おうらい人々ひとびとのようすを見守みまもったのでありました。
考えこじき (新字新仮名) / 小川未明(著)
くびには黒い襟巻えりまきひしとまとい、白い髪をし、若々しい眼で自分をやさしく見守みまもり、寛容にゆったりと落ち着いてる母の、その顔をながめていた。
まつろうは、きつねにつままれでもしたように、しばし三日月みかづきひかりいてたおせんの裸像らぞうを、春重はるしげ写生帳しゃせいちょうなか凝視ぎょうししていたが、やがてわれかえって、あらためて春重はるしげかお見守みまもった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
そうわれておどろいてかえってると、甲冑かっちゅうけた武将達ぶしょうたちだの、高級こうきゅう天狗様てんぐさまだのが、数人すうにんしたたたずみて、笑顔えがお私達わたくしたち様子ようす見守みまもってられましたが、なかでもつよわたくしいたのは
あざみは、なまずのくるしみつづけた最後さいご見守みまもりました。その晩方ばんがた、なまずは、しろはらしたきり、もうなおりませんでした。
なまずとあざみの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
クリストフは珍しげに、透き通った皮膚の下に小さなおののきの過ぎるのが見えている、その変わりやすい顔を見守みまもった。
小太郎こたろうは、自分じぶんばれたので、びっくりしました。きゅうには、返事へんじができなくて、だまって、っておんな姿すがた見守みまもっていますと
けしの圃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかしクリストフは、遠くから自分を見守みまもっていてくれて、将来自分の生活中に大なる場所を占むることとなる、この純朴じゅんぼくな愛情の存在を知らなかった。
その父親ちちおやは、手間てまがとれても、子供こどもくままにまかせて、ぼんやりまって、それを見守みまもっていることもありました。
幾年もたった後 (新字新仮名) / 小川未明(著)
彼は自分を見守みまもってる彼女の皮肉な眼つきを感じた。彼は真面目まじめに心配しだした——彼ら二人のために心配しだした。彼らを疑ってはいなかった。彼はまた立上った。
そのあわただしい景色けしきこころうばわれるでもなく、せい一は、ゆっくり、ゆっくり、おかいこを見守みまもりながら、みちあるいてきました。
芽は伸びる (新字新仮名) / 小川未明(著)
果たして笑い声が聞こえた。客間の奥をながめると、皮肉な憐憫れんびんの言葉をそばの人たちとかわしながら喧嘩けんか見守みまもってる姫の姿が、霧の向こうにあるようにぼんやり眼にはいった。
B坊ビーぼうは、うえいて、せみを見守みまもりながら、身動みうごきもせず、じっとしていました。せみは、つづけて、ミン、ミン、ミン——ときました。
町の真理 (新字新仮名) / 小川未明(著)
サウルは騒ぎたつ胸の動悸どうきを押えながら、寝そべってる少年のそばへ無言で近づいていった。なお無言のまま少年を見守みまもった。そのかたわらにすわって、この牧童の頭に熱い手をのせた。
をまわしてゆく少年しょうねん姿すがたは、やがてしろみちほうえてしまいました。けれど、太郎たろうはいつまでもって、その行方ゆくえ見守みまもっていました。
金の輪 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのなやましげな顔には、なんともいえぬ誠実せいじつさが見えていた。クリストフは頬杖ほおづえをついて、彼を見守みまもりはじめた。もうよるになりかかっていた。ゴットフリートのかおは少しずつえていった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
旅人たびびとは、不思議ふしぎなことをくものだとおどろいて、うつくしいおんな横顔よこがおをしみじみと見守みまもりました。ちょうど、そのとき、あちらから
島の暮れ方の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
このとき、としちゃんは、一人ひとりだけ、まどそとで、つばめが自由じゆうに、あおそらびまわっているのを、じっと見守みまもってかんがえていたのであります。
白い雲 (新字新仮名) / 小川未明(著)
このとき、これにたいして、あちらにかがやいているちいさなほしがいいました。このほしは、終夜しゅうやした世界せかい見守みまもっている、やさしいほしでありました。
ある夜の星たちの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
このとき、無頓着むとんちゃくいしは、だまってねむっていました。小鳥ことりは、そのいしあたまで、くちばしをみがきました。そして、はな見守みまもって
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「もうおどろくことはない。おまえをくるしめたかぜとおくへってしまった。これからあとは、わたしがおまえを見守みまもってやろう。」と、太陽たいようはいいました。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
ちょうど、あちらから、二人ふたりのようすを見守みまもっている天使てんしのように、少年しょうねんには、なつかしく、とうとく、おもわれたのでした。
街の幸福 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いさむくんは、こういいました。賢二けんじくんは、だまって、ただ、ねずみのわたるのを身動みうごきもせずにじっと見守みまもっていました。
ねずみの冒険 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのいくばくもなくして、おばあさんは、やすらかに、息子むすこや、まごたちに見守みまもられて、平和へいわにこのからられました。
おばあさんとツェッペリン (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして英霊えいれい永久えいきゅうきていて、自分じぶんたちを見守みまもっていてくださるのだ。だからさびしくないとしんじていたのでした。
夕焼けがうすれて (新字新仮名) / 小川未明(著)
ちょうど母親ははおやは、だまって、じっとこちらをつめて、うえ見守みまもっているようにおもわれたのでありました。
牛女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すこしはなれて、監督かんとくらしい役人やくにんが、茶色ちゃいろ帽子ぼうしかぶり、ゲートルをいて、さくらしたって見守みまもっていたのです。
汽車は走る (新字新仮名) / 小川未明(著)
このさまると、あまりのおどろきに、少年しょうねんこえをたてることもできず、おどろきのまなこをみはって、いっしょうけんめいにその光景こうけい見守みまもっていました。
眠い町 (新字新仮名) / 小川未明(著)