ちゃ)” の例文
写真入しゃしんいれとなったバスケットは、ちゃのたなのうえかれたのでした。平常ふだんは、だれも、それにをつけるものもなかったのです。
古いてさげかご (新字新仮名) / 小川未明(著)
気が置けなくて、僕などには行きやすい。僕は行くといつも芋を百匁がとこ食べて、ほうちゃの熱いやつを大きな湯呑にお代りをする。
落穂拾い (新字新仮名) / 小山清(著)
って、ちゃがまに水をくみれました。すると小さなちゃがまのくせに、いきなりおけに一ぱいの水をがぶりとんでしまいました。
文福茶がま (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
かれ生活せいかつはかくのごとくにしていた。あさは八き、ふく着換きかえてちゃみ、それから書斎しょさいはいるか、あるい病院びょういんくかである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ちゃくわと二方をしきった畑の一部を無遠慮に踏み固めて、棕櫚縄しゅろなわ素縄すなわ丸太まるたをからげ組み立てた十数間の高櫓たかやぐらに人は居なかった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
太夫たゆう、お待遠まちどおさまでござんしょうが、どうかこちらへおいでなすって、おちゃでも召上めしあがって、おちなすっておくんなまし」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
彼は倭文子の同意を得て、おちゃみずの「開化かいかアパート」を訪ねた。そこに有名な素人探偵、明智小五郎あけちこごろうが住んでいたのだ。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
どろどろして灰色に見える小さな縦縞たてじまのある白い単衣ひとえを着た老人は、障子しょうじを締めてよぼよぼと来てちゃだいの横に坐った。
藍瓶 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そんならその干菓子でないほうの、今いう生菓子なまがしをなんといったかというと、百年前までの日本語はおちゃであった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
松平紀義まつだいらのりよしのおちゃみず事件で有名な御世梅ごせめこのという女も、かつてこの二階にいたと云うことを、十幾年の後に知った。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
お政はきゅうにやとい女をんで灯明とうみょうめいじ、自分はちゃ用意よういにかかった。しとしとと雨はる、雨落あまおちの音が、ぽちゃりぽちゃりとちはじめた。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
しかし、そのおおきさは矢張やはり五すんばかり蒼味あおみがかったちゃっぽい唐服からふくて、そしてきれいな羽根はねやしてるのでした。
彼女かのじょべつわるかおもせず、ただそれをながしたままでいえもどってみると、ちゃ障子しょうじのわきにはおはつ針仕事はりしごとしながら金之助きんのすけさんをあそばせていた。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
こうなじるようにいって葉子が座につくと、倉地は飲み終わったちゃわんを猫板ねこいたの上にとんと音をたてて伏せながら
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
小野田は昨夜ゆうべも自分たちの寝室ねまにしているちゃで、二人きりになった時、そう言ってお島をなじったのであったが、今朝もやっぱりそれを気にしていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
学校も始めはおちゃみずでしたが、上野うえのになり、ひとばしに移って行き、その間に校長も先生もたびたび代ります。平田盛胤もりたねという若い国語の先生が見えました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
ちゃをかけて、じゃぶじゃぶと四、五はいのめしをかッこみ、ころあいをはかって、ソッと戸外おもてへ飛びだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は非常に驚いてこの子供の知識の出所を聞きただしてみると、それがおちゃみずで開かれたある展覧会で見たアルコールづけの標本から得たものである事がわかった。
芝刈り (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「いやにおちゃがつてるよ、生意気な。」と、軽く其のつむりてのひらたたぱなしに、広前ひろまえを切れて、坂に出て、見返りもしないで、てやがて此の茶屋にいこつたのであつた。——
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
にわにいっぱいひとがいて、おれのふえくらいのおおきさのお釈迦しゃかさまに、あまちゃをかけておりました。おれもいっぱいかけて、それからいっぱいましてもらってました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「御覧なさい、中佐殿。おちゃみずほりの中から、何か、キラキラひらめいているものがあります」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わかい白ぎつねの貴婦人きふじんのあいだに、ささやかなおちゃかいがひらかれることもありません。雪の女王の広間は、ただもうがらんとして、だだっぴろく、そしてさむいばかりでした。
「なんだ、たったそれっきりかい。おれにとっちゃ、そんなこたあ、おちゃだ。」
われ知らず口に出た喜左衛門へ、女房がちゃへはいってきて受け答えをした。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それでいて、ちゃほかの電気はそんな事はないので、はじめ怪しいと思ったのも、二度目、三度目には怖気おじけがついて、オイもうそう、何だか薄気味が悪いからとしたくらいでした。
薄どろどろ (新字新仮名) / 尾上梅幸(著)
エ、ペンペン草で一盃いっぱい飲まされたのですか、と自分が思わずあきれて不興ふきょうして言うと、いいサ、かゆじゃあ一番いきな色を見せるというにくくもないものだから、と股引氏はいよいよ人をちゃにしている。
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
六畳の方はちゃに当てたのである、転居した当時は、私の弟と老婢ろうひとの三人であったが、間もなく、書生が三人ばかり来て、大分にぎやかにった、家の内は、ずこんな風だが、庭はぜん云った様に
怪物屋敷 (新字新仮名) / 柳川春葉(著)
わたくしは梯子段はしごだんを上りかけた時、そっと奥の間をのぞいて見ると、箪笥たんすちゃだい、鏡台、長火鉢、三味線掛などの据置かれた様子。さほど貧苦の家とも見えず、またそれほど取散らされてもいない。
寺じまの記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
いまもう一つの木はちゃの木で、これもまた十分に採集した。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
ちゃかした顔とそしるも有り公平の判断は上向けば愛嬌顔
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
わたしは、ちゃわんのなかをのぞくと、しろいらんのはながぱっとひらいて、わすれがたいかおりがしたのです。これをた、わたしむねはとどろきました。
らんの花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「それみろ。やっぱりただのちゃがまだ。くだらないことをって、せっかくいい心持こころもちにているところをこしてしまった。」
文福茶がま (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
みなはまたしばしもくしてしまう。そのうちちゃる。ドクトル、ハバトフはみなとの一ぱんはなしうちも、院長いんちょうことば注意ちゅういをしていていたが突然だしぬけに。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
三四にん先客せんきゃくへの遠慮えんりょからであろう。おきぬがちゃみにってしまうと、徳太郎とくたろうはじくりと固唾かたずんでこえをひそめた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
だから君は駄目だめだよ。世の中の隅々すみずみを知らないのだよ。そんなクラブなんかおちゃさ。この東京には、まだまだもっとひどいものだってあるよ。
覆面の舞踏者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それで階下したへおりてみると、下は立込んだひさし差交さしかわしたあいだから、やっとかすかな日影がちゃの方へれているばかりで、そこにも荷物が沢山入れてあった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
左様さよういろで一ばんよくわかる。最初さいしょうまれたての竜神りゅうじんみなちゃッぽいいろをしてる。そのぎはくろ、その黒味くろみ次第しだいうすれて消炭色けしずみいろになり、そして蒼味あおみくわわってる。
岡は上手じょうずに入れられた甘露かんろをすすり終わったちゃわんを手の先にえて綿密にその作りを賞翫しょうがんしていた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
ってとうさんがちゃかっている柱時計はしらどけいころは、その時計とけいはりが十していた。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
もっとめずらしいのは、後にいうちゃと同様に、早朝のかんたんな食事をそういっている村もあることである。しかしこの最後のものだけは思いちがいと言ってよい。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その駿河台の、ややおちゃみずりの一角に、「戸波となみ研究所」と青銅製の門標もんひょうのかかった大きな建物があった。今しも、そこの扉が、外に開いて、背の高い若い男が姿を現わした。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ふたりはていねいにこしをかがめてそこへはいり、おいをおろしてちゃ馳走ちそうになった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
午後万歳の声を聞いて、あわてゝ八幡はちまんに往って見る。最早もう楽隊がくたいを先頭に行列が出かける処だ。岩公は黒紋付の羽織、袴、靴、ちゃ中折帽なかおれぼうと云うなりで、神酒みき所為せいもあろう桜色になって居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
海蔵かいぞうさんは、こんなにかかったひとあらそってもしかたがないとおもって、しゃっくりにきくおまじないは、ちゃわんにはしを一ぽんのせておいて、ひといきにみずをのんでしまうことだとおしえてやりました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
市ヶ谷八幡はちまんの桜早くも散って、ちゃ稲荷いなりの茶の木の生垣いけがき伸び茂る頃、濠端ほりばたづたいの道すがら、行手ゆくてに望む牛込小石川の高台かけて、みどりしたたる新樹のこずえに、ゆらゆらと初夏しょかの雲凉しに動く空を見る時
宇治うじちゃどころ
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
なんというか、まだ、江南こうなんはるらないけれど、このちゃをすするときに、ゆめのような風景ふうけい恍惚こうこつとして想像そうぞうするのでありました。
らんの花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すると、しばらくしておしりがあたたまってくると、ちゃがまはだしぬけに、「あつい。」とって、いろりのそとへとびしました。
文福茶がま (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
さァさた、こっちへおいで、たかやすいの思案しあん無用むよう思案しあんするなら谷中やなかへござれ。谷中やなかよいとこおせんの茶屋ちゃやで、おちゃみましょ。煙草たばこをふかそ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
中食後ちゅうじきごミハイル、アウエリヤヌイチはちゃを四半斤はんぎんと、マルメラドを一きん持参って、かれところ見舞みまいた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)