比較的ひかくてき)” の例文
然し此の数年来すうねんらい賭博風とばくかぜは吹き過ぎて、遊人と云う者も東京に往ったり、比較的ひかくてき堅気かたぎになったりして、今は村民一同真面目まじめに稼いで居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しかししつ比較的ひかくてきひろつくられるのが通常つうじようであるから、みぎのようなものゝちてさうな場所ばしよからとほざかることも出來できるであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
しか比較的ひかくてき※去くわこの三ねんわたくしためにはしのやすかつたよ、イヤ、其間そのあひだには隨分ずゐぶん諸君しよくんには想像さうざう出來できないほど面白おもしろこと澤山たくさんあつた。
なにじつふと、二十ねんも三十ねん夫婦ふうふしわだらけになつてきてゐたつて、べつ御目出度おめでたくもありませんが、其所そこもの比較的ひかくてきところでね。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
勘次かんじ開墾かいこん手間賃てまちん比較的ひかくてき餘計よけいあたへられるかはりにはくぬぎは一つもはこばないはずであつた。彼等かれら伴侶なかまはさういふことをもつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
振分ふりわけにして、比較的ひかくてきかるさうなのをかついでると、おもいのおもくないのと、おはなしにならぬ。肩骨かたぼねはメリ/\ひゞくのである。
そそぎ出すに用ゐたりと見ゆる土噐唇にれたりと見ゆる土噐の容量ようりやう比較的ひかくてきに小なるは中に盛りたる飮料ゐんれう直打ねうち湯水よりはたふときに由りしならん。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
いはゆる文化的都市ぶんくわてきとし發達はつたつすればするほど、災害さいがい慘憺さんたんとなる。したがつて震災しんさいたいしても防備ばうびかんがへがこる。が、これも比較的ひかくてきあたらしい時代じだいぞくする。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
源吉げんきちは、かぜ比較的ひかくてきたらない、北窓きたまどけてそらあおぐと、地球ちきゅううごくように、黒雲くろくもがぐんぐんとながれている。
台風の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
くはしくいふと森林しんりんなか比較的ひかくてき濕氣しつきおほく、温度おんどひくく、しげつてゐますから、水分すいぶん蒸發じようはつすることもすくない。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
一體いつたい貝類かひるい動物中どうぶつちゆう比較的ひかくてきはやかたちへやすいものでして、しゞみでもむかしのものは今日こんにちよりはかたちおほきかつたのです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
一度作って封じてしまう場合は話は比較的ひかくてき楽であるが、研究の場合は何遍なんべんでも装置を作りかえて
実験室の記憶 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
外國ぐわいこく金利きんり數年來すうねんらい比較的ひかくてきたかいのに、日本にほん金利きんり昭和せうわねん以來いらい異常いじやうやすいのであるから金解禁きんかいきん出來でき爲替相場かはせさうば安定あんていしたならば日本にほん資金しきん外國ぐわいこく流出りうしゆつするであらう
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
ねえきみ病院びやうゐん比較的ひかくてき食物しよくもつし、看護婦かんごふはゐる、エウゲニイ、フエオドロヰチもゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
境遇きょうぐうのためにげきせられて他の部よりも比較的ひかくてきに発展したものであろうか。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
池上いけがみ本門寺の下寺の庭、馬込界隈かいわい百姓家ひゃくしょうやの庭、大森は比較的ひかくてき暖かいので芭蕉を植えるのに、育ちも悪くはないから、こくめいにさがし歩いてあそこで一本、ここで二本というふうにけてもらったり
生涯の垣根 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
彼女かのじよ比較的ひかくてき自由じゆう日本語にほんご色々いろ/\のことをはなしかけた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
これはその山體さんたいつくつてゐる岩石がんせき玄武岩げんぶがん)の性質せいしつるものであつて、そのけてゐるさい比較的ひかくてき流動りゆうどうやすいからである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
鹹水かんすい貝塚は元來ぐわんらい海邊かいへんに在るべきものなれど年月のつに從ひ土地隆起とちりうきの爲、海水退きて其位置比較的ひかくてき内地に移る事有り。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
いし自由じいうになるところだけに、比較的ひかくてきおほきなのが座敷ざしき眞正面ましやうめんゑてあつた。其下そのしたにはすゞしさうなこけがいくらでもえた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いでやつべかぢい火鉢ひばちそば與吉よきち藥罐やくわんけた。卯平うへい與吉よきちのするがまゝまかせた。卯平うへい比較的ひかくてき悠長いうちやう茶碗ちやわんはしぜた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かん支那しな建築けんちく木材もくざいせんいしとの混用こんようであるが、これもにおける木材もくざい比較的ひかくてき貧少ひんせうであるのと、石材せきざいおよせんてきする材料ざいれう豊富ほうふであるがためである。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
何故なぜかとへば航海中かうかいちゆうふね動搖どうえうかんずること比較的ひかくてきすくないためで、このへや占領せんりやうするためには虎鬚とらひげ獨逸人ドイツじんや、羅馬風ローマンスタイルはなたか佛蘭西人等フランスじんとう隨分ずゐぶん競爭者きようそうしや澤山たくさんあつたが
ねえきみ病院びょういんはまだ比較的ひかくてき食物しょくもつはよし、看護婦かんごふはいる、エウゲニイ、フェオドロイチもいる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
いてふには比較的ひかくてきひろいがあるが植物學上しよくぶつがくじようでは、やはり針葉樹しんようじゆなかにはひるのです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
ははねこは、こうねこにさとしたのでした。たかいえにはさまれて、目立めだたない平家ひらやは、比較的ひかくてきかぜもあたらなければ、すと、ブリキ屋根やねから陽炎かげろうちそうなもありました。
どこかに生きながら (新字新仮名) / 小川未明(著)
それゆゑにかような場合ばあひおいては、屋外おくがいることを斷念だんねん屋内おくないおい比較的ひかくてき安全あんぜん場所ばしよもとめることがむし得策とくさくであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
百姓ひやくしやうにしては比較的ひかくてきちひさなれたかとおもほどぽつりとふくれて、どれほどかしつかんでもけつして肉刺まめしやうずべきでないことをあきらかにしめしてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
文庫ぶんこなかかられた、手紙てがみ書付類かきつけるゐが、其所そこいらに遠慮ゑんりよなくらばつてゐるなかに、比較的ひかくてきながい一つうがわざ/\二しやくばかりひろげられて、其先そのさき紙屑かみくづごとまるめてあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
とら比較的ひかくてきおろか動物どうぶつで、憤然ふんぜんをどらして、鐵車てつしや前方ぜんぽうから飛付とびついたからたまらない、おそ旋廻圓鋸機せんくわいえんきよきのために、四肢しゝや、腹部ふくぶ引裂ひきさかれて、苦鳴くめいをあげて打斃うちたをれた。もつと狡猾こうくわつなるは猛狒ゴリラである。
ハワイの火山かざんのように海底かいていからあがつて出來できたものは、鎔融状態ようゆうじようたいおい比較的ひかくてき流動りゆうどうやす性質せいしつつてゐることは、まへにもべたところであるが
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
引き受けた以上は赴任ふにんせねばならぬ。この三年間は四畳半に蟄居ちっきょして小言はただの一度も聞いた事がない。喧嘩もせずに済んだ。おれの生涯のうちでは比較的ひかくてき呑気のんきな時節であった。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さうしてこの水田すいでん東西南とうざいなん三方さんぽう比較的ひかくてきかた地盤ぢばんもつかこまれてゐる。かういふ構造こうぞう地盤ぢばんであるから、地震ぢしん比較的ひかくてきはげしかつたであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
目の前に比較的ひかくてき大きな師範生が、十五六の中学生と組み合っている。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
休息きゆうそく間隔かんかく比較的ひかくてきとほいが、一度いちど活動かつどうはじめるとなか/\はげしいことをやる。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)