あり)” の例文
だから能の字の下に列火が無いのであるが、その癖に物の真似がトテモ上手で世界中にありとあらゆるものの真似をするというのです。
能とは何か (新字新仮名) / 夢野久作(著)
借る程の者なれば油斷ゆだんならざる男なりと言れし時三郎兵衞はギヨツとせし樣子やうすを見られしが又四郎右衞門は身代しんだい果程はてほどありこまつた事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
結構けつこうらしい、ことばかりおもひます、左樣さういふことおもふにつけて現在げんざいありさまがいやいやで、うかして此中このなかをのがれたい、此絆このきづなちたい
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
十六の時置去にしたお賤はどうしたかと案じていても、親子でありながら訪ねる事も出来ないというのはみんなばちと思って後悔しているのだよ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それはさうと、子供の鼻を食べさうにした魚のはなしをおききになつたことがあり升か。有升まいネ、わたくしは聞いたことがあるんですよ。
鼻で鱒を釣つた話(実事) (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
代匠記には「中大兄ハ天智天皇ナレバみことトカ皇子みこトカありヌベキニヤ。傍例ニヨルニもっともあるベシ。三山ノ下ニ目録ニハ御ノ字アリ。脱セルカ」
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
殊に最後の一篇は嫉妬のおににならんと欲せる女、「こはありがたきおつげかな。わがぐわん成就じやうじゆとよろこび、其まま川へとび入りける」
案頭の書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かれ平凡へいぼんぶんとして、今日こんにちまできてた。聞達ぶんたつほどかれこゝろとほいものはなかつた。かれはたゞありまゝかれとして、宜道ぎだうまへつたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
親譲りの財産でもないかぎり、またありあまった収入の道があって体が暇な人がするお道楽なら知らず、食べないで働けるものではありません。
平塚明子(らいてう) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
『これ——もうすこし起きておいでなさいよ。他様ひとさまが見て笑ふぢやありませんか。』と叱るやうに言つた。奥様は引取つて
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
と云って、羽田の悪酒を詰めるでもありませんから、船中ではありでもかじりましょう。食いさしを川の中へ捨てると、蝕歯むしばの痛みがとま呪法まじないでね
悪因縁の怨 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
こうむりましょう、はゞかりながら私しは其様な馬鹿でも無ければ嘘つきでもありません自分の言う事くらいは心得ておりますから
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
買物かひものにゆきてはうが、(こんね)で、みせ返事へんじが(やあ/\。)かへときつたはうで、ありがたうぞんじます、は君子くんしなり。——ほめるのかい——いゝえ。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
玉のかいなは温く我頸筋くびすじにからまりて、雲のびんの毛におやかにほほなでるをハット驚き、せわしく見れば、ありし昔に其儘そのままの。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
かくてその年もくれて翌年よくとしの二月のはじめ、此弥左ヱ門山にいりたきゞを取りしかへるさ、谷におちたる雪頽なだれの雪のなかにきは/\しくくろものありはるかにこれを
その西の山際に海地獄とて池あり。熱湯なり。広さ二段ばかり。上の池より湧きいず。上の池広さ方六間許けんばかり。そのへん岩の色赤し。岩の間よりわきず。見る者恐る。
別府温泉 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
意味を考えることは別問題としてありままだけをお伝えする。これが鐘のひびきと女の死というような『上野の鐘』の大略たいりゃくで、十二時を報じた時の鐘であったという。
白い光と上野の鐘 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)
我が抜苦ばつく与楽よらく説法せつぱううたがふ事なく一図いちづありがたがツて盲信まうしんすれば此世このよからの極楽ごくらく往生おうじやうけつしてかたきにあらず。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
余は「歌念仏」を愛読するのあまり、其女主人公に就きて感じたるところをありまゝに筆にせんとするのみ。
「歌念仏」を読みて (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
兼て不快の底意これあり候とも、働の節互に助け合い急を見継ぎ、勝利のまったきところをもっぱらに相働べきこと。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
先生せんせい生活せいくわつけつして英雄えいゆう豪傑がうけつふうではありません、けれども先生せんせいまこと生活せいくわつをしてゐるのです、先生せんせいけつして村學究そんがくきうらしい窮屈きゆうくつ生活せいくわつ、ケチ/\した生活せいくわつはしてません
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
何しろ米の出來るくににゐる田舎者ゐなかものが、こめの出來ない東京へ來て美味うまめしあり付かうとするんだからたまらん………だから東京には塵芥ごみが多い。要するに東京は人間の掃溜はきだめよ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
ソリャ出すがかろう、薩藩人が爾う云うならありのまゝにあかして渡してるが宜かろう、マサカ殺しもしなかろうと云うので、ソコで始めて決断して清水の方から薩人に通知して
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
自分の子たちもさういふしつけのい育て方をしましたので、二人の子達も子供らしい遊びもいたづらも相当に居乍いながらよく子供にありがちな肉体的な暴露などはありませんでした。
秋の夜がたり (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
昨日きのふ小膽せうたんつたことも、つきさへも氣味きみわることも、以前いぜんにはおもひもしなかつた感情かんじやうや、思想しさうありまゝ吐露とろしたこと、すなは哲學てつがくをしてゐる丁斑魚めだか不滿足ふまんぞくことふたことなども
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
今、御一同が、とにかく藩邸へ駈け戻って、ありまま、源吾殿まで、御相談に参った。死ぬにしても、それからにせい。それからなら、われわれも止めはせぬ。われわれとても、お咎めを
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
端無はしなく彼は憶起おもひおこして、さばかりはありのすさびに徳とも為ざりけるが、世間に量り知られぬ人の数の中に、誰か故無くして一紙いつしを与ふる者ぞ、我は今へいせられし測量地より帰来かへりきたれるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
私達がこうして、暮らしているのもみんな神様のおかげだ。このお山にお宮がなかったら、蝋燭が売れない。私共はありがたいと思わなければなりません。そう思ったついでに、お山へ上ってお詣りを
赤い蝋燭と人魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
近頃は自然主義とか云って、何でも作者の経験した愚にも附かぬ事を、いささかも技巧を加えず、ありの儘に、だらだらと、牛のよだれのように書くのが流行はやるそうだ。い事が流行はやる。私も矢張やっぱり其で行く。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
恰度ちょうど、童子が亡くなりましてから七日目に、年来知っております山樵がわたくしの家へたきぎはこんでまいりまして、そして阿闍利さまが世にも恐ろしいありさまでおられることを知ったのでございます。
あじゃり (新字新仮名) / 室生犀星(著)
どうにかしてこの生をありのままに領略しなくてはならない。ルソオのように、自然に帰れなどと云ったって、太古と現在との中間の記憶は有力な事実だから、それを抹殺まっさつしてしまうことは出来ない。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
かか怪異あやしみを見てただ怖い怖いとふるえているばかりが能でもあるまい、の怪しい形のありのままを筆にのぼせて、いかにれが恐しくあったかと云う事を他人ひとにも示し、また自分の紀念きねんにも存して置こうと
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
私はヌックと立ち上ると、おへそありったけの力を入れました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「おまえさんは、これからなにか、きゅう御用ごようがおありかの」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
自然はありのままでいるが好い。わたしは構わない。
七くさやそこにありあふ板のきれ 吏全
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
春雨や暮れなんとして今日もあり
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
もがけばとて只一本の道であり
鶴彬全川柳 (新字旧仮名) / 鶴彬(著)
静子はありの儘に答へた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
たゞ何事なにごとはづかしうのみありけるに、しもあさ水仙すいせんつくばな格子門かうしもんそとよりさしきしものありけり、れの仕業しわざるよしけれど
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
五八も驚きしつかといだは若旦那にてありしか私し事は多く御恩ごおんあづかり何かと御贔屓下ごひいきくだされし者なれば先々まづ/\わけあとの事手前の宿やどへ御供を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
蚯蚓みみずに団子………。さやう、それからなまの肉類。エー、それに同じ魚で自分よりさいのを食べるものが多いといふことを知つておいでのおありませう。
鼻で鱒を釣つた話(実事) (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
さればこそあまたたびの対面に人げなき折々はそのことゝもなく打かすめてものいひかけられしこともありしが、知らず顔につれなうのみもてなしつるなり。
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
かくてその年もくれて翌年よくとしの二月のはじめ、此弥左ヱ門山にいりたきゞを取りしかへるさ、谷におちたる雪頽なだれの雪のなかにきは/\しくくろものありはるかにこれを
皆さんの方から又、用事でもあつて穢多の部落へ御出おいでになりますと、煙草たばこ燐寸マッチんで頂いて、御茶はありましても決して差上げないのが昔からの習慣です。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
岩田屋いはたや御夫婦ごふうふが心配して、なにまつさんだつてうちかへればあねさんに小言こごとはれるから、かへつてるにちがひない、なに彼奴あいつぜにつてゐる気遣きづかひはありませんから
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
長塚君の書き方は何処迄どこまでも沈着である。其人物は皆ありままである。話の筋は全く自然である。
と案じける時、前句に声の字ありて、音の字ならず、依て作りかへたり、須磨の鼠とまでは気をめぐらし侍れども、一句連続せざるとのたまへり。予が云、是須磨の鼠よりはるかにまされり。
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あれ程ありし雪も大抵はきえ仕舞しまいました、此頃このごろの天気のさ、旅路もさのみ苦しゅうはなし其道そのみち勉強のために諸国行脚あんぎゃなさるゝ身で、今の時候にくすぶりてばかり居らるるは損という者
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
背中から腰へ掛け紫色に叩かれた痕や擦剥すりむいた傷の有るのは梯子段の所為せい、頭の凹込は丸い物の仕業、決して殺した支那人が自分の手で斯う無惨な事をしたのではありません、何うです
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)