)” の例文
まともに算盤そろばんを取られると、向う一ヶ年位は、一銭の月給も受取れないことになって居るという、驚くき事実を発見するでしょう。
笑う悪魔 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
周囲は草原であるのに、此処ここだけが花崗岩の霉爛ばいらんした細沙と粘土との露出地である為に、この驚くき霜柱を生じたものと想われる。
秋の鬼怒沼 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
親類の子供もわたくしの家には寄りつかないようになっているから、今では結局はばかるものはない。ただひとり恐るきは操觚そうこの士である。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
自分じぶん大学だいがくにいた時分じぶんは、医学いがくもやはり、錬金術れんきんじゅつや、形而上学けいじじょうがくなどとおな運命うんめいいたるものとおもうていたが、じつおどろ進歩しんぽである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ほ一層の探索と一番の熟考とをげて後、きたくは再び来らんもおそからず、と失望のうち別に幾分の得るところあるをひそかに喜べり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
成るく人目にかからぬように毎晩服装を取り換えて公園の雑沓ざっとうの中をくぐって歩いたり、古道具屋や古本屋の店先をあさまわったりした。
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
其証拠とも云うきは寝床の用意既に整い、寝巻及び肌着ともに寝台のわきいだしあり枕頭まくらもとなる小卓ていぶるの上には寝際ねぎわのまん為なるべく
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
ひるに謀反を以てしたのではあるから、「虚言を心中に巧みにし」と将門記の文にある通りで、将門の罪せらるき理拠は無い。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
第二 毎日まいにち食餌しよくじ三度さんどかぎり、分量ぶんりやうさだし。夜中やちゆう飮食いんしよくせざるをもつともよしとす。たゞし食後しよくご少時間しばらく休息きうそく運動うんどうはじむべきこと
養生心得草 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
闔廬かふろいはく、『こころみに婦人ふじんもつてすきか』と。いはく、『なり』と。ここおいこれゆるす。宮中きうちう美女びぢよいだし、百八十にんたり。
それを世間一般は、どう云ふ量見か黙殺してしまつて、あのあはれぢよ主人公をさも人間ばなれのした烈女であるかの如く広告してゐる。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
とほりまがつて横町へて、成るく、はなし為好しいしづかな場所を撰んで行くうちに、何時いつ緒口いとくちいて、思ふあたりへ談柄だんぺいが落ちた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
うめ手洗鉢ちょうずばちじゃあるまいし、乃公を叩いたって森川さんが帰って来るものか。けれども此は一のかなしき過失に外ならない。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
弦月丸げんげつまるには、めづらしく澤山たくさん黄金わうごん眞珠しんじゆとが搭載とうさいされてます、眞珠しんじゆ黄金わうごんとがおびたゞしく海上かいじやう集合あつまる屹度きつとおそたゝりがあります。
いにしえ曾子そうしのいわく「もって六尺の孤を託すし、以て百里の命を寄す可し、大節に臨んで奪う可からず、君子人か君子人なり」と。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
ナリン殿下薨去ノ趣前掲通牒ノごとクナレドモ、御遺骸移送ニ際シテハ特ニ慎重ナルキ旨、イキトス号船長ヨリノ無電ニ接ス。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
この時期はけ早く通過すべきである。日本探偵小説の如何に長くこの時期にウロツイていることか。笑うきである。
思ったままを! (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あるいはそれが原因と成ッて……貴嬢にはどうかはしらんが……私のめにはもっとむべき尤もかなしき結果が生じはしないかと危ぶまれるから
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
一 れ女子は男子に等しく生れて父母に養育せらるゝの約束なれば、其成長に至るまで両親の責任軽からずと知るし。
新女大学 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
互にたてを突き合ふやうな不愉快な時間が幾度かかさなつた。或る時は首藤に質問された「かりかる」の用法で、先生は一時間を苦しめられた。
猫又先生 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
そこもと帰藩までには親許も定め置くく、挙式は来春二月と予定仕り候。お笛こと、そこもとはただ若気の熱にて引取りしならんが、国老職を
嫁取り二代記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
しかし当時最早私のごとき戦争非共力者の著書は不急不要の悪本として厳禁されてゐたので到底開版すくもなかつた。
「東京恋慕帖」自序 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
「……場所をとらぬ簡便な図書室を造る最良の方法は、例えば、十二巻の全集中、六頁だけ有用と信じたら、六頁だけ切取って、余は火中すし」
愛書癖 (新字新仮名) / 辰野隆(著)
きゝ彌々いよ/\氣の毒に思ひ此事に於ては我等證人と也申すべきにより急ぎ御奉行所へ願ひ出で申さるしと云にぞ七右衞門はいとうれし直樣すぐさま彼の駕籠舁かごかき久七を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
虚妄きよばうとなすにあらざる以上は太田の行為——すなはちエリスを棄てて帰東するの一事は人物と境遇と行為との関係支離滅裂なるものとはざるからず。
舞姫 (新字旧仮名) / 石橋忍月(著)
忠臣孝子義士節婦の笑うく泣く可く驚く可く歎ず可き物語が、朗々たる音吐おんとを以て演出せられて、処女のように純潔無垢な将軍の空想を刺戟しげきして
余興 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
昨夜の放埒はうらつな記憶に触れずにすむためには自分の方から、何か先に口を切らねばいけないと思つて、しばらくの間云ふき言葉を頭の中で整理してゐた。
イボタの虫 (新字旧仮名) / 中戸川吉二(著)
鼻うごめかすと俗にも云ふ如く心の色何となく此処ここうつるものなり、心におこたりある時の如き最もよく鼻にて知らるゝものなれば意をとどし(下略)
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
はじめは人皆ひとみな懊惱うるさゝへずして、渠等かれらのゝしらせしに、あらそはずして一旦いつたんれども、翌日よくじつおどろ報怨しかへしかうむりてよりのちは、す/\米錢べいせんうばはれけり。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
以て仕うくんばすなわち仕え、以てむ可くんば則ち止み、以て久しくす可くんば則ち久しくし、以て速やかにす可くんば則ち速やかにせしは孔子なり。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
この度、備中の国へ、後詰ごづめのため、近日、彼国かのくにに出馬あるべきに依り、先手の各〻、我に先だって戦場にいたり、羽柴筑前守の指図を相待つき者也。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ビルマ人が次から次へと献納するからであるが、その無数とも言うき仏像がどれもこれも味気ない彫刻である。
仏像とパゴダ (新字新仮名) / 高見順(著)
人の頭上に落ちてくるという事実をしたたむるのです、僕の身の上のごとき、まったくそれなので、ほとんど信ずからざるあやしい運命が僕をもてあそんでるのです。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
かれ老躯らうく日毎ひごと空腹くうふくから疲勞ひらうするため食料しよくれう攝取せつしゆするわづか滿足まんぞく度毎たびごと目先めさきれてるかれらつしてところみちびいてるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
仰有おつしやる通りみな後世にのこりて、後世は一々これが批判に任ぜざるからずとせば、なりたくなきは後世なるかな。後世はまさ塵芥ぢんかい掃除さうぢよの請負所の如くなるべし。
青眼白頭 (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
省みてし、漸く麻痺せむとする日本精神を以て新たなる理想の栄光裡に復活せしめむとする者あらば、先づ正に我がキヨルネルに学ばざるからず候はざるか。
渋民村より (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
即ち成るく多く肥料に金をかけ、成る可く多くの収穫を上げようとする行き方になって居る、資本を多く投入して収益を多く見ようという行き方になって居る。
当時、なんぴとの構へたれ事でございませうか、天狗てんぐ落文おとしぶみなどいふ札を持歩く者もありまして、その中には「徹書記てっしょき宗砌そうぜい、音阿弥、禅竺、近日此方こちらきたシ」
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
トルストイ、ツルゲネーフとう吾人ごじんひさしくこれけども、ドストイヱフスキーの著書ちよしよいたりては吾文界わがぶんかいこれ紹介せうかいするのこう不知庵フチアンおほしとはざるからず。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
人間の信仰は定かならぬこそをかしけれ、教法に完了といふ義あるからずと。されば信教の自由を説きて、寛容の精神を述べたるもの、「聖十字架祭」の如きあり。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
放恣はうしなる自然の発展を人に示さなくつても済むだのであらうが、悲むし、かれはこの世に生れながら、この世の歴史習慣と相容るゝ能はざる性格と体とをつて居た
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
第一は云う迄もなく伝説中の奇蹟と同じ意味に於ける奇蹟が、信仰にらずして科学的実験に依って行われたと云う事である。然し之れは左迄さまでに驚くき現象ではない。
女人訓戒 (新字新仮名) / 太宰治(著)
その後くあの異人から遠ざかつてゐるやうにとの遠慮が私の心を占めるのは自然であつた。
アリア人の孤独 (新字旧仮名) / 松永延造(著)
政府が鋳造ちゅうぞうせる白銅貨はくどうかの効用について徹底的に論じた一文である。これを以て白銅貨の文化的価値を明かにしたものというく、したがって考現学の資料ともなるものである。
白銅貨の効用 (新字新仮名) / 海野十三佐野昌一(著)
お前より外に鹽原のいえき者はない、其の大事ないえを捨てゝ、若気の至りとは云いながら女に溺れて金子をつかい果し、うちに居られなくなって家出をしたのだろうが
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
並んで歩き乍らこんな会話を交わして居ると、知らない裡に遊廓の横門の前迄出て了いましたが、気付いて立ち止った時には私の心は其の男の案内にまかせるく決って居りました。
陳情書 (新字新仮名) / 西尾正(著)
また一の法は斯道の書を讀むにあれど、その文難解にしてすこぶ晦澁くわいじふなれば、人もしここに理と眞とを求めんとすれば、其心まづ精緻にして根氣よく勤勉にして且つ細心ならざるからず。
錬金道士 (旧字旧仮名) / ルイ・ベルトラン(著)
先生その大意たいいを人より聞きいいいわく、かねてより幕末外交の顛末てんまつ記載きさいせんとして志をはたさず、今評論の誤謬ごびゅうを正すめその一端をかたしとて、当時の事情をくことすこぶつまびらかなり。
われは眞に有る物の間に有りてこれをわが身にからざる物とするに努む。
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
相方あいかたを定めて熟睡せしが、深夜と思う時分不斗ふと目をさまして見ると、一人であるべき筈の相方あいかた娼妓しょうぎ両人ふたりになり、しかも左右にわかれてく眠っているのだ、有るき事とも思われず吃驚びっくりしたが
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)