かたな)” の例文
かりうどが、りにつかうかたなをぬいて、なにも知らない白雪姫のむねをつきさそうとしますと、お姫さまは泣いて、おっしゃいました。
とその中の頭分かしらぶんらしいさむらいがいいました。それから二言ふたこと三言みこといいったとおもうと、乱暴らんぼう侍共さむらいどもはいきなりかたないてってかかりました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
小賊せいぞくかずして、すなはかたなつてゆびつてたまぬすむや、ゆびよりくれなゐいとごとほとばしりぬ。頭領とうりやうおもてそむけていはく、於戲痛哉あゝいたましいかな
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
武士ぶしをすてて竹生島ちくぶしまにかくれた時、そして、地蔵菩薩じぞうぼさつの愛のたびしまをでたとき、かならず、終生しゅうせいかたなくまいぞと心にちかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、いくらおおかみがあばれたって、あのじょうぶなやぶってはいることはできない。もしそんなときは、鉄砲てっぽうかたなもあるとかんがえました。
おおかみと人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
主人しゆじんはことさらにかたなはし兩手りやうてつて、つたりつたりする眞似まねをしてせた。宗助そうすけはひたすらにその精巧せいかうつくりをながめた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かたなだの、軸ものだの、文庫にはいっている古い書類だの、そのほか色々な器物うつわが、古道具屋の店みたいに並べてありました。
虫干し (新字新仮名) / 鷹野つぎ(著)
諭吉ゆきちのひとみは、きゅうにいきいきとかがやき、かたなをいつものところにおくと、たんすのある部屋へやにかけこむようにしてはいっていきました。
わたしの眼に、ふっと、一文字国俊いちもんじくにとしかたなが見えた。と同時に、横浜のうちの、土蔵くらの二階一ぱいの書籍の集積が思い出された。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
そしてあるばん、にわかに甚兵衛のところし入り、ねむってる甚兵衛をしばりあげ、かたなをつきつけて、人形をだせとおどかしました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
それで神八井耳命かんやいみみのみことかたなを持ってお出かけになりましたが、いざとなるとぶるぶるふるえ出して、どうしても手出しをなさることができませんでした。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
ところが古墳こふんれてあつたかたなつるぎるいになりますと、そのかず非常ひじようにたくさんありますが、中身なかみがみなてつですから赤錆あかさびになつて、ぼろ/\にくさつてしまひ
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
賞なくばあらじとて、十両の金を給ひ、二二かたなをもゆるして召しつかひけり。人これを伝へ聞きて、左内が金をあつむるは、二三長啄ちやうたくにして飽かざるたぐひにはあらず。
おたがいかたにしっかりと手を組みあって、こっそり行ってみましたが、どのざしきにもたれもいず、かたなはこもひっそりとして、かきねのひのきが、いよいよ青く見えるきり
ざしき童子のはなし (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ゆる此計略このけいりやくにはのせられたるなりさて伊賀亮は奧へ來り皆々みな/\此趣このおもむきを申聞せ伊賀亮所持しよぢ金作きんづくりかたな
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
するとさむらいが、すらりとかたなをぬいて、お母さんと子どもたちのまえにやってきました。
飴だま (新字新仮名) / 新美南吉(著)
といって倒れるところを音羽が一かたな斬り附ける、小三郎は惣兵衞のたぶさを掴んで上へ引揚げ
わたしはをとこたふれると同時どうじに、まつたかたなげたなり、をんなほうかへりました。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
無論むろんそれはわばかたなせいだけで、現世げんせかたなではないのでございましょうが、しかしいかにしらべてても、金粉きんぷんらした、朱塗しゅぬりの装具つくりといい、またそれをつつんだ真紅しんく錦襴きんらんふくろといい
悪戯いたずらに蛇を投げかけようとした者を已に打果うちはたすとてかたなの柄に手をかけた程蛇嫌いの士が、後法師になって、蛇のと云わるゝ竹生島ちくふじまいおりを結び、蛇の中で修行した話は、西鶴さいかくの物語で読んだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
一刀いっとうけずりてはしばら茫然ぼうぜんふさげば花漬はなづけめせと矯音きょうおんもらす口元の愛らしき工合ぐあい、オヽそれ/\と影をとらえてまたかたな、一トのみ突いては跡ずさりしてながめながら、幾日の恩愛たすけられたり扶けたり
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
抜かれるのを待つかたなから、勇ましい手も引いて貰わんではならぬ。
「かいとうとは、怪しいかたなと書くんだろう?」
家庭の幸福 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「松! 兼元かねもとを出してう。かたなをさ。」
栗の花の咲くころ (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
かたなをぬきて妻を教師けうしもありき
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
かたなかなしみのみうれ
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
かたなのきっさき
魔法人形 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
かたないておどしますと、いぬはなおなおはげしくくるまわって、りょうしのげるかたなの下をくぐって、いきなりそのむねびつきました。
忠義な犬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
まず駅舎へついたら、土地の東西南北、宿やど雪隠せっちんや裏表を第一に睨んでおくこと。かたな脇差わきざしはこじりを背中ではさむくらいに床の下へさしこんで寝ること。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こりはしですよ。蒙古人もうこじん始終しじゆうこれこしへぶらげてゐて、いざ御馳走ごちそうといふだんになると、このかたないてにくつて、さうしてこのはしそばからうんださうです
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
けれども、そのころのさむらいは、かたなをつかうようなやくにつくものはだいじにされますが、おかねのかんじょうなどをする役目やくめのものはみさげられていました。
仕立屋したてやさんはかたなをぬいて、ふたりの大男のむねに二度、三度、ずぶりずぶりとつきさしました。それから、馬にのったさむらいたちのところへでていって、いいました。
其時そのとき、おつぼねが、階下へ導いてざまに、両手でしっかと、くせもののかたな持つ方の手をおさへたのである。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
甚兵衛はびっくりして、あたりを見まわしましたが、さるはどこかへげてしまってませんし、まごまごするとかたなで切られそうですから、仕方しかたなく人形のあるへやおしえました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ウーンと云う処へ、プツーリッとた一とかたなあびせ、胸元へとゞめを差して、庄左衞門の着物でのりぬぐって鞘へ納め、小野庄左衞門の懐へ手を入れて見ましたが何もございません
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
日本につぽんへももなくてつがはひつてて、かたなその武器ぶきてつもちひることゝなりました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
持出て次右衞門に向ひ越前守より申こされし段上樣へ申上候處御滿足まんぞく思召おぼしめし明日の刻に越前役宅へ參るべしとの上意じやういなり是は余が所持しよぢの品如何敷いかゞはしく候へども其方へつかはすとて一かたな
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
鱠手かしはびとなるもの、まづ我が両眼を左手ひだりおゆびにてつよくとらへ、七六右手みぎりぎすませし七七かたなをとりて俎盤まないたにのぼし、七八既に切るべかりしとき、我くるしさのあまりに大声をあげて
おらはいそいでふねだして、向こうのきしに行ってみたらば、紋付もんつきかたなをさし、はかまをはいたきれいな子供こどもだ。たった一人で、白緒しろおのぞうりもはいていた。わたるかとったら、たのむとった。
ざしき童子のはなし (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そういうことで世間の行末が好くなって行こう理窟はござらぬ。これは何としても世間一体を良くしようという考え方に向わねば、何時迄経ってもやりかたな、修羅の苦患くげんを免れる時は来ないと存じまする。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
用に立たなかったかたなは、ここにはございません。
かたなかなしみのみうれ
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
感心かんしんして、きかけたかたなっこめてしまいました。そしてそれからはまったく義家よしいえになついて、一生いっしょうそむきませんでした。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
と、おもわず、かたなのつかをにぎっていることもありました。あしをひきずりながら、やっとのおもいで大阪おおさかにいさんのところにたどりついたのは、よるの十すぎでした。
其男がかたないて、輿を突きかへしたのと斬合きりあひを始めた。——三四郎には何の事か丸でわからない。尤も与次郎から梗概を聞いた事はある。けれども好加減に聞いてゐた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それで見ると少年は、まだほんの十三、四さい、それでいて礼儀れいぎことばはまことに正しく、かみしもにみじかいかたなを二本しているすがたは、ゆめの国からきた使者ししゃのようである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仰々ぎやう/\しく言出いひだすと、かたき髑髏しやれかうべか、毒藥どくやくびんか、とおどろかれよう、眞個まつたくことひませう、さしたるでない、むらさききれけたなりで、一しやくずん一口ひとふり白鞘しらさやもののかたながある。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
止めて待るゝに次右衞門三五郎の兩士亂髮らんぱつの上を白布しろぬのにてまき野服のふくまゝにてかたな
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一四〇さるから兄長このかみ、何故此の国に足をとどむべき。吾、今信義を重んじて態々わざわざここに来る。汝は又不義のために汚名をめいをのこせとて、いひもをはらず抜打ぬきうちに斬りつくれば、一かたなにてそこに倒る。
それからまた、日本につぽんつくられたとおもはれるものに、蕨手わらびてつるぎといふのがありますが、これはおほきなつるぎにはなくて、ちひさいかたなにたくさんありまして、つかあたまわらびのようにまがつてゐるものであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)