一々いち/\)” の例文
ですから、われ/\が、あるひとつの土地とちにはえたを、やたらにわきへつてったつて、それが一々いち/\つくわけのものではありません。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
宗助そうすけきはめてみじかい其時そのとき談話だんわを、一々いち/\おもうかべるたびに、その一々いち/\が、ほとんど無着色むちやくしよくつていゝほどに、平淡へいたんであつたことみとめた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
らばとつて、一寸ちよつとかへるを、うけたまはりまするでと、一々いち/\町内ちやうない差配さはいことわるのでは、木戸錢きどせんはらつて時鳥ほとゝぎするやうな殺風景さつぷうけいる。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それを一々いち/\説明せつめいすれば百科ひやつかがく講釋こうしやくすることになり、それはわたしには出來できない藝當げいとうであるのみならず、一册いつさつほんにはとうていをされません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
だれでも實際じつさいあたつて一々いち/\營養えいやう如何いかん吟味ぎんみしてものはない、だい一にあぢ目的もくてきとしてふのである。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
一々いち/\名状めいじやうすべからず。大は口徑一尺餘。小は口徑一寸許り。たかあつさ亦區々なり。圖版中右の上に畫く所は形状けいじやうしゆとす、大小の比例は必しも眞の如くならず。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
らそんなこたらなかつたつけが、さうえこたいく懇意こんい近所きんじよだつちつたつて一々いち/\他人ひと飯臺はんだいまでふたとつちやられねえかららもらねえでたな、そんぢやそらまあ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
兵隊上へいたいあがりの小使こづかひのニキタは亂暴らんばうにも、かくし一々いち/\轉覆ひつくりかへして、悉皆すつかり取返とりかへしてしまふのでつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そこ彼等かれらあいちやんに爭論さうろん繰返くりかへしてかせました、みんながのこらず各々おの/\一時いちじはなすので、それを一々いち/\正確せいかくることは、あいちやんにとつて非常ひじよう困難こんなんでありました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
外國がいこく大地震だいぢしんではもどしといはずして、第二だいに地震ぢしんとなへた場合ばあひがある。つまり初期微動部しよきびどうぶ主要部しゆようぶ合併がつぺいして一箇いつこ地震ぢしんないで、これを一々いち/\べつなものと見做みなしたのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
なにたかとひながらも、を四はうくばつてると、掘出ほりだしたかひは、一々いち/\ふるひふるつて、かひかひだけとして、やまごとんである。破片はへん其所此所そこここ散亂さんらんしてる。むね土器々々どき/\である。
其時分そのじぶんは人間が大様おほやうだから、かねあづける通帳かよひちやうをこしらへて、一々いち/\けては置いたが、その帳面ちやうめん多助たすけはうあづけたまゝくにかへつたのを、番頭ばんとうがちよろまかしてしまつたから、なに証拠しようこはない。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
他人の事と思はれず、我身わがみほまれ打忘うちわすれられてうれしくひとりゑみする心のうちには、此群集このぐんしふの人々にイヤ御苦労さまなど一々いち/\挨拶あいさつもしたかりし、これによりて推想おしおもふも大尉たいゐ一族いちぞく近親きんしん方々かた/″\はいかに
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
誰がどこに向ふと云ふこと、どう脅喝けふかつしてどう談判すると云ふこと、取り出した金銭米穀はどう取り扱ふと云ふことなどは、一々いち/\方略にめてあつたので、ここでも為事しごとは自然に発展した。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
學校がくかうみました書物しよもつ教師けうしからかしてれました樣々さま/″\ことは、それはたしかにわたしためにもなり、ことあるごとおもしてはあゝでつた、うでつたと一々いち/\かへりみられまするけれど
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
屑籠くづかごちあけさせて、一々いち/\り分けて、本当にひどい目にひましたよ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
一々いち/\その報告を書いてみようとおもふ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
梯子はしごやう細長ほそながわくかみつたり、ペンキぬりの一枚板まいいた模樣畫もやうぐわやう色彩しきさいほどこしたりしてある。宗助そうすけはそれを一々いち/\んだ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これらの博物館はくぶつかんについて一々いち/\くはしくおはなしをすることは、このほん紙面しめんゆるさないばかりでなく、科學博物館かがくはくぶつかんや、美術びじゆつ歴史れきし博物館はくぶつかんかんしては
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
どくらしい。……一々いち/\、そのぽぷらに間近まぢか平屋ひらやのある、あらものばあさんを、つじ番小屋ばんごやからすのは。——こゝでわかつた——植木屋うゑきや親方おやかただ。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
以上いじようほか日本につぽんには各地かくち老樹ろうじゆ名木めいぼくがあつて、一々いち/\あげてかぞへることも出來できません。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
これを調しらべるには、和田氏わだし卷尺まきしやくつ、が一ぱう其端そのはしち、一ぱう燈器とうきつ。大野氏おほのし一々いち/\るといふ役目やくめで、うしてうちに、あたましり衝突しやうとつする。あしむ。く。
と考へ夫々それ/\趣向しゆこうをいたし、一々いち/\口分くちわけにして番号札ばんがうふだけ、ちやんとたなへ、何商法なにしやうはふでもお好次第このみしだい世辞せじがあるといふまでに準備が出来できた、これで開店するといふのだが、うも家屋うち構造かゝりむづかしい
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
貴方あなたおつしやる所は一々いち/\御尤もだと思ひますが、わたくしには結婚を承諾する程の勇気がありませんから、ことわるより外に仕方がなからうと思ひます」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その品物しなものには一々いち/\わかるような説明せつめいをつけて、それをまはるうちに自然しぜん學問がくもん出來できるようにしてあるのです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ぐら/\とるか、おツとさけんで、銅貨どうくわ財布さいふ食麺麭しよくパン魔法壜まはふびんれたバスケツトを追取刀おつとりがたなで、一々いち/\かまちまですやうな卑怯ひけふうする。……わたしおほい勇氣ゆうきた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それから逆戻ぎやくもどりをして塔頭たつちゆう一々いち/\調しらべにかゝると、一窓庵いつさうあん山門さんもん這入はいるやいなやすぐ右手みぎてはうたか石段いしだんうへにあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かううも、ばんごと、どしんと、おどろかされて、一々いち/\びく/\してたんではれない。さあ、もつてい、なんでも、とむか顱卷はちまきをしたところで、うままへへはたれはしない。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
どうもなんですな。大分御いそがしい様ですな。先生た余つ程ちがつてますね。——蟻なら種油たねあぶら御注おつぎなさい。さうしてくるしがつて、穴からる所を一々いち/\殺すんです。何ならころしませうか
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)