)” の例文
当時、自他ともに「斬りくジャック」と呼んで変幻へんげんきわまりなく、全ロンドンを恐怖の底に突き落としていた謎の殺人鬼があった。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
そうしてさらにまたある一団は、縦横に青空をいている薔薇の枝と枝との間へ、早くも眼には見えないほど、細い糸を張り始めた。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
だから……妾は毎晩そんな遊びをする時間をすこしずついて、ヤングを先生にして一生懸命に亜米利加の言葉を勉強し続けたのよ。
支那米の袋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「おいおい、あれを見ろ。あのとおり、腕をひききやがった。一度りつけただけでは足りないで、三筋みすじも四筋も斬りつけてある」
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
轟然ごうぜんたる音響おんきょうとともに、仏像のなかにしかけてあった火薬が爆発した。——浜松城の二の丸の白壁は、雷火らいかかれてくずれ落ちた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かあさんは、おかあさんで、まだとしのいかない、だいじな、かわいいもとからはなすのはかれるようなくるしみでありました。
真吉とお母さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
大地震だいぢしんのときは大地だいちけてはつぼみ、ひらいてはぢるものだとは、むかしからかたつたへられてもつと恐怖きようふされてゐるひとつの假想現象かそうげんしようである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
しばらく考えたあと、かれはその封筒を、手紙ごとめりめりとき、もみくちゃにし、さらにすたずたに裂いて屑籠くずかごに投げこんだ。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
不用の布をいてよこに織り込むものでありますが、これも色と模様とさえよかったら、見違えるほどの効果を示すでありましょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
かれはそれを四つにいて、醫者いしやがしたやうにしろ練藥ねりぐすりもゝうへでガーゼへつて、卯平うへい横頬よこほゝつた曝木綿さらしもめんでぐる/\といた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
もっともそれは間もなく日光にあたってぼろぼろにけ、度々たびたびの出水につぎから次とけずられて行きましたが、新らしいものもまた出て来ました。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
その表面を無残にもかきいた、生々しい傷痕のみにくさとが、怪しくも美しい対照をして、彼の眼底に焼きついたのであった。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「少し用事があるのだよ——私はいよ/\助からないのかも知れない——息切いきぎれがして、胸も張りけさうな氣がしてならない」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
ふと麥藁むぎわらにはかなら一方いつぱうふしのあるのがります。それが出來できましたら、ほそはう麥藁むぎわらふと麥藁むぎわらけたところへむやうになさい。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
然し血気の怒にまかする巳代吉の勢鋭く、親分は右の手首を打折うちおられ、加之しかも棒に出て居た釘で右手の肉をかきかれ、大分の痛手いたでを負うた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
が、ではない。ばさりととなへたはおとで、正体しやうたい二本にほん番傘ばんがさ、トじやひらいたはいゝが、古御所ふるごしよすだれめいて、ばら/\にけてる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
リリシズムの野を出でて、いばらにかれた傷口に布をあてずに、あらわに、陽にさらしている、痛々しさを感じてならない。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
さもなかったなら、木魂姫こだまひめてゐるその洞穴ほらあなくるほどに、また、あのひめうつろこゑわしこゑよりもしゃがるゝほどに、ロミオ/\とばうものを。
「キツネのやつらは、いつもあなけめにはいりこんでかくれてしまいますから、とうにも射つことができないんですよ。」
『えい、殘念ざんねんだ/\、此樣こんとき本艦ほんかん水兵すいへいうらやましい。』とさけんだまゝ、空拳くうけんつて本艦々頭ほんかんかんとう仁王立にわうだち轟大尉とゞろきたいゐ虎髯こぜん逆立さかだまなじりけて
花中かちゅう多雄蕊たゆうずいと、細毛さいもうある二ないし五個の子房しぼうとがあり、子房は花後にかわいた果実となり、のちけて大きな種子があらわれる。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
やま全体ぜんたいうごいたやうだつた。きふ四辺あたり薄暗うすくらくなり、けるやうなつめたかぜうなりがおこつてきたので、おどろいたラランは宙返ちうがへりしてしまつた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
そのようすは、まるでさなぎをきやぶろうとでもしているようでした。それからヒバリは、ふたたび歌いながら、大空に舞い上がりました。
「おや、変だな」とおぼしめして、そのところを切りいてご覧になりますと、中から、それはそれは刃の鋭い、りっぱな剣が出て来ました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
娘の机のうへには手習草紙てならいそうしのあるのを見つけて、これ屈竟くっきょうのものだと彼等はその草紙の一枚を引きいて、娘の顔をつゝむやうに押しかぶせた。
梟娘の話 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
そうしてその葉が、峰と峰とのから渓合たにあいへあふれ込む光線の中を、ときどき金粉きんぷんのようにきらめきつつ水に落ちる。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
まるで電雷が頭上の雲をいたかのやうに、この歌ふやうな調子の初めを聞いて、リヴァズ氏は驚愕したが、しかしまだその言葉の終る頃にも
ある午後ごゞ。ぱちツと不思議ふしぎをとがしました。さやけたのです。まめみゝをおさえたなり、べたにころげだしました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
が、それと同瞬どうしゅん、駕籠の中から、れをいて突き出して来た銀ののべ棒——三尺の秋水しゅうすいだ。声がした。「つばを見ろ!」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
おにだ。あの寺には鬼が住んどる。口が耳までけている青鬼赤鬼が何匹なんびきもいて、おれをこんな目にわしたのだ。」
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
夏のころ梅の如き淡紅たんこうの花を開きのちをむすび熟するときはけて御輿みこしのわらびでの如く巻きあがる。茎も葉も痢病の妙薬なりといふ。みこしぐさ。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
てられる立禁たちきんふだ馘首かくしゆたいする大衆抗議たいしうこうぎ全市ぜんしゆるがすゼネストのさけび。雪崩なだれをはん×(15)のデモ。
見てゐるうちに、倩々つく/″\嫌になつて、一と思にいて了はうかとも思つて見る………氣がいらついて、こぶしまでにぎつた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
伯爵は肩をすくめたが、素直すなおに一礼すると、宝石入りの指輪でかざりたてた白い手にペンをとりあげ、小さな紙切れをき取って、それに書き始めた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
『森川さんの憎いつたらありやしない。那麽あんなに亂暴しなくたつて可いのに、到頭「聲きく時」をいちまつた……。』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
そこでウズメの命が海鼠に言うには、「この口は返事をしない口か」と言つて小刀かたなでその口をきました。それで今でも海鼠の口は裂けております。
船は碎け、筏は崩れ、帆はあれど、めあてなく、波のまにまに、影の夢、青い夢、せきけ、波に散り、あともない。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
くちけてもいうじゃァねえぞ。——南御町奉行みなみおまちぶぎょうの、信濃守様しなののかみさま妹御いもうとごのお蓮様れんさまは、浜村屋はまむらや日本にほん一の御贔屓ごひいきなんだ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「おお」と云つて片隅へ女客をんなきやくと一緒に避けるもなく発射せられた一発は窓硝子がらすいてそとれて仕舞しまつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
わしの誓いのしるしを受けい。(俊寛石を拾いおのれの胸、顔等をうつ、皮膚ひふ破れて血ほとばしる。地に倒れ、また立ち上がりて狂えるごとく衣をく)
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
この二三ねん月日つきひやうやなほけた創口きずぐちが、きふうづはじめた。うづくにれてほてつてた。ふたゝ創口きずぐちけて、どくのあるかぜ容赦ようしやなくみさうになつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
定めて心変りよと爪弾つまはじきせらるるならんと口惜くちおしさ悲しさに胸は張りくる思いにて、もおちおち眠られず。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
馬吉うまきちがだまって大根だいこんを一ぽんいてわたしますと、おばあさんはみみまでけているかとおもうような大きな、くちをあいて、大根だいこんをもりもりべはじめました。
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
間もなく紙帳は、栞の手によって、空地へ釣られ、ところどころけ目を持ったその紙帳は、一杯に春陽を受け、少しるそうに、裾を地に敷き、宙に浮いた。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ところが、息子の両親はあまりに身分が違いすぎるからというので、二人の仲をこうとしました。
東奥異聞 (新字新仮名) / 佐々木喜善(著)
その男が、立木へ手をかけてうつむいた横顔をみて思った。その途端鈴田の凭れている木の枝が、べきんと、き折れて、大きい枝が、鈴田の頭、すれすれにぶら下った。
近藤勇と科学 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
よくまあ、口がけないもんだねえ。自分ながら、出鱈目でたらめばかりいっているのには呆れてしまう。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
ところが、その結果けっかはどうだったろう! シャツはすそまですっかりけてしまった。もうこうなったら、ててしまうより仕方しかたがない。ほんとになんて考えのないママだろう!
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
まず※は幾条いくすじにもける、それでもって打たれるのでかわの裂目のひりひりしたところがはげしくさわるから、ごくごく浅いきずではあるが松葉まつばでも散らしたように微疵かすりきずが顔へつく。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
惣「極製ごくせいの水飴ゆえ金属かなものではお取りにくうございます、矢張やっぱり木をいた箸が宜しいそうで」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)