つき)” の例文
風呂ふろびてれゆけばつきかけ下駄げたに七五三の着物きもの何屋なにやみせ新妓しんこたか、金杉かなすぎ糸屋いとやむすめう一ばいはながひくいと
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かくさんと云るをきゝ共に涙にくれたりしがやがてお文は父母ふたおやの前にたり兩手をつきたゞ今お兩方樣ふたかたさまのおはなしを承まはり候に父樣は何方いづかたへかお身を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ぽんと手を拍ち「なるほどなあ、持つべきものは女房だ、先ほどから段々の御神さんの御異見、重々じゅうじゅう恐れ入りました」と手をつきてあやまり
直鎗ちょくそうとちがって、カギ鎗の特長というのは、三手みてが引ッ掛け、上下左右、四手よてはらい、さらにつき! またはらい! あわせて九ツのへんという」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼はハッとして四辺あたりを見廻すと、ホールの正面にあたったつきあたりの階段を緑色のドレスを着た女が上ってゆくのを認めた。
緑衣の女 (新字新仮名) / 松本泰(著)
国麿くにまろという、もとの我が藩の有司のの、われより三ツばかり年紀としたけたるが、鳥居のつきあたりなる黒の冠木門かぶきもんのいといかめしきなかにぞすまいける。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つきたりと見れば数疋すひき猛犬つよいぬいちどに飛かゝりてかみつく。犬は人を力とし、人は犬を力としてころすもあり。此術はうつほ木にこもりたるにもする事也。
的確な、みごとなつきであった。六郎兵衛は相手の刀の切尖きっさきが、こちらのからだに当る刹那せつなつばめの返るように身を転じた。
とうとう大広間の天井をつき破って、虚空はるかに飛び上って、どこへ行ったか見えなくなってしまいました。
黒い頭 (新字新仮名) / 夢野久作海若藍平(著)
単純に帰一させようとする純粋性というものにむかってつき進むが、女性はある事に触れるたびにその環境に動かされやすく、感情に殉じやすいのは当然である。
芳川鎌子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
おゆうがくるまで飛込んでいった時、生家さとではもう臥床ねどこに入っていたが、おゆうはいきなり昔し堅気の頑固がんこな父親に、頭からおどかしつけられて、一層つきつめた気分で家を出た。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ソーントンがお父さんを連れて行く途中で、待ち伏せていた僕は、ソーントンにピストルをつきつけて、お父さんをたすけて、代りにソーントンを地下室に入れておいたのだ。
計略二重戦:少年密偵 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
小泉がよろめく所を、右の脇腹わきはらつきを一本食はせた。東組与力小泉淵次郎えんじらうは十八歳を一期いちごとして、陰謀第一の犠牲としていのちおとした。花のやうな許嫁いひなづけの妻があつたさうである。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
一番長い気合きあいのかけ合いはこの時だったかと覚えて居りまする。しかし数馬は相手の竹刀へ竹刀をれたと思うが早いか、いきなりつきを入れました。突はしたたかにはいりました。
三右衛門の罪 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
セエヌの下流は蛇が曲線を描いて走る形に紆廻うねつて居るので、汽車が真直まつすぐその曲線をつき切つて三度河を渡るとサン・ゼルマンの街に着いた。巴里パリイから此処ここへは四十分で達せられる。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
ます「伴藏さん貝殻骨から乳の下へ掛けてズブ/\とつきとおされた時の痛かったこと」
大きなデカおやじが、自分の頭程あたまほどもない先月生れの小犬ののみんでやったり、小犬が母の頸輪くびわくわえて引張ったり、犬と猫と仲悪なかわるたとえにもするにデカと猫のトラとはなつき合わしてたがいうたがいもせず
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
焼野やけの雉子きぎすよるの鶴、錆田さびたの雀は子をかばう。いわんや、鯨は魚の長。愛情の深さはまたなかなか。……さて、皆々さま、これなるは、つき鯨のより鯨のながれ鯨のとそんな有りふれた鯨ではござりませぬ。
聞くところによれば、江戸で島田虎之助という先生の門人で直心陰じきしんかげを学び、それから宝蔵院の槍の極意に達し、つきにかけては甲府城の内外はおろか、お膝元へ出ても前に立つ者は少なかろうとのこと
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
豹のような水夫は、ピストルを、僕の胸板むないたつきつけたまま
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
めせとすすめめぐりてとぼしたる火もきえぬべく人つきあたる
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
それおつきだ。受けることはわたしが受ける。
重詰ぢうづめはなへてつきだしたのでは狂人きちがひにされるよりほかはない……といつたおな大風おほかぜに——あゝ、今年ことし無事ぶじでよかつた。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
話し實意を打明うちあけて御願ひ申なば命乞いのちごひの事かなはぬ儀は有まじ然なり/\と其儘駈出かけいだして見付驛なる可睡齋かすゐさいの臺所へ駈込かけこみ三五郎は手をつき何卒御住持樣ぢうぢさまに御目通りを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
重さ十五きんの槍をふるってつきの猛練習をなし、一夜一千回から二千回に及び、それを三十夜も続けたという。
剣の四君子:04 高橋泥舟 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
聞いたことのない名だし、むろん独創のものだろうが、「飛魚とびうお」というつきの手に秘術があった。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
真面目につとむる我が家業は昼のうちばかり、一風呂浴びて日の暮れゆけばつきかけ下駄に七五三の着物、何屋の店の新妓しんこを見たか、金杉かなすぎの糸屋が娘に似てもう一倍鼻がひくいと
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
くいというかたちもないものの中へ押込めてしまって、長い一生を、っと、きえてしまった故人の、恋心の中へとつき進めてゆかせようとするのを、私は何とも形容することの出来ない
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
つたへていふ、白髪はくはつ老翁らうをうへいをもちてなだれにくだるといふ。また此なだれ須川村の方へ二十町余の処真直まつすぐつき下す年は豊作ほうさく也、菖蒲村の方へなゝめにくだす年は凶作きやうさく也。其験そのしるしすこしたがふ事なし。
大御門おおみかどそのかたむきて橋上に頂根うなねつきけむ真心まごころたふと
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
すると、旦那です……(馬鹿め、めちまえ、)と言いながら、片手づきの反身そりみの肩を、御寮人さ、そのお珊の方の胸の処へつきつけて、ぐたりとなった。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うかゞへばひるつかれかすや/\とやす寢入ねいり居り夜具の上よりゆかとほれと氷のやいばなさけなくも只一つき女は苦痛くつうの聲も得立ずあへなくもいきたえたれば仕濟しすましたりととこの下よりくだん服紗包ふくさつゝみ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ハタとにらんでそちまでがおなじやうになん囈語たはごと最早もはや何事なにごとみゝもなしそちさずば自身じしんにとむるつまつきのけつゝ病勞やみつかれてもおい一徹いつてつあがりがまちに泣頽なきくづれしおたか細腕ほそうでむづとりつちから
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一家をなして、当代一流といわれてからでも、昼は何百の門人に当り、夜は必ずその「つき」の練習を怠らなかった。少しくらいな風邪かぜや病気などは、三千回も「突」をやればなおると自分で云っていた。
剣の四君子:04 高橋泥舟 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新しいひのきの雨戸、それにも顔が描かれそう。真直まっすぐに向き直って、ともしびを差出しながら、つきあたりへ辿々たどたどしゅう。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これより以後いご一生いつしやう五十ねん姫樣ひめさまにはゆびもさすまじく、まし口外こうぐわいゆめさらいたすまじけれど、かねゆゑぢるくちにはあらず、此金こればかりはとおそれげもなく、つきもどしてさてつくづくとびけるが、歸邸きていそのまヽ暇乞いとまごひ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
平たき肩をすぼめながら向うかがみに背を円くし、いと寒げなるさま見えつつ、黒き影法師小さくなりて、つきあたりはるかなる、門高きかまえの内に薄霧めて見えずなりぬ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つきのけてあとをもず、まち、もうはぬぞ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かれもこれも一瞬時、得三はまなこ血走り、髪逆立ちて駈込つ、猶予ためらう色無く柱にれる被を被りし人形に、きりつけつきつけ、狂気のごとく、愉快、愉快。と叫びける。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わが思う処にたがわず、堂の前を左にめぐりて少しゆきたるつきあたりに小さき稲荷いなりやしろあり。
竜潭譚 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わが思ふところたがはず、堂の前を左にめぐりて少しゆきたるつきあたりに小さき稲荷いなりやしろあり。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一本きらきらする銀のかんざし、脚を割ってつきさすように挟んだんです。たしかに、うござんすか。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あたりは真暗まっくらな処に、虫よりもちいさな身体で、この大木の恰もその注連縄の下あたりに鋸をつきさして居るのに心着いて、恍惚うっとりとして目をみはったが、気が遠くなるようだから、鋸を抜こうとすると
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あたりは眞暗まつくらところに、むしよりもちひさ身體からだで、この大木たいぼくあたか注連繩しめなはしたあたりにのこぎりつきさしてるのに心着こゝろづいて、恍惚うつとりとしてみはつたが、とほくなるやうだから、のこぎりかうとすると
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
方二坪ばかり杉葉の暗い中にむくむくと湧上わきあがる、清水に浸したのをつきにかけてずッと押すと、心太ところてんの糸は白魚のごときその手にからんだ。皿にって、はいと来る。島野は口も着けず下に置いて
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
片手かたてして、やつこ風呂敷ふろしきつきつけると、をくるりと天井てんじやうのぞきで
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おやとおもふとはすかひに、兩方りやうはうひらいて、ギクリ、シヤクリ、ギクリ、シヤクリとしながら、後退あともどりをするやうにして、あ、あ、とおもふうちに、スーと、あのえんつきあたりの、戸袋とぶくろすみえるんです。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
晃 死ね!(と云うまま落したる利鎌とがまを取ってきっとつきつく。)
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)