相手あいて)” の例文
けれどこの課業かぎょうのことから、わたしは犬やさるから引きはなされて、病人の子どもの相手あいてになり、ほとんど友だちになったのである。
青年せいねんは、またちみがあるのでうれしそうなかおつきをして、いっしょうけんめいにかがやかしながら、相手あいておうさまをっていました。
野ばら (新字新仮名) / 小川未明(著)
こんどは用吉君ようきちくんが、得意とくい相手あいてくびをしめにかかったが、反対はんたい自分じぶんくびをしめつけられ、ゆでだこのようになってしまった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
甚兵衛もそれにはこまりました。なにしろ相手あいて大蛇おろちですもの、へたなことをやれば、こちらが一呑ひとのみにされてしまうばかりです。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
相手あいての男も、このようすでは、とてもきょうは五十ターレルをもらえそうもないとみてとって、そのままいってしまいました。けれども
大和尚だいおしよう大笑おほわらひにわらひすてゝ、だまつてろ、だまつてろ、貴樣きさまなどがらぬことだわとて丸々まる/\相手あいてにしてはれず、朝念佛あさねんぶつ夕勘定ゆふかんぢよう
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
相手あいて黙々もくもくとした少年しょうねんだが、由斎ゆうさいは、たとえにあるはしげおろしに、なに小言こごとをいわないではいられない性分しょうぶんなのであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
自分じぶんはこれから修行しゅぎょうんで、んな立派りっぱ神様かみさまのお相手あいてをしてもあまりはずかしくないように、一はやこころあかあらきよめねばならない……。
病院をでてもいく家はない。ってる人もない。安藤が自分の家へつれて帰ったものの、慰藉いしゃのあたえようもない。花前はときどき相手あいてかまわず
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
と、アンドレイ、エヒミチはかしらりながら、相手あいてずに徐々のろのろ話出はなしだす。かれはなしをするときひとぬのがくせ
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
翁が一人や二人の工人を相手あいてに、僅々きんきん二年三年の片手間にも足らざる研究でこれを率直に発言させるのは、あまりにも罪がなさすぎるのではないか。
そでを通しながらも、笑ったり、ふざけたりした。けれども、ママはもうその相手あいてをしているひまが一ぷんもなかったので、いそいで出て行ってしまった。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
おとうさんはそれから、はちかつぎのところられて、おおぜいのまごたちを相手あいてに、たのしくらすようになりました。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
透明人間とうめいにんげんはむちゅうで、しゃべりまくっている。ケンプ博士はくしはあきれ顔をして、じっと相手あいての声をきいていた。
それで相手あいての顔は見ないで、月をあおいだ目元は其丸顔に適好ふさわしく、品の好い愛嬌のある小躯こがらの女である。
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
袖子そでこ風邪かぜでもいて学校がっこうやすむようなには、彼女かのじょまくらもとにあしし、いつでもわらったようなかおをしながらお伽話とぎばなし相手あいてになっていたのも、あの人形にんぎょうだった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
『だが先刻せんこく確實たしか救助きゆうじよもとむる難破船なんぱせん信號しんがうえましたか。』とまゆつばきした。可笑をかしいやうだが船乘人ふなのりにはかゝる迷信めいしんいだいてもの澤山たくさんある、わたくし相手あいてにせず簡單かんたん
荷車を借りて甲州街道に竹買いに行き、椎蕈ムロをこしらえると云っては屋根屋の手伝をしたりした。都の客に剣突けんつくわすことはある共、田舎の客に相手あいてにならぬことはなかった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
シカたちは、もうれつにぶっつかっては、つのと角とがからまるほどに、はげしく角を打ちあって、相手あいてしもどそうとします。ヒースのしげみは、ひずめにふみにじられました。
犯人はんにんはウィスキイの相手あいてをしていたが、むろん、自分じぶんまずに老人ろうじんにだけませた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
男の方でも相手あいての熱烈な演じ方に気乗りがしたと見えて、幕になった後まで、なおも飽きずに舞台の上の仕草から思入おもいいれ台詞せりふの言い方を、いろいろ懇切に教えたり直してやったりした。
心づくし (新字新仮名) / 永井荷風(著)
これがをつとだと、何時迄いつまでだまつてはりうごかすのが、御米およねれいであつたが、相手あいて小六ころくときには、さう投遣なげやり出來できないのが、また御米およね性質せいしつであつた。だからそんなときにはつとめてもはなしをした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「何の用でここへ来たの、何かしらべに来たの、しらべに来たの、何かしらべに来たの。」もう相手あいてにならないと思いながら私はだまって海の方を見ていましたら風は親切しんせつにまた叫ぶのでした。
サガレンと八月 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
相手あいて気持きもちをのみむのには、おたがいなかよくし合うことがなによりです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
紳士 相手あいて其奴そいつぢやな。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
どう了簡れうけんなるや早く云てきかせと云へば平左衞門はせゝら笑ひさりとては御氣の小い事なりなに是式これしきの事御心らうに及ぶべきや先其時の事は臨機應變りんきおうへんと申事あり今こゝにて申事は更に役にたち申さず其相手あいての樣子先の出次第でしだいにてどうへんずるも量り難し此所にて申事は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「おなんかやればんでしまう。きみ金魚きんぎょだって、おなかへいれればんでしまうだろう?」と、相手あいて少年しょうねんは、いいました。
ある日の先生と子供 (新字新仮名) / 小川未明(著)
相手あいてもおなじようにしかえしをしました。それから、ふたりはいかりくるって、木をひっこぬいて、なぐりあいをはじめました。
甚兵衛じんべえは、もうだれたのんでも人形を使いませんでした。そして山からときどきあそびにくるさる相手あいてに、たのしく一しょうおくりましたそうです。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
坊主頭ぼうずあたまへ四つにたたんだ手拭てぬぐいせて、あさ陽差ひざしけながら、高々たかだかしりからげたいでたちの相手あいては、おな春信はるのぶ摺師すりしをしている八五ろうだった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
わたしはいつまでもその人をあいして、その人といっしょにいることのできる相手あいてを見つけることができないのであろうか。
かく相手あいてなしに妊娠にんしんしないことはよくわかってりますので、不取敢とりあえずわたくし念力ねんりきをこめて、あの若者わかもの三崎みさきほうせることにいたしました……。
いといつてくださるおひとるもなし、浮氣うはきのやうに思召おぼしめしましようが其日そのひおくりでござんすといふ、いや左樣さうはさぬ相手あいてのないことはあるまい
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
まちではじつにもう退屈たいくつです。だれ相手あいてはなしするものもなし。はなしものもなし。あたらしい人間にんげんはなし。しかしこのころハバトフとわか医者いしゃまちにはたですが。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
とお政は早や声をくもらして、四に気もみする。おっとにすこし客の相手あいてをしていてくれとたのめば源四郎は「ウンウン」と返事へんじはしても、立ちそうにもせぬ。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
フィアレンサイドは、その人たちを相手あいてに、さっきのできごとを、くりかえしくりかえし話していた。
それから……それからべつに何ごとがあろう? ママは生徒監せいとかんのところへ出かけて行った。生徒監せいとかん相手あいてにひとさわぎ持ちあげた上、あとでうったえてやるつもりだったのである。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
近所きんじょにもう相手あいてがなくなると、つまらなくなって金太郎きんたろうは、一にちもりの中をかけまわりました。
金太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
海蔵かいぞうさんは、昨日きのうまではよくげんさんと、それをやったものでした。二人ふたり競争きょうそうをやって、けそこなったかずのすくないものが、相手あいてべつ菓子かしわせたりしたものでした。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
オーラは、これまでにヤッローのようないいあそ相手あいてをもったことはありませんでした。
袖子そでこほうでもよくその光子みつこさんをって、ひまさえあれば一緒いっしょがみたたんだり、お手玉てだまをついたりしてあそんだものだ。そういうとき二人ふたり相手あいては、いつでもあの人形にんぎょうだった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ひげ真白まつしろと云はんよりは、寧ろ黄色きいろである。さうして、はなしをするときに相手あいて膝頭ひざがしらかほとを半々はん/\に見較べるくせがある。其時のうごかしかたで、白眼しろめ一寸ちよつとちらついて、相手あいてに妙な心もちをさせる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「なに、わたしが、そんなことをったものかね、わたしは、したいたばかしなのだよ。」と、おんなは、邪慳じゃけんにいって、相手あいてにしませんでした。
初夏の不思議 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ほかもののぞんだら、百りょうでもゆずれるしなじゃねえんだが、相手あいてがおせんにくびッたけの若旦那わかだんなだから、まず一りょうがとこで辛抱しんぼうしてやろうとおもってるんだ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
わたくしはそこで忠実ちゅうじつ家来けらい腰元こしもと相手あいて余生よせいおくり、そしてそこでさびしくこの気息いきったのでございます。
とても相談さうだん相手あいてにはならぬの、いはゞ太郎たらう乳母うばとしていてつかはすのとあざけつておつしやるばかり、ほんに良人おつとといふではなく御方おかたおに御座ござりまする
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そうすると、こん棒がおまえに加勢かせいして、ふくろのなかから相手あいてのやつらのなかへとびだしていって、そいつらの背中せなかで、おもしろおかしくおどるんだ。
老人ろうじんはそこで、この初舞台というのは、三びきの犬とジョリクールを相手あいて芝居しばいをすることだと教えてくれた。
その後は細君さいくんから不満ふまんをうったえられても相手あいてにならず、ひややかな気まずいそぶりをされても、へいきに見流みながしておった。そうして新小川町に十余年よねんおった。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
かれきはめてかたくなで、なによりも秩序ちつじよふことを大切たいせつおもつてゐて、自分じぶん職務しよくむおほせるには、なんでも其鐵拳そのてつけんもつて、相手あいてかほだらうが、あたまだらうが、むねだらうが
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)