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滅多
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めつた
ふりがな文庫
“
滅多
(
めつた
)” の例文
それは唯はた目には
石鹸
(
せつけん
)
や
歯磨
(
はみが
)
きを売る
行商
(
ぎやうしやう
)
だつた。しかし武さんは
飯
(
めし
)
さへ食へれば、
滅多
(
めつた
)
に荷を
背負
(
せお
)
つて出かけたことはなかつた。
素描三題
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
幾ら
人數
(
にんず
)
が少ないと
謂
(
い
)
ツて、書生もゐる
下婢
(
げぢよ
)
もゐる、それで
滅多
(
めつた
)
と笑聲さへ聞えぬといふのだから、
恰
(
まる
)
で冬の
野
(
の
)
ツ
原
(
ぱら
)
のやうな光景だ。
青い顔
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
お氣の毒なことに奧方の浪乃殿は、お里方が絶家して歸るところも無く良人將監殿が江戸へ歸るまでは、
滅多
(
めつた
)
に死ぬわけにも行かない。
銭形平次捕物控:138 第廿七吉
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
盜
(
と
)
らつた
上
(
うへ
)
に
恁
(
か
)
うして
暇
(
ひま
)
潰
(
つぶ
)
して、おまけに
分署
(
ぶんしよ
)
へ
出
(
で
)
て
怒
(
おこ
)
られたり
何
(
なに
)
つかすんぢや、こんな
詰
(
つま
)
んねえこたあ
滅多
(
めつた
)
ありあんせんかんね
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
けれども、二人は組が違ひましたし、学校のかへりも私の方がいつも早くありましたので、一緒になることは
滅多
(
めつた
)
にありません。
時男さんのこと
(新字旧仮名)
/
土田耕平
(著)
▼ もっと見る
歸
(
かへ
)
りも
遲
(
おそ
)
いが、
歸
(
かへ
)
つてから
出掛
(
でかけ
)
る
抔
(
など
)
といふ
億劫
(
おくくふ
)
な
事
(
こと
)
は
滅多
(
めつた
)
になかつた。
客
(
きやく
)
は
殆
(
ほと
)
んど
來
(
こ
)
ない。
用
(
よう
)
のない
時
(
とき
)
は
清
(
きよ
)
を十
時前
(
じまへ
)
に
寐
(
ね
)
かす
事
(
こと
)
さへあつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
何
(
なん
)
となく
浮世
(
うきよ
)
から
離
(
はな
)
れた
樣子
(
やうす
)
で、
滅多
(
めつた
)
に
顏
(
かほ
)
を
見
(
み
)
せない
其
(
そ
)
の
女主人
(
をんなあるじ
)
が、でも、
端近
(
はしぢか
)
へは
出
(
で
)
ないで、
座敷
(
ざしき
)
の
中
(
なか
)
ほどに
一人
(
ひとり
)
で
居
(
ゐ
)
た。
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
開けたところでした。
滅多
(
めつた
)
に使ひませんお部屋は、何も
彼
(
か
)
もひどくしめりましてね。あちらの客間なぞまるで地下室のやうでございますのよ。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
桑田はこんな好い家は捜しても
滅多
(
めつた
)
に捜されるものではない。アパートを追出されたのは全く有難い
仕合
(
しあはせ
)
だと思つた。
人妻
(新字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
この頃では、世話人ももう
滅多
(
めつた
)
にはやつて来なかつた。かれ等は自分の勝手に
托鉢
(
たくはつ
)
に出たかれの行為を不快に思つた。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
お女郎屋から無事脱け出した上に、この中へ逃げ込むことが出來たなんて、
滅多
(
めつた
)
にない話だからね。この中は、いはゞお城の中のやうなものだからね。
天国の記録
(旧字旧仮名)
/
下村千秋
(著)
幻花子
(
げんくわし
)
も
新聞
(
しんぶん
)
の
方
(
はう
)
が
忙
(
いそが
)
しいので、
滅多
(
めつた
)
に
來
(
こ
)
ず。
自分
(
じぶん
)
一人
(
ひとり
)
で
時々
(
とき/″\
)
掘
(
ほ
)
り
始
(
はじ
)
めの
處
(
ところ
)
へ
立
(
た
)
つては、
往事
(
むかし
)
を
追懷
(
つひくわい
)
すると、
其時
(
そのとき
)
の
情景
(
じやうけい
)
が
眼前
(
がんぜん
)
に
彷彿
(
ほうふつ
)
として
見
(
み
)
えるのである。
探検実記 地中の秘密:02 権現台の懐古
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
マア
斯
(
か
)
ういふ事は
滅多
(
めつた
)
にない事でございます、
我々
(
われ/\
)
のやうな牛は
実
(
じつ
)
に骨の折れる事
一通
(
ひととほ
)
りではありません、
女牛
(
めうし
)
の
乳
(
を
)
を
絞
(
しぼ
)
られる時の痛さといふのは
耐
(
たま
)
りませんな
牛車
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
又
(
また
)
作文
(
さくぶん
)
にしても
間違
(
まちが
)
つた
處
(
ところ
)
があれば
唯
(
た
)
だ
印
(
しるし
)
を
附
(
つ
)
けて
置
(
お
)
く
丈
(
だけ
)
で、
滅多
(
めつた
)
に
間違
(
まちがひ
)
の
點
(
てん
)
を
説明
(
せつめい
)
して
聞
(
き
)
かさない。
女教邇言
(旧字旧仮名)
/
津田梅子
(著)
『
時間
(
じかん
)
さへ
經
(
た
)
てば
可
(
い
)
いわ!』
愛
(
あい
)
ちやんは
何時
(
いつ
)
も
自分
(
じぶん
)
に
良
(
い
)
い
忠告
(
ちゆうこく
)
をし、(それに
從
(
したが
)
ふことは
滅多
(
めつた
)
にないが)
時
(
とき
)
には
涙
(
なみだ
)
の
出
(
で
)
る
程
(
ほど
)
我
(
わ
)
れと
我
(
わ
)
が
身
(
み
)
を
責
(
せ
)
めることもありました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
直
(
つ
)
と飛込で
襟元
(
えりもと
)
掴
(
つか
)
み遙か向へ
投退
(
なげのけ
)
れば其餘の者共追取卷ソレ打殺せと云まゝに十五六人四方より
滅多
(
めつた
)
やたらに打懸るに半四郎は只一生懸命奪ひ取たる
息杖
(
いきづゑ
)
にて多勢を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
彼女
(
かのぢよ
)
が、
戀人
(
こひびと
)
の
片山
(
かたやま
)
と一
緒
(
しよ
)
に
生活
(
せいくわつ
)
したのは、
僅
(
わづか
)
かに三ヶ
月
(
げつ
)
ばかりだつた。
彼
(
かれ
)
がその
屬
(
ぞく
)
してゐる
黨
(
たう
)
の
指令
(
しれい
)
のもとに、ある
地方
(
ちはう
)
へ
派遣
(
はけん
)
された
後
(
のち
)
、
彼等
(
かれら
)
は
滅多
(
めつた
)
に
逢
(
あ
)
ふ
機會
(
きくわい
)
もなかつた。
彼女こゝに眠る
(旧字旧仮名)
/
若杉鳥子
(著)
庭のまん中から作つて行つたら
滅多
(
めつた
)
にかたがつくことがない。魚を
料理
(
つく
)
るにまん中から庖丁を入れることは、料理ることを知らない人のすることである。腹や頭から庖丁を入れねばならぬ。
冬の庭
(新字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
海賊
(
かいぞく
)
共
(
ども
)
は
如何
(
いか
)
にして
探知
(
たんち
)
するものかは
知
(
し
)
らぬが
其
(
その
)
覬
(
ねら
)
ひ
定
(
さだ
)
める
船
(
ふね
)
は、
常
(
つね
)
に
第
(
だい
)
一
等
(
とう
)
の
貴重
(
きちやう
)
貨物
(
くわぶつ
)
を
搭載
(
とうさい
)
して
居
(
を
)
る
船
(
ふね
)
に
限
(
かぎ
)
る
代
(
かわ
)
りに、
滅多
(
めつた
)
に
其
(
その
)
形
(
かたち
)
を
現
(
あら
)
はさぬ
爲
(
ため
)
と、
今
(
いま
)
一つには
此
(
この
)
海賊
(
かいぞく
)
輩
(
はい
)
は
何時
(
いつ
)
の
頃
(
ころ
)
よりか
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
僕
(
ぼく
)
は一
體
(
たい
)
、
滅多
(
めつた
)
に
封書
(
ふうしよ
)
といふものを
書
(
か
)
かない。そんなに
人
(
ひと
)
の
見
(
み
)
て
惡
(
わる
)
い
樣
(
やう
)
な
事
(
こと
)
を
書
(
か
)
く
場合
(
ばあひ
)
はないからなア。それで
僕
(
ぼく
)
は
何用
(
なによう
)
でも
大抵
(
たいてい
)
葉書
(
はがき
)
で
濟
(
す
)
ますのだが、
若
(
も
)
し一
枚
(
まい
)
で
足
(
た
)
りなければ二
枚
(
まい
)
續
(
つゞ
)
きにする。
ハガキ運動
(旧字旧仮名)
/
堺利彦
(著)
滅多
(
めつた
)
に
笑
(
わら
)
つたこともない
但馬守
(
たじまのかみ
)
、
今日
(
けふ
)
は
殊
(
こと
)
に
機嫌
(
きげん
)
のわるい
主人
(
しゆじん
)
が、にツこりと
顏
(
かほ
)
を
崩
(
くづ
)
したのを、
侍女
(
じぢよ
)
紀
(
こつな
)
は
不思議
(
ふしぎ
)
さうに
見上
(
みあ
)
げて、『
畏
(
かしこ
)
まりました。』と、うや/\しく一
禮
(
れい
)
して
立
(
た
)
ち
去
(
さ
)
らうとした。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
われは
己
(
おのれ
)
が
生涯
(
しやうがい
)
のあまり
清
(
きよ
)
くない
事
(
こと
)
を
心得
(
こゝろえ
)
てゐる、
路
(
みち
)
の
傍
(
かたはら
)
の
菩提樹下
(
ぼだいじゆか
)
に
誘惑
(
いうわく
)
に
負
(
ま
)
けた
事
(
こと
)
も
知
(
し
)
つてゐる。
偶
(
たま/\
)
われに
酒
(
さけ
)
を
呑
(
の
)
ませる
会友
(
くわいいう
)
たちの、よく
承知
(
しようち
)
してゐる
如
(
ごと
)
く、さういふ
物
(
もの
)
は
滅多
(
めつた
)
に
咽喉
(
のど
)
を
通
(
とほ
)
らない。
浮浪学生の話
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
こんな
上天気
(
じやうてんき
)
はこの
城
(
じやう
)
ヶ
島
(
しま
)
にも
滅多
(
めつた
)
に
無
(
ね
)
え。
畑の祭
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
紋服を着た西洋人は
滑稽
(
こつけい
)
に見えるものである。或は滑稽に見える余り、西洋人自身の
男振
(
をとこぶり
)
などは
滅多
(
めつた
)
に問題にならないものである。
続野人生計事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
少
(
すこ
)
し
懷
(
ふところ
)
が
窮屈
(
きうくつ
)
でなくなつてからは
長
(
なが
)
い
夜
(
よ
)
の
休憇時間
(
きうけいじかん
)
には
滅多
(
めつた
)
に
繩
(
なは
)
を
綯
(
な
)
ふこともなく
風呂
(
ふろ
)
に
行
(
い
)
つては
能
(
よ
)
く
噺
(
はなし
)
をしながら
出殼
(
でがら
)
の
茶
(
ちや
)
を
啜
(
すゝ
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
無愛想で素つ氣なくて、
滅多
(
めつた
)
なことでは人に笑顏も見せないのに、どうかした
彈
(
はず
)
みで、チラリと、恐ろしく色つぽいところが出るんです。
銭形平次捕物控:230 艶妻伝
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
私は誰から教はつたのでもない信條をもう一つ持つてゐるのよ、
滅多
(
めつた
)
に云はないのだけれど。でもそれは私を
悦
(
よろこ
)
ばせ、私はそれに縋つてゐるのよ。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
滅多
(
めつた
)
打無念々々と
跡退
(
あとじさ
)
り既に斯よと見えける處へ惣内は
息切
(
いきせき
)
と引返し來り
爭
(
あらそ
)
ふ聲を聞や
否
(
いな
)
ヤア
叔父樣
(
をぢさん
)
か惣内か此奴はお里を
追駈
(
おつかけ
)
し
盜賊
(
たうぞく
)
なるぞと
呼
(
よば
)
はるに惣内心得
脇差
(
わきざし
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
彼
(
かれ
)
はたゞ
教場
(
けうぢやう
)
へ
出
(
で
)
て、
普通
(
ふつう
)
の
學生
(
がくせい
)
のする
通
(
とほ
)
り、
多
(
おほ
)
くのノートブツクを
黒
(
くろ
)
くした。けれども
宅
(
うち
)
へ
歸
(
かへ
)
つて
來
(
き
)
て、それを
讀
(
よ
)
み
直
(
なほ
)
したり、
手
(
て
)
を
入
(
い
)
れたりした
事
(
こと
)
は
滅多
(
めつた
)
になかつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は其の或る空想の花に憧れて、
滅多
(
めつた
)
無性
(
むしやう
)
と其の影を追𢌞してゐた。而も彼の心は淋しい! そして眼に映る物の全てに意味があツて、疑が出て來て、氣が悶々してならぬ。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
然
(
さ
)
うでもござりやすめえ、
奥様
(
おくさま
)
は、
其
(
そ
)
のお
前様
(
めえさま
)
を
捜
(
さが
)
し
歩行
(
ある
)
いて、
其
(
それ
)
で
未
(
ま
)
だ、お
帰
(
かへ
)
りが
無
(
な
)
いのでござりやせうで、
天狗様
(
てんぐさま
)
も
二人一所
(
ふたりいつしよ
)
に
攫
(
さら
)
はつしやることは
滅多
(
めつた
)
にねえ
事
(
こと
)
でござります。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
このかれの立つてゐる向うに、深い深い草藪があつて、その中に黒い暗い何年にも人の入つて来たことのない古池が
湛
(
たゝ
)
へられてあつた。そこには雲の影も映らなければ、日影も
滅多
(
めつた
)
にはさして来ない。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
日本人は皆、学ばずとも鑑賞の道を心得てゐるらしい。その晩も能の看客は大抵謡本を前にしたまま、
滅多
(
めつた
)
に舞台などは眺めなかつた!
金春会の「隅田川」
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
いえ、外に、これの兄が御座います。片輪者で
滅多
(
めつた
)
に人前へは顏を出しませんが、器用な男で、つまらない細工物をしてお小遣を
銭形平次捕物控:013 美女を洗ひ出す
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
勘次
(
かんじ
)
は
與吉
(
よきち
)
が
卯平
(
うへい
)
から
錢
(
ぜに
)
を
貰
(
もら
)
ふことを
知
(
し
)
つてから
只
(
たゞ
)
さへ
滅多
(
めつた
)
にくれたことのない
彼
(
かれ
)
は
決
(
けつ
)
して一
度
(
ど
)
も
與
(
あた
)
へることがなかつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
このときも、彼は私の口にした
素氣
(
そつけ
)
ない返答には心を留めないで、彼特有のある
微笑
(
ほゝゑみ
)
を浮べて私を見た。而もそれは
滅多
(
めつた
)
にしか表はさないものであつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
宗助
(
そうすけ
)
は
朝
(
あさ
)
出
(
で
)
て
四時過
(
よじすぎ
)
に
歸
(
かへ
)
る
男
(
をとこ
)
だから、
日
(
ひ
)
の
詰
(
つま
)
る
此頃
(
このごろ
)
は、
滅多
(
めつた
)
に
崖
(
がけ
)
の
上
(
うへ
)
を
覗
(
のぞ
)
く
暇
(
ひま
)
を
有
(
も
)
たなかつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
見送
(
みおく
)
りも爲ざりし由
檢使場
(
けんしば
)
でも御奉行樣のお前でも申立たる赴きゆゑはてなと思うて居るものゝ人の事にて兎や角と
言爭
(
いひあら
)
そはんも
益
(
えき
)
なき事
殊
(
こと
)
に私しの女房の云には
滅多
(
めつた
)
にそんな事を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
茶碗
(
ちやわん
)
に茶を
汲
(
く
)
んで出すと、茶を飲む前にその茶碗を見る。これは日本人には
家常茶飯
(
かじやうさはん
)
に見る事だが、西洋人は
滅多
(
めつた
)
にやらぬらしい。
雑筆
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
例へば裏の物置の一番奧に立てかけてある二三十本の大きな材木、あれは床柱などに使ふ結構な銘木で、
滅多
(
めつた
)
に賣れる品ぢやございません。
銭形平次捕物控:164 幽霊の手紙
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
僕は
只
(
ただ
)
それだけを心がけてゐる。それだけでもペンを持つて見ると、
滅多
(
めつた
)
にすらすら行つたことはない。必ずごたごたした文章を書いてゐる。
文章と言葉と
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「お袖さんが居る時は、
滅多
(
めつた
)
に覗かなかつたやうです。決して顏を見せないのは、お内儀さんとお孃さんくらゐのもので」
銭形平次捕物控:290 影法師
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
しかし恋人と云ふものは
滅多
(
めつた
)
に実相を見るものではない。いや、我我の
自己欺瞞
(
じこぎまん
)
は一たび恋愛に陥つたが最後、最も完全に行はれるのである。
侏儒の言葉
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「ブルブル、親分に見せないうちは、
滅多
(
めつた
)
なことが出來ねえ。これから不動樣の縁日で見世物を二つ三つ冷かして、八丁堀へ行つてみるとしやう」
銭形平次捕物控:031 濡れた千両箱
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
朝寝も好きなら宵寝も好きなる事、百日紅の如きは
滅多
(
めつた
)
になし。自分は時々この木の横着なるに、人間同様腹を立てる事あり。(九月十三日)
雑筆
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「そいつはあつしも心掛けて居るが、首筋に火の燃えるやうな眞赤な
痣
(
あざ
)
のある人間なんか、
滅多
(
めつた
)
に見付かりませんよ」
銭形平次捕物控:124 唖娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
全精神を振ひ起さなければ
滅多
(
めつた
)
に常談も云ふことは出来ない。それを佐藤は世間と共に容易の業のやうに誤解してゐる。
佐藤春夫氏
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
よし/\、其處までわかれば結構だ。が、
滅多
(
めつた
)
な口をきくなよ、——あの女隱居はすつかり元氣を取り戻して、孝吉を
銭形平次捕物控:196 三つの死
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼等はいづれも一代を動揺させた性格である。が、
如何
(
いか
)
に西洋でも、彼等のやうな人間は、
滅多
(
めつた
)
にゐぬのに相違ない。
点心
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
日頃、
滅多
(
めつた
)
に腹を立てない平次が、蟲の居所が惡かつたものか、斯んな飛んでもない事を言ふのでした。
銭形平次捕物控:042 庚申横町
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
滅
常用漢字
中学
部首:⽔
13画
多
常用漢字
小2
部首:⼣
6画
“滅多”で始まる語句
滅多矢鱈
滅多無性
滅多打
滅多切
滅多捲
滅多撲
滅多斬
滅多汁