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このよ
ふりがな文庫
“
此世
(
このよ
)” の例文
ベンヺ おゝ、ロミオ/\、マーキューシオーはお
死
(
し
)
にゃったぞよ! あの
勇敢
(
ゆうかん
)
な
魂
(
たましひ
)
は
氣短
(
きみじか
)
に
此世
(
このよ
)
を
厭
(
いと
)
うて、
雲
(
くも
)
の
上
(
うへ
)
へ
昇
(
のぼ
)
ってしまうた。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
「
世
(
よ
)
の
人々
(
ひとびと
)
の
御主
(
おんあるじ
)
よ、われをも
拯
(
たす
)
け
給
(
たま
)
へ。」
此世
(
このよ
)
の
御扶
(
おんたすけ
)
も
蒼白
(
あをじろ
)
いこのわが
罪業
(
ざいごふ
)
は
贖
(
あがな
)
ひ
給
(
たま
)
はなかつた。わが
身
(
み
)
は
甦生
(
よみがへり
)
の
日
(
ひ
)
まで
忘
(
わすれ
)
られてゐる。
癩病やみの話
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
か様にして、厭人病者と死骸との、
此世
(
このよ
)
のものならぬ狂体は、不気味に、執拗に、その夜一夜、
夜
(
よ
)
のあけるまでも、続けられたのである。
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
人
(
ひと
)
の
生血
(
いきち
)
をしぼりたる
報
(
むく
)
ひか、五十にも
足
(
た
)
らで
急病
(
きうびやう
)
の
腦充血
(
のうじうけつ
)
、一
朝
(
あさ
)
に
此世
(
このよ
)
の
税
(
ぜい
)
を
納
(
をさ
)
めて、よしや
葬儀
(
さうぎ
)
の
造花
(
つくりばな
)
、
派手
(
はで
)
に
美事
(
みごと
)
な
造
(
おく
)
りはするとも
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
代表的なレコードは、テナーのマルティネリーと歌った『アイーダ』の「さらば
此世
(
このよ
)
」(三〇四一)であったが惜しいことに廃盤になった。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
▼ もっと見る
事實
(
じゝつ
)
、
此世
(
このよ
)
に
亡
(
な
)
い
人
(
ひと
)
かも
知
(
し
)
れないが、
僕
(
ぼく
)
の
眼
(
め
)
にはあり/\と
見
(
み
)
える、
菅笠
(
すげがさ
)
を
冠
(
かぶ
)
つた
老爺
(
らうや
)
のボズさんが
細雨
(
さいう
)
の
中
(
うち
)
に
立
(
たつ
)
て
居
(
ゐ
)
る。
都の友へ、B生より
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
悲命の最期をとげたのは、
頭殿
(
こうのとの
)
ばかりではない。嫡男の悪源太
義平
(
よしひら
)
どのも、次男の朝長どのも、もはや
此世
(
このよ
)
のお人ではない——と云い聞かせた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
『あゝ、
柳川
(
やながは
)
さん、
妾
(
わたくし
)
は、
貴方
(
あなた
)
と
此世
(
このよ
)
で
御目
(
おめ
)
に
掛
(
か
)
からうとは——。』と
言
(
い
)
つたまゝ、
其
(
その
)
美
(
うる
)
はしき
顏
(
かほ
)
は
私
(
わたくし
)
の
身邊
(
しんぺん
)
を
見廻
(
みまは
)
した。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
それによって単にわれわれ自身の目的を達するのみならず、あの
此世
(
このよ
)
の
方
(
かた
)
ならぬ主権者の真の繁栄を増すためなのだ。
ペスト王:寓意を含める物語
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
『さう』と
云
(
い
)
つて
公爵夫人
(
こうしやくふじん
)
は、『それにも
徳義
(
とくぎ
)
がある——「それは、それは
友愛
(
いうあい
)
です、それは
友愛
(
いうあい
)
です、それは
此世
(
このよ
)
を
圓滑
(
ゑんくわつ
)
にするところのものです!」』
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
足袋
(
たび
)
股引
(
もゝひき
)
の
支度
(
したく
)
ながらに答へたるに
人々
(
ひと/\
)
其
(
その
)
しをらしきを感じ合ひしがしをらしとは
本
(
もと
)
此世
(
このよ
)
のものに
非
(
あら
)
ずしをらしきが
故
(
ゆゑ
)
に
此男
(
このをとこ
)
の
此世
(
このよ
)
の
車夫
(
しやふ
)
とは落ちしなるべし。
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
我が
抜苦
(
ばつく
)
与楽
(
よらく
)
の
説法
(
せつぱう
)
を
疑
(
うたが
)
ふ事なく
一図
(
いちづ
)
に
有
(
あり
)
がたがツて
盲信
(
まうしん
)
すれば
此世
(
このよ
)
からの
極楽
(
ごくらく
)
往生
(
おうじやう
)
決
(
けつ
)
して
難
(
かた
)
きにあらず。
為文学者経
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
、
三文字屋金平
(著)
代助が
黙然
(
もくねん
)
として、
自己
(
じこ
)
は何の
為
(
ため
)
に
此世
(
このよ
)
の
中
(
なか
)
に
生
(
うま
)
れて
来
(
き
)
たかを考へるのは
斯
(
か
)
う云ふ時であつた。彼は今迄何遍も此大問題を
捕
(
とら
)
へて、
彼
(
かれ
)
の
眼前
(
がんぜん
)
に据ゑ付けて見た。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
一九二八年の真夏、狂詩人が
此世
(
このよ
)
を去つてしまつた頃から私の健康もとかく
優
(
すぐ
)
れなかつた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
それは下町の町人の娘で、
文政
(
ぶんせい
)
四年生れの今年十三になるのであるが、
何
(
ど
)
ういふわけか
此世
(
このよ
)
に生れ落ちるとから
彼女
(
かれ
)
は明るい光を嫌つて、いつでも暗いところにゐるのを
好
(
この
)
んだ。
梟娘の話
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
惜くもなき命は有り
候
(
さふらふ
)
ものにて、はや
其
(
それ
)
より
七日
(
なぬか
)
に
相成候
(
あひなりさふら
)
へども、
猶
(
なほ
)
日毎
(
ひごと
)
に心地
苦
(
くるし
)
く相成候やうに覚え候のみにて、今以つて
此世
(
このよ
)
を去らず候へば、未練の程の
御
(
おん
)
つもらせも
然
(
さ
)
ぞかしと
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
花子姉さんと
談話
(
はなし
)
をしながら乃公の頭を撫でた。失敬な事をする。赤ん坊じゃあるまいし。多分花さんを思っているのだろうけれど、花さんは清水さんの外
此世
(
このよ
)
に男はないと信じている。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
そは
永久
(
とこしへ
)
の
聖
(
せい
)
なる自然、
汝
(
なれ
)
を
此世
(
このよ
)
に呼びたればなり。
母
(旧字旧仮名)
/
アダ・ネグリ
(著)
あれこそは
此世
(
このよ
)
の
名譽
(
めいよ
)
といふ
名譽
(
めいよ
)
が、
只
(
た
)
った
一人
(
ほとり
)
王樣
(
わうさま
)
となって、
坐
(
すわ
)
る
帝座
(
ていざ
)
ぢゃ。おゝ、
何
(
なん
)
といふ
獸物
(
けだもの
)
ぢゃ
予
(
わし
)
は、かりにも
彼
(
あ
)
の
方
(
かた
)
を
惡
(
わる
)
ういふとは!
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
ただ
併
(
しか
)
し、私はその様な道具立のおどろおどろしき物語よりも、
此世
(
このよ
)
の中には、もっともっと不思議な事件があるような気がしてならないのです。
奇談クラブ〔戦後版〕:17 白髪の恋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ゆるし
給
(
たま
)
へ
我
(
わ
)
れはいかばかり
憎
(
にく
)
きものに
思召
(
おぼしめ
)
されて
物知
(
ものし
)
らぬ
女子
(
をなご
)
とさげすみ
給
(
たま
)
ふも
厭
(
いと
)
はじ、
我
(
わ
)
れは
斯
(
かゝ
)
る
果敢
(
はか
)
なき
運
(
うん
)
を
持
(
も
)
ちて
此世
(
このよ
)
に
生
(
うま
)
れたるなれば
軒もる月
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
御扶手
(
おんたすけて
)
、
此世
(
このよ
)
を
救
(
すく
)
ひ
給
(
たま
)
うてより、
今年
(
ことし
)
まで
一千二百十二年
(
いつせんにひやくじふにねん
)
になるが、このあたしにはお
拯
(
たすけ
)
が
無
(
な
)
い。
主
(
しゆ
)
を
貫通
(
つきとほ
)
した
血染
(
ちぞめ
)
の
槍
(
やり
)
がこの
身
(
み
)
に
触
(
さは
)
らないのである。
癩病やみの話
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
息子
(
むすこ
)
は
平氣
(
へいき
)
なものです「また
始
(
はじ
)
まつたよ。おつかさん、お
前
(
まへ
)
は
相變
(
あひかは
)
らず
馬鹿正直
(
ばかしやうじき
)
だねえ、
其樣
(
そん
)
なけち/\した
事
(
こと
)
で
此世
(
このよ
)
が
渡
(
わた
)
れるかえ。」と
大酒
(
おほざけ
)
飮
(
の
)
んで
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
それとも又、私に、もっと芸術的な天分が、与えられていましたなら、例えば美しい詩歌によって、
此世
(
このよ
)
の
味気
(
あじき
)
なさを、忘れることが出来たでもありましょう。
人間椅子
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そんな裏覗きばかりしないで、もっと、人間と
此世
(
このよ
)
の、いい所、美しい所も、少しは、見たらどうだろう
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
殿
(
との
)
が
憎
(
にく
)
しみに
逢
(
あ
)
ふべきほどの
果敢
(
はか
)
なき
運
(
うん
)
を
持
(
も
)
ちて
此世
(
このよ
)
に
生
(
うま
)
れたるなれば、ゆるし
給
(
たま
)
へ
不貞
(
ふてい
)
の
女子
(
をなご
)
に
計
(
はから
)
はせ
給
(
たま
)
ふな、
殿
(
との
)
。
軒もる月
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
今
(
いま
)
は
此世
(
このよ
)
に
亡
(
な
)
き
人
(
ひと
)
とのみ
思
(
おも
)
つて
居
(
を
)
つた
彼
(
かれ
)
の
妻
(
つま
)
——
松島大佐
(
まつしまたいさ
)
の
令妹
(
れいまい
)
——
日出雄少年
(
ひでをせうねん
)
の
母君
(
はゝぎみ
)
なる
春枝夫人
(
はるえふじん
)
であつた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
又
(
また
)
諸所
(
しよしよ
)
の
修道院
(
しうだうゐん
)
を
訪
(
ともら
)
つて、もはや
此世
(
このよ
)
に
居
(
ゐ
)
ない
会友
(
くわいいう
)
の
為
(
ため
)
に
祈
(
いのり
)
を
上
(
あ
)
げ、
其名
(
そのな
)
を
巻物
(
まきもの
)
に
書
(
か
)
きとめて、
寺
(
てら
)
から
寺
(
てら
)
へと
其過去帳
(
そのくわこちやう
)
を
持回
(
もちまは
)
つたなら、
皆
(
みんな
)
も
嘸
(
さぞ
)
悦
(
よろこ
)
ぶ
事
(
こと
)
であらうが、
第
(
だい
)
一
浮浪学生の話
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
廣介自身を
此世
(
このよ
)
から
掻
(
か
)
き消して了うことは、比較的容易でありましたが、この一個の人間の死体を、絶対に人目にかからぬ様に始末することは、非常な難事に相違ありません。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
黄金色
(
こがねいろ
)
の夕陽を浴びた山々、その先に碧を
湛
(
たた
)
えた海、すべてが
此世
(
このよ
)
とも覚えぬ美しさの裏に、次第に明るさを失って、東の空から、薄紫の夕陽を破って、大きな名月が、ツ、ツ
大江戸黄金狂
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
街をつらぬいている加茂川も、ただの水が流れているただの川とは思えなかった。かつて寺院の奥で拝んだことのある“
浄土曼陀羅図
(
じょうどまんだらず
)
”そのままな国が
此世
(
このよ
)
にもあったのかと思う。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
娘御
(
むすめご
)
の
出世
(
しゅっせ
)
を
願
(
ねが
)
ひ、
其
(
その
)
昇進
(
しょうしん
)
をば
此世
(
このよ
)
の
天國
(
てんごく
)
とも
思
(
おも
)
はしゃった
貴下
(
こなた
)
が、
只今
(
たゞいま
)
娘御
(
むすめご
)
が
雲
(
くも
)
の
上
(
うへ
)
の
眞
(
まこと
)
の
天國
(
てんごく
)
へ
昇進
(
しゃうしん
)
せられたのを、
何
(
なん
)
として
歎
(
なげ
)
かしゃるぞ! おゝ、
安
(
やす
)
らかにならしゃれたを
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
彼
(
あ
)
れは
快
(
こゝろよ
)
く
瞑
(
めい
)
することが
出來
(
でき
)
ると
遺書
(
ゐしよ
)
にもあつたと
言
(
い
)
ふではないか、
彼
(
あ
)
れは
潔
(
いさぎよ
)
く
此世
(
このよ
)
を
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
つたので、お
前
(
まへ
)
の
事
(
こと
)
も
併
(
あは
)
せて
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
つたので
決
(
けつ
)
して
未練
(
みれん
)
は
殘
(
のこ
)
して
居
(
ゐ
)
なかつたに
うつせみ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
ある探偵小説家は(彼も又退屈の余り、
此世
(
このよ
)
に残された唯一の刺戟物として、探偵小説を書き始めた男であったが)この様な
血腥
(
ちなまぐさ
)
い犯罪から犯罪へと進んで行って、
遂
(
つい
)
には小説では満足出来なくなり
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
逢わで
此世
(
このよ
)
を
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それですが
彼
(
あ
)
の
時分
(
じぶん
)
の
私
(
わたし
)
の
地位
(
ちゐ
)
に
他
(
ほか
)
の
人
(
ひと
)
を
置
(
お
)
いて
御覽
(
ごらう
)
じろ、それは
何
(
ど
)
んな
諦
(
あきら
)
めのよい
悟
(
さと
)
つたお
方
(
かた
)
にしたところが、
是非
(
ぜひ
)
此世
(
このよ
)
の
中
(
なか
)
は
詰
(
つま
)
らない
面白
(
おもしろ
)
くないもので、
隨分
(
ずゐぶん
)
とも
酷
(
ひど
)
い、つれない
この子
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
昨日
(
きのふ
)
の
午後
(
ごゝ
)
より
谷中
(
やなか
)
の
母
(
かゝ
)
さんが
急病
(
きうびやう
)
、
癪氣
(
しやくけ
)
で
御座
(
ござ
)
んすさうな、つよく
胸先
(
むなさき
)
へさし
込
(
こ
)
みまして、一
時
(
じ
)
はとても
此世
(
このよ
)
の
物
(
もの
)
では
有
(
あ
)
るまいと
言
(
い
)
ふたれど、お
醫者
(
いしや
)
さまの
皮下注射
(
ひかちうしや
)
やら
何
(
なに
)
やらにて
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
成程
(
なるほど
)
太郎
(
たらう
)
に
別
(
わか
)
れて
顏
(
かほ
)
も
見
(
み
)
られぬ
樣
(
やう
)
にならば
此世
(
このよ
)
に
居
(
ゐ
)
たとて
甲斐
(
かひ
)
もないものを、
唯
(
たゞ
)
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
の
苦
(
く
)
をのがれたとて
何
(
ど
)
うなる
物
(
もの
)
で
御座
(
ござ
)
んせう、ほんに
私
(
わたし
)
さへ
死
(
し
)
んだ
氣
(
き
)
にならば三
方
(
ぱう
)
四
方
(
はう
)
波風
(
なみかぜ
)
たゝず
十三夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
到底
(
とても
)
これに
相續
(
そうぞく
)
は
石油藏
(
せきゆぐら
)
へ
火
(
ひ
)
を
入
(
い
)
れるやうな
物
(
もの
)
、
身代
(
しんだい
)
烟
(
けふ
)
りと
成
(
な
)
りて
消
(
き
)
え
殘
(
のこ
)
る
我等
(
われら
)
何
(
なに
)
とせん、あとの
兄弟
(
けうだい
)
も
不憫
(
ふびん
)
と
母親
(
はゝおや
)
、
父
(
ちゝ
)
に
讒言
(
ざんげん
)
の
絶間
(
たえま
)
なく、さりとて
此放蕩子
(
これ
)
を
養子
(
やうし
)
にと申
受
(
うく
)
る
人
(
ひと
)
此世
(
このよ
)
にはあるまじ
大つごもり
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
俄
(
には
)
かに
暑氣
(
しよき
)
つよくなりし
八月
(
はちぐわつ
)
の
中旬
(
なかば
)
より
狂亂
(
きやうらん
)
いたく
募
(
つの
)
りて
人
(
ひと
)
をも
物
(
もの
)
をも
見分
(
みわか
)
ちがたく、
泣
(
な
)
く
聲
(
こゑ
)
は
晝夜
(
ちうや
)
に
絶
(
た
)
えず、
眠
(
ねぶ
)
るといふ
事
(
こと
)
ふつに
無
(
な
)
ければ
落入
(
おちいり
)
たる
眼
(
まなこ
)
に
形相
(
ぎやうさう
)
すさまじく
此世
(
このよ
)
の
人
(
ひと
)
とも
覺
(
おぼ
)
えずなりぬ
うつせみ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
だから
此世
(
このよ
)
は
厭
(
いや
)
なものと
斯
(
か
)
う
極
(
き
)
めました。
この子
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
嫁
(
よめ
)
になどゝは
思
(
おも
)
ひも
寄
(
よ
)
らぬことなり
芳之助
(
よしのすけ
)
は
兎
(
と
)
もあれ
我
(
わ
)
れ
許
(
ゆる
)
さずと
御立腹
(
ごりつぷく
)
の
數々
(
かず/\
)
それいさゝかも
御無理
(
ごむり
)
ならねどお
前
(
まへ
)
さまと
縁
(
えん
)
きれて
此世
(
このよ
)
何
(
なん
)
の
樂
(
たの
)
しからずつらき
錦野
(
にしきの
)
がこともあり
所詮
(
しよせん
)
は
此命
(
このいのち
)
一
(
ひと
)
つぞと
覺悟
(
かくご
)
の
道
(
みち
)
も
同
(
おな
)
じやうに
行逢
(
ゆきあ
)
つてお
前
(
まへ
)
さまのお
心
(
こゝろ
)
伺
(
うかゞ
)
へば
其通
(
そのとほ
)
りとか
今更
(
いまさら
)
御違背
(
ごゐはい
)
のある
筈
(
はず
)
なし
私
(
わたし
)
は
嬉
(
うれ
)
しう
存
(
ぞん
)
じますを
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
此
漢検準1級
部首:⽌
6画
世
常用漢字
小3
部首:⼀
5画
“此世”で始まる語句
此世界
此世的
此世車