此世このよ)” の例文
ベンヺ おゝ、ロミオ/\、マーキューシオーはおにゃったぞよ! あの勇敢ゆうかんたましひ氣短きみじか此世このよいとうて、くもうへのぼってしまうた。
人々ひとびと御主おんあるじよ、われをもたすたまへ。」此世このよ御扶おんたすけ蒼白あをじろいこのわが罪業ざいごふあがなたまはなかつた。わが甦生よみがへりまでわすれられてゐる。
か様にして、厭人病者と死骸との、此世このよのものならぬ狂体は、不気味に、執拗に、その夜一夜、のあけるまでも、続けられたのである。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ひと生血いきちをしぼりたるむくひか、五十にもらで急病きうびやう腦充血のうじうけつ、一あさ此世このよぜいをさめて、よしや葬儀さうぎ造花つくりばな派手はで美事みごとおくりはするとも
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
代表的なレコードは、テナーのマルティネリーと歌った『アイーダ』の「さらば此世このよ」(三〇四一)であったが惜しいことに廃盤になった。
事實じゝつ此世このよひとかもれないが、ぼくにはあり/\とえる、菅笠すげがさかぶつた老爺らうやのボズさんが細雨さいううちたつる。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
悲命の最期をとげたのは、頭殿こうのとのばかりではない。嫡男の悪源太義平よしひらどのも、次男の朝長どのも、もはや此世このよのお人ではない——と云い聞かせた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『あゝ、柳川やながはさん、わたくしは、貴方あなた此世このよ御目おめからうとは——。』とつたまゝ、そのうるはしきかほわたくし身邊しんぺん見廻みまはした。
それによって単にわれわれ自身の目的を達するのみならず、あの此世このよかたならぬ主権者の真の繁栄を増すためなのだ。
『さう』とつて公爵夫人こうしやくふじんは、『それにも徳義とくぎがある——「それは、それは友愛いうあいです、それは友愛いうあいです、それは此世このよ圓滑ゑんくわつにするところのものです!」』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
足袋たび股引もゝひき支度したくながらに答へたるに人々ひと/\そのしをらしきを感じ合ひしがしをらしとはもと此世このよのものにあらずしをらしきがゆゑ此男このをとこ此世このよ車夫しやふとは落ちしなるべし。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
我が抜苦ばつく与楽よらく説法せつぱううたがふ事なく一図いちづありがたがツて盲信まうしんすれば此世このよからの極楽ごくらく往生おうじやうけつしてかたきにあらず。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
代助が黙然もくねんとして、自己じこは何のため此世このよなかうまれてたかを考へるのはう云ふ時であつた。彼は今迄何遍も此大問題をとらへて、かれ眼前がんぜんに据ゑ付けて見た。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
一九二八年の真夏、狂詩人が此世このよを去つてしまつた頃から私の健康もとかくすぐれなかつた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
それは下町の町人の娘で、文政ぶんせい四年生れの今年十三になるのであるが、ういふわけか此世このよに生れ落ちるとから彼女かれは明るい光を嫌つて、いつでも暗いところにゐるのをこのんだ。
梟娘の話 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
惜くもなき命は有りさふらふものにて、はやそれより七日なぬか相成候あひなりさふらへども、なほ日毎ひごとに心地くるしく相成候やうに覚え候のみにて、今以つて此世このよを去らず候へば、未練の程のおんつもらせもぞかしと
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
花子姉さんと談話はなしをしながら乃公の頭を撫でた。失敬な事をする。赤ん坊じゃあるまいし。多分花さんを思っているのだろうけれど、花さんは清水さんの外此世このよに男はないと信じている。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そは永久とこしへせいなる自然、なれ此世このよに呼びたればなり。
(旧字旧仮名) / アダ・ネグリ(著)
あれこそは此世このよ名譽めいよといふ名譽めいよが、った一人ほとり王樣わうさまとなって、すわ帝座ていざぢゃ。おゝ、なんといふ獸物けだものぢゃわしは、かりにもかたわるういふとは!
ただしかし、私はその様な道具立のおどろおどろしき物語よりも、此世このよの中には、もっともっと不思議な事件があるような気がしてならないのです。
ゆるしたまれはいかばかりにくきものに思召おぼしめされて物知ものしらぬ女子をなごとさげすみたまふもいとはじ、れはかゝ果敢はかなきうんちて此世このようまれたるなれば
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
御扶手おんたすけて此世このよすくたまうてより、今年ことしまで一千二百十二年いつせんにひやくじふにねんになるが、このあたしにはおたすけい。しゆ貫通つきとほした血染ちぞめやりがこのさはらないのである。
息子むすこ平氣へいきなものです「またはじまつたよ。おつかさん、おまへ相變あひかはらず馬鹿正直ばかしやうじきだねえ、其樣そんなけち/\したこと此世このよわたれるかえ。」と大酒おほざけんで
それとも又、私に、もっと芸術的な天分が、与えられていましたなら、例えば美しい詩歌によって、此世このよ味気あじきなさを、忘れることが出来たでもありましょう。
人間椅子 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そんな裏覗きばかりしないで、もっと、人間と此世このよの、いい所、美しい所も、少しは、見たらどうだろう
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
殿とのにくしみにふべきほどの果敢はかなきうんちて此世このようまれたるなれば、ゆるしたま不貞ふてい女子をなごはからはせたまふな、殿との
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いま此世このよひととのみおもつてつたかれつま——松島大佐まつしまたいさ令妹れいまい——日出雄少年ひでをせうねん母君はゝぎみなる春枝夫人はるえふじんであつた。
また諸所しよしよ修道院しうだうゐんともらつて、もはや此世このよない会友くわいいうためいのりげ、其名そのな巻物まきものきとめて、てらからてらへと其過去帳そのくわこちやう持回もちまはつたなら、みんなさぞよろこことであらうが、だい
廣介自身を此世このよからき消して了うことは、比較的容易でありましたが、この一個の人間の死体を、絶対に人目にかからぬ様に始末することは、非常な難事に相違ありません。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
黄金色こがねいろの夕陽を浴びた山々、その先に碧をたたえた海、すべてが此世このよとも覚えぬ美しさの裏に、次第に明るさを失って、東の空から、薄紫の夕陽を破って、大きな名月が、ツ、ツ
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
街をつらぬいている加茂川も、ただの水が流れているただの川とは思えなかった。かつて寺院の奥で拝んだことのある“浄土曼陀羅図じょうどまんだらず”そのままな国が此世このよにもあったのかと思う。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
娘御むすめご出世しゅっせねがひ、その昇進しょうしんをば此世このよ天國てんごくともおもはしゃった貴下こなたが、只今たゞいま娘御むすめごくもうへまこと天國てんごく昇進しゃうしんせられたのを、なんとしてなげかしゃるぞ! おゝ、やすらかにならしゃれたを
れはこゝろよめいすることが出來できると遺書ゐしよにもあつたとふではないか、れはいさぎよ此世このよおもつたので、おまへことあはせておもつたのでけつして未練みれんのこしてなかつたに
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ある探偵小説家は(彼も又退屈の余り、此世このよに残された唯一の刺戟物として、探偵小説を書き始めた男であったが)この様な血腥ちなまぐさい犯罪から犯罪へと進んで行って、ついには小説では満足出来なくなり
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
逢わで此世このよ
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それですが時分じぶんわたし地位ちゐほかひといて御覽ごらうじろ、それはんなあきらめのよいさとつたおかたにしたところが、是非ぜひ此世このよなかつまらない面白おもしろくないもので、隨分ずゐぶんともひどい、つれない
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
昨日きのふ午後ごゝより谷中やなかかゝさんが急病きうびやう癪氣しやくけ御座ござんすさうな、つよく胸先むなさきへさしみまして、一はとても此世このよものではるまいとふたれど、お醫者いしやさまの皮下注射ひかちうしややらなにやらにて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
成程なるほど太郎たらうわかれてかほられぬやうにならば此世このよたとて甲斐かひもないものを、たゞまへをのがれたとてうなるもの御座ござんせう、ほんにわたしさへんだにならば三ぱうはう波風なみかぜたゝず
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
到底とてもこれに相續そうぞく石油藏せきゆぐられるやうなもの身代しんだいけふりとりてのこ我等われらなにとせん、あとの兄弟けうだい不憫ふびん母親はゝおやちゝ讒言ざんげん絶間たえまなく、さりとて此放蕩子これ養子やうしにと申うくひと此世このよにはあるまじ
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
にはかに暑氣しよきつよくなりし八月はちぐわつ中旬なかばより狂亂きやうらんいたくつのりてひとをもものをも見分みわかちがたく、こゑ晝夜ちうやえず、ねぶるといふことふつにければ落入おちいりたるまなこ形相ぎやうさうすさまじく此世このよひとともおぼえずなりぬ
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
だから此世このよいやなものとめました。
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
よめになどゝはおもひもらぬことなり芳之助よしのすけもあれゆるさずと御立腹ごりつぷく數々かず/\それいさゝかも御無理ごむりならねどおまへさまとえんきれて此世このよなんたのしからずつらき錦野にしきのがこともあり所詮しよせん此命このいのちひとつぞと覺悟かくごみちおなじやうに行逢ゆきあつておまへさまのおこゝろうかゞへば其通そのとほりとか今更いまさら御違背ごゐはいのあるはずなしわたしうれしうぞんじますを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)