)” の例文
ニールスはあわててめようとして、かえって、じぶんもガチョウのせなかにのったまま、空の旅に出ることになってしまいました。
小鳥ことりは、まず屋根やねうえまりました。そして、これからどっちへかってげていったらいいかと、しばし思案しあんにふけったのです。
めくら星 (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、右の方から黒い大きな戸が音を立ててしまって来た。彼はしかたなしに足をめたが、その戸はみるみる左の方へ往ってしまった。
女の首 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
飯「おれほかたのしみはなく釣がごく好きで、番がこむから、たまには好きな釣ぐらいはしなければならない、それをめてくれては困るな」
接待係の人がめたが、やめないらしい。やっぱり右手で盛なジェステュアをしながら、死は厳粛であるとかなんとか言っている。
葬儀記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あれよ/\とみてゐると水煙みづけむりきゆうおとろくちぢて噴出ふんしゆつ一時いちじまつてしまつたが、わづか五六秒位ごろくびようくらゐ經過けいかしたのちふたゝはじめた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
「腕の彫青いれずみを、痛む方の頬べんたにこすりつけて——お京、お京、お京。……と、三べん、いうてごらん。じき、疼くのがまる」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
その時何物も恐れない千代子の眼が、僕の視線と無言のうちに行き合って、両方共しばらくそこにまっていた事も記憶している。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お山の大将たいしょうおれひとり——というかくで、中にまじっている徳川万千代とくがわまんちよは、みんなと一しょに、つなぎめた大鷲おおわしを取りまきながら
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もうなんでも野島のじまわたらずにはいられなくなりました。そこで夢野ゆめの牝鹿めじかめるのもきかずに、とうとう出かけて行きました。
夢占 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
しばらまつててゐるうちに、いしかべ沿うてつくけてあるつくゑうへ大勢おほぜいそうめしさいしる鍋釜なべかまからうつしてゐるのがえてた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
なぜなら、顔を顰め鼻息を鳴らしながら帳場から自分で勝手に取って来て飲み、だれ一人もそれをめようとする者がなかったのだから。
(無音にて機を織る。——はるかの屋外にて、堅き城門の開く音す。女子は機の手をめて耳を澄ます。その音尚かすかに響き来る)
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
例の時間の錯誤さくごについて申出ればよかったのかも知れませんが、河野が「死体の捜索にもなることだから、めるにも及ぶまい」
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
かまあねえでけ、うなつてあつちへつてからにしろ」勘次かんじ性急せいきふきびしくおつぎをめた。おつぎは仕方しかたなくくのもかまはずにたがやした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
すこしもながく、おせんをめておきたい人情にんじょうが、たがいくち益々ますますかるくして、まるくかこんだ人垣ひとがきは、容易よういけそうにもなかった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
萬歳ばんざい難有ありがたいが、おにともまんず荒男あらくれをとこが、前後左右ぜんごさゆうからヤンヤヤンヤと揉上もみあげるので、そのくるしさ、わたくし呼吸いきまるかとおもつた。
五八も驚きしつかといだは若旦那にてありしか私し事は多く御恩ごおんあづかり何かと御贔屓下ごひいきくだされし者なれば先々まづ/\わけあとの事手前の宿やどへ御供を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
俺は、俺を呼びめたのが甲吉だと知ると、思い切り詰らなそうな顔をして見せた。「お前えと一緒に歩くのは厭だよ」と云わぬばかりに。
今度こそ (新字新仮名) / 片岡鉄兵(著)
娘は煉瓦積む手をめて、男のかほぢろりと見た。もう眼には泪を一杯溜めて居たが、それでも男の跡にいて行つてしまつた。惚れてゐるのだ。
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
まだ小さいのに気が荒かったゆえ、走りまわってばかりいて、あれ危ないと思ってもめる事が出来なんだ。ああ、この窓じゃ。
年少としわかくて屈竟くつきやうきやくは、身震みぶるひして、すつくとつて、内中うちぢうめるのもかないで、タン、ド、ドン!との、其處そこしとみけた。——
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
兄の申すことには私もさからうことが出来ず、大阪に足をめまして、緒方おがた先生の塾に入門したのは安政二年卯歳うどしの三月でした。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ちやうど桃の実のれる頃で、果物好きな乙羽は、汽車の窓から桃の実をしこたまひ込むで、次ぎから次ぎへともなく貪り食つた。
どうせろくなことではないと知っているのだろう。一時思いまったが、また駆け出した。そして今度はその最後の一輌いちりょうにようやく追い着いた。
一兵卒 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
『一、二、三、すゝめ』の號令がうれいもなく、各自てんでみな勝手かつてはしして勝手かつてまりましたから、容易ようい競爭きやうさうをはりをることが出來できませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「吉田さんへ」、と雪江さんは皮をく手をめて、「あたしちっとも知らなかったけど、今晩が春子さんのお輿入こしいれなんですって。 ...
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
またかれらは死にに行くようなものだからせといってめるに違いないけれどもそれでは大切の原書にって仏法を研究することが出来ない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
恩には着せねえが俺だから、今のぐらいのところでまったんだ。馬鹿あ、以来、気をつけろい。(川下へ行ってしまう)
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
ちひさく、はなあかく、肩幅かたはゞひろく、せいたかく、手足てあし圖※づぬけておほきい、其手そのてつかまへられやうものなら呼吸こきふまりさうな。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
しかし、孔寧、儀行父の二人が、上を畏れざるの臣は除かねばならぬと主張した。霊公も強いてはめない。翌日、洩冶は何者かに刺されてたおれた。
妖氛録 (新字新仮名) / 中島敦(著)
此纎弱このかよわむすめ一人ひとりとりむることかなはで、いきほひにりていだときにはだいをとこ二人ふたりがゝりにてもむつかしきときのありける。
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのために幾度いくたびまぶたぢ/\した。なみだおもむろにあふれでゝもう直視ちよくししようとはしない眼瞼まぶたひかり宿やどしてまつてゐた。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
この松をともして見たれば、子どもの夜啼をむるとて、往来の人けづり取り、きり取りけるほどに、その松ついに枯れて、今は根ばかりになりにけり。
小夜の中山夜啼石 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
溜息ためいきをついたりして、変だと思った事もあったのですが、大阪へいっても死ぬ日に、たった一人で住吉すみよしへお参詣まいりに行くといって、それをめたり
江木欣々女史 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
御主意ごしゆい御尤ごもつともさふらふ唱歌しやうかおもまりさふらふあさましいかな教室けうしつさふらふしたがつてこゝろよりもかたちをしへたく相成あひなかたむ有之これあり以後いご御注意ごちゆうい願上候ねがひあげさふらふ
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
一度乾いていた涙が、またもなく流れる。しかし、それはもう悲しみの涙ではなくて、永久に魂に喰い入る、淋しい淋しいあきらめの涙である。
秋の歌 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
しかし植林の善き感化はこれにとどまりませんでした。樹木の繁茂は海岸より吹き送らるる砂塵すなほこりの荒廃をめました。
兼吉けんきち五郎ごろうも主人に、おれがあやまるからといわれては口はあけない。酒代さかだいまいでかれらはむぞうさにきげんをなおした。水車の回転かいてんめずにすんだ。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ひどく身を入れてくれているのにほだされて、結局そうも云い出しかねてしまったのであるが、今になれば矢張あの時めなかったことが後悔せられた。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ガヤガヤしてたやつがぴったりまる。見る——なるほど、銀地ぎんじに短冊を散らしりにした屏風が、死人の枕頭ちんとうを囲むように、逆さに置いてあるのだ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
かく言う僕も他人より賛辞を受けたことはないが、上に挙げた例の一部にあたっているかも知れないと思えば、この辺が筆をめるところであろうか。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「だから、八さん、そんな危ない細工をめて下さいな。御自分の顏も當れない人なんですから、何處か切りはしないかと、宜い加減ヒヤヒヤしますよ」
植民地攻略としての発展の勢はまった。あとは既に手に入れた植民地の維持が主要事になる。マラッカの如きは辛うじて維持が続けられ得たのである。
鎖国:日本の悲劇 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
結局これは心霊波の元締もとじめをやって居る守護神しゅごじんというものに頼んで、その電波をめて貰うより仕様しようがない、あなたをひとつ心霊研究会へ御紹介するから
なく飛び降りつづけるのである。ちょっと油断すれば先行者の姿は草か倒木の下に隠れて見失うのである。
木曽御嶽の両面 (新字新仮名) / 吉江喬松(著)
私はとっさに、汽笛きてきをならし、制動機せいどうきに手をかけて、汽車をめようとしました。火夫かふたちもみな立上たちあがりました。むこうの汽車でも、汽笛きてきをならしています。
ばかな汽車 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ついでに頭の機能はたらきめて欲しいが、こればかりは如何どうする事も出来ず、千々ちぢに思乱れ種々さまざま思佗おもいわびて頭にいささかの隙も無いけれど、よしこれとてもちッとのの辛抱。
彼は云いしれぬ悪寒がする様なのをめる事が出来なかった。が怪しい声は確かにここから出て来ると思った。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
是とてもめて引いてくるほどの流れが無ければ、小さな島々の住民にはまずくわだてられないことであった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)