“杳”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
よう72.4%
はる20.0%
はるか3.8%
えう2.9%
ハルカ1.0%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
が、天才とまで激賞された吉野君は、その後「文学世界」の投書をよしてから、もう何年になるかも知れないが、ようとして文壇に名を現す所がない。
無名作家の日記 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
それ以来、一年にもなるが依然三上の行方は、ようとして謎のように分らない、という、ロイスの話を一通り聴きおわると、折竹がやさしく上目使いをして、
人外魔境:05 水棲人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
即時、家人を八方へ派して、心当りを尋ねるやら、密々、検非違使けびいしの手まで借りて捜査したが、男女の行方は、ようとして分らない。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伝馬町てんまちょうの大牢でも顔を売り、ついに、三宅島みやけじまに送られ、そこを破ってからは、ようとして消息を絶していたのが、いつの間にか
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
と、後から急に狼狽したように叫びつつ彼は手を振りながら飛び出した。だがもう外は暗い夜で二人の影はどこへ行ったのやら、既にようとして消え失せていた。
天馬 (新字新仮名) / 金史良(著)
音といふものは、それが遠くなりはるかになると共に、カスタネツトの音も車の轣轆れきろくも、人の話聲も、なにもかもが音色を同じくしてゆく。
闇への書 (旧字旧仮名) / 梶井基次郎(著)
霊がこまかい神経の末端にまで行きわたって、泥でできた肉体の内部を、軽く清くすると共に、官能の実覚からはるかに遠からしめた状態であった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
霞たつ暖い日で、山は空と溶け合うて、ややともすればその輪廓を見失うほど、はるかに、そしてかすかなものであった。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
取りとめもないはるかな想い、窓の外を飛びゆく切れ切れの景色、規則的な車輪の響き、而も安らかな静寂……ぽつりぽつりと、降るとも見えぬ雨脚が、窓硝子に長く跡を引いていた。
丘の上 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
今まで広い空間に孤独を歎き、一人を歎き、自然の無関心をなげいた自己は、はるかに遠い過去に没し去つた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
ただ斯様かように現実界を遠くに見て、はるかな心にすこしのわだかまりのないときだけ、句も自然とき、詩も興に乗じて種々な形のもとに浮んでくる。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
外にこれを求むる能はず、重ねてこれを得べからざる父と母とは、相携へてはるかはるかに隔つる世の人となりぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
其処に佇んだ彼女の心には云い知れぬはるかな思いが宿った。
湖水と彼等 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
——はるかの屋外にて、堅き城門の開く音す。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
我も亦この一書によつて彼の名を記憶するに止まれども、彼の才あつて然もえうとして天下に知られざるは心惜しき思せらる。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
その後えうとして消息を聞かないが、彼はまだ今まで、読本の稿を起してゐるだらうか。
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
吾人の霊性の、飄として捉へがたく、えうとして目覩もくとしがたきものは、其樹木の根の如し。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ビイアスは無気味ぶきみな物を書くと、少くとも英米の文壇では、ポオ以後第一人の観のある男ですが、(Amborose Bierce)御当人も第四の空間へでも飛びこんだのか、メキシコか何処どこかへく途中、えうとして行方ゆくへを失つたまま、わからずしまひになつてゐるさうです。
近頃の幽霊 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
自余コノホカ大和屋、若松、桝三河ト曰フモノミナ創立ノ旧家ナリト雖亦ハルカニ之ニ劣レリ。将又券番、暖簾ウチゲイシヤ等ノ芸妓ニ於テハ先ヅ小梅、才蔵、松吉、梅吉、房吉、増吉、鈴八、小勝、小蝶、小徳、凡四十有余名アリ。
上野 (新字新仮名) / 永井荷風(著)