えう)” の例文
我も亦この一書によつて彼の名を記憶するに止まれども、彼の才あつて然もえうとして天下に知られざるは心惜しき思せらる。今既に死せりや。猶生きてありや。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
メキシコか何処どこかへく途中、えうとして行方ゆくへを失つたまま、わからずしまひになつてゐるさうです。
近頃の幽霊 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その後えうとして消息を聞かないが、彼はまだ今まで、読本の稿を起してゐるだらうか。さうしてそれが何時いつか日本中の人間に読まれる事を、夢想してゐるだらうか。…………
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
吾人の霊性の、飄として捉へがたく、えうとして目覩もくとしがたきものは、其樹木の根の如し。根は隠れて見えず、見えざれども在り、何処に在るや、地中にあり。それ地球は一ありて二なし。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)