役目やくめ)” の例文
『もつとちかうおりなさい。それで檢死けんし役目やくめみますか。』とひ/\、玄竹げんちくくさつた死體したいみぎひだりに、幾度いくたびもひつくりかへした。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
さう、ロチスターさんは、話をする役目やくめをひどく喜んでゐる、人の心をとろかすやうな唇に耳を傾けて、そのときまで、坐つてゐられた。
「わたしはここに見張みはっているから、はやくこのことを呂宋兵衛るそんべえさまに知らせてきておくれ。こんな役目やくめはおまえさんにかぎるのだから」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
野田のだ卯平うへい役目やくめといへばよるになつておほきな藏々くら/″\あひだ拍子木ひやうしぎたゝいてあるだけ老人としよりからだにもそれは格別かくべつ辛抱しんぼうではなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かように目録もくろくやそれ以外いがい書物しよもつ出版しゆつぱんせられて、研究けんきゆう結果けつか發表はつぴようされるようにならなければ、しん博物館はくぶつかん役目やくめたつせられないのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
それは、やはり、人間にんげん姿すがたをしたものでなければ、この役目やくめは、たされないだろう。さいわい、あの乞食こじきを、にぎやかなまちへやることにしよう。
あらしの前の木と鳥の会話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いや、せっかくよいこころで、そうしてとどけにたのを、へんなことをもうしてすまなかった。いや、わしは役目やくめがら、ひとうたがうくせになっているのじゃ。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
わたくしすこどく気味ぎみになり、『すべては霊魂みたま関係かんけいから役目やくめちがうだけのもので、べつ上下じょうげがあるわけではないでしょう。』となぐさめてきました。
そんなわけで、諭吉ゆきちのおとうさんは、りっぱなひとでしたが、つまらない役目やくめにしか、つくことができませんでした。
ねこ死骸しがいなわにくゝりてお役目やくめなれば引導いんだうをたのみますとげつけしことりしが、それはむかしいま校内かうない一のひととてかりにもあなどりての處業しよげうはなかりき、としは十五
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それがすむと、あっしの役目やくめはおわったはずなのに、やはりあっしをはなしてはくださらねえで、こうして荷物をかかえてだんなのいくほうへつれてゆきなさる。
この下ばたらきの女は、ちょうづめをこしらえる用意よういとして、豚のを小さい容器いれものける役目やくめなのです。
「ええうるさい。たとえあたしがはなしても、つかまえるのはおまえ役目やくめだ。——もうおまえなんぞにようはない。いますぐここでひまをやるから、どこへでもっておしまい」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
をとこをんな旅人たびびとせたうま馬方うまかたかれてとほることもありました。とうさんのこゑけたのは、近所きんじよはれてうまで、毎日々々まいにち/\隣村となりむらはう荷物にもつはこぶのがこのうま役目やくめでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
カピ長 婚儀こんぎためにと準備よういした一さい役目やくめへて葬儀さうぎよういはひのがくかなしいかね、めでたい盛宴ちさう法事ほふじ饗應もてなしたのしい頌歌しょうかあはれな挽歌ばんか新床にひどこはなはふむ死骸なきがらようつ。
さて其頃そのころ三人さんにん有様ありさま如何いかにとふに、山田やまだ勉強家べんきやうかであつたが、学科がくくわはうはお役目やくめつてて、雑書ざつしよのみを見てた、石橋いしばし躰育たいいく熱心ねつしんの遊ぶはうで、競争きやうそうる、器械躰操きかいたいさう
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
これを調しらべるには、和田氏わだし卷尺まきしやくつ、が一ぱう其端そのはしち、一ぱう燈器とうきつ。大野氏おほのし一々いち/\るといふ役目やくめで、うしてうちに、あたましり衝突しやうとつする。あしむ。く。
海岸かいがんのくろまつのはやしは、さういふすな飛來ひらいふせぎとめる役目やくめをもするのです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
いくらかなかよくしていたものといえば、ガチョウばんのオーサという女の子と、その弟のマッツという子だけでした。このふたりは、ニールスと同じように、ガチョウの番をする役目やくめでした。
わかさま、さあおっしゃい。役目やくめとしてうけたまわらなければなりません」
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ダイアナは私に獨逸語を教へようと云つてくれた。私も彼女から教はるのは好きだつた。女教師の役目やくめは彼女を喜ばせもしまた相應ふさはしかつた。
ところがれは、町奉行まちぶぎやうといふおも役目やくめうけたまはつて、おほくの人々ひと/″\生殺與奪せいさつよだつけんを、ほそたなそこにぎるやうになるとたちまち一てんして、れの思想しさう
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
學校がつこうおな役目やくめをする博物館はくぶつかんじつ貧弱ひんじやくであつて、わづかに東京とうきよう京都きようと奈良なら三箇所さんがしよ美術博物館びじゆつはくぶつかんがあるほか、これといふものもないのははなは殘念ざんねんです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
回米方かいまいかたというのは、このくらやしきにおくりこまれてきたこめはりのばんをしたり、商人しょうにんったりする仕事しごとで、ずいぶん、せきにんのおもい役目やくめでした。
しかしこれはいぬ役目やくめで、夜中よなかになにか足音あしおとがすればほえるのに不思議ふしぎなことはありませんけれど、あまりよくほえますので近所きんじょ迷惑めいわくすることであります。
おじいさんの家 (新字新仮名) / 小川未明(著)
一つくちもうしたら、真正ほんとう神様かみさま人間にんげんとの中間ちゅうかんちてお取次とりつぎの役目やくめをつとめるのが人霊じんれい仕事しごと——。まあそれくらいかんがえていただけば、大体だいたいよろしいかとぞんじます。
手前てまへひいさまが御親類ごしんるゐがたのお廟所たまやらせらるゝをるやいなや、驛馬はやうま飛乘とびのっておらせにまゐりました。此樣このやうしいお使つかひ命置おほせおかせられた役目やくめゆゑでござります、御免ごめんなされませい。
かういふふうに、日光につこうちからをかりて、その木自身きじしんやしなひ、生活せいかつをつゞけていく、この作用さようを『炭素同化作用たんそどうかさよう』といひます。樹木じゆもく青々あを/\しげつてゐるのは、この重大じゆうだい役目やくめをはたすためです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
祖父おぢいさんはくことがきで、あか毛氈まうせんうへおほきなかみをひろげて、おそくなるまでなにかよくきましたが、そのたびねむをこすり/\蝋燭らふそくたせられるのはおゆうさんやとうさんの役目やくめでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
けれども、そのころのさむらいは、かたなをつかうようなやくにつくものはだいじにされますが、おかねのかんじょうなどをする役目やくめのものはみさげられていました。
それが守護霊しゅごれいというものの役目やくめで、あなたの生活せいかつ同時どうじまた大体だいたいわたくし生活せいかつでもあったのです。わたくし修行しゅぎょう未熟みじゅくなばかりに、随分ずいぶんあなたにも苦労くろうをさせました……。
この世にゐる内に善き物を得た『富める人』の運命を思ひ出して御覽なさい。神があなたから取り去られぬ、そのよりよき役目やくめを選ぶ力をあなたに與へ給ふやうに!
同時どうじわかいものの勇気ゆうき鼓舞こぶしなければならぬ役目やくめをもっていました。かれは、かぜたたかい、山野さんや見下みおろしてんだけれど、ややもするとつばさにぶって、わかいものにされそうになるのでした。
がん (新字新仮名) / 小川未明(著)
このオルガンの役目やくめは、これまでに十ぶんたしたはずだ……。
楽器の生命 (新字新仮名) / 小川未明(著)