勇氣ゆうき)” の例文
新字:勇気
しかもらうとおもことこと/″\こと出來できなかつた。おのれの弱點じやくてんいては、一言ひとことかれまへ自白じはくするの勇氣ゆうき必要ひつえうみとめなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しかし、之をいてゐる中に、下人の心には、ある勇氣ゆうきが生まれて來た。それは、さつき、もんしたでこの男に缺けてゐた勇氣である。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
たゞかれ目下いま幾部分いくぶぶんでも要求えうきうすることが、自分じぶんいた主人しゆじんうちたいしてとてくちにするだけの勇氣ゆうきおこされなかつたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
けれども、ふゆ鳥打帽とりうちばうかむつた久留米絣くるめがすり小僧こぞうの、四顧しこ人影ひとかげなき日盛ひざかりを、一人ひとりくもみねかうして勇氣ゆうきは、いまあいする。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あいちやんはれについて質問しつもんする勇氣ゆうきなにくなつてしまひ、海龜うみがめはう振向ふりむき、『ほかなにならつて!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
おことこゝろさへかはらずば、女々めゝしい臆病心おくびゃうごゝろために、敢行してのくる勇氣ゆうきさへゆるまなんだら、此度このたび耻辱はぢのがれられうぞ。
不知庵フチアンがこのしよわが文界ぶんかい紹介せうかいしたる勇氣ゆうきをこよなくよろこぶものなり。だいかんすみやかでんことをつ。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
『それ、櫻木大佐さくらぎたいさきたる! 電光艇でんくわうてい應援おうえんぞ! おくれて彼方かなた水兵すいへいわらはれな、すゝめ/\。』の號令がうれいしたに、軍艦ぐんかん」の士官しくわん水兵すいへい勇氣ゆうき百倍ひやくばいいきをもつかせず發射はつしやする彈丸だんぐわん
何事なにごと自分じぶん勇氣ゆうきおこし、むづかしいことでもわからないことでもなんでも自分じぶんしゆなつてするでなければけつしてもの上達じやうたつしません。どうも今日こんにち女學生ぢよがくせいには兎角とかく自主獨立じしゆどくりつといふこゝろとぼしいであります。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
鐵拳かなこぶし撲倒はりたふ勇氣ゆうきはあれどまこと父母ちゝはゝいかなるせて何時いつ精進日しやうじんびとも心得こゝろえなきの、心細こゝろぼそことおもふては干場ほしばかさのかげにかくれて大地だいぢまくら仰向あふむしてはこぼるゝなみだ呑込のみこみぬるかなしさ
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
〔譯〕刀槊たうさくきよ心をいだく者はくじけ、勇氣ゆうきたのむ者はやぶる。必や勇怯ゆうきよを一せいほろぼし、勝負しようぶを一どうわすれ、之をうごかすに天を以てして、廓然かくぜん太公たいこうに、之をしづむるに地を以てして、もの來つて順應じゆんおうせん。
雄鷄おんどりはもうたかこゑときをつくるやうな勇氣ゆうきくじけまして
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
利害りがい打算ださんからへば無論むろんことたん隣人りんじん交際かうさいとか情誼じやうぎとかてんからても、夫婦ふうふはこれよりも前進ぜんしんする勇氣ゆうきたなかつたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
わたしこれを、なんずるのでも、あざけるのでもない。いはんけつしてうらやむのではない。むし勇氣ゆうきたゝふるのであつた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おゝ、ヂュリエット、おまひ艶麗あてやかさがおれ柔弱にうじゃくにならせて、日頃ひごろきたうておいた勇氣ゆうききっさきにぶってしまうた。
くるしきけて、太陽たいようはまたもやあらはれてたが、わたくし最早もはや起直おきなをつて朝日あさひひかりはいする勇氣ゆうきい、日出雄少年ひでをせうねん先刻せんこくより半身はんしんもたげて、海上かいじやうながめてつたが、此時このときたちま大聲たいせいさけんだ。
かるヽこヽろちたきものと、决心けつしん此處こヽりし今宵こよひめては妻戸つまどごしのおこゑきヽたく、とがめられんつみわすれて此處こヽしのそでにすがりてさとしなげヽば、これをはろ勇氣ゆうきいま
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
けれどもかれ自身じしん家主やぬしたく出向でむいてそれをたゞ勇氣ゆうきたなかつた。間接かんせつにそれを御米およねふことはなほ出來できなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ぐら/\とるか、おツとさけんで、銅貨どうくわ財布さいふ食麺麭しよくパン魔法壜まはふびんれたバスケツトを追取刀おつとりがたなで、一々いち/\かまちまですやうな卑怯ひけふうする。……わたしおほい勇氣ゆうきた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
夕方ゆふがたになると、最早もはや畢世ひつせい勇氣ゆうきふるつても、とてもくちれるこゝろぬ。
そなたその氣高けだか姿すがたほん蝋細工同樣らうざいくどうやうをとこ勇氣ゆうきからははづれたものぢゃ。
……御馳走ごちそうは十二ふとんで、——ひとつは二人ふたりともそれがために勇氣ゆうきがないので。……
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
敷合しきあはたゝみ三疊さんでふ丁度ちやうど座布團ざぶとんとともに、そのかたちだけ、ばさ/\のすゝになつて、うづたかくかさなつた。したすゝだらけ、みづびたしのなかかしこまつて、きつける雪風ゆきかぜ不安ふあんさに、そと勇氣ゆうきはない。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
置處おきどころないまでに、みぎから、ひだりから、みちをせばめられて、しめつけられて、ちひさく、かたくなつて、おど/\して、其癖そのくせさうとする勇氣ゆうきはなく、およ人間にんげん歩行ほかうに、ありツたけのおそさで
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
日露戰爭にちろせんさうのすぐ以前いぜんとはひながら、一圓いちゑんづゝにかぞへても、紙幣さつ人數にんず五十枚ごじふまいで、きんしやちほこ拮抗きつかうする、勇氣ゆうきのほどはすさまじい。とき二月きさらぎなりけるが、あまつさへ出陣しゆつぢんさいして、陣羽織ぢんばおりも、よろひもない。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)