)” の例文
御身おんみとて何時いつまでか父母の家にとどまり得べき、幸いの縁談まことに良縁と覚ゆるに、早く思い定めよかしと、いとめたる御言葉おんことばなり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
男で居ながら、こんなにも上手な方があるものを、めてその指一本でも、私の身体からだについたらばと、つい、おろおろと泣いたのです。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
骨となってまでも宙宇にさまよった大杉は永久に浮ぶ瀬はあるまいが、鼠色でも鳶色とびいろでも歴史上の大立物おおだてものとなったのはめてもの満足であろう。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
まだ己の此処に押込められてる事は知るまい、めて手紙でも遣りたいとすゞりを引寄せ、筆を取り上げふみを書こうとすると
事実約束よりも半月以上も長く働きは働いたが、ッぱつまった仕事ばかりなのでそのかんの仕事はとても無理なのだ。
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
道理ことわりめし文角ぬしが、今の言葉にやつがれが、幾星霜いくとしつきの迷夢め、今宵ぞ悟るわが身の罪障思へば恐しき事なりかし。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
新聞紙も敷かず板の間にすわってしまうと、両手で顔をおおうて眼をツブった。「休まなくては不可いけない、俺が倒れてはならぬ」そンなつまった気持だった。
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
やはらかきひとほどはつよく學士がくし人々ひと/″\なみだあめみちどめもされず、今宵こよひめてとらへるたもとやさしく振切ふりきつて我家わがやかへれば、おたみものられしほどちからおとして
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ほのほ来りて身にせまり、苦痛おのれむれども、心にいとうれへず、でんことを求むるこころ無し
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
めて自分を養家へ口入した、西田と云うじいさんのっているような仕事に活動してみたいとも思った。その爺さんは、近頃陸軍へ馬糧などを納めて、めきめき家を大きくしていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
めて雛祭などをして、淋しさを慰めている光景をあわれと見たのである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
旦那の泊りに來なかつたことが、めてもの有り難さであつたけれど、さて今こゝで旦那に棄てられたら、この家は何うなるであらうかと、二番鷄の歌ふ頃には、そんなことをもちら/\考へて來た。
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
めて自分の運命の儚さを嘲笑ふ位なものである。
工場の窓より (新字旧仮名) / 葉山嘉樹(著)
あまつさえ大阪より附き添い来りし巡査は皆草津くさつにて交代となりければ、めてもの顔馴染なじみもなくなりて、きが中に三重県津市の監獄に着く。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
あの、船で手を取って、あわれ、生命掛けた恋人の、口ずから、めて、最愛いとしい、と云ってほしい、可哀相とだけも聞かし給え。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
団十郎が井侯をおともにしないまでもめては対等に交際して侯伯のおともを栄としない見識があって欲しかったといった。
其のふみ此方こちらへ越して来た時からお前さんを見染めて忘れる暇はないゆえ、藤原と別れて独りものになりましたらば、めてお盃の一つも戴きたい
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
るがめてのたのしみなりれはのぞみとてなれば生涯しやうがいこの御奉公ごほうこうしてかたさま朝夕あさゆふ御世話おせわさては嬰子やゝさままれたまひての御抱おだなににもあれこゝろ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
めては父母兄弟けいてい余所よそながらの暇乞いとまごいもなすべかりしになど、様々の思いにふけりて、睡るとにはあらぬ現心うつつごころに、何か騒がしき物音を感じぬ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
お屋敷へ持参致す心得でございますからどうかめて一月ひとつきもお日延ひのべが出来れば願いたいものでございます
令孃ひめ部屋へやまいへだてに、今宵こよひかぎりの名殘なごりしまんとて、こヽろそら宵闇よひやみはる落花らくくわにはあしおとなきこそよけれ、めてはゆめれかしとしのびぬ。
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
晩年暫らく相乖離あいかいりしていたのを衷心遺憾に思いながらも、最後の会見に釈然として何もも忘れ、笑って快く一時間余りも隔てなく話したのはめてもの心遣こころやりであった。
高島田たかしまだ前髮まへがみつめたやいばあり、まどつらぬくはすだれなす氷柱つらゝにこそ。カチリとおとしてつてかしぬ。ひとのもしうかゞはば、いとめてほとばしらす匕首あひくちとやおどろかん。新婦よめぎみくちびるふくみて微笑ほゝゑみぬ。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
多「誠に御無沙汰を致しました、めて一日置きにもお見舞に出てえと思って居りやしたが、見世を出して夜も商いをしやすから、忙しくってつい御無沙汰をしました」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
うわ言をいつたり夢を見たり、こんな事で一生を送れば人は定めし大白痴おほたはけと思ふなるべく、其やうな馬鹿になつてまで思ふ心が通じず、なき縁ならばめては優しい詞でもかけて
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「雪叟が鼓を打つ! 鼓を打つ!」と身をんだ、胸をめて、あわただしく取っておおうた、手拭に、かっと血を吐いたが、かなぐり棄てると、右手めてつかんで、按摩の手をしっかと取った。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
めて山本伯の九牛一毛きゅうぎゅういちもうなりとも功名心があり、粘着力があり、利慾心があり、かつその上に今少し鉄面皮てつめんぴであったなら、恐らく二葉亭は二葉亭四迷だけで一生を終らなかったであろう。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
めてはお帰りの時には立派にしたいと若旦那さまも仰しゃいまするし、私共わたくしどももお立派になってお帰りになるように致したいと存じまする、それに差支えますると云うは
うわことをいつたりゆめたり、こんなことで一せうおくればひとさだめし大白痴おほたわけおもふなるべく、そのやうな馬鹿ばかになつてまでおもこゝろつうじず、なきゑんならばめてはやさしいことばでもかけて
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
めては世間並せけんなみ真人間まにんげんにしなければ沼南の高誼こうぎに対して済まぬから、年長者の義務としても門生でも何でもなくても日頃親しく出入する由縁ゆかりから十分訓誡して目を覚まさしてやろうと思い
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
見棄てちゃアなんねえというから、あなたのお心へ任して送りはしねえが、めて戸頭まで送りてえと思って居ります、塚前つかさき彌右衞門やえもんどんは死んだかどうか知んねえが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
うわ言をいつたり夢を見たり、こんな事で一生を送れば人は定めし大白痴おほだわけと思ふなるべく、そのやうな馬鹿になつてまで思ふ心が通じず、なき縁ならばめては優しい詞でもかけて
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
めて元の身代の半分にでも身上しんしょうが直ったらおいささん、お前と夫婦に成りましょう、私も女房を持たずに一生懸命にかせぎやすが、貴方あなたも亭主を持たずに待って居てください
もうつてはくださらぬかなどヽ敷居しきゐきわにすりつておそのけるもらず、學士がくしはそのときつとつて、今日けふはお名殘なごりなるにめてはわらがほでもせてたまはれとさらり障子しようじくれば
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
まことの親達の無慈悲を聞きましたから、殊更ことさらに養い親の恩が有難くなりましたが、両親とも歿のちは致し方がございませんから、めてはねんごろに供養でもして恩を返そうと思いまして
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
だいはやるほどに何處どこ开處そこらまで、めて廣小路ひろこうぢまではつておれとやさしいこゑにすかすやうにいへば、るほどわかいおかたではありこのさびしいところへおろされてはさだめしおこまりなさりませう
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
父様とっさまを殺したのは意趣遺恨か知れないが、何しろ女の腕ではかたきを討つことが出来ない、自分も二百四十石取ったさむらいの娘、めては怨みを晴したいが兄弟もなし、別に親類もない
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
代はやるほどに何処か开処そこらまで、めて広小路までは行つておくれと優しい声にすかす様にいへば、なるほど若いお方ではありこの淋しい処へおろされては定めしお困りなさりませう
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
よし人目ひとめにはこひともこヽろくるはねばと燈下とうか對坐むかひて、るまじきこひおもひをるしさ、さとしはじめよりの一ねんかたり、めてはあはれとのたまへとうらむに、勿体もつたいなきことヽて令孃ひめ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
へえわたくし今日こんにちは非番で、ま別に知己しるべもありませんし、だ当地の様子も不慣ふなれでございますから、道を覚えて置かなければなりません、めて小梅のお中屋敷へまいる道だけでも覚えようと存じて
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
此折このおりなにともおもはれず、めてかへりはとりでもべてと機嫌きげんられるほどものがなしく、すやうにして一さん家路いゑぢいそげば、けふこと/\くきてらうたゞ美尾みを病氣いたつきむねをいためぬ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うかしておたけめて片方かた/\でもいから明けてくんなよ。
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
そのての反古ほごにてもへてたば本望ほんまうなるべく、めて一ふで拜見はいけんねがひたきなり、されども下賤げせんれ、いかやうおもふともおよびなきことにて、無禮ぶれいものとおしかりをければそれまで
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
親父おやじが長々の眼病で居りまして、お医者様にもて貰いましたが、とても療治は届かないと申されましたから、めて片方かた/\だけでも見えるように致したいと思って御無理な願いを天神様へ致しました
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
圖「でもございましょうが、めて一杯召上ってわたくしへ頂戴致しう」
清「いやうでない、今日はみて落合までつもりで」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)