)” の例文
「ああ、おとうさんとかわへいってってきたんだ。こんど、きみもいっしょにゆかない?」と、いきいきとしたかおげたのであります。
すいれんは咲いたが (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ブラボオ。フゥフィーボー先生。ブラボオ。」とさけんでそれからバタバタ、ノートを閉じました。ネネムもすっかりまれて
みぎわに茂るあしの断え間にりをしている人があった。私の近づく足音を聞くと振り返ってなんだかひどく落ち付かぬふうを見せた。
写生紀行 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そうすると腹の中へ行ってにわかに沸騰して胃を膨脹ぼうちょうさせるから直ぐ癒る。吃逆は筋肉がるのだから反対に膨脹させるのが一番だ。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
この利慾のふかい武士へ、伊那丸いなまるというえさをもってりにきたのは、いうまでもなく、武士にけているが、八幡船ばはんせん龍巻たつまきであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
借家はもう半月もして水泳場が閉鎖へいさすると同時にたちまち二人に必要になるのだが、価値のあいなどで敬蔵はなかなか見つけかねた。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
あみつたと、つたとでは、たいの味が違ふと言はぬか。あれくるしませては成らぬ、かなしませては成らぬ、海の水を酒にして泳がせろ。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
第一装だいいっそうのブレザァコオトに着更きがえ、甲板かんぱんに立っていると、上甲板のほうで、「ふかれた」とさわぎたて、みんなけてゆきました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
天涯てんがい渺茫べうぼうたる絶海ぜつかい魚族ぎよぞくは、漁夫ぎよふかげなどはこともないから、れるとかれぬとかの心配しんぱいらぬ、けれどあまりに巨大きよだいなるは
この人は漁夫に変装して日々桂川かつらがわりをれ、幕府方や会津桑名の動静を探っては天龍寺にある長州軍の屯営とんえいに通知する役を勤めた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しばらくしてあをけむり滿ちたいへうちにはしんらぬランプがるされて、いたには一どうぞろつと胡坐あぐらいてまるかたちづくられた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
よく気をつけてみるなれば、あとから糸をつけてるした叩きもしないドロップの缶が、自然にグワーンと鳴っているのである。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「馬鹿だな、八、あんなつまらねえ事に感心しやがつて、手前が感心なんかするから、俺までられて、飛んでもない方へ行くぢやないか」
一個八十銭の西瓜で十銭の切身何個と胸算用むなざんようして、柳吉がハラハラすると、種吉は「切身でって、丸口で儲けるんや。損して得とれや」
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
りあげられた明鯛すけそうがびんにせかれるために、針のえんを離れて胴の間にぴちぴちはねながら落ちて行くのをじっと見やっている。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
広い風呂場をてらすものは、ただ一つの小さき洋灯ランプのみであるから、この隔りでは澄切った空気をひかえてさえ、しか物色ぶっしょくはむずかしい。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
だが誰か一人パチ/\と手を叩いたので、皆なついりこまれて、賛成するのか、からかふのか、どつちかずに手を叩いてしまひました。
仔猫の裁判 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
正面まともに見れば、その表情は少し曖昧あいまいで不定で複雑だった。眼と顔とが不いだった。彼女のうちには、強健な民族の面影が感ぜられた。
二人で仲よく遊んでいる子供のいたいけな様子にり込まれながら、お増はいつか自分の荒く育った幼年時代のことなどを憶い出していた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
これはすこひらたいがねのようなかたちをしたもので、ちひさいものは四五寸しごすんおほきいものになると四五尺しごしやくもあり、すてきにおほきなものであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
我々は空地の樹の傍に蚊帳かやって子供たちを寝せてから、茄子なす畑のそばで茫然としてこの火を眺めながら夜を明かした。
地異印象記 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
彼奴等はそのエサにられて、夢中になっているだろう。——だが、こういう落付かない時は、えて危いと思った。私はつかまってはならない。
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
「そうやった。眼がすごいようにり上がって、お園さんのあの細い首が抜け出たように長うなって、こわいこわい顔をして」
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
箱のようなきわめて小さな舟を岸から四、五間乗り出して、りをれていた三人の人がいつのまにかいなくなっていた。湖水はさざなみも動かない。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
が、それでも何だか、スパセニアをったような気がして、悪いことでもいったような気がして、しばらく私はぼんやりと突っ立っていました。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
左右に古雅な絵模様あるふすま灯盞とうさんにお灯明が燃えている。回り廊下。庫裏くりと奥院とに通ず。横手の廊下に鐘がってある。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
私のところから見えなかったことは慥かであるが、どうも土地の者ではなく、よそから魚りに来た客だったように思う。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
飯粒めしつぶらるゝ鮒男ふなをとこがヤレ才子さいしぢや怜悧者りこうものぢやとめそやされ、たまさかきた精神せいしんものあればかへつ木偶でくのあしらひせらるゝ事沙汰さたかぎりなり。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
体もそれにり合って堅太りの、かっちりした肉づきをしているのが妙子で、雪子はまたその反対に一番細面の、なよなよとした痩形やせがたであったが
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
南無三なむさんわなにてありけるか。おぞくもられし口惜くちおしさよ。さばれ人間ひとの来らぬ間に、のがるるまでは逃れて見ん」ト。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
畳一枚ほどに切れている細長い囲炉裡には、この暑いのに、燃木まきが四、五本もくべてあって、天井から雁木がんぎるした鉄瓶てつびんがぐらぐら煮え立っていた。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
かつてボズさんと辨當べんたうべたことのある、ひらたいはまでると、流石さすがぼくつかれてしまつた。もとよりすこしもない。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
往来おうらいの人たちは、ふしぎな看板かんばんとおもしろそうな口上こうじょうられて、ぞろぞろ見世物小屋みせものごやめかけてて、たちまち、まんいんになってしまいました。
文福茶がま (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
前駆の人払いの声の遠くなるとともに涙は海人あまり糸をれんばかりに流れるのを、われながらあさましいことであると思いつつ中の君は寝ていた。
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
先程より疳癪かんしゃくまなじりり上げて手ぐすね引て待ッていた母親のお政は、お勢の顔を見るより早く、込み上げて来る小言を一時にさらけ出しての大怒鳴おおがなり
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
下袴したばかまの糸をぬいて釣糸つりいとになされ、お食事のおあとのごはんつぶえさにして、ただでも決してることができないあゆをちゃんとおつり上げになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
後楽園こうらくえんこいりにつてたなんてこと、まりがわるくてひとはなせやしない。だから、映画えいがていたなんていつちまつたのだが、ともかく、コリゴリだ。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
にらまれるとすごいような、にッこりされるとふるいつきたいような、すずしい可愛らしい重縁眼ふたかわめが少し催涙うるんで、一の字まゆしゃくだというあんばいにり上げている。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
一旦いったん帰京かえって二度目にまた丁度ちょうど行きつきたる田原がきい狼狽ろうばいし、わが書捨かきすてて室香に紀念かたみのこせし歌、多分そなたがしって居るならんと手紙の末にかき頓智とんちいだ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
遺跡よりは角製のはりの出でし事あり(第七回參照)。土器押紋中にはたしかに網のあと有るもの有り。切り目有る扁平石噐中には網のおもりと思はるるもの有り。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
だが、彼女は、悪夢の中での様に、全身がしびれ、舌がって、逃げ出す力も、助けを呼ぶ力もなかった。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
大きな灰色の眼を見てとったのもつか——その顔全体が、いきなりぶるぶる顫えて、笑い出して、白い歯なみがきらめいて、眉毛まゆげがさも面白おもしろそうにりあがった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
かわや階段はしごを下りたところにあった。やはり石菖せきしょうはちが置いてあったり、しのぶが掛けてあったりした。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
るところお年齢としはやっと二十四五、小柄こがら細面ほそおもての、たいそううつくしい御縹緻ごきりょうでございますが、どちらかといえばすこしずんだほうで、きりりとやや気味ぎみ眼元めもとには
はぐらかされた三ばん目の嫂は、くちびるをキュッとって、きこえないりで紅茶のさじをまわしていた。
万年青 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
その厭だと思う気持ちが、前よりもいっそう人づきあいの悪い老人になり、千穂子が荒川区のある産院に子供を産みに行ってからは、与平はりばかりして暮していた。
河沙魚 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
筒井は愕然がくぜんとして髪の根をられるような緊迫した一瞬の中にあった。名前はふたたび呼ばれた。
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
南京ナンキンの法庁にある者、殊に大きく象皮一枚を張り、大なる棒を高く荒縄でるしてこれを打つと。
切り小口こぐちの神経の筋が縮んで、肉の中に引っり込んで行く時なんぞは、特別にキンキン痛いのですが、それが実際に在りもしない膝っ小僧だの、足の裏だのに響くのです
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
精靈しようれうさまのおたなかざりもこしらへくれねば御燈明おとうめう一つで御先祖樣ごせんぞさまへおびをまをしるも仕業しわざだとおおもひなさる、おまへ阿房あほうつくしておりきづらめにられたからおこつたこと
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)