この)” の例文
はヽさまとならではおにもかじ、觀音かんのんさまのおまゐりもいやよ、芝居しばゐ花見はなみはヽさましよならではとこの一トもとのかげにくれて
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
また病つきで課業はそつちのけの大怠惰おほなまけ、後で余所よその塾へ入りましたが、又この先生と来た日にや決して、う云ふものを読ませない。
いろ扱ひ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
元来この附近の山は、二、三年前迄吾々には少しも知られていなかった。雁坂峠以東では大洞山が一番高い位に思っていたものである。
秩父の奥山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
これはこので一番人の目に立つ雄大な二階立にかいだち白堊館はくあかん、我が懐かしき母校である。盛岡中学校である。巨人? さうだ、慥かに巨人だ。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『なあに、柳川君やながはくんには片附かたづけるやうな荷物にもつもないのさ。』と濱島はまじまこゑたかわらつて『さあ。』とすゝめた倚子ゐすによつて、わたくしこの仲間なかまいり
余は本篇の諸所に於て現存げんぞんのエスキモが好くこの石器時代人民に似たりとの事をしるし置しが、古物、遺跡、口碑を總括して判斷はんだんするに
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
一旦いったんお返し下さったこの時計を——改めて、そうです、青木君の意志として——私は、改めて貴女あなたに受取っていたゞきたいのです。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ところこのアルゼリヤこくうちでブリダアといふ市府まちひとわけても怠惰なまけることがき、道樂だうらくをしておくることが好きといふ次第である。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「それがお前さん。徳次郎が死にぎわに、わたしは店のおこのさんに殺されたのだと申したそうで……」と、利兵衛は小声で答えた。
半七捕物帳:13 弁天娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
私はこの時母の前へ此三ツの貨幣を置いて其廻そのまはりをトン/\踊りまはつたのを覚えてます、「金の機会に、銀の機会に、あかがねの機会だ」
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
開戦の劈頭へきとうから首都巴里パリーおびやかされやうとした仏蘭西フランス人の脳裏には英国民よりもはるかに深くこの軍国主義の影響が刻み付けられたに違ない。
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そしてこの公生涯の裏面に、綱宗の気遣きづかふも無理ならぬ、暗黒なる事情が埋伏してゐた。それは前後二回に行はれた置毒ちどく事件である。
椙原品 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
しかこの場を立ち上がって、あの倒れている女学生の所へ行って見るとか、それを介抱かいほうしてるとか云う事は、どうしても遣りたくない。
女の決闘 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ある人は一年後に濠洲の真珠業が廃滅するに際し日本へ帰るがい地の人夫一万人をこの地で喰ひ止める事が出来ると云つて楽観して居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
ベンヺ そのカピューレットの例會れいくわいに、足下きみしたふローザラインが、このヹローナで評判ひゃうばんのあらゆる美人達びじんたち同席どうせきするは都合つがふぢゃ。
らば』とドードてう嚴格げんかくつて立上たちあがり、『この會議くわいぎ延期えんきされんことを動議どうぎします。けだし、もつとはや有効いうかう治療ちれう方法はうはふが——』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
さらばこの男の血を見たらむには、わが気力も昔に帰りてむかなぞ、日毎に思ひめぐらし行くうちに此の三月の中半なかばの或る日の事なりき。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あま浮橋うきはしの上にて、山の神千二百生れたまふ也。この山の御神の母御名を一神いちがみきみと申す。此神産をして、三日までうぶ腹をあたためず。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
飛鳥末から藤原へかけての時代が、実の処この古めいた五句、出入り三十音の律語を意識にのぼせる為の陣痛期になつたのである。
「西ノ方ヘ漂流シテイマシタ。——ソレヨリ、この附近ニおおキナ海坊主ガ出マスカラ注意シテ下サイ。奴ハ船ヘ襲イ掛ッテ来マス」
流血船西へ行く (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ト月過ぎタ月すぎてもこのうらみ綿々めんめんろう/\として、筑紫琴つくしごと習う隣家となりがうたう唱歌も我に引きくらべて絶ゆる事なく悲しきを、コロリン
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
わたし自分じぶん不安ふあん苦痛くつううつたへたが、それかひはなく、このまゝ秘密ひみつにしてくれとつま哀願あいぐわんれて、此事このことは一そのまゝにはふむることにした。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
幾日も/\越後屋にめて、どんな小さい手掛りでもと搜した平次は、おこのの初七日の濟んだ日、到頭投げる外は無いと思ひ定めました。
私は貢物のやうにして毎日柴田の手へ運んで居る物は、学校で厳禁されて居るものであると云ふことをこの時まで気附かずに居たのでせう。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「横濱征伐に先掛致しくれと申す譯にはこれ無くこの方共身命を抛ちて征伐致候間、かはりに其方共二枚着る着物も一枚着て、金子用立てよ」
天狗塚 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
わけても最近作「鏡地獄」は、江戸川氏でなければ書けないもので、怪奇の美というこの四文字が、ピッタリ宛てまるように思われました。
探偵文壇鳥瞰 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この際、一時交渉を中止し、内閣の方針を明らかにすることが先決問題であろうと思うが、黒田総理大臣はいかに考えられるか?
早稲田大学 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
失なひ斯迄かくまで千辛萬苦して調しらぶるも手懸りを得ず此上は是非に及ばじこの旨江戸へ申おくり我等は紀州きしうにて自殺致じさついたすより外なしと覺悟を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
兵士が笑って、銃剣じゅうけんさきで蛇をつっかけて、堤外ていがいほうり出した。無事にこの関所せきしょも越して、彼は母と姉と嘻々ききとして堤を歩んだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
この夕長塚来りて、雨ふるとも明日は行かん、という。古袴など取り出でて十年昔の書生にいでたたんと支度ととのえなどす。
滝見の旅 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ただ眼は眼を見ることはできず、山にある者は山の全体を知ることはできぬ。このこの徳の間に頭出頭没する者はこのこの徳を知ることはできぬ。
愚禿親鸞 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
それがこの自分じぶんでもひどいやであつたが、冬至とうじるから蒟蒻こんにやく仕入しいれをしなくちやらないといつて無理むりたのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
何でも皆が駈出すのに、俺一人それが出来ず、何か前方むこうが青く見えたのを憶えているだけではあるが、兎も角も小山の上のこのはたで倒れたのだ。
この間も横浜まで見送りに来たとき、今度は那須君と一緒で本当にいいねと皮肉を云われて苦笑したが、こうして見ると矢張やはり何となく寂しい。
この石の下には、屹度きつとかにが居るよ、さ、おツさんがかうして、石を引起して居るから坊やは自分で蟹をつかんでお捕り……」
熊と猪 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
こと青年輩せいねんはい身心しん/\發育はついく時代じだいにあるものには、いまよりこのはふ實行じつかうして體力たいりよく培養ばいやうし、將來しやうらい大成たいせいはかことじつ肝要かんえうならずや。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
梅五郎ばいごろうもうしました目「何時いつからこのいえに住で居る女「はい八年前から目「其前は何所どこに住だ女「それまではリセリウまちで理髪店を開いて居ました、 ...
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
これ以上、われ等はこの問題もんだいにかかり合っているべき勇気をたない。われ等の使命は、地上の人間の憐憫あわれみを乞うべく、あまりにも重大である。
エヽ商法しやうはふ様々さま/″\ありまするが、文明開化ぶんめいかいくわなかになつて以来いらいなんでも新発明しんはつめい新発明しんはつめいといふので追々おい/\この新商法しんしやうはふといふものが流行をいたしまする。
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
真理しんりは我と我の家族かぞくより大なり、この決心けつしん実行じつこうあらん教会けうくわいたゞち復興ふくこうはじむべし、れなからん乎、復興はおはりまでつもきたらざるべし。
問答二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
の一こと/″\涙含なみだぐんだ。このやさしい少女せうぢよ境遇きやうぐうかはつてたのと、天候てんかうくもがちなのとで、一そう我々われ/\ひとこゝろやさしさがかんじられたのであらう。
友はわが爲めに説きていふ、この福島町に於ける盆踊のさかんなるは到底このぢやうのさまなどにては想像にだも及ばぬことなり。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
殊に我輩が日本女子に限りて是非とも其智識を開発せんと欲する所は、社会上の経済思想と法律思想とこの二者に在り。
新女大学 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
おのれきものぬぎかへてしずるつづりおりに似たる衣をきかへたり、この時扇一握いちあく半井保なからいたもつにたまひて曙覧にたびてよと仰せたり、おのれいへらく
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
さてはこの母親の言ふに言はれぬ、世帯せたい魂胆こんたんもと知らぬ人の一旦いつたんまどへど現在の内輪うちわは娘がかたよりも立優たちまさりて、くらをも建つべき銀行貯金の有るやにそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
政府せいふ當局者たうきよくしやとしてはこの國民こくみん努力どりよくたいしてふか感謝かんしやへうするのであるが、國民こくみんとしても自分じぶん努力どりよく結果けつくわ
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
華尾先生もこのお仲間で身分のある家から女房をもらつて其縁に頼つて敢果はかない出世をしやうといふのが生涯の大望だ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
それにしてもロオラが、「ママ」と言わずに「オカアサン」と呼ぶところがわたしにはこの上なくうれしいのです。
オカアサン (新字新仮名) / 佐藤春夫(著)
勝負の要は間也かんなりわれ利せんと欲せば彼又利せんと欲す。我往かば彼また来る。勝負の肝要この間にあり。ゆえに吾伝の間積りと云うはくらい拍子に乗ずるを云う也。
巌流島 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
しからば北歐羅巴きたようろつぱ方面はうめんはどうかと見遣みやるに、この方面はうめんついてはわたしあまおほらぬが、えうするに幼稚えうちきはまるものであつて、規模きぼきはめてちいさいやうである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)