方角はうがく)” の例文
追駈おつかけ候中とくに日は暮方角はうがくわからず彷徨さまよひりしうちはからずも九助に出會段々の物語りに手間取てまどり追々夜も更行ふけゆくしたがひ月も出しかば夫を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
峨峰がほう嶮山けんざんかこまれた大湖たいこだから、時々とき/″\さつきりおそふと、このんでるのが、方角はうがくまよふうちにはねよわつて、みづちることいてゐた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もしかして案内あんないするとり方角はうがく間違まちがへて、鳥屋とやあみにでもかゝらうものなら、いてとりなんありましてもみなおなじやうにそのあみくび突込つゝこんでしまひます。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そのうち電車でんしや神田かんだた。宗助そうすけ何時いつものとほ其所そこえてうちはういてくのが苦痛くつうになつた。かれ神經しんけいは一でも安井やすゐ方角はうがくちかづくにえなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
つぎ瓢箪池へうたんいけうづめたあと空地あきちから花屋敷はなやしきかこそとで、こゝには男娼だんしやう姿すがたられる。方角はうがくをかへて雷門かみなりもんへんでは神谷かみやバーの曲角まがりかどひろ道路だうろして南千住行みなみせんぢゆゆき電車停留場でんしやていりうぢやうあたり
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
それと長吉ちようきちこゑをかくれば丑松うしまつ文次ぶんじそのの十餘人よにん方角はうがくをかへてばら/\と逃足にげあしはやく、うら露路ろぢにかゞむもるべし、口惜くやしいくやしい口惜くやしい口惜くやしい、長吉ちようきち文次ぶんじ丑松うしまつ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「それから、もう一つ、當分の間、——まくら方角はうがくを變へて休んで下さい」
同じ方角はうがくに向いてく。
悲しき玩具 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
力草ちからぐさ漸々やう/\と山へ這上はひあがりて見ば此はいかに山上は大雪おほゆきにて一面の銀世界ぎんせかいなり方角はうがくはます/\見分がたく衣類いるゐには氷柱つらゝさがしほぬれし上を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一寸ちよいとつまづいても怪我けがをするのに、方角はうがくれないやまなかで、掻消かきけすやうにかくれたものが無事ぶじやうはづはないではないか。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
宗助そうすけおほ方角はうがくいて早足はやあしうつした。今日けふ日曜にちえうも、のんびりした御天氣おてんきも、もうすで御仕舞おしまひだとおもふと、すこ果敢はかないやうまたさみしいやう一種いつしゆ氣分きぶんおこつてた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
何人なんびと何用なにようありてひたしといふにや親戚しんせき朋友ほういう間柄あひだがらにてさへおもてそむけるわれたいして一面いちめんしきなく一語いちごまじはりなきかも婦人ふじん所用しよようとは何事なにごとあひたしとは何故なにゆゑ人違ひとちがひとおもへばわけもなければ彼處かしこといひ此處こゝといひまはりし方角はうがく不審いぶかしさそれすらこと不思議ふしぎなるにたのみたきことありあし
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
まだ方角はうがくたしかでない。旅馴たびなれた野宿のじゆく覺悟かくごで、かすか黒雲くろくもごとひくやま四方しはうつゝんだ、はひのやうな渺茫べうばうたる荒野あらのあしにまかせて辿たどること二里にりばかり。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やすみ隱居のかたへ遊びに參りしに難波戰記なんばせんきほんあるを彦兵衞元來本好故ほんずきゆゑ取上とりあげ見れば鴫野今福しぎのいまふくの合戰なり是は古郷こきやうのことに付土地の方角はうがくくはしければ面白くおぼえ口の内にて讀居よみゐたるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
とほりを二丁目ちやうめほどて、それを電車でんしや方角はうがくまがつて眞直まつすぐると、乾物屋かんぶつや麺麭屋ぱんやあひだに、古道具ふるだうぐつてゐるなりおほきなみせがあつた。御米およねはかつて其所そこあしたゝめる食卓しよくたくつた記憶きおくがある。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
一體いつたい何處どこでございませう。方角はうがくなにわからなくなつたんだよ。仕樣しやうがないことね、ねえ、おまへさん。」
迷子 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
吾輩わがはいにはちやんわかつてる。位置ゐち方角はうがくのこらずつてる、——ゆびさしてへば、土地とちのものはのこらずつてる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
辰巳たつみかたには、ばかなべ蛤鍋はまなべなどと逸物いちもつ一類いちるゐがあるとく。が、一向いつかう場所ばしよ方角はうがくわからない。
湯どうふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
第一だいいち場所ばしよわるいや、鬼門關きもんくわんでおいでなさる、串戲じようだんぢやねえ。しからずきりかゝつて方角はうがくわからねえ。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それさへこけうもれたのを、燈心とうしん掻立かきたてる意氣組いきぐみで、引毮ひきむしるやうに拂落はらひおとして、みなみきた方角はうがくむつもりが、ぶる/\と十本じつぽんゆびふるはして、おどかしけるやうな
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
九月くぐわつ二十日はつか前後ぜんごに、からりとさわやかにほのあたゝかに晴上はれあがつたあさおな方角はうがくからおな方角はうがくへ、紅舷こうげん銀翼ぎんよくちひさなふねあやつりつゝ、碧瑠璃へきるりそらをきら/\きら/\と幾千萬艘いくせんまんそう
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一度いちど何處どこ方角はうがくれないしまへ、ふね水汲みづくみつたときはまつゞきの椰子やしおくに、うね、かすと、一人ひとり、コトン/\と、さびしくあはいて亡者まうじやがあつてね
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とひよつこり、ひよこり、ひよつこりと歩行あるす……案山子かゝしどもの出向でむくのが、ほこらはうへ、雪枝ゆきえみち方角はうがくあたる。むかふをしてじやうぬま身投みなげにくのではいらしい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
糸崎行いとざきゆき——おはづかしいが、わたし方角はうがくわからない。たなほこりはらひながら、地名辭典ちめいじてん索引さくいんると、糸崎いとざきふのが越前國ゑちぜんのくに備前國びぜんのくにとにしよある。わたし東西とうざい、いや西北せいほくまよつた。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)