やぶ)” の例文
やぶれたるせん棋士きしけう中やはたして如何に? どんな勝負せうふ事もはい後に生くわつ問題もんだいうら附けるとなれば一そう尖鋭化せんえいくわしてくる事は明かだが
佐久間玄蕃さくまげんば中入なかいり懈怠けたいのためか、柴田勝家しばたかついへしづたけ合戰かつせんやぶれて、城中じやうちう一息ひといき湯漬ゆづけ所望しよまうして、悄然せうぜんきたさうへとちてく。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「すでに、おのれにやぶれている者が、何で外に勝てるものか。いわんや、世をべて、まとめ上げることなどができるわけはあるまい」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それ勝敗は兵家の常なり。蘇東坡そとうば所謂いわゆるえきする者も日に勝って日にやぶるゝものなり。然るに一敗の故を以て、老将を退け、驕児きょうじを挙ぐ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
北條時宗むかえ撃って大いにこれやぶったことは、およそ歴史を知るほどの人は所謂いわゆる元寇げんこうえき」として、たれそらんじている所である。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
僕の尊敬する所は鹿島さんの「人となり」なり。鹿島さんの如く、熟してやぶれざるていの東京人は今日こんにち既に見るべからず。明日みやうにちさらまれなるべし。
田端人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そして、勝ったものは支配者であり、同時に、やぶれたものは居たたまらなくされたのだ。あるいはのがれてやって来るものがきびすを接するようになった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
あげるにはあげたが、数の相違でやぶれて、拙者も十余名の同志と紀州路へ落ちて行く途中、猟師の奴に爆弾をしかけられて、こんなことになってしまいました
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これくに厚利こうりもつてせば、すなはひそか其言そのげんもちひてあらは其身そのみてん。これらざるからざるなり。ことみつもつり、るるをもつやぶる。
余の事業のやぶられしは敗るべからざる事業に余の着手せんがためなり(希伯来ヘブル書十二章第二十七節)。
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
ロレ 人聲ひとごゑがする。……こりゃひめよ、ま、はやてござれ、そこは疫癘えきれい無理むり睡眠すゐみん宿やどぢゃほどに。人間以上にんげんいじゃうちからため折角せっかく計畫はかりごとみなやぶれた、さ、はやうござれ。
〔評〕長兵京師にやぶる。木戸公は岡部氏につてわざはいまぬかるゝことを得たり。のち丹波におもむき、姓名せいめいへ、博徒ばくとまじり、酒客しゆかくまじはり、以て時勢をうかゞへり。南洲は浪華なにはの某樓にぐうす。
たといいくさやぶれて身の置きどころなしとても、それは武門の常なれば耻と云うべからず、今此のような見苦しき服装にて京大坂を引き廻すは、吾等同様に武士の本意でないとっしゃって
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その卵敗れてかえらずと、プリニウス説にこれを防ぐには卵の下草の下に鉄釘一本、またはすきのサキですくげた土を置けばやぶれずと、コルメラは月桂の小枝とニンニクの根と鉄釘を置けと言った。
ただ白鳥はくてう君には髭が無いけれどマス君にはうしろねた頤髭あごひげがある。見物人には一撃のもとにマス君がやぶられさうあやぶまれたが、しかしマス君は見掛に寄らず最後まで勇敢に戦つて立派に名誉を恢復くわいふくした。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
けれども其の望みはやぶれて暗い空にと消えました。
あらそ將棋せうきやぶれていて死ぬなどは一しゆ悲壯ひそう美をかんじさせるが、迂濶うくわつに死ぬ事も出來ないであらうげん代のせん棋士きしは平ぼん
ところが、竹童の信念しんねんはくつがえされて、ゆみをとっては神技かみわざといわれている蔦之助が、どうだろう、この不覚ふかく? このみにくいやぶかた
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぞくほつするところつてこれ(二五)あたへ、ぞくとするところつてこれる。まつりごとすや、わざはひつてさいはひし、やぶれをてんじてこうし、(二六)輕重けいぢうたつとび、權衡けんかうつつしめり。
すみ先生せんせいよろしく、と挨拶あいさつして、ひとり煢然けいぜんとしてたふげくだ後態うしろつきの、みづうみ広大くわうだい山毛欅ぶなたかし、遠見とほみ魯智深ろちしんたのが、かついくさやぶれて、よろひて、雑兵ざうひやうまぎれてちて宗任むねたふのあはれがあつた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
〔譯〕刀槊たうさくきよ心をいだく者はくじけ、勇氣ゆうきたのむ者はやぶる。必や勇怯ゆうきよを一せいほろぼし、勝負しようぶを一どうわすれ、之をうごかすに天を以てして、廓然かくぜん太公たいこうに、之をしづむるに地を以てして、もの來つて順應じゆんおうせん。
「御城代。……いや数正どの。あなたは、ついに、世間の冬に負けて、こよいの木枯しに身をまかせ、何処いずこへか、やぶれ去るお心とみえますな」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
堂堂どうどう遠慮えんりよなくあらそつべく、よわき者やぶるる者がドシドシ蹴落けおとされて行く事に感傷的かんせうてき憐憫れんびんなどそゝぐべきでもあるまい。
龐涓はうけんみづから・きはまりへいやぶるるをり、すなは(五七)自剄じけいしていはく、『つひ(五八)豎子じゆしせり』と。せいつてかちじようじてことごと其軍そのぐんやぶり、太子たいししんとりこにし(五九)かへる。
〔譯〕急迫きふはくは事をやぶる。寧耐ねいたいは事をす。
いや、そんな意地いじよりも名誉心めいよしんよりも、まんいち自分がやぶれでもした時には、いやでもおうでも、咲耶子さくやこの身を徳川家とくがわけの手にわたさなければならない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
公子こうしきうやぶるるや、召忽せうこつこれし、われ(一〇)幽囚いうしうせられてはづかしめく。鮑叔はうしゆくわれもつはぢしとさず。(一一)小節せうせつぢずして・功名こうめいの・天下てんかあらはれざるをづるをればなり
全能ぜんのう全力ぜんりょく正当せいとうにつくしてみて、それでもやぶれれば、まことに是非ぜひのないわけだ。男らしく、一とうの人の前へでて、つみしゃするよりほかにみちはない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すでに空身くうしん。なにをたのみなにを願うことがあろう。戦わぬ前に心の一端からやぶれを生じかけたのだ。そんなことで、なにがさむらいらしい一生涯の完成か。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「相手にとって不足のないものだ。やぶれた時は、いさぎよく、彼の足もとへ降伏するまでだ。——だが、何ほどのことがあろう、死を期してかかるからには」
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
以仁王と頼政の宇治川のやぶれ。また、清盛の福原遷都せんとの決行などで、ひとまず平家や都の方は筆を休め、伊豆に移って、頼朝の旗挙げが、ここ数回のテーマになる。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この島の名を有名にさせ、武蔵のためにやぶれてあえなく若い偉材をこの一小島に埋めた佐々木小次郎に——一掬いっきくの涙をそそいで墓石を建てた古人は、いったい誰だったか。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いかに貴公が、日頃の温厚と隠忍をやぶり、いまはと、火の玉になってつかっても、勝てないものには勝てない。やはりやぶれるのみだ。——敗れた結果はどうなるか。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
源ノ義朝一族はやぶれ、清盛の六波羅平氏が、ひとり都に武門として、隆昌の兆しを示している。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、やぶれれば敗れるほど、強くなるのが甲軍の本質である。最初の猛襲に、ほとんど三分の一を失ったが、どうッ——と退くやいな再び新手の勢が木柵もくさくへ迫って来た。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「形のうえでは、わしが言いやぶれた。まことの罪人の出ぬうちは、伜の罪は拭われぬ。たれが仕組んだ仕事か、悪人ながら、よくもああまで巧みに、人に罪を着せたものじゃ」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
吉岡方は、先に清十郎をやぶられ、伝七郎を討たれ、今度という今度こそは、最後のとむらい合戦だ。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兵法の大乗的な見地から観れば、これは明らかに武蔵のやぶれであり、武蔵の未熟さを、見事にお杉婆の信仰心と切っ先が、暴露して見せたものといって差しつかえなかろう。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武蔵をこのままほうっておいて、家名大事に、道場の維持を考えて行けなどという兄貴のことばは、いったい武士の吐くことばか。そんな考えだから、武蔵にやぶれるのは当然だ。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
筒井順昭じゅんしょうやぶれた時、一度、領地を失い、足利家没落と共に、二度、所領を没収された。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
林冲りんちゅう。よく言ってくれた。しかしこのやぶれは梁山泊りょうざんぱくはじめての傷手いたでだ。みなにすまん」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大津から先、一行は騎馬だったが、病人は肩輿かたごしに助けられて、京都に入り、同夜は洛中に一泊し、翌日、山崎天王山の宝寺城たからでらじょうへ向った。ここはこの夏、光秀のやぶれ去った旧戦場であった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
目睫もくしょうの大決戦期に、敵前これを実施するのは無謀とも大胆ともいえる。もし間隙かんげきやぶれんか、敗因の罪は一に敵前土木の工などに、かかずらっていた迂愚うぐにありと、世にわらわるるは必定ひつじょうである。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、有村じゃとて、やぶれた後は、決して生きてはおらぬ覚悟」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
義兵は勝ち、驕兵はかならずやぶる。誰も知る戦の原則である。——曹操はいま許昌きょしょうにあって、天下を制しているが、めいはみな帝の御名を以てし、士卒は精練、彼自身は、機変妙勝の胆略を蔵している。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「日ごろ、潔白な大判事ゆえ、訴訟にやぶれし者の怨みか」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やぶるるものは、碌々ろくろくとあえぐ。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けた。おれはやぶれた」
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うちやぶもの
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)