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ふりがな文庫
“
仰向
(
あふむ
)” の例文
烈々
(
れつ/\
)
と
燃
(
も
)
える
暖炉
(
だんろ
)
のほてりで、
赤
(
あか
)
い
顔
(
かほ
)
の、
小刀
(
ナイフ
)
を
持
(
も
)
つたまゝ
頤杖
(
あごづゑ
)
をついて、
仰向
(
あふむ
)
いて、ひよいと
此方
(
こちら
)
を
向
(
む
)
いた
父
(
ちゝ
)
の
顔
(
かほ
)
が
真蒼
(
まつさを
)
に
成
(
な
)
つた。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「そのくらゐのことア、おれも感づいてゐらア、ね——然し、病氣はどんなだ」と、
仰向
(
あふむ
)
けにだらけさせてゐたからだを横に寢返りする。
泡鳴五部作:04 断橋
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
経師屋閉口して、
仰向
(
あふむ
)
けに
往来
(
わうらい
)
へころげたら、河童一匹背中を離れて、川へどぶんと飛びこみし由、幼時母より聞きし事あり。
雑筆
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「パパはあなたがこの頃ちつともいらつしやらないつて仰しやつてよ。」オリヴァ孃は
仰向
(
あふむ
)
いて、言葉を續けた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
夫
(
それ
)
ばかりか、
肩
(
かた
)
も
脊
(
せな
)
も、
腰
(
こし
)
の
周
(
まは
)
りも、
心安
(
こゝろやす
)
く
落
(
お
)
ち
付
(
つ
)
いて、
如何
(
いか
)
にも
樂
(
らく
)
に
調子
(
てうし
)
が
取
(
と
)
れてゐる
事
(
こと
)
に
氣
(
き
)
が
付
(
つ
)
いた。
彼
(
かれ
)
はたゞ
仰向
(
あふむ
)
いて
天井
(
てんじやう
)
から
下
(
さが
)
つてゐる
瓦斯
(
ガス
)
管
(
くわん
)
を
眺
(
なが
)
めた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
達二は、
仰向
(
あふむ
)
けになって空を見ました。空がまっ白に光って、ぐるぐる廻り、そのこちらを薄い
鼠
(
ねずみ
)
色の雲が、速く速く走ってゐます。そしてカンカン鳴ってゐます。
種山ヶ原
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
「死骸を
仰向
(
あふむ
)
きにして見ると、首筋にも指の跡がある。——匕首が突つ立つてゐるから、うつかり
騙
(
だま
)
されたが、あれは刺される前に、男の強い力で
扼
(
し
)
め殺されてゐたんだ」
銭形平次捕物控:116 女の足跡
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
なに
彼
(
あ
)
の
人
(
ひと
)
はね
疝気
(
せんき
)
が
起
(
おこ
)
つていけないツてえから、
私
(
わたし
)
がアノそれは薬を飲んだつて
無益
(
むだ
)
でございます、
仰向
(
あふむ
)
けに
寐
(
ね
)
て、
脇差
(
わきざし
)
の
小柄
(
こづか
)
を
腹
(
はら
)
の上に
乗
(
のつ
)
けてお置きなさいと
云
(
い
)
つたんで。
にゆう
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
今太郎君は船板の上に、
仰向
(
あふむ
)
けにひつくりかへつてゐる亀を、珍しさうに見てゐましたが、これが今夜喰べられてしまふのかと思ふと、何だかかはいさうなやうな気がしました。
動く海底
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
もたれだけがうしろにのびて、腰掛けてゐる人が
仰向
(
あふむ
)
けに寝るやうになつただけでした。
疣
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
その砂丘に足を投げ出して
涯
(
はてし
)
ない海の暗い沖の方に眺め入つたり、また
仰向
(
あふむ
)
きに寢ころんで眼もはるかな
蒼穹
(
さうきう
)
に見詰め入つたりしながらも、私はほんとに頭を休める
譯
(
わけ
)
には行かなかつた。
処女作の思い出
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
鐵拳
(
かなこぶし
)
に
撲倒
(
はりたふ
)
す
勇氣
(
ゆうき
)
はあれど
誠
(
まこと
)
に
父母
(
ちゝはゝ
)
いかなる
日
(
ひ
)
に
失
(
う
)
せて
何時
(
いつ
)
を
精進日
(
しやうじんび
)
とも
心得
(
こゝろえ
)
なき
身
(
み
)
の、
心細
(
こゝろぼそ
)
き
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
ふては
干場
(
ほしば
)
の
傘
(
かさ
)
のかげに
隱
(
かく
)
れて
大地
(
だいぢ
)
を
枕
(
まくら
)
に
仰向
(
あふむ
)
き
臥
(
ふ
)
してはこぼるゝ
涙
(
なみだ
)
を
呑込
(
のみこ
)
みぬる
悲
(
かな
)
しさ
わかれ道
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
吾が
童
(
わらべ
)
鐘にとどかず
脚立
(
きやたつ
)
よりのびあがりうつ
面
(
かほ
)
仰向
(
あふむ
)
けて
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
死の時には私が
仰向
(
あふむ
)
かんことを!
山羊の歌
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
吃驚
(
びつくり
)
して、
取
(
と
)
つて、すつと
上
(
うへ
)
へ
引
(
ひ
)
くと、
引
(
ひ
)
かれた
友染
(
いうぜん
)
は、
其
(
そ
)
のまゝ、
仰向
(
あふむ
)
けに、
襟
(
えり
)
の
白
(
しろ
)
さを
蔽
(
おほ
)
ひ
余
(
あま
)
るやうに、がつくりと
席
(
せき
)
に
寝
(
ね
)
た。
続銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「‥‥」かの女は矢張り無言で、少し
仰向
(
あふむ
)
き加減にそツぱうを見てゐるらしく、然しからだは全體に顫へてゐるのが見えた。
泡鳴五部作:02 毒薬を飲む女
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
机の上にはさつきの通り、魔法の書物が開いてある、——その下へ
仰向
(
あふむ
)
きに倒れてゐるのは、あの印度人の婆さんです。
アグニの神
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
松
(
まつ
)
の
幹
(
みき
)
の
染
(
そ
)
めた
樣
(
やう
)
に
赤
(
あか
)
いのが、
日
(
ひ
)
を
照
(
て
)
り
返
(
かへ
)
して
幾本
(
いくほん
)
となく
並
(
なら
)
ぶ
風情
(
ふぜい
)
を
樂
(
たの
)
しんだ。ある
時
(
とき
)
は
大悲閣
(
だいひかく
)
へ
登
(
のぼ
)
つて、
即非
(
そくひ
)
の
額
(
がく
)
の
下
(
した
)
に
仰向
(
あふむ
)
きながら、
谷底
(
たにそこ
)
の
流
(
ながれ
)
を
下
(
くだ
)
る
櫓
(
ろ
)
の
音
(
おと
)
を
聞
(
き
)
いた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
それでは上の船へ合図をして、引上げて
貰
(
もら
)
はうとすれば鱶は、待つてゐましたとばかり、くるりと
仰向
(
あふむ
)
けに引つくり返り、下の方から足をがつぷりと
喰
(
く
)
ひ切つてしまふかも知れません。
動く海底
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
山男は
仰向
(
あふむ
)
けになつて、
碧
(
あを
)
いああをい空をながめました。
山男の四月
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
吾が
童
(
わらべ
)
鐘にとどかず
脚立
(
きやたつ
)
よりのびあがりうつ
面
(
かほ
)
仰向
(
あふむ
)
けて
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
裙
(
すそ
)
が
未
(
ま
)
だ
此
(
こ
)
の
肱
(
ひぢ
)
に
懸
(
かゝ
)
つて、
橋
(
はし
)
に
成
(
な
)
つて
床
(
ゆか
)
に
着
(
つ
)
く、
仰向
(
あふむ
)
けの
白
(
しろ
)
い
咽喉
(
のど
)
を、
小刀
(
ナイフ
)
でざつくりと、さあ、
斬
(
き
)
りましたか、
突
(
つ
)
いたんですか。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
事務室には、氷峰がひとり
仰向
(
あふむ
)
けに寢ころんで、暑さうにうちはを使ひながら、これも、義雄を見て、變な顏をしてゐる。
泡鳴五部作:03 放浪
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
茶の間のまん中にはお富が一人、袖に顔を
蔽
(
おほ
)
つた儘、ぢつと
仰向
(
あふむ
)
けに横たはつてゐた。新公はその姿を見るが早いか、逃げるやうに台所へ引き返した。
お富の貞操
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
御米
(
およね
)
は
灯
(
ひ
)
に
背
(
そむ
)
いてゐたから、
宗助
(
そうすけ
)
には
顏
(
かほ
)
の
表情
(
へうじやう
)
が
判然
(
はつきり
)
分
(
わか
)
らなかつたけれども、
其聲
(
そのこゑ
)
は
多少
(
たせう
)
涙
(
なみだ
)
でうるんでゐる
樣
(
やう
)
に
思
(
おも
)
はれた。
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
仰向
(
あふむ
)
いて
天井
(
てんじやう
)
を
見
(
み
)
てゐた
彼
(
かれ
)
は、すぐ
妻
(
さい
)
の
方
(
はう
)
へ
向
(
む
)
き
直
(
なほ
)
つた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
こくこくと
仰向
(
あふむ
)
いて、
苦
(
にが
)
さうな口のあたりに持てゆく。
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「
母様
(
おつかさん
)
!」といつて
離
(
はな
)
れまいと
思
(
おも
)
つて、しつかり、しつかり、しつかり
襟
(
えり
)
ん
処
(
とこ
)
へかぢりついて
仰向
(
あふむ
)
いてお
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
た
時
(
とき
)
、フツト
気
(
き
)
が
着
(
つ
)
いた。
化鳥
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「君の意氣と人格そツくりぢや、なア」と、氷峰は
仰向
(
あふむ
)
いたからだを
半
(
なか
)
ば起して義雄の方へ向いた。
泡鳴五部作:03 放浪
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
あの煙に咽んで
仰向
(
あふむ
)
けた顏の白さ、焔を
掃
(
はら
)
つてふり亂れた髮の長さ、それから又見る間に火と變つて行く、櫻の唐衣の美しさ、——何と云ふ
慘
(
むご
)
たらしい景色でございましたらう。
地獄変
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
房ながらまろき葡萄は
仰向
(
あふむ
)
きて月の光にうちかざし
食
(
は
)
む
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
名道人
(
めいだうじん
)
畏
(
かしこま
)
り、
白
(
しろ
)
き
長
(
なが
)
き
鬚
(
ひげ
)
を
撫
(
な
)
で、あどなき
顏
(
かほ
)
を
仰向
(
あふむ
)
けに、
天眼鏡
(
てんがんきやう
)
をかざせし
状
(
さま
)
、
花
(
はな
)
の
莟
(
つぼみ
)
に
月
(
つき
)
さして、
雪
(
ゆき
)
の
散
(
ち
)
るにも
似
(
に
)
たりけり。
妙齢
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
あの煙に
咽
(
むせ
)
んで
仰向
(
あふむ
)
けた顔の白さ、焔を
掃
(
はら
)
つてふり乱れた髪の長さ、それから又見る間に火と変つて行く、桜の
唐衣
(
からぎぬ
)
の美しさ、——何と云ふ
惨
(
むご
)
たらしい景色でございましたらう。
地獄変
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「‥‥」義雄は曾てここでだだを
捏
(
こ
)
ねた時、
仰向
(
あふむ
)
けに寢そべつて兩足をかけたことがあるのを思い出される黒塗りの箪笥が、相變らずよくてか/\と光つてることを考へてゐた。
泡鳴五部作:04 断橋
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
房ながらまろき葡萄は
仰向
(
あふむ
)
きて月の光にうちかざし
食
(
は
)
む
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
などと、
猫撫聲
(
ねこなでごゑ
)
で、
仰向
(
あふむ
)
けにした
小兒
(
こども
)
の
括頤
(
くゝりあご
)
へ、
動
(
いぶ
)
りをくれて
搖上
(
ゆりあ
)
げながら、
湯船
(
ゆぶね
)
の
前
(
まへ
)
へ、ト
腰
(
こし
)
を
拔
(
ぬ
)
いた
體
(
てい
)
に、べつたりと
踞
(
しやが
)
んだものなり。
銭湯
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
その又O君の
傍
(
かたは
)
らには妙にものものしい義足が一つ、白
足袋
(
たび
)
の足を
仰向
(
あふむ
)
かせてゐた。
O君の新秋
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
仰向
(
あふむ
)
きに眠る顏だち胸高く押し流れ行く雲もありにけり
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
凄
(
すさま
)
じく
嘶
(
いなゝ
)
いて
前足
(
まへあし
)
を
両方
(
りやうはう
)
中空
(
なかぞら
)
へ
飜
(
ひるがへ
)
したから、
小
(
ちひさ
)
な
親仁
(
おやぢ
)
は
仰向
(
あふむ
)
けに
引
(
ひツ
)
くりかへつた、づどんどう、
月夜
(
つきよ
)
に
砂煙
(
すなけぶり
)
が
𤏋
(
ぱツ
)
と
立
(
た
)
つ。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
僕は
鵠沼
(
くげぬま
)
の
東屋
(
あづまや
)
の二階にぢつと
仰向
(
あふむ
)
けに寝ころんでゐた。その又僕の枕もとには
妻
(
つま
)
と
伯母
(
をば
)
とが差向ひに庭の向うの海を見てゐた。僕は目をつぶつたまま、「今に雨がふるぞ」と言つた。
鵠沼雑記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
仰向
(
あふむ
)
きに眠る顔だち胸高く押し流れ行く雲もありにけり
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
軒
(
のき
)
の
數
(
かず
)
、また
窓
(
まど
)
の
數
(
かず
)
、
店
(
みせ
)
の
數
(
かず
)
、
道
(
みち
)
も
段々
(
だん/\
)
に
上
(
のぼ
)
るやうで、
家並
(
やなみ
)
は、がつくりと
却
(
かへ
)
つて
低
(
ひく
)
い。
軒
(
のき
)
は
俯向
(
うつむ
)
き、
屋根
(
やね
)
は
仰向
(
あふむ
)
く。
飯坂ゆき
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
太郎はかう云つて、
糸鬢奴
(
いとびんやつこ
)
の頭を
仰向
(
あふむ
)
けながら自分も亦笑ひ出した。
戯作三昧
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
仰向
(
あふむ
)
きて浮く水の上
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
『
姉
(
ねえ
)
さん、』と
仰向
(
あふむ
)
くと
上
(
うへ
)
から
俯向
(
うつむ
)
いて
見
(
み
)
たやうに
思
(
おも
)
ふ、……
廊下
(
らうか
)
の
長
(
なが
)
い、
黄昏時
(
たそがれどき
)
の
扉
(
ひらき
)
の
際
(
きは
)
で、むら/\と
鬢
(
びん
)
の
毛
(
け
)
が、
其時
(
そのとき
)
は
戦
(
そよ
)
いだやうに
思
(
おも
)
ひました。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
が、杜子春はとうに息が絶えて、
仰向
(
あふむ
)
けにそこへ倒れてゐました。
杜子春
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
時
(
とき
)
恰
(
あたか
)
も、
其
(
そ
)
の
客
(
きやく
)
を
會
(
くわい
)
した
處
(
ところ
)
。
入口
(
いりくち
)
に
突伏
(
つツぷ
)
して
云
(
い
)
ふ
下男
(
げなん
)
の
取次
(
とりつぎ
)
を、
客
(
きやく
)
の
頭越
(
あたまご
)
しに、
鼻
(
はな
)
を
仰向
(
あふむ
)
けて、フンと
聞
(
き
)
き
画の裡
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
金花はまるで
喪心
(
さうしん
)
したやうに、翡翠の耳環の下がつた頭をぐつたりと後へ
仰向
(
あふむ
)
けた儘、しかし
蒼白
(
あをじろ
)
い頬の底には、
鮮
(
あざやか
)
な血の色を
仄
(
ほの
)
めかせて、鼻の先に迫つた彼の顔へ、
恍惚
(
くわうこつ
)
としたうす眼を注いでゐた。
南京の基督
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
頷
(
うなづ
)
いた。
仰向
(
あふむ
)
いて
頷
(
うなづ
)
いた。
其膝切
(
そのひざきり
)
しかないものが、
突立
(
つツた
)
つてる
大
(
だい
)
の
男
(
をとこ
)
の
顏
(
かほ
)
を
見上
(
みあ
)
げるのだもの。
仰向
(
あふむ
)
いて
見
(
み
)
ざるを
得
(
え
)
ないので、
然
(
しか
)
も、
一寸位
(
ちよつとぐらゐ
)
では
眼
(
め
)
が
屆
(
とゞ
)
かない。
迷子
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
頤
(
おとがひ
)
をすくつて、
身
(
み
)
を
反
(
そら
)
して、ふッさりとある
髮
(
かみ
)
が
帶
(
おび
)
の
結目
(
むすびめ
)
に
觸
(
さは
)
るまで、いたいけな
顏
(
かほ
)
を
仰向
(
あふむ
)
けた。
色
(
いろ
)
の
白
(
しろ
)
い、うつくしい
兒
(
こ
)
だけれど、
左右
(
さいう
)
とも
眼
(
め
)
を
煩
(
わづら
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
迷子
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
が、
例
(
れい
)
の
大鞄
(
おほかばん
)
が、
其
(
そ
)
のまゝ
網棚
(
あみだな
)
にふん
反返
(
ぞりがへ
)
つて、
下
(
した
)
に
皺
(
しな
)
びた
空気枕
(
くうきまくら
)
が
仰向
(
あふむ
)
いたのに、
牛乳
(
ぎうにう
)
の
壜
(
びん
)
が
白
(
しろ
)
い
首
(
くび
)
で
寄添
(
よりそ
)
つて、
何
(
なん
)
と……、
添寝
(
そひね
)
をしようかとする
形
(
かたち
)
で
居
(
ゐ
)
る。
銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
仰
常用漢字
中学
部首:⼈
6画
向
常用漢字
小3
部首:⼝
6画
“仰向”で始まる語句
仰向反
仰向様