トップ
>
煙草入
>
たばこいれ
ふりがな文庫
“
煙草入
(
たばこいれ
)” の例文
が、
紅
(
あか
)
い
襷
(
たすき
)
で、
色白
(
いろじろ
)
な娘が運んだ、
煎茶
(
せんちゃ
)
と
煙草盆
(
たばこぼん
)
を
袖
(
そで
)
に控へて、
然
(
さ
)
まで
嗜
(
たしな
)
むともない、其の、
伊達
(
だて
)
に持つた
煙草入
(
たばこいれ
)
を手にした時、——
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
敬太郎は主人の
煙草入
(
たばこいれ
)
を早く腰に差させようと思って、単に
宜
(
よろ
)
しいと答えた。主人はようやく談判の道具を
角帯
(
かくおび
)
の後へしまい込んだ。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
蝋塗りに
螺鈿
(
らでん
)
を散らした、見事な
鞘
(
さや
)
がそこに落散つて、外に男持の
煙草入
(
たばこいれ
)
が一つ、
金唐革
(
きんからかは
)
の
叺
(
かます
)
に、その頃壓倒的に流行つた
一閑張
(
いつかんばり
)
の筒。
銭形平次捕物控:116 女の足跡
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
然
(
しか
)
しそれを
誰
(
たれ
)
も
見
(
み
)
ては
居
(
ゐ
)
なかつた。それでも
彼
(
かれ
)
は
空虚
(
から
)
な
煙草入
(
たばこいれ
)
を
放
(
はな
)
すに
忍
(
しの
)
びない
心持
(
こゝろもち
)
がした。
彼
(
かれ
)
は
僅
(
わづか
)
な
小遣錢
(
こづかひせん
)
を
入
(
い
)
れて
始終
(
しじう
)
腰
(
こし
)
につけた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
煙草入
(
たばこいれ
)
にも入れてなく、
嚢
(
ふくろ
)
にも入れてなくして、
暖炉
(
ストーブ
)
枠の上、食器棚の上、ピアノの上
等
(
とう
)
至る所に
一塊
(
ひとかたまり
)
づゝにして載せてある。
作男・ゴーの名誉
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
▼ もっと見る
しても此方には
聢
(
しか
)
とした證據があるぞ是其方
所持
(
しよぢ
)
の
煙草入
(
たばこいれ
)
が其場に落して有しなり夫を見よと
投出
(
なげいだ
)
されしに富右衞門は是を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
賽
(
さい
)
をつかんで、目つぶしに、喧嘩相手の顔へ
打
(
ぶっ
)
つける。何をっと、相手も負けてはいない。手当り次第である。
煙草入
(
たばこいれ
)
、つぼ、茶碗、と抛りつけた。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
糠
(
ぬか
)
に
釘
(
くぎ
)
ッてな、おめえのこった。——火のおこるまで一
服
(
ぷく
)
やるから、その
煙草入
(
たばこいれ
)
を、こっちへよこしねえ」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
もしか
親房
(
ちかふさ
)
卿から今の北畠男爵になる迄の歴とした系図でも出たら、法隆寺の老人も
煙草入
(
たばこいれ
)
のやうな口を
開
(
あ
)
けて喜んだに相違ないが、惜しい事をしたものだ。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
この印籠は主として
煙草入
(
たばこいれ
)
として用いられ、形に幾つかの型を有ちます。高山が第一に誇ってよい品と評したく思います。この町の「
一位細工
(
いちいざいく
)
」も名があります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
国貞は歩いて来た暑さに
頻
(
しきり
)
と
団扇
(
うちわ
)
を使い初める。立ちかけた種員は再び腰なる
煙草入
(
たばこいれ
)
を取出しながら
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
安政四年になって
銀鎖
(
ぎんぐさり
)
の
煙草入
(
たばこいれ
)
が
流行
(
はや
)
った。香以は丸利に
誂
(
あつら
)
えて数十箇を作らせ、取巻一同に与えた。
古渡唐桟
(
こわたりとうざん
)
の羽織を
揃
(
そろい
)
に
為立
(
した
)
てさせて、一同に
畀
(
あた
)
えたのもこの頃である。
細木香以
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
手荷物は高い高い上の金網の上に皆載せられてあつた。
浦潮斯徳
(
ウラジホストツク
)
の
勧工場
(
くわんこうば
)
で買つて来た桃色の箱に
入
(
はひ
)
つた百本
入
(
いり
)
の巻
煙草
(
たばこ
)
と、
西伯利亜
(
シベリア
)
の木で造られた
煙草入
(
たばこいれ
)
とが机の上に置いてある。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
亥太郎さんが
此品
(
これ
)
を持っていると云うのは不思議でございますな、この
煙草入
(
たばこいれ
)
は皮は
高麗
(
こうらい
)
の
青皮
(
せいひ
)
、
趙雲
(
ちょううん
)
の
円金物
(
まるがなもの
)
、
後藤宗乘
(
ごとうそうじょう
)
の作、
緒締
(
おじめ
)
根附
(
ねつけ
)
はちぎれて有りませんが、これは不思議な品で
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
愈〻
(
いよ/\
)
平地
(
へいち
)
を
離
(
はな
)
れて
山路
(
やまぢ
)
にかゝると、これからが
初
(
はじ
)
まりと
言
(
い
)
つた
調子
(
てうし
)
で
張飛巡査
(
ちやうひじゆんさ
)
は
何處
(
どこ
)
からか
煙管
(
きせる
)
と
煙草入
(
たばこいれ
)
を
出
(
だ
)
したがマツチがない。
關羽
(
くわんう
)
も
持
(
もつ
)
て
居
(
ゐ
)
ない。これを
見
(
み
)
た
義母
(
おつかさん
)
は
徐
(
おもむろ
)
に
袖
(
たもと
)
から
取出
(
とりだ
)
して
湯ヶ原ゆき
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
「私達は今、面白い二階に居ますよ」とお種は女持の
煙草入
(
たばこいれ
)
を取出しながら
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
暗闇の中でも、笠井が眼をきょとんとさせて
火傷
(
やけど
)
の方の半面を平手で
撫
(
な
)
でまわしているのが想像された。そしてやがて腰を
下
(
おろ
)
して、今までの
慌
(
あわ
)
てかたにも似ず
悠々
(
ゆうゆう
)
と
煙草入
(
たばこいれ
)
を出してマッチを
擦
(
す
)
った。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
反対に泥棒が立派な
煙草入
(
たばこいれ
)
を忘れていつたので、さしひきすると得をしてしまつた
勘又
(
かんまた
)
さんでも、
真鍮
(
しんちゆう
)
のぴかぴか光つた茶釜と
牝鶏
(
めんどり
)
を一羽盗まれた
弥助
(
やすけ
)
さんと同じやうに、かんかんになつて怒つた。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
髷
(
まげ
)
も女優巻でなく、わざとつい通りの束髪で、薄化粧の
淡洒
(
あっさり
)
した
意気造
(
いきづくり
)
。
形容
(
しな
)
に合せて、
煙草入
(
たばこいれ
)
も、好みで持った気組の
婀娜
(
あだ
)
。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この妙に落ちつき払って古風な
煙草入
(
たばこいれ
)
から
刻
(
きざ
)
みを
撮
(
つま
)
み出しては
雁首
(
がんくび
)
へ詰める男の誤解は、正解と同じような不安を
敬太郎
(
けいたろう
)
に与えたのである。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
右の
通
(
とほ
)
り重四郎一件
落着
(
らくちやく
)
と成しは
誠
(
まこと
)
に天道正直の
道
(
みち
)
を
照
(
てら
)
し給ふ所なり然れども
其人
(
そのひと
)
其罪無して杉戸屋富右衞門は
如何
(
いか
)
なる其身の
業報
(
ごふはう
)
にや
煙草入
(
たばこいれ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
それが
明日
(
あす
)
からといふ
日
(
ひ
)
に
彼
(
かれ
)
は
其
(
その
)
残
(
のこ
)
つた
煙草
(
たばこ
)
を
殆
(
ほとん
)
ど一
日
(
にち
)
喫
(
す
)
ひ
續
(
つゞ
)
けた。
煙草入
(
たばこいれ
)
の
叺
(
かます
)
を
倒
(
さかさ
)
にして
爪先
(
つまさき
)
でぱた/\と
彈
(
はじ
)
いて
少
(
すこ
)
しの
粉
(
こ
)
でさへ
餘
(
あま
)
さなかつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
平岡氏は
何
(
ど
)
うといふ見当もつけないで、大ざつぱに言つて
退
(
の
)
けた。骨董屋はそれを聞くと、急に冷たい顔をして、
煙草入
(
たばこいれ
)
を腰にさして、てんでに
引下
(
ひきさが
)
つて往つた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
臼
(
うす
)
だとか
船枕
(
ふなまくら
)
だとか
煙草入
(
たばこいれ
)
だとか、立派な形を木から刻み出しますが、中でも見事なのは舟で用いる
垢取
(
あかとり
)
で、思わずその形の美しさに見とれます。材は松を用います。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
「どうせあたしゃ
無態
(
むたい
)
さ。——この
煙草入
(
たばこいれ
)
もお
前
(
まえ
)
に
上
(
あ
)
げるから、とっとと
帰
(
かえ
)
ってもらいたいよ」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
「いやにふけちまつたでせう。
皆
(
みんな
)
さう
云
(
い
)
つてよ。」とお
糸
(
いと
)
は美しく
微笑
(
ほゝゑ
)
んで
紫縮緬
(
むらさきちりめん
)
の
羽織
(
はおり
)
の
紐
(
ひも
)
の解けかゝつたのを結び直すついでに帯の
間
(
あひだ
)
から
緋天鵞絨
(
ひびろうど
)
の
煙草入
(
たばこいれ
)
を出して
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
平次の
煙草入
(
たばこいれ
)
が飛んで來たのでした。
銭形平次捕物控:083 鉄砲汁
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
と
煙草入
(
たばこいれ
)
を
股引
(
ももひき
)
へ差し込んで、上から
筒服
(
つつっぽう
)
の胴を
被
(
かぶ
)
せた。自分はカンテラを
提
(
さ
)
げて腰を上げた。安さんが先へ立つ。
坑
(
あな
)
は存外登り安かった。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
髷
(
まげ
)
も
女優巻
(
じょゆうまき
)
でなく、
故
(
わざ
)
とつい通りの
束髪
(
そくはつ
)
で、
薄化粧
(
うすげしょう
)
の
淡洒
(
あっさり
)
した
意気造
(
いきづくり
)
。
形容
(
しな
)
に合せて、
煙草入
(
たばこいれ
)
も、好みで持つた
気組
(
きぐみ
)
の
婀娜
(
あだ
)
。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
追駈行
(
おひかけゆき
)
殺
(
ころ
)
されしものならんとて
早速
(
さつそく
)
河原に行て見るに重五郎が
死骸
(
しがい
)
の
傍
(
かたは
)
らに
萌黄羅紗
(
もえぎらしや
)
の
煙草入
(
たばこいれ
)
落
(
おち
)
て居たる故中を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
糸編みの品で、
煙管入
(
きせるいれ
)
や
燧石袋
(
ひうちいしぶくろ
)
や、これに
煙草入
(
たばこいれ
)
や
火口
(
ほくち
)
の
粉炭入
(
こなずみいれ
)
など一式揃っているものでありますが、面白いことにこれには必ず強く
撚
(
よ
)
った糸の
総
(
ふさ
)
を長く垂らします。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
「いやにふけちまったでしょう。
皆
(
みんな
)
そういってよ。」とお糸は美しく
微笑
(
ほほえ
)
んで
紫
(
むらさき
)
縮緬の羽織の紐の解けかかったのを結び直すついでに帯の間から
緋天鵞絨
(
ひびろうど
)
の
煙草入
(
たばこいれ
)
を出して
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
煙草入
(
たばこいれ
)
は
虚空
(
から
)
であつた。
彼
(
かれ
)
は
自分
(
じぶん
)
の
體力
(
たいりよく
)
が
滅切
(
めつきり
)
と
減
(
へつ
)
て
仕事
(
しごと
)
をするのに
手
(
て
)
が
利
(
き
)
かなくなつて、
小遣錢
(
こづかひせん
)
の
不足
(
ふそく
)
を
感
(
かん
)
じた
時
(
とき
)
、
自棄
(
やけ
)
に
成
(
な
)
つた
心
(
こゝろ
)
から
斷然
(
だんぜん
)
其
(
その
)
噛
(
か
)
む
程
(
ほど
)
好
(
すき
)
な
煙草
(
たばこ
)
を
廢
(
よ
)
さうとした。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
「あの
東風
(
こち
)
と云うのを
音
(
おん
)
で読まれると大変気にするので」「はてね」と迷亭先生は
金唐皮
(
きんからかわ
)
の
煙草入
(
たばこいれ
)
から煙草をつまみ出す。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
だから振られるんだ、
遊女
(
おいらん
)
持てのしない小道具だ。
淀屋
(
よどや
)
か何か知らないが、黒の
合羽張
(
かっぱばり
)
の
両提
(
ふたつさげ
)
の
煙草入
(
たばこいれ
)
、火皿までついてるが、何じゃ、塾じゃ揃いかい。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
第二図は
頭巾
(
ずきん
)
冠
(
かぶ
)
りし
裃
(
かみしも
)
の
侍
(
さむらい
)
、町人、
棟梁
(
とうりょう
)
、子供つれし女房、
振袖
(
ふりそで
)
の娘、
物
(
もの
)
担
(
にな
)
ふ下男など
渡舟
(
わたしぶね
)
に
乗合
(
のりあい
)
たるを、船頭
二人
(
ふたり
)
大きなる
煙草入
(
たばこいれ
)
をぶらさげ
舳
(
へさき
)
と
艫
(
とも
)
に立ち
棹
(
さお
)
さしゐる佃の渡しなり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
煙草入
(
たばこいれ
)
だの、
唐桟
(
とうざん
)
の
小片
(
こぎれ
)
だの、
古代更紗
(
こだいさらさ
)
だの、そんなものを器用にきちんと並べ立てて見世を張る
袋物屋
(
ふくろものや
)
へでも行って、わざわざ注文しなければ
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
師匠は大家でも弟子は小僧だ、腰の
煙草入
(
たばこいれ
)
にその銀貨を一枚「江戸あるき」とかいう虫の食った本を一冊。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
暗き夜の空より雨
斜
(
ななめ
)
に降りしきる
橋袂
(
はしたもと
)
、縞の
合羽
(
かっぱ
)
に
単衣
(
ひとえ
)
の裾を
端折
(
はしょ
)
りし
坂東又太郎
(
ばんどうまたたろう
)
を
中
(
なか
)
にしてその門弟
三木蔵七蔵
(
みきぞうしちぞう
)
らぶら
提灯
(
ちょうちん
)
に
路
(
みち
)
を照しつついづれも大きなる
煙草入
(
たばこいれ
)
下げたる
尻端折
(
しりはしょり
)
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
と、
煙草入
(
たばこいれ
)
を取り出した。茶色の、皮か紙か判然しないもので、
股引
(
ももひき
)
に差し込んである上から
筒袖
(
つつっぽう
)
が
被
(
かぶ
)
さっていた。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
房の切れた、男物らしいのを細く巻いたが、左の袖口を、ト乳の上へしょんぼりと
捲
(
ま
)
き込んだ
袂
(
たもと
)
の下に、
利休形
(
りきゅうがた
)
の
煙草入
(
たばこいれ
)
の、裏の
緋塩瀬
(
ひしおぜ
)
ばかりが色めく、がそれも
褪
(
あ
)
せた。
露肆
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
市川左団次
丈
(
ぢやう
)
煙草入
(
たばこいれ
)
の筒に
自選 荷風百句
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
「
狆
(
ちん
)
や猫でも蒲団に坐るよ。柔かい足を畳にじかでは痛いやだね。御免なさいよ。」と帯の間より
煙草入
(
たばこいれ
)
を抜出して、「ちょいと
憚
(
はばか
)
りですが、そこいらに、
煙管
(
きせる
)
は無いかね。」
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
すると或晩主人がちょっと御邪魔をしても好いかと断わりながら
障子
(
しょうじ
)
を開けて
這入
(
はい
)
って来た。彼は腰から古めかしい
煙草入
(
たばこいれ
)
を取り出して、その
筒
(
つつ
)
を抜く時ぽんという音をさせた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「はあい。こうやって
薪
(
たきぎ
)
を切っては
城下
(
じょうか
)
へ持って出ます」と源兵衛は荷を
卸
(
おろ
)
して、その上へ腰をかける。
煙草入
(
たばこいれ
)
を出す。古いものだ。紙だか
革
(
かわ
)
だか分らない。余は
寸燐
(
マッチ
)
を
借
(
か
)
してやる。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
蹲
(
しゃが
)
んで、力なげに一服吸って三服目をはたいた、
駄六張
(
だろくばり
)
の
真鍮
(
しんちゅう
)
の
煙管
(
きせる
)
の
雁首
(
がんくび
)
をかえして、
突
(
つつ
)
いて火を寄せて、二ツ
提
(
さげ
)
の
煙草入
(
たばこいれ
)
にコツンと指し、
手拭
(
てぬぐい
)
と一所にぐいと三尺に挟んで立上り
葛飾砂子
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
兇器
(
きょうき
)
が手を離るゝのを
視
(
み
)
て、局は
渠
(
かれ
)
が
煙草入
(
たばこいれ
)
を探す
隙
(
すき
)
に、そと身を起して、
飜然
(
ひらり
)
と一段、天井の雲に
紛
(
まぎ
)
るゝ如く、廊下に
袴
(
はかま
)
の
裙
(
すそ
)
が
捌
(
さば
)
けたと思ふと、
武士
(
さむらい
)
は
武
(
む
)
しや
振
(
ぶ
)
りつくやうに
追縋
(
おいすが
)
つた。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
小さく
縦
(
たて
)
に長く折ったのを
結
(
ゆわ
)
えて、
振分
(
ふりわ
)
けにして肩に投げて、
両提
(
ふたつさげ
)
の
煙草入
(
たばこいれ
)
、大きいのをぶら
提
(
さ
)
げて、どういう気か、
渋団扇
(
しぶうちわ
)
で、はたはたと胸毛を
煽
(
あお
)
ぎながら、てくりてくり寄って来て
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
負
(
おぶ
)
ってくれて、乗ると
漕
(
こ
)
ぎ出すのを、水にまだ、足を浸したまま、
鷭
(
ばん
)
のような姿で立って、腰のふたつ
提
(
さ
)
げの
煙草入
(
たばこいれ
)
を抜いて、
煙管
(
きせる
)
と一所に手に持って、火皿をうつむけにして吹きながら
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
とここで、鐸を
倒
(
さかさま
)
に腰にさして、
袂
(
たもと
)
から、ぐったりした、油臭い、
叺
(
かます
)
の
煙草入
(
たばこいれ
)
を出して、
真鍮
(
しんちゅう
)
の
煙管
(
きせる
)
を、ト隔てなく口ごと持って来て、蛇の幻のあらわれた、境の吸う
巻莨
(
まきたばこ
)
で、吸附けながら
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
煙
常用漢字
中学
部首:⽕
13画
草
常用漢字
小1
部首:⾋
9画
入
常用漢字
小1
部首:⼊
2画
“煙草”で始まる語句
煙草
煙草盆
煙草屋
煙草管
煙草店
煙草銭
煙草箱
煙草色
煙草休
煙草売