あつか)” の例文
佐賀錦さがにしき紙入かみいれから、の、ざく/\と銅貨どうくわまじりをあつかつた、岡田夫人をかだふじん八千代やちよさんの紙包かみづつみの、こなしのきれいさをいまでもおぼえてる。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
平次は下女の持ちあつかつてゐる、いろ/\の小道具を廊下の隅に置かせて、お粂の部屋とは反對側の物置のやうな小部屋に入りました。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
『あいつめ、浪人以来、ひまに体を持ちあつかって、この夏は、法帖を出して、毎日夏書げがきをして居るのでござるよ、手習いをな。はははは』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「だつてあんたは初めから商賣女をあつかふやうになさらないもの、すぐ一緒になつてくれなんてそんなこと言ふ方ははじめてだわ。」
汽車で逢つた女 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
こころあるひとなら、だれでもこのようにしてつくられた、食物しょくもつはむだにし、また器具きぐ粗末そまつあつかうことをよくないとおもうでありましょう。
都会はぜいたくだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
だが、入院にふゐんするとしても、誰一人たれひとり入院料にふゐんれうなどを持合もちあはしてゐるはずがないので、施療せれう患者くわんじやあつか病院びやうゐんれるより仕方しかたがなかつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
ほかに、吉野王をあつかった作品が一つか二つ徳川時代にあるそうだけれども、それとてどこまで史実に準拠じゅんきょしたものか明かでない。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
小さな小さな猿のくせに、軍服などを着て、手帳まで出して、人間をさも捕虜ほりょか何かのようにあつかうのです。楢夫が申しました。
さるのこしかけ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
『あなたの鼻高い、あなたの眼大きい』などという時、夫人はいつも指でヘルンの顔を突ついたりして、子供をあつかうようにして戯れからかった。
實際じつさいうんのつかないときたらこれほど憂欝いううつあそびはないし、ぎやくうんなみつて天衣無縫てんいむほうパイあつかへるときほど麻雀マージヤンこゝろよ陶醉たうすゐかんじるときはない。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
読書会では、テキストのページを追って輪読りんどくする場合もあったが、「二宮翁夜話」の取りあつかいはそうではなかった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
汽車の係員たちまでがこの白痴の少年には好意を寄せて無賃で乗車さす任意のあつかいが出来たというから東北の鉄道も私設時代の明治四十年以前であろう。
みちのく (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
が、あいつが心を落ち着けて見ると、二人だと思った赤帽は、一人しか荷物をあつかっていない。しかもその一人は今笑ったのと、全然別人に違いないのだ。
妙な話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
こんなふうに、皆からあつかわれるのには慣れていますが、あなたのことが、有るだけに、たまらなかったのです。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
お父さんお母さんはむろんのこと、兄さんや姉さんたちまでお客さんあつかいにしてくれる。ことに第一日の晩は
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「おいおいれれば、大した苦痛じゃなくなるよ。なにしろ学生たちは君に対して異常な興味をもっている。だから君は今後ますます大切にあつかわれるだろう」
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
主人しゆじん蒙古人もうこじん上手じやうずうまあつかことや、蒙古犬もうこいぬせて細長ほそながくて、西洋せいやうのグレー、ハウンドにてゐることや、彼等かれら支那人しなじんのために段々だん/\せばめられてこと
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
マーキュ なんぢゃ、壓伏おしつける? あのこひ重荷おもにを? さりとは温柔やさしいもの慘酷むごたらしうあつかうたものぢゃ。
ふのは、たゞたんどもたちのためにとばかりではく、わたしは此等これらのはなしのなか人生じんせい社會しやくわいおよびその運命うんめい生活せいくわつくわんする諸問題しよもんだい眞摯まじめにとりあつかつてみたからであります。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
「こんなような品は手前どもではあつかっておりませんが、どこそこなら相談になりましょう」
贋物 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
さてまたこゝ武州ぶしう熊谷堤くまがいづつみはづれに寶珠花屋はうじゆばなや八五郎と云居酒屋あり亭主八五郎は此邊の口利くちきゝにて喧嘩けんくわ或ひは出入等之ある時はいつあつかひに這入はひりては其騷動そのさうどうしづめけるにかれが云事は皆是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ところが、この若い者のうちで三番めのはしたっぱのおいまわしで、あとの二人ふたりからは、わからずやあつかいにされていて、これに粉ひきごやをせしめられるのは、ふたりとも感心しません。
さて雑誌を出すについては、前々ぜん/\から編輯へんしうはう山田やまだわたしとが引受ひきうけて、石橋いしばしもつぱ庶務しよむあつかつてたので、三人さんにん署名人しよめいにんとして、明治十九年の春にあらためて我楽多文庫がらくたぶんこ第壱号だいいちがうとして出版した
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そしてまた自分がこの人の家内かないであり、半身であると無意識的に感じると同時に、が身が夫の身のまわりにいてまわって夫をあつかい、衣類を着換きかえさせてやったり、を定めさせてやったり
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
與吉よきちいつもにない苛酷かこくあつかひにおどろいてまだねむみはつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それもひとつだが、當時たうじは、いま大錢たいせんあつかひのかたはよく御存ごぞんじ、諸國しよこく小貨こまかいのがもつてのほか拂底ふつていで、かひものに難澁なんじふ一方ひとかたならず。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もう一人は下女のお辰。——良い年増ですよ。——この女は道具屋の娘で、親父の仁兵衞は僞物にせものの道具をあつかつてお手當になり、母親はそれを
はたして、となり先生せんせいがやってきました。そして、大事だいじあつかうから、ちょっとあほうどり学校がっこうしてくれないかとたのみました。
あほう鳥の鳴く日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その旅人とっても、馬をあつかう人の外は、薬屋くすりや林務官りんむかん化石かせきさがす学生、測量師そくりょうしなど、ほんのわずかなものでした。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「では、きのう一日、問注所にて、配所のおあつかいにつき、おぬしは、そんなにもきびしい取調べを食ったのか」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし普通ふつうの塾生として来てもらうには、君はもうあまりにレベルが高すぎる。こちらとしては取りあつかいにも困るし、君としても物足りない気持ちがするだろう。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
そこは例の附け届けを十分にたっぷり薬をかしてあるので断りもならず精々如才じょさいなくあつかっていた。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
其所そこにも摺硝子すりがらすまつた腰障子こししやうじが二まいててあつた。なかでは器物きぶつあつかおとがした。宗助そうすけけて、瓦斯七輪ガスしちりんいたいた蹲踞しやがんでゐる下女げぢよ挨拶あいさつをした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
とうとう絶体絶命の暴れ方をしだした。小初は物馴ものなれた水におぼれかけた人間のあつかい方で、相手にまといつかれぬようさばきながら、なお少しこの若い生ものの魅力の精をば吸い取った。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「中国や九州へ来て田舎漢いなかものあつかいをされる次第わけもなかろうじゃないか?」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
相手あひてなれば御大身をおそれ時の奉行もさばきかねてあつかひを入てすますといへどもあつかくづうつたへ出る事たび/\なり然るにこの度大岡越前守山田奉行やまだぶぎやうと成て來りしかば百姓ひやくしやうども又々境論さかひろんを願ひ出づるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「あ、あのお嬢さんは気の毒だなあ。長い脚を持てあつかつてゐる。」
O君の新秋 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あつかひかたがわるいので爆發ばくはつし、れと武器ぶきほろぼす。
わたしが文章をあつかつたのは風葉ふうえふ其頃そのころ拈華坊ねんげぼう)の方が早い
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「ああ、あけてくれ。丁重ていちょうあつかえよ」
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
不幸ふこう湯沸ゆわかしは、あまりからだ乱暴らんぼうあつかわれすぎたせいもあって、ついにそこほうに、ちいさなあながあいたのでありました。
人間と湯沸かし (新字新仮名) / 小川未明(著)
手代の徳松といふのは二十五六、これは店中で一俵の米をあつかひ切れない唯一人の弱い男で、色の白い背の高い美男でした。
「でも、長崎殿には、ほかならぬ佐々木殿のおあつかいではと、さっそく法師を揚屋あがりやから出して渡してくれました」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
野山のやまに、によき/\、とつて、あのかたちおもふと、なんとなく滑稽おどけてきこえて、大分だいぶ安直あんちよくあつかふやうだけれども、んでもないこと、あれでなか/\凄味すごみがある。
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一方を貴族の女のにし、一方を馬方の男の児にして、その間に、乳母うばであり母である上﨟じょうろうの婦人を配したところは、表面親子の情愛をあつかったものに違いないけれども
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
たまには學校がくかう下讀したよみやら研究けんきうやらにはれてゐる多忙たばうだとふうもしてせた。小六ころく友達ともだちからさう呑氣のんきなまけものゝやうあつかはれるのを、大變たいへん不愉快ふゆくわいかんじた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
もうあと二十分しかないが、塾としてこの事件を、どういう態度で取りあつかって行きましょう。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
すゑる故一同見ても居られず組頭くみがしら周藏佐治右衞門傳兵衞木祖兵衞きそべゑ長百姓喜平次善右衞門神主かんぬし備前びぜん醫師いし玄伯等各自おの/\中に立入たちいりまづ双方さうはう共に預りて此日は皆々引取しがお里は組頭周藏へ預け其夜なほ又周藏方へ惣内始め寄合て心得違ひの趣きにあつかひを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わかいうちは、なんでもぞんざいにあつかったのが、としをとると、どれにも自分じぶんおなじような生命せいめいがあるようにおもえて、いたわるこころしょうずるのでした。
生きぬく力 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「俺の見當では、多分拔荷をあつかつて居たのだと思ふ、——拔荷といふと何でもないやうだが、こいつは大變な御法度で、露顯ろけんすると獄門にも磔刑はりつけにもなる」