引出ひきだ)” の例文
手足被杻械しゅそくぴちゅうかい念彼観音力ねんぴかんのんりき釈然得解脱しゃくねんとくげだつ、と牢のなかでも観音経かんのんぎょうんで居たが今ヒョロ/\と縄に掛って仮牢から引出ひきだされるを見ますると
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それに、あゝ、なんとかの端本はほんか、と部屋頭へやがしらほんぞんじてりますから、なかうたこれから引出ひきだしましたのでは先刻せんこく承知しようちとやらでござりませう。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「へえ——まだ万有還金などという事が流行はやっているんですかね、僕ァまた伯父さんから資金を引出ひきだす口実だと思った」
天狗岩の殺人魔 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
かねて見置みおきしすゞり引出ひきだしより、たばのうちをたゞまい、つかみしのちゆめともうつゝともらず、三すけわたしてかへしたる始終しじうを、ひとなしとおもへるはおろかや。
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
小さな二本のくぎといっしょに状袋じょうぶくろに入れてあるのを手のひらにあけて、しばらくながめていた母は、そのまま状袋にもどして、火鉢ひばち引出ひきだしにしまった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
用意ようゐ!。』と武村兵曹たけむらへいそうさけぶと、二名にめい水兵すいへい車中しやちう大旅櫃だいトランクなかから、一個いつこ黒色こくしよくはこ引出ひきだしてた。このはこなかには、すう爆裂彈ばくれつだんはいつてるのである。
 (おつやは太吉の手を取って、旅人の前へ引出ひきだそうとすれば、太吉はふるえておつやにすがりつく。)
影:(一幕) (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
わたし畢生ひつせい幸福かうふくかげえてしまつたかのやうにむねさはがせ、いそいで引出ひきだしてた。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
少し焼くとバターが溶けてブリキざらあふれ出ますからそれを引出ひきだしてはさじすくって上からかけてちょうど肉類のロースを焼くように幾度いくどもそうして三十分間も焼きますと出来上ります。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
すなわち平包ひらづつみの布の二隅ふたすみ引出ひきだして、これをひものかわりにして背に負うもので、これは両腕の上部に力の半分を持たせるから、今までの荷負においのように手を自由に使うことができない。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ちがはいでをられうか? 先祖せんぞしゅうあしやを玩具もてあそびにはしはすまいか? 手傷てきずだらけのチッバルトをみどろの墓衣はかぎから引出ひきだしゃせぬか? 狂氣きゃうきあまり、きこえたさる親族うからほね取上とりあ
婆やの口からも、犯人の匂いも引出ひきだせません。
みな道路だうろ引出ひきだしたらしい。
(もう時分じぶんぢや、またわしあんまおそうなつてはみちこまるで、そろ/\あを引出ひきだして支度したくしてかうとおもふてよ。)
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
信如しんによつくえ引出ひきだしから京都きやうとみやげにもらひたる、小鍛冶こかぢ小刀こがたな取出とりだしてすれば、よくれそうだねへとのぞ長吉ちようきちかほ、あぶなし此物これ振廻ふりまわしてなることか。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
洒落しやれ御主人ごしゆじんで、それから牡丹餅ぼたもち引出ひきだしてしまつて、生きたかへるを一ぴきはふんできました。
日本の小僧 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
おどろいたことには、とらのやうに大切たいせつにしてゐるウェルスの手紙てがみなどれた折鞄をりかばんのなかから、黒髪くろかみたば短刀たんたうとが、かみにくるんで、ひもいはへられたまゝ、竹村たけむらまへ引出ひきだされたことであつた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
そしてある日、名誉の門標はいつのまにか火鉢ひばち引出ひきだしから、門の鴨居かもいの正面に移っていた。母の留子るすに大吉がそこへ打ちつけたのである。小さな「名誉の門標」は、しかるべき位置に光っていた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
最早もはや問答もんだう無益むえきおもつたから、わたくし突然ゐきなり船長せんちやう船室ケビンそと引出ひきだした
……嫌疑けんぎ徒輩ともがら引出ひきだせ。
つね/″\たからのやうに大事だいじがりて、につくものずいりし手綱染たづなぞめおびあげもそのまゝにありけり、いつも小遣こづがひの塲處ばしよなる鏡臺きようだい引出ひきだしをけてるに
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ヒイヽン! しつ、どうどうどうと背戸せどまわひづめおとえんひゞいて親仁おやぢは一とううま門前もんぜん引出ひきだした。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おもへども、れぬ不審ふしんうたがひのくもりて、たゞ一トさほ箪笥たんす引出ひきだしより、柳行李やなぎこりそこはかと調しらべて、もし其跡そのあとゆるかとぐるに、ちり一はしの置塲おきばかわらず
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それに、あゝ、なんとかの端本はほんか、と部屋頭へやがしらほんぞんじてりますから、なかうたも、これから引出ひきだしましたのでは、先刻せんこく承知しようちとやらでござりませう。それではたねあかしの手品てじな同樣どうやうなぐさみになりません。
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
みね引出ひきだしたるはたゞまいのこりは十八あるべきはづを、いかにしけんたばのまゝえずとてそこをかへしてふるへども甲斐かひなし、あやしきは落散おちちり紙切かみきれにいつしたゝめしかうけとりつう
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
(さあ、それでは御案内ごあんないまをしませう、どれ、丁度ちやうどわたしこめぎにまゐります。)とくだんをけ小脇こわきかゝへて、椽側えんがはから、藁草履わらぞうり穿いてたが、かゞんで板椽いたえんしたのぞいて、引出ひきだしたのは一そく古下駄ふるげた
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ゑゝ大金たいきんでもあることか、かねなら二ゑん、しかもくちづから承知しようちしてきながら十日とたゝぬにもうろくはなさるまじ、あれすゞり引出ひきだしにも、これはつかずのぶんと一トたば
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かゝさんれをつても御座ござんすかとたづねて、針箱はりばこ引出ひきだしから反仙ゆふぜんちりめんのはしをつかみし、庭下駄にはげたはくももどかしきやうに、でゝ縁先えんさき洋傘かうもりさすよりはや
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
まへはどうするかねしくないかとはれて、わたしべつにほしいものがござんした、此品これさへいたゞけばなによりとおびあひだからきやく名刺めいしをとりしていたゞくまねをすれば、何時いつ引出ひきだした
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何處どこやらのひと子供こどもときうつした寫眞しやしんだといふあどけないのをもらつて、それをけくれにしてて、めんむかつてははれぬことならべてたり、つくゑ引出ひきだしへ叮嚀ていねい仕舞しまつてたり
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
だれだとおも長吉ちようきちなまふざけた眞似まねをして後悔こうくわいするなと頬骨ほうぼねうち、あつと魂消たまげ逃入にげいゑりがみを、つかんで引出ひきだ横町よこてうの一むれ、それ三五らうをたゝきころせ、正太しようた引出ひきだしてやつて仕舞しまへ、弱虫よはむしにげるな
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)