威勢ゐせい)” の例文
與吉よきち時々とき/″\どぜうつてた。おつぎは衣物きものどろになるのをしかりながらそれでも威勢ゐせいよく田圃たんぼしてやつた。たびほか子供等こどもらうしろから
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
これが半纏はんてんむかうはちまき威勢ゐせいいのでなく、古合羽ふるがつぱ足駄穿あしだば懷手ふところでして、のそり/\と歩行あるきながらぶゆゑをかし。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
隨分ずゐぶんながたされたとおもつたが實際じつさいは十ぷんぐらゐで熱海あたみからの人車じんしや威勢ゐせい能く喇叭らつぱきたてゝくだつてたのでれちがつて我々われ/\出立しゆつたつした。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
多田院ただのゐん日光につくわう徳川家とくがはけ靈廟れいべうで、源氏げんじ祖先そせんまつつてあるから、わづか五百石ひやくこく御朱印地ごしゆいんちでも、大名だいみやうまさ威勢ゐせいがあるから天滿與力てんまよりきはゞかなかつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
とはいふものゝ、大事を取つて、今にこゝの前を避けて通る、愛と若さと死の皮肉な花が、威勢ゐせいよく反身そりみになつてゐたり、しよんぼりと絶入つてゐる家の前を。
わるい花 (旧字旧仮名) / レミ・ドゥ・グルモン(著)
見事みごと! 見事みごと! イヤじつおどろ大發明だいはつめいだよ。』とわたくしひざすゝむをおぼえなかつた。兵曹へいそうなほ威勢ゐせいよく
みんなが威勢ゐせいよくみづんだりかついだりするのをるのもたのしおもひました。そればかりではありません。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
それにこのあひだに、多人數たにんず下役したやく謁見えつけんをする。受持々々うけもち/\事務じむ形式的けいしきてき報告はうこくする。そのあわただしいなかに、地方長官ちはうちやうくわん威勢ゐせいおほきいことをあじはつて、意氣揚々いきやう/\としてゐるのである。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
去程に御城代ごじやうだいより天一坊の旅館を斯く嚴重に警固けいごありければ天一坊伊賀亮大膳左京常樂院等の五人は一室に打寄事大方は成就じやうじゆせりと悦びさらば此上は近々のうち當所たうしよを引上出立し京都に赴き諸司代にも威勢ゐせい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ぎんちやん、威勢ゐせいがいいことねえ。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
勘次かんじにはからぬすむやうにては卯平うへいがおつたへ威勢ゐせいをつけてるやうにおもつた。かれいてつてさらわらくゝつた蕎麥そばたばをどさりととほくへはふつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さかうへはうから、いちごだ、いちごだ、と威勢ゐせいよくよばはりながら、跣足はだしですた/\とりてる、一名いちめいわつぱがある。
山の手小景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ひがしもんからはひつて、露店ろてん參詣人さんけいにんとの雜沓ざつたふするなかを、あふひもんまく威勢ゐせいせた八足門はつそくもんまへまでくと、むかうから群衆ぐんしうけて、たか武士ぶしがやつてた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
威勢ゐせいよく反身そりみになつてゐる花もある、しよんぼりと絶え入つてゐる花もある、その花屋の前を通りすがると、妙に氣をそゝる意地の惡い香がした、胸苦しいほど不思議の香がした。
わるい花 (旧字旧仮名) / レミ・ドゥ・グルモン(著)
いつも滑※こつけい失策しつさくとの本家本元ほんけほんもとで——いまわたくしそばに、威勢ゐせいよくはなし相槌あひづちつて武村兵曹たけむらへいそうは、幾度いくたび軍艦ぐんかん水兵等すいへいらに、背中せなかたゝかれ、たゝかれて、艦中かんちう第一だいいち愛敬者あいけふものとはなつた。
『サアこれからくだりだ。』と齋藤巡査さいとうじゆんさ威勢ゐせいをつけた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
無念なりと蹉跎あしすりなしていかり給ひしが今更詮方せんかたも無りしとぞ假初かりそめにも十五萬石にて播州姫路の城主たる御身分ごみぶん素性すじやうもいまだたしかならぬ天一坊に下座ありしは殘念ざんねんと云も餘りあり天一坊は流石さすが酒井家さかゐけさへ下座されしとわざ言觸いひふらし其威勢ゐせいおほなみの如くなれば東海道筋にて誰一人爭ふ者はなく揚々やう/\として下りけるは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
今夜こんやはひどく心持こゝろもちえゝんだよ、えゝよ本當ほんたうだよ勘次かんじさん、おめえ草臥くたびれたんべえな」さらにおしな威勢ゐせいがついていつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その眞下ましたに、魚屋さかなやみせがあつて、親方おやかた威勢ゐせいのいゝ向顱卷むかうはちまきで、黄肌鮪きはだにさしみ庖丁ばうちやうひらめかしてたのはえらい。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
言下げんか武村たけむらばれたる兵曹へいそうは、つと進寄すゝみよ威勢ゐせいよく少年せうねん抱上いだきあげて
インキのつぼを、ふらここのごとくにつて、金釦きんぼたんにひしやげた角帽かくばう、かまひつけぬふうで、薄髯うすひげあたらず遣放やりつぱなしな、威勢ゐせいい、大學生だいがくせいがづか/\とはひつてた。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……わかいのが威勢ゐせいがいゝから、だれも(帳面ちやうめん)をるとはらない。いや、つてたかもれない。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ありや、と威勢ゐせいよく頭突づつきかゞんで、鼻息はないきをふツとき、一散いつさんくろつてがら/\と月夜つきよ駈出かけだす。……
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
別嬪べつぴんでござんした。」たゞでもこのやくはつとまるところをしみ/″\れいをいはれたうへに、「たんまり御祝儀ごしうぎを。」とよごれくさつた半纏はんてんだが、威勢ゐせいよくどんぶりをたゝいてせて
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
には小皿こざらちたり。四五軒しごけん行過ゆきすぎたる威勢ゐせい煮豆屋にまめや振返ふりかへりて、よう!とふ。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
げたときかれは、鼓打つゞみうちである従弟いとこが、業体げふたいひ、温雅をんが上品じやうひんやさしいをとこの、さけ酔払ゑひはらふと、場所ばしよえらばず、外套ぐわいたういで、威勢ゐせいよくぱつと投出なげだす、帳場ちやうば車夫しやふなどは
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
れい梶棒かぢぼうよこせてならんだなかから、むくじやらの親仁おやぢが、しよたれた半纏はんてんないで、威勢ゐせいよくひよいとて、手繰たぐるやうにバスケツトを引取ひきとつてくれたはいが、つゞいて乘掛のりかけると
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さばを、さば三番叟さんばそう、とすてきに威勢ゐせいよくる、おや/\、初鰹はつがつをいきほひだよ。いわし五月ごぐわつしゆんとす。さし網鰯あみいわしとて、すなのまゝ、ざる盤臺はんだいにころがる。うそにあらず、さばぼらほどのおほきさなり。あたひやすし。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
野中のなか古廟こべうはひつて、一休ひとやすみしながら、苦笑にがわらひをして、さびしさうに獨言ひとりごとつたのは、むかし四川酆都縣しせんほうとけん御城代家老ごじやうだいがらう手紙てがみつて、遙々はる/″\燕州えんしう殿樣とのさま使つかひをする、一刀いつぽんさした威勢ゐせいいお飛脚ひきやくで。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)