たっ)” の例文
「ペスでない、きっとほかのいぬだよ。まさちゃんは、なにをたのかわかりゃしない。」と、いちばんうえたっちゃんが、いいますと
ペスをさがしに (新字新仮名) / 小川未明(著)
「……けれどたってのお言葉ゆえ申上げます。去年の極月ごくげつはじめでございましたか、長州藩の広岡さまが二日ほどご滞在あそばしました」
日本婦道記:尾花川 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
じつ神界しんかいから、あめらせるにいては、同時どうじかみなりほうせてやれとのおたっしがまいったのじゃ。それでいまその手筈てはずをしているところで……。
美しい百合のいきどおりは頂点ちょうてんたっし、灼熱しゃくねつ花弁かべんは雪よりもいかめしく、ガドルフはそのりんる音さえいたと思いました。
ガドルフの百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
げいごとのおくたっすると、そういうことがあるもので、これはおまえの芸道げいどうのためには、よろこばしいことじゃが、しかし、あぶないところじゃった。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
だが、いよいよ島の近くにたっするまでには四五時間かかった。太陽はすでに西の海に沈み、空は美しく夕焼している。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
なるほど評判ひょうばんとおり、頼政よりまさ武芸ぶげい達人たつじんであるばかりでなく、和歌わかみちにもたっしている、りっぱな武士ぶしだと、天子てんしさまはますます感心かんしんあそばしました。
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
その毅然きぜんとして、なにかかたく信ずるところあるがごとき花前は、そのわざにおいてもじつにかみたっしている。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
氏は新政府に出身してただに口をのりするのみならず、累遷るいせん立身りっしんして特派公使に任ぜられ、またついに大臣にまで昇進し、青雲せいうんこころざしたっし得て目出度めでたしといえども
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その年うるう五月五日、咸臨丸かんりんまる無事ぶじ帰朝きちょうし、かん浦賀うらがたっするや、予が家の老僕ろうぼくむかいきたりし時、先生老僕ろうぼくに向い、吾輩わがはい留守中るすちゅう江戸において何か珍事ちんじはなきやと。
思想しそう人間にんげん成熟せいじゅくたっして、その思想しそう発展はってんされるときになると、その人間にんげん自然しぜん自分じぶんがもうすでにこの輪索わなかかっているのがれるみちくなっているのをかんじます。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
さきに、伝令でんれいが陣ぶれをしたことばには、かならず、呂宋兵衛を手捕りにせよとのたっしであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
目科も此上問うの益なきを見て取りしかたっ推問おしとわんともせず、是にて藻西太郎を残し余と共に牢を出で、はしごを下りて再び鉄の門を抜け、廊下を潜り庭をよぎり、余も彼れも
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
まあやっと図画とでもいうようなことを教えた。これは長いことかかったし、なかなかむずかしかったがどうやら目的もくてきたっしかけた。むろんわたしはりっぱな先生ではなかった。
結局女中というものは非常に不経済でもあり、われわれの「遊び」の生活に取って邪魔でもあるので、向うも恐れをなしたでしょうが、此方もたって居てもらいたくはなかったのです。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ところが、明治七年の九月に突然今年は子歳ねどしのものを徴集るのだといって、扱所といったと思う、今日の区役所のようなものが町内々々にあって、其所そこからたっしが私の処へもあったのです。
不図ふとした事から馴れ染め、人目を忍んで逢引あいびきをして居ると、その婦人が懐妊したので堕胎薬おろしぐすりを呑ました所、其の薬にあたって婦人はたってのくるしみ、虫がかぶってたまらんと云って、僕の所へ逃出にげだして来て
何でも物価高直こうじき折柄おりから、私のいれる食料では到底とてまかない切れぬけれど、外ならぬ阿父おとっさんのたっての頼みであるに因って、不足の処は自分の方で如何どうにかする決心で、謂わば義侠心で引受けたのであれば
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「やあ、われ、……小僧もたっしゃがな。あい、御免。」
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「おかしいね、あんなに、いつも、はしってきてびつくのに、んでも、こないのは……。」と、たっちゃんが、あたまをかしげました。
ペスをさがしに (新字新仮名) / 小川未明(著)
それが青竜王の日頃のおたっしであったから。——夕飯がむと、青竜王は行先も云わずブラリと事務所を出ていった。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そして須利耶すりやさまは、たしかにその子供に見覚みおぼえがございました。最初さいしょのものは、もはや地面じめんたっしまする。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
最後さいごわたくしが、最近さいきんたき竜神りゅうじんさんの本体ほんたいおがましていただいたはなしいたしますと、ははおどろきは頂点てうてんたっしました。
その頃またちょうど、六兵衛先生の名が殿様のお耳にたっしました。そこで殿様は早速さっそく、六兵衛先生をむかえて、名刀のありかをうらなわせることになりました。
とんまの六兵衛 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
先生のむちを受けようとするには、少なくとも一流にぬきんでた腕がなくてはならん、だから、もしたってお帰りを待ちたいと申すなら、我々と此処で一本勝負をするのだ
内蔵允留守 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
たってとは云わねえ、そうじゃアねえか、此の村に居ておめえ呼吸いきが掛らなけりゃア村にも居られねえ、其の時はいやにわりい仕事をして逃げる、そうなりゃアうでもいやア、ねえ、いやでげすか、え
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かれは、かれの使命しめいをとげた。一ねんたっした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
読者よ余の考えにては此点こそ最も大切の所なれば目科が充分に問詰るならんと思いしに彼れ意外にもたって問返さん様子なく余が目配めくばせするも知らぬ顔にて更に次の問題に移り「したが老人の殺されて居る所はうして見出した女 ...
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
こんなぐあいに、おじさんのくちからくと、なんとなく、はや、自分じぶんは、のぞみをたっしたもののように、うれしくなるのでした。
緑色の時計 (新字新仮名) / 小川未明(著)
一歩一歩いっぽいっぽ首尾しゅびよく難局なんきょくけてきまして、いまではすっかりあかるい境涯きょうがいたっしてります。
「はい、ここをお立ちなさるおり、わたくしからたっておたのみ申したのでございます」
日本婦道記:墨丸 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「三ヶ所、作れというおたっしでナ、岬に一つ、磯崎いそざき神社の林の中に一つ、それから磯合寄いそあいよりに一つ、と都合三ヶ所、作りましたよ。作ったのはよいが、監視哨に立つ人が、足りないので、弱っていますわい
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
このはなしは、やがて、きさきのおみみにまでたっすると、きさきけても、れても、そのたま空想くうそうかんで、物思ものおもいにしずまれたのであります。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「このうみえて、しまたっすることは容易よういのことでない。つかれをやすめて、おだやかな、いい天気てんきのつづくとうではないか。」
北海の波にさらわれた蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
秀公ひでこうは、どうしたい。」と、おにいさんが、おもして、おききになりました。たっちゃんは、片手かたてにはしをにぎって、をかがやかしながら
二少年の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
たっちゃんは、ひとのことばかしいうが、自分じぶんだって、しかられることがあるのでしょう。」と、おねえさんが、いわれました。
二少年の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
決死隊けっしたいが、てきると、てきはそれをがけて、弾丸たま集中しゅうちゅうしました。かわなかほどまでたっするころには、人数にんずうえてっていました。
とびよ鳴け (新字新仮名) / 小川未明(著)
そうきけば、もうペスのかえってきたのに、うたが余地よちがなかったのです。しょうちゃんは、はしって、いえへもどると、そのはなしたっちゃんにしたのです。
ペスをさがしに (新字新仮名) / 小川未明(著)
おんなは、やさしいほとけさまに道案内みちあんないをされて、ひろ野原のはらなかをたどり、いよいよ極楽ごくらく世界せかいが、やまを一つせばえるというところまでたっしました。
ちょうと三つの石 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おんなは、青竹あおだけのつえをついて、やまのぼりはじめました。やがて、とうげたっしますと、そこに三にんおとこってっていました。
ちょうと三つの石 (新字新仮名) / 小川未明(著)
みなみそらからはしきりに、金色きんいろせんんできました。けれど、ここまでたっせずに、みんな野原のはらうえちてしまいました。
角笛吹く子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
未知みち世界せかいあこがれるこころは、「幸福こうふくしま」でも、また、「わざわいしま」でも、極度きょくどたっしたときはわりがなかったからです。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
このうらなしゃのうわさがおうさまのみみたっしますと、さっそくおしになりました。おうさまは、にこにこわらって、このあやしきおとこをごらんになったのです。
北海の白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
やっととう頂上ちょうじょうたっしますと、そこはからだをいれるだけのせまいへやになっていました。もとより、ほこりがたまっていました。あねは、そこにすわりました。
黒い塔 (新字新仮名) / 小川未明(著)
やがて、かれらのれつがあるたか広場ひろばたっしたときに、かつて天上てんじょう神々かみがみたちよりほかにはられていなかった芸当げいとうをして、きょうじたことでありましょう。
深山の秋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なぜなら、たとえ、人間にんげんちからでは、そこへはたっしなかったけれど、自然しぜんちからは、いつも自由じゆうであったからです。
しんぱくの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるのこと、ひでちゃんが、たっちゃんのうちあそびにきました。ちょうどおねえさんも、うちにいらっしゃいました。
二少年の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、ひろ野原のはら横切よこぎり、あるときは、やまいただきえて、ついに、なつのはじめのころには、はるかに、あおい、あおい、北海ほっかいえる地方ちほうたっしたのでした。
北海の波にさらわれた蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
この希望きぼうも、たちまちたっせられたのは、十何年なんねんまえに、ちちが、おき時計どけいった、古道具屋ふるどうぐや主人しゅじんが、有田焼ありたやきおおきな丸火鉢まるひばちを、とどけてくれたからでした。
時計と窓の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのこころが、おじいさんにたっしたものか、しばらく、はなこころをひかれたように、ながめてっていましたが
ガラス窓の河骨 (新字新仮名) / 小川未明(著)