きか)” の例文
... 仕て居るかナア、実に卓眼には恐れいった」谷間田は笑壷えつぼに入り「フム恐れ入たか、そうおれて出れば未だきかせてる事が有る実はナ」
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
マーキュ なんぢゃ、調子てうしあはせて? 吾等われら樂人扱がくにんあつかひにするのか? 樂人扱がくにんあつかひにりゃ、みゝ顛覆でんぐりかへらする音樂おんがくきかす。準備よういせい。
(ほとんど突然と音楽の声む。)や、音楽が止んだ。己の心を深く動かした音楽が、神と人との間の不思議をきかせるような音楽が止んだ。
大岡殿きかれまだ其樣に強情がうじやうを云居るがすでに其日は柏崎かしはざきへ昌次郎夫婦して參り夕刻彼所を立歸りしと云にあらずや然らば我が妻を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
困りますね私も心配するなと云いきかせて置きますが、う云うものか彼処あすこへ引籠ったりで、気がれぬから庭でも見たらかろうと云うと
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「お話を聞いて見ると、貴方が今日こんにちの境遇になられたに就いては、余程深い御様子が有るやう、どう云ふのですか、くはしきかして下さいませんか」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
貞之進が黒の羽織を着て居るのに心附き、あなたのことではありませんよと、はたいた烟管きせるをふっと吹き、昨宵ゆうべも逢た癖にと婢が云うのをきかぬふりで
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
まだ何時いつ出るのかわからないからまた近いうちに遊びに来るわとなつかしい声もきかれないのではなかつたが、れはもう今までのあどけない約束ではなくて
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
用談を済し、蓮太郎への弔意くやみを述べ、やがてそこそこにして行かうとする。其時、弁護士は丑松のことを語りきかせて
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
赤目のちぢれ毛のちんばにさえ、偶々たまたまストーブに薪を入れに来るのを呼びとめて、霊魂不滅を説ききかせたことがある。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
鮏は今五畿内西国には出す所をきかず。東北の大河の海につうずるには鮏あり、松前蝦夷えぞもつとも多し。塩引として諸国へ通商あきなふは此地に限る。次には我が越後に多し。
王いまだかつて見ず、いまだかつてきかず、またいまだかつてこれを察せず。王のこれを殺す、またむべなり。ゆえにみずかかえりみて知らずんば、何によりて自ら信ぜん。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
「何處だときかつしやるな。何處でもえじや御座んせんか、徳の伴れてゆく處に面白うない處はない」
少年の悲哀 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
女も眼をさまして起上おきあがると見る間に、一人は消えて一人は残り、何におどろいておきたのかときかれ、実は斯々これこれ伍什いちぶしじゅうを語るに、女不審いぶかしげにこのほども或る客と同衾どうきんせしに
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
「どうも身にむお話。どうぞ早くあとをおきかせなさいまし、そしてその時、その花はござんしたか。」
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
中頃は振残ふりのこされし喞言かこちごと、人にはきかがたきほどはずかしい文段もんだんまでも、筆とれば其人の耳につけて話しするような心地して我しらずおろかにも、独居ひとりいうらみを数うる夜半よわの鐘はつらからで
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「よく話してきかせてってくれ給え。まあ、套管針とうかんしんなんぞを立てられなくて為合しあわせだった」
カズイスチカ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
一時を驚動せしぢよの所在こそきかまほしけれなど、新聞紙上にさへうたはるゝに至りぬ。
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)
さておれの身は如何どうなる事ぞ? おれもまたまツこの通り……ああ此男がうらやましい! 幸福者あやかりものだよ、何もきかずに、傷の痛みも感ぜずに、昔を偲ぶでもなければ、命惜しとも思うまい。
一 女子は稚時いとけなきときより男女のわかちを正くして仮初かりそめにも戯れたることをきかしむべからず。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
おのれにまさりて物しれる人は高きいやしきを選ばず常にあい見て事尋ねとひ、あるは物語をきかまほしくおもふを、けふはこの頃にはめづらしく日影あたたかに久堅ひさかたの空晴渡りてのどかなれば
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
團子屋だんごや頓馬とんまたゞおかぬとうしほのやうにわきかへるさわぎ、筆屋ふでやのき掛提燈かけぢようちんもなくたゝきおとされて、つりらんぷあぶなし店先みせさき喧嘩けんくわなりませぬと女房にようぼうわめきもきかばこそ、人數にんず大凡おほよそ十四五にん
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
姫はげに思ひも掛けぬ事かなと、我兩手をりて我面を見るに、媼さへその氣色けしきの常ならぬをいぶかりて、椅子をいざらせ、我等が方をうちまもりぬ。姫は珍らしき再會の顛末もとすゑを媼に説ききかせつ。われ。
千島ちしま事抔ことなどうはさしあへるを耳にしては、それあれかうと話してきかせたく鼻はうごめきぬ、洋杖ステツキにて足をかれし其人そのひとにまで、此方こなたよりゑみを作りて会釈ゑしやくしたり、何処いづくとさしてあゆみたるにあらず
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
二年まえからこうして江戸へ出てぶらぶらしています。聞いて下さるか、とやはり眠たそうな口調で自分のいままでの経歴をこまごまと語ってきかせた。だしぬけに三郎は叫んだ。判ります、判ります。
ロマネスク (新字新仮名) / 太宰治(著)
「そんならしなっきかしちゃやらねえ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
仔細と申しきかすべく
枯草 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
殺害せつがいせしに少しも相違御座なく候と殘らず申立ければ大岡殿きか神妙々々しんめう/\と言れし時段右衞門は大岡殿に向ひ恐れながらかゝる明奉行の御糺問きうもん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それを一緒にくと仰しゃるのでお供をして此方こちらへ来たのてえのは、其処そこ種々いろ/\御親切な話が有るんで、本当にあとでおきかせ申したい事が有るんでげすぜ
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
まだ何時いつ出るのか分らないからまた近い中に遊びに来るわというなつかしい声もきかれないのではなかったが、それはもう今までのあどけない約束ではなくて
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それを貴方がさもさも迷惑さうに、何ぞのはしには悪縁だ悪縁だとお言ひなさるけれど、きかされる身に成つて御覧なさいな。あんまい心持は為やしません。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
されど毒草どくさうなるよし見えたり。又山韭やまにらといふも同書どうしよに見ゆ、これもあさのかはりにもすべきもの也。にらをいらといふにや。草の形状かたちきかざりしゆゑさだめがたし。
ぼく眞面目まじめこたへたのです。まつたぼく大島小學校おほしませうがくかう出身しゆつしんです。故意わざ奇妙きめうこたへをして諸君しよくんおどろかすつもりけつしてもたないので。これまでもぼく出身しゆつしん學校がくかうきかれましたが。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
悲んだのは、四人が自分達の死を覚悟していながら、二十人の死をフランス公使に要求せられたと云うことをきかせられずにいたので、十六人の運命を始めて知って悲んだのである。
堺事件 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
其門前にて「イヨ谷間田君、手掛りがあったらきかせて呉れ」と呼留よびとめたるは彼の大鞆なり大鞆は先刻宿に帰りてより所謂いわゆる理学的論理的に如何なる事を調しらべしや知らねど今又谷間田に煽起おだて
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
おのが勧めて婚姻さしかけたは忘れたように何とも云わず物思わしげなる珠運しゅうんはらきかずとも知れてると万端らち明け、貧女を令嬢といわるゝように取計とりはからいたる後、先日の百両突戻つきもどして
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
幼君えうくんすなはちしとね間近まぢかちかづけたまひて、「かね申附まをしつけたるはいかゞはからひしや」「吉報きつぱうもたらさふらふ幼君えうくんうれしげなる御氣色おけしきにて、「そはなによりなり、はやかたきかせ」「さんさふらふそれがしおほせうけたまはり、 ...
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一 下女を使つかうに心をもちうべし。言甲斐いいがいなき下﨟げろうならわあしくて知恵なく、心奸敷かしましくものいうことさがなし。夫のこと舅姑こじゅうとのことなど我心に合ぬ事あれば猥にそしきかせて、それを却て君の為と思へり。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
一般の百姓は若い者も、年老としとったものも、すべて終日囲炉裏いろりに火を焚いて取巻きくつろぎ、声の好いものは声自慢に松前まつまえや、または郷土固有の甚句じんくや、磯節いそぶしなどを歌って、其処に来合せたものにきかせる。
越後の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
カピ長 かやうな珍變ちんぺんおこったによって、むすめきかいとまもござらなんだ。むすめもチッバルトをきつなつかしうおもうてをったに、また吾等われらとても同樣どうやうぢゃに。さりながらひとみなぬるやうにうまれたもの。
いったがその時は別にあやしいとも思わず、それは結構だ早く二階へ上っておいわれ当人が二階へ上って行く後姿うしろすがたを認めた頃、ドンドンと門を叩く者がある、下女をおこしてきかせるとこれは病院の使つかい
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
いらはつともきかなかつたと正太しようたもちう/\たこかいのめて、れか中間なかまたのではいかとうれしがるに、かどなるひと此店このみせまへまでたりける足音あしおときこえしばかりれよりはふつとえて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
人臭き人にきかする歌ならず鬼の夜ふけてばつげもせむ
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
以て私しへ仰せきけらるゝやと申立るを越前守殿きかだまれ長庵其みぎりは確然しかとした證據人のなかりし故なり此度は其せつの證據人と對決申し付る間其時有無うむ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それを借りてようやく葉茶屋を開店することに極りがやっとついたんで、お馴染には成ってるしするから、悪い耳と違ってい事をおきかせ申したいと思ってね………参ったが
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
支那の殖民地に行く時、港々のは恐しいまで廣くして暗く、遠い陸地の方からは、さう云ふ船着きの町にのみきかれる悲しいさわがしい絃歌の聲が、とぎれ/\に流れて來るばかり。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
夫も宿所の二階から一足も外へ蹈出さずに探り究めたのです(荻)夫では先ず名前から云うが好い(大)イエ名前をさきいって仕舞ては貴方が終りまできかぬからいけません先ずお聞なさい
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
『お前が疑がって居ることもわしは知って居たのじゃ。私の方から言うた方がと思ったことも此頃ある。それで最早もはやお前からきかれて見るとお言うてしまうがえから言うことに仕よう。』
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
どうしてお前さんはそんな事をしって居る、何処どこれにきいた、聞たってきかないたって分るじゃないか、私はマア雲気うんきを考えて見るに、そんな事ではないかと思う、イヤれはどうも驚いた
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
勿論もちろんお玉は親の引越は自分が勝手にさせるのだから、一切檀那に迷惑を掛けないようにしたいと云っている。しかし話をきかせられて見れば、末造もまるで知らぬ顔をしていることは出来ない。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)