)” の例文
其處そこにはもうそつけなくなつた女郎花をみなへしくきがけろりとつて、えだまでられたくりひくいながらにこずゑはうにだけはわづかんでる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
最前見たる色若衆いろわかしゆおぼしく半面をあらはして秘かに打ちみつ。手真似にて斬れ/\。その鉄砲は無効々々だめだめと手を振る体なり。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私は春が來るごとに、少女達の魂が、宵々ごとの夢にどんなふうにされてゆくだらうかと、ましくなつて少女達の顏を眺めることがある。
(旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
かほをあげしときほうなみだあとはみゆれどもさびしげのみをさへせて、わたし其樣そのやう貧乏人びんぼうにんむすめ氣違きちがひはおやゆづりでおりふしおこるのでござります
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
打ち見やりて時頼莞爾につこと打ちみ、二振三振ふたふりみふり不圖ふと平見ひらみに映る我が顏見れば、こはいかに、内落ち色蒼白あをじろく、ありし昔に似もつかぬ悲慘の容貌。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
ロレ 灰色目はひいろめあした顰縮面しかめつらよるむかうてめば、光明ひかりしま東方とうばうくもいろどり、げかゝるやみは、かみまへに、さながら醉人ゑひどれのやうに蹣跚よろめく。
活々いき/\とした赤い健康さうな可愛い形をした唇、きずのない揃つた輝いた齒、小さなくぼのある顎、房々ふさ/\としたあり餘る程の髮のよそほひ——短かく云へば
みつゝ答へて曰ふ。汝覺ゆるあたはずば、いざ思ひいでよ今日けふこの日汝がレーテの水を飮めるを 九四—九六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
夫人は示指ひとさしゆびてゝ、みつゝ我顏を打守り、油斷のならぬ事かな、さるいちはやき風流みやびをし給ふにこそ、否々、面をあかめ給ふことかは、君のよはひにては
物を打ち明けたやうな、ましげな顔をしてゐる。頭は殆ど天井に届きさうである。「おつ母さん、唯今。」
其身そのみが世の名利みやうりかゝはらねばなり、此日このひるものみなうれしく、人のわざ有難ありがたおもひしは、朝の心の快濶くわいくわつなりしうつりか、その飛々とび/\ひとり隅田すみだ春光しゆんくわう今日けふあたらし。
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
やはり此巻(二五二六)に、「待つらむに到らば妹がうれしみとまむすがたを行きて早見む」というのがあり、おおいに似ているが、この方は常識的で、従って感味が浅い。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
神業かむわざぞ雪祭、鬼の子の出でて遊ぶは、ひたぶるぞ雪の上の田楽でんがくしづみこそ四方よもに響くに、まことのみぞ神と遊ぶに、おもしろとこれをや聴く、をかしとよそをやららぐ。
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
夫婦ふうふまへみ、つきまへかんがへて、しづかなとしおくむかへた。今年ことしももうきる間際まぎはまでた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
満枝はあるじ挨拶あいさつして、さて荒尾に向ひては一際ひときは礼を重く、しかもみづからは手の動き、目のるまで、もつぱら貴婦人の如く振舞ひつつ、むともあらずおもてやはらげてしばらことばいださず。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
はらしたく思ふをりから云々とはれて大きにこゝろに喜び其うへならず母親も留守るすと云るはついでよしと早くも思案しあん莞爾につこりみ夫はさぞかし面白ふ御座りませうが甲夜よひのうちは親父おとつさんも起きてを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
左様さうですか」と、麦沢女教授はまるくしたるまなこを、たちまち細くしてみつくろひ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
刀自打ちみて、男子をのこごのひとりし給ふが、兼ねて一五八いとほしかりつるに、いとよき事ぞ。おろかなりともよく一五九いひとり侍らんとて、其の夜太郎に、かうかうの事なるはさいはひにおぼさずや。
その時の羽織はこの小紋か、それともあのしま御召おめしか? ——かく母は窓をうしろにきちりと膝を重ねた儘、小さい煙管きせるくはへてゐた。時時わたしの顔を見ては、何も云はずにほほみながら。
わが散文詩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
子春丸は恋と慾とに心を取られ、良兼の意に従つて、主人の営所の勝手をこと/″\く良兼の士に教へた。良兼はほくそんで、手腕のある者八十余騎をえらんで、ひそ/\と不意打をかける支度をさせた。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
いにしへをひとりしかたる糸萩いとはぎましげにこそ萌えいでにけれ
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
このつかのま悲みの日に伝ふべき甘さとふるへ美くしと
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
そを幸ひと口もとにはかなきみものぼり来る。
呼子と口笛 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
おきなびし「」の知りてむ世のこゝろみぞかやうなる。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ながまひをわれはき小麥のごときかてとす。
わがゆくかたは、野胡桃のぐるみみこぼれ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
眞帆あげてみつつすすむ。
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
何をむなるみどりごは
北村透谷詩集 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
くちつけかはしみかはし
友に (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
稚児ちごよわが膝にすが
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
うけてみたる
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
ロレ 諸天善神しょてんぜんじんねがはくはこの神聖しんせいなるしきませられませい、ゆめ後日ごじつ悲哀かなしみくださしまして御譴責ごけんせきあそばされますな。
くかしらおそろしがるかしらとますに、いかにもうれしいかほをして莞爾々々にこ/\わたしせたとほりのみをせるでは御座ございませぬか、或時あるとき旦那だんなさまは
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いかなれば齋藤瀧口、今更いまさら武骨者の銘打つたる鐵卷くろがねをよそにし、負ふにやさしき横笛の名にめる。いかなれば時頼、常にもあらで夜ををかして中宮の御所ごしよには忍べる。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
此は民謡風な読人不知よみびとしらずの歌だが、後に大伴坂上郎女おおとものさかのうえのいらつめが此歌を模倣して、「青山を横ぎる雲のいちじろく吾とまして人に知らゆな」(巻四・六八八)という歌を作った。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「おやツ、くりんでんだなはあ」庭先にはさきくりこずゑはじめてをつけたやうにおつたはいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そのかみよ、そ様うれしと、ほのぼのと思ひ秘めきと、とりどりやひとりびとりに、こそよこそよと膝すり寄せぬ。うちらぎ何すとすらし、泣かゆとて早や過ぎにけり。
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そして、笑ひは彼女の若々わか/\しさ、薔薇色、くぼ、輝いた眼などによく似合つてゐた。
上戸じやうこも死ねば下戸も死ぬ風邪かぜ」で、毒酒のうまさに跡引上戸となつた将門も大酔淋漓たいすゐりんり島広山しまひろやまに打倒れゝば、「番茶にんで世を軽う視る」といつた調子の洒落しやれた将平も何様どうなつたか分らない。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
すゝめ申しに參りましたといひければ長三郎は片頬かたほみ今に初ぬ和郎そなた親切しんせつ主人思ひは有難けれどなまじ戸外へ出る時はかへつて身のどく目の毒なればたゞ馴染なじみし居間に居て好な書物をよみながら庭の青葉を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かくまでしふねきを、よく慎み給はずば、おそらくは命を失ひ給ふべしといふに、人々いよよ恐れ惑ひつつ、翁をあがまへて、二八五遠津神とほつがみにこそと拝みあへり。翁打ちみて、おのれは神にもあらず。
淀無よどみな語出かたりいづる静緒の顔を見入りつつ貴婦人はましげに聴ゐたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
と銀子はホヽみつゝうながすを梅子は首打ち振りつ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
おきなびし「」の知りてむ世のこころみぞかやうなる。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
わざ手振てぶりざればみに、ひろごりてきやう
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
母はよしやとみながら
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
おもてひてみをつくりき
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
なげくべきことならずと嫣然につこみてしづかに取出とりいだ料紙りやうしすゞりすみすりながして筆先ふでさきあらためつ、がすふみれ/\がちて明日あす記念かたみ名殘なごり名筆めいひつ
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あぶらひかりゆるかづら百合ゆりの花のまはしきかも 〔巻十八・四〇八六〕 大伴家持
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
パリス チッバルトの落命らくめいをいみじうなげいてゞあったゆゑ、なみだ宿やどには戀神ヸーナスまぬものと、縁談えんだん差控さしひかへてゐたところ、あまきつなげいてはひめ心元こゝろもとない、ひとりでゐれば洪水こうずゐのやうになみだ