つか)” の例文
いえ/\二君につかえんなどと申すは立派な武士の申すことで、どうか斯うやって店借たながりを致して、売卜者ばいぼくしゃで生涯朽果くちはてるも心外なことで
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
以て徳川氏の威権を維持せんとしたるが如きは、人各々そのつかうる所に向って職分を忘れざるものにして、また哀むに足るものあり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
「冗談ぢやない、——多勢の弟子の中から運ばれて、道人の側近くつかながら、朝夕教へを聽くことになつたんだから大したものでせう」
お君は、今この優しい言葉を聞き、これから始終、この殿様の傍につかえることができるという嬉しさに、胸がいっぱいであります。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
幼児をさなごたちはみな十字架クルス背負しよつて、しゆきみつかたてまつる。してみるとそのからだしゆ御体おんからだ、あたしにけてくださらなかつたその御体おんからだだ。
「どうもそれはけしからんおおせです。かりそめにも、科学と技術とをもっておつかえする油学士であります。そんな妖術などを、誰が……」
もと、つかびとだった者が、街で事件をひき起こした。そのため、あらぬ疑惑を上西門院に向けられては、内親王へ、おそれ多い。
わたくしはもときょううまれ、ちち粟屋左兵衞あわやさひょうえもうして禁裡きんりつかえたものでございます。わたくし佐和子さわこ、二十五さい現世げんせりました。
孔子は十二君に歴事したりといい、孟子がせい宣王せんおうに用いられずして梁の恵王をおかすも、君につかうること容易なるものなり。
徳育如何 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そのとき皇后のおそばには、口子くちこの妹の口媛くちひめという者がおつかえ申しておりました。口媛くちひめはおにいさまのそのありさまを見て
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
私も山の中より町の方が面白おもしろいから、御飯ごはんだけべさしてくだされば、長くあなたのそばつかえて、人形をおどらせましょう
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そしてせっかく御所ごしょつかえながらひくくらいうずもれていて、人にもしられずにいる山守やまもりがたかい山の上の月をわずかにからするように
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
頼家 いや、なおかさねて主人あるじに所望がある。この娘を予が手もとに召しつかいとう存ずるが、奉公さする心はないか。
修禅寺物語 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
定得意ぢやうとくいとなし居る身の上なればおつね勿論もちろんちう八が云事にてもそむく事なく主人の如くにつか毎日まいにちつねかたなどもみ機嫌きげん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
五人ごにん方々かた/″\わたししいとおももの註文ちゆうもんして、それを間違まちがひなくつてくださるかたにおつかへすることにいたしませう
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
そのとき、次郎左衛門は、栄之丞の前に手をつかへて、男として一生の頼みには、どうか一ヶ月丈けこの八つ橋を、退かせて自分の手許へ置かせて呉れ。
吉原百人斬り (新字旧仮名) / 正岡容(著)
そして、妹のラ・ベルが、いつもうちにひっこんでいて、つつましくおとうさまにつかえているのを、「あの子はばかだから。」といってあざけりました。
めてつかへんかそれなんとしてもなることならずてもかくてもなればひとはぬ深山みやまおくにかきこもりて松風まつかぜみゝ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
親房ちかふさの第二子顕信あきのぶの子守親もりちか陸奥守むつのかみに任ぜらる……その孫武蔵むさしに住み相模さがみ扇ヶ谷おうぎがやつに転ず、上杉家うえすぎけつかう、上杉家うえすぎけほろぶるにおよびせいおうぎに改め後青木あおきに改む
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
俊寛 ちょうど暴虐ぼうぎゃくな主人につかえる犬が、幾たびむちで打たれても、今度は、今度はと思って、びるように尾を振っては、あわれみをうような眼つきをして
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
したがって二重につかえるという観念もないのであります。ただ、目下もっかは、キリスト教に対しては、その教理をやや研究的に、仏教にはほとん陶酔とうすい的状態に見うけられます。
竹原は広島の東十里に在り煙火蕭条の一邑いちいふにして頼氏の郷里たり。春水の始めてつかふるや当時藩学新たに建つに会し建白して程朱ていしゆの学を以て藩学の正宗となさんと欲す。
頼襄を論ず (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
が、女の方では、そんなこととは知らないから、世にも手頼りない身の盲亀もうきの浮木に逢った気で、真心籠めて小平太につかえる。小平太もそうされて嬉しくないことはない。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
それを取り出して中より破って片破かたわれを箱に入れ今一つの片破れを男に与えて、これを一度につかわず要に随うて片端より破って仕いたまわば一生涯乏しき事あらじという
が、忠義と云うものは現在つかえている主人をないがしろにしてまでも、「家」のためを計るべきものであろうか。しかも、林右衛門の「家」をうれえるのは、杞憂きゆうと云えば杞憂である。
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
……何分遠い昔のおも話でございますでな。手前は父上様におつかえ申す身になって四十年。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
話にも聞きつらん、祖先兵衞ひやうゑ直頼殿、餘五將軍よごしやうぐんつかへて拔群ばつくんの譽を顯はせしこのかた、弓矢ゆみやの前にはおくれを取らぬ齋藤の血統ちすぢに、女色によしよくに魂を奪はれし未練者は其方が初めぞ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
多聞天は、紫微内相藤原中卿ちうけいだ。あの柔和な、五十を越してもまだ三十代の美しさを失はないあの方が、近頃おこりつぽくなつて、よく下官や、つかびとを叱るやうになつた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
さては谷川の岸にを洗いつつ、みち行く貴人にえんなることばを送り、見いだされてその家につかえ、故郷の親兄弟をよろこばせたりしたのかも知れぬが、くだってはそれもことごとく
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
老人ろうじんは、こんどは、西国さいごくへいって、女王じょおうつかえようとおもって、とぼとぼとやってきました。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すみやかにれ、われけがすことかれ。われむし(三七)汙涜をとくうち遊戲いうぎしてみづかこころようせん。くにたももの(三八)せらるることからん。終身しうしんつかへず、もつこころざしこころようせんかな
ゆき白髪しろかみまでに大君おほきみつかへまつればたふとくもあるか 〔巻十七・三九二二〕 橘諸兄
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
家につかふる者ども、其物音に駈附かけつけしも、主人が血相におそれをなして、とゞめむとする者無く、遠巻とほまきにして打騒ぎしのみ。殺尽ころしつくせしお村の死骸は、竹藪の中に埋棄うづみすてて、跡弔あととむらひもせざりけり。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
わたくしはともかく、あなた様は八つからお身近くつかえて、人一倍御寵愛ごちょうあいうけたお気に入りで厶ります。親とも思うて我まませい、とまでお殿様が仰せあった程のそなた様で厶ります。
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
「ウン、二人死ぬのはつまらぬ。二人が死ねば島津家は真っ暗になってしまう。一人残るがよい。おれは罪を得たから死ぬが、きさまは生き残って俺の代りに君公につかえ、二人前を働いてくれ」
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
あんずるに視覚を失った相愛の男女が触覚しょっかくの世界を楽しむ程度は到底われの想像を許さぬものがあろうさすれば佐助が献身けんしん的に春琴につかえ春琴がまた怡々いいとしてその奉仕を求めたがいむことを
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
長くつかえて居ったものですから、その小僧の始末を付けなけりゃあならぬ。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
すむ塩沢しほさはとほからざる村の農夫のうふせがれ一人あり、篤実とくじつにしてよくおやつかふ。
かけまくもあやかしこき、いはまくも穴に尊き、広幡ひろはた八幡やはた御神みかみ、此浦の行幸いでましの宮に、八百日日やおかびはありといへども、八月はつきの今日を足日たるひと、行幸して遊びいませば、神主かみぬしは御前に立ちて、幣帛みてぐらを捧げつかふれ
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
親につかへて、此上無こよなう優かりしを、柏井かしわいすずとて美き娘をも見立てて、この秋にはめあはすべかりしを、又この歳暮くれにはかた有りて、新に興るべき鉄道会社に好地位を得んと頼めしを、事は皆みぬ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
また一度はもう世の中がいやになって仏につかえたいとも思った。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
われをしてつい膝下しっかつかえしめずんば止まざるべし。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
気の変る人につかへて
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「そんな遠慮はいらないよ。ただ、お前さんは官途のつかえは大嫌いだそうだから、そっちへはお世話もできないと、むこどのがいっている」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
数間かずまじいやのことは、ツイうっかりしてまだ一もお風評うわさいたしませんでしたが、これは、むかし鎌倉かまくら実家さとつかえていた老僕ろうぼくなのでございます。
女にも異存はなく、やがては餓死するかも知れない者を、お召つかいくだされば望外の仕合わせでございますと答えた。
貴下も神につかえる身でありながら、まだ生れないにしても、一つの生霊せいれいみずから手を下して暗闇やみから暗闇やみにやってしまうなんて、残酷な方! ああ、人殺し……
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
尼にされた我が子のおとりで、子鉄がお縄を受けることになったのが運の尽きでございます、今まで子鉄のした悪事という悪事のうち、仏につかえる尼さんをいじめた
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
聴いて下さい、親分さん方、これには深い仔細しさいがございます。——私の夫加島屋文五兵衛は、西国のさる大藩につかえ、三百石を頂戴した立派な武家でございました。
一 それ女子にょしは成長して他人の家へ行きしゅうとしゅうとめつかふるものなれば、男子なんしよりも親の教ゆるがせにすべからず。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)