首尾しゆび)” の例文
拔け荷の取引を濟ませて歸つて來た彈三郎は、一杯機嫌で棧橋へかゝると、首尾しゆびよく茂野の仕掛けたわなちて、板を踏み外した。
もよほしける次の間なる吉兵衞は色々と思案し只此上は我膽力わがたんりよく渠等かれらに知らせ首尾しゆびよくはからば毒藥もかへつて藥になる時あらん此者共を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
乃公おれなんかはちかうち大仕事おほしごとがあるのだ、その仕事しごとためいまこのみなとて、明後晩めうごばんにはまた此處こゝ出發しゆつぱつするのだが、その一件いつけんさへ首尾しゆびよくけば
維新いしんへんれは靜岡しづをかのおとも、これは東臺とうだい五月雨さみだれにながす血汐ちしほあかこヽろ首尾しゆびよくあらはしてつゆとやえし、みづさかづきしてわかれしりのつま形見かたみ此美人このびじんなり
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
〽しばしたゝず上手うはてより梅見返うめみがへりの舟のうた。〽忍ぶなら/\やみは置かしやんせ、月に雲のさはりなく、辛気しんき待つよひ十六夜いざよひの、うち首尾しゆびはエーよいとのよいとの。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
じつに一行が首尾しゆび探検たんけん目的もくてきを達するを得たるは、忠実ちうじつ勇壮ゆうさうなる人夫の力大にあづかつてちからありとす。
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
首尾しゆびは、しかしわるくはなかつたか、ぐにいそ/\とるのを、垣根かきねにじり/\とちつけると、かほて、だまつて、うらめしいをしたのは、日頃このごろ遠々とほ/″\しさを
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
幸福な運命の一つを首尾しゆびよく自分に引当ひきあてたらしく思はれて、内心ほつとしたほどであつた。
復讐 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
あなかず孔中こうちゆう堂宇だうゝの二證據しようこで、石は雲飛うんぴのものといふにきまり、石賣は或人より二十兩出してかつしなといふことも判然はんぜんして無罪むざいとなり、かくも石は首尾しゆびよく雲飛の手にかへつた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
大川おほかはは前にも書いたやうに一面に泥濁どろにごりに濁つてゐる。それから大きい浚渫船しゆんせつせんが一艘起重機きぢゆうきもたげた向う河岸がしも勿論「首尾しゆびの松」や土蔵どざうの多い昔の「一番堀いちばんぼり」や「二番堀にばんぼり」ではない。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
其時そのときのりぼんいたり、へら使つかつてたり、大分だいぶ本式ほんしきしたが、首尾しゆびかわかして、いざもとところてるといふだんになると、二まいともかへつて敷居しきゐみぞまらなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
鬱蒼蟠居うつさうばんきよの古木とある首尾の松は、清元「梅の春」に首尾しゆびまつ竹町のとうたはれてゐるが、この歌詞はたつた一つ例にあげただけで、首尾の松は下谷根岸の時雨の松(おぎやうの松)と共に
花火と大川端 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
首尾しゆびよく鳥居へのつかつた。
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
明日の首尾しゆび
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「死神にかれたのが三人、今頃は手遲れになつたか、それとも首尾しゆびよく錢形の親分をおびき出して、手をつて笑つて居るか」
おろし主從四人ほツとばかり溜息ためいきつきながらも先々首尾しゆびよくいつはり出しをよろこび最早氣遣きづかひなしとこゝにて越前守には麻上下あさがみしも
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すでたふ建立けんりつをはつたので、最早もはや歸途きとむか一方いつぽうである。往復わうふく五日いつか豫定よていが、その二日目ふつかめには首尾しゆびよく歸終きろくやうになつたのは、非常ひじやう幸運こううんである。
ともおもまたみづからはげましては、なんわけもなきこと、大英斷だいえいだん庭男にはをとことさへりしわれ此上このうへ出來できごと覺悟かくごまへなり、たゞあやふきは令孃ひめこヽろにて、首尾しゆびよくふみとヾきたりとも
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかも、先方さきは、義理ぎり首尾しゆびで、差當さしあたつてはわるところを、お前樣まへさま突詰つきつめて、つて、かきへいも、押倒おしたふ突破つきやぶる、……ちからで、むね掻毮かきむしるやうにあせるから、をなごせまつて
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そこで權官けんくわん首尾しゆびよく天下てんか名石めいせきうばてこれを案頭あんとうおい日々ひゞながめて居たけれども、うはさきし靈妙れいめうはたらきは少しも見せず、雲のわくなどいふ不思議ふしぎしめさないので、何時いつしか石のことは打忘うちわす
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
八さんは十手捕繩を預つてゐる立派な御用聞なんだから、それ位のことが出來ない筈はない。首尾しゆびよく父さんの仇が討てたら、その時は——
あゝ、櫻木君さくらぎくんつひその大目的だいもくてきたつしましたらうか。かれ潜心苦慮せんしんくりよせる大軍器だいぐんきつひ首尾しゆびよく竣成しゆんせいしましたらうか。
さて又徳太郎君には道中もとゞこほりなく同年霜月しもつき加納將監御供おんともにて江戸麹町紀州家きしうけ上屋敷へ到着たうちやくと相成り夫より左京太夫殿家督相續かとくさうぞく萬端ばんたん首尾しゆびよく相濟せられたり。
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おほくではれだけで此處こゝ始末しまつがつくなれば、理由わけいてやはおほせらるまじ、れにつけても首尾しゆびそこなうてはらねば、今日けふわたしかへります、また宿下やどさがりは春永はるなが
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
無理むり首尾しゆびの、をんなしのであつた……
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
到頭、明日は下屋敷入りといふ前の晩、風呂から歸るのを首尾しゆびよく斬つた、が、——前後から人が來て逃げやうはない。
つれなくへされなば甲斐かひもなきこと、兎角とかく甚之助殿じんのすけどの便たよきたしとまちけるが、其日そのひ夕方ゆふがた人形にんぎやうちて例日いつよりもうれしげに、おまへうたゆゑ首尾しゆびよくかち
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
首尾しゆびよく岐阜ぎふしたのであつた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こはがつて、あつしの叔母の懷ろの中に隱れて出て來ないし、二人はたうとう勝負がつかないから、睨めつこをしたまゝ首尾しゆびよく夜を明かしてしまひましたが
そのあかつきなにかいさゝか仕損しそこなゐでもこしらゆればれは首尾しゆびよく離縁りえんになりて、一ぽんだち野中のなかすぎともならば、れよりは自由じゆうにて其時そのとき幸福しやわせといふことばあたたまへとわらふに
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
晝前ひるまへのうちにかならずかならず支度したくはしておきまするとて、首尾しゆびよく受合うけあひておみなかへりぬ。
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
巨盜熊井熊五郎の活躍は、江戸中の手先御用聞を奮起ふんきさせました。この曲者を首尾しゆびよく縛ることが出來れば、八五郎はお秀を手に入れるかも知れず、御用聞としては一世一代の譽れにもなるでせう。
はゞやと奔走ほんそうせしかどそれすらも調とゝのはずして新田につた首尾しゆびよくかち
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「なアーる、でも首尾しゆびよく下手人が擧がつて宜い鹽梅あんばいでしたね」
御恨おうらみ申はつみのほどもおそろしゝなにごとものこさずわすれておしうさまこそ二だい御恩ごおんなれ杉原すぎはららうといふおひと元來もとよりのお知人しるひとにもあらずましてやちぎりしことなにもなし昨日今日きのふけふあひしばかりかもおしうさまの戀人こひびと未練みれんのつながるはづはなし御縁ごゑん首尾しゆびよくとゝのへてむつましくくらたまふを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)