ことな)” の例文
日本にほん化物ばけもの貧弱ひんじやくなのにたいして、支那しなるとまつたことなる、支那しなはあのとほ尨大ぼうだいくにであつて、西にしには崑崙雪山こんろんせつざん諸峰しよぼう際涯はてしなくつらな
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
特に全くことなった文化にはぐくまれた日本人にそれが不可能であるとは思えないという風の意味のことを始終考えておられたようである。
指導者としての寺田先生 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
𤍠あついところからさむ地方ちほうくにつれて、そこに生育せいいくしてゐる樹木じゆもく種類しゆるいおよ森林しんりんかたち各々おの/\ことなつてゐる、とはいまはおはなししました。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
まえにものべたとおり、こちらの世界せかいつくりつけの現界げんかいとはことなり、場所ばしょも、家屋かおくも、また姿すがたも、みな意思おもいのままにどのようにもかえられる。
測る道具と測る品物が往々にしてことなるので、この二者を混同するとつまらぬことにあらそいが起こり、たがいに不愉快ふゆかいの念をしょうずるにいたる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
だからその生活の一番直接な表現である民藝品が、如何いかにその性質において朝鮮や日本のものとことなるかは当然のことであります。
北支の民芸(放送講演) (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
勘次かんじ毎朝まいあさ方面はうめんことなつてるにもかゝはらず、同時どうじつてくのをなければこゝろまないのであつた。毎朝まいあささうするので
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
處が夫人の方はことなつてゐた。この人は非常な讀書家で、また勉強家であつて、「お子さま方」はその夫人の方に似たのだと云ふ。
その四角なる雪を脊負せおひあるひは担持になひもちにするなど暖国だんこくの雪とは大にことなり、雪にえだを折れじと杉丸太をそへてしばりからげおきたる庭樹にはきなども
一口に牛肉といえど種類により場所によりてその質のことなることかくのごとし。小山の妻君説明を聞て我が智識の増したるをよろこ
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
股引と上着とに各二種づつの別有るは地方のふうことなるを示すものが階級かいきうの上下を示すものか是亦うたがひ無き能はざれど、其二種に限られしが如きと
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
熟々つくづく見ると、やはり模倣ということに重きを置く結果、どうもその自分とことなった物、あるいは世間と異ったものは可笑しく見えるのであります。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と、これつたことばです、智者ちしや哲人てつじんしくは思想家しさうかたるものゝ、他人たにんことなところてんは、すなはこゝるのでせう、苦痛くつうかろんずるとことに。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ここ、あらゆる行事や行幸いでましも見あわせられて、夜の御殿みとのも、昼の御座ぎょざも、清涼殿せいりょうでんいったいは巨大な氷室ひむろことならなかった。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ビールのまんをひいて顔をテラテラ光らせていたモダンボーイの帆村とはことなり、もうすっかりシェファードのように敏感びんかんな帆村探偵になりきっていた。
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
泣きながらひたばしりに走りたれど、なお家ある処に至らず、坂も躑躅も少しもさきにことならずして、日の傾くぞ心細き。肩、背のあたり寒うなりぬ。
竜潭譚 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其の兵器を鳩集きふしふする所以ゆゑんのものは、あたか上国孱士じやうこくせんしの茶香古器をもてあそぶが如し。東陲とうすい武夫もののふ皆弓槍刀銃をたしなまざるなし、これ地理風質のことなるにるのみ。
布引氏は、服装こそことなれ、これがあの写真の花婿であることを、忽ち見てとって、何とも云えぬ不快な気持になった。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
京都鎌倉あたりの名高い寺々を見物するのとはことなって、東京市中に散在したつまらない寺にはまた別種の興味がある。
もっとも朝鮮ちようせん臺灣たいわん石器時代せつきじだいは、日本内地につぽんないちほうとはまったくことなつた、べつ種族しゆぞくんでゐたことは注意ちゆういようします。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
僕は巴里パリイに居て常にセエヌの河岸かしを逍遥した如く、しば/\テエムス河の岸と倫敦橋ロンドンけうの上とを散歩して英仏両国民の性情の相ことなる特色を此処ここに読む気がした。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
〔譯〕せいは同じうして而てしつことなる。質異るはをしへの由つてまうけらるゝ所なり。性同じきは教の由つて立つ所なり。
小説の如き長篇で現すことの出来ぬ端的な描写、歌の調べとことなる俳句の調べ、また、絵画で現せない景色の時間的活動、そういったものがあるのである。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
人間性の省察こそ、真実の教養のもとであり、この知性をもたぬ才媛は野蛮人、原始人、非文化人とことならぬ。
悪妻論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
石はそのあとに付いて池のまわりをめぐっているうちに、ふと気の付いたのは大勢の僧の顔がみな一様で、どの人の眼鼻も少しもことなっていないことであった。
土間の中のことなった方で音がしたと思うと、若僧は別の口から土間へ下りて、小盥こだらいへ水を汲んで持って来た。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
粗密そみつは気質の差によるものである。粗を嫌ひ密を喜ぶのは、おのおの好む所に従ふがい。しかし粗密と純雑とは、おのづから又ことなつてゐる。純雑は気質の差のみではない。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
このてい外形ぐわいけい以上いじやうごとくであるが、さて海底戰鬪艇かいていせんとうてい敵艦てきかん轟沈がうちんするには、如何いかなる方法てだてるかといふに、それは二種にしゆことなつたる軍器ぐんき作用さようるのである。
某評者の言へりし如く、佐太夫の生涯は江戸の苦海に沈みし後、前半部とは全くことなれる人物となれり。又た同評者の言はれし如く、所々に時代違ひの如き者あり。
何となれば、もっと昔のローマ人もオッフラという料理を愛好したそうだからね。これもパンに肉を揷んだもので、伯爵の発明品とごうことなるところがないらしい。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
れいなるかなこの石、てんあめふらんとするや、白雲はくうん油然ゆぜんとして孔々こう/\より湧出わきいたにみねする其おもむきは、恰度ちやうどまどつてはるかに自然しぜん大景たいけいながむるとすこしことならないのである。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
人により場合によりてことなっている。一様の既成観念を以てすべての場合をおおうことは出来ない。故に艱難を以て人を審判さばかずその人格を以てその艱難を審判くべきである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
コトレツ・ミラネーズとウィンナー・シュニッツレルのことなるところは前者は伊太利風のマカロニかスパゲチを付けあわせとしてり、後者が馬鈴薯じゃがいもを主な付け合せとしていることで
異国食餌抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
地球が今の世代になって彼らを襲う危険の性質もことなって来、かつての避難所ももはや意味をもたなくなったにもかかわらず、現在新大陸にいる駱馬は、死や危険の予覚を得た際には
狼疾記 (新字新仮名) / 中島敦(著)
然るに今年ことし抽斎が往って見ると、名は発会式と称しながら、趣は全く前日にことなっていて、京水時代の静粛はあとだにとどめなかった。芸者が来てしゃくをしている。森枳園が声色を使っている。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
雪子ゆきこくりかへすこと昨日きのふ今日けふ一昨日をとゝひも、三月みつき以前いぜん其前そのまへもさらにことなことをばはざりき、くちびるえぬは植村うゑむらといふ、ゆるしたまへと言葉ことば學校がくかうといひ、手紙てがみといひ、我罪わがつみ
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そしてなお老僧のいうのには、その場合その人自身の頭脳あたまに、何か一つ残るものがあって、それは各人にってことなるが、もしも愛着心あいじゃくしんの強い人ならば、それが残ろうし、恨悔くやしい念があったらば
テレパシー (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
「竜田の川の秋の暮、井関にかゝりて流れもあへぬにことならず……さ。」
武者窓日記 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
歌では「ぼたん」とは言わず「ふかみぐさ」と詠むが正当なりとか、このことばはこうは言わず必ずこういうしきたりのものぞなど言わるる人有之これあり候えどもそれは根本においてすでに愚考とことなおり候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
夢見る度のいつもいつも、同じと見れば、ことなりて
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
浦上うらかみをんな等の生活ことなりて西方のくにのなげきもぞする
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
火山から熔岩の流出する趣きとことならない。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
この、おの/\の位置いちによつてえる樹木じゆもく種類しゆるい森林しんりんかたちとがことなつてゐるありさまづけて、『森林帶しんりんたい』または『森林植物帶しんりんしよくぶつたい』とひます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
その四角なる雪を脊負せおひあるひは担持になひもちにするなど暖国だんこくの雪とは大にことなり、雪にえだを折れじと杉丸太をそへてしばりからげおきたる庭樹にはきなども
子供等こどもら大小だいせうことなつたあは菱餅ひしもちが一つは一つとかみうへ分量ぶんりやうしてまれるのをたのしげにして、自分じぶんかみから兩方りやうはうとなりかみからとほくのはうから
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
嘗て以前に、ことなつた風に、異つた人によつて惱まされたと殆んど同じ位に、私は今彼に捉はれかけてゐた。いづれのときも私は愚か者であつた。
開化とは人間の energy の発現の径路けいろで、この活力が二つのことなった方向に延びて行って入り乱れて出来たので
無題 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しゅん長閑のどかなる、咲く花にさえずる鳥は人工のとても及ばぬものばかりで、富者ふしゃ貧者ひんじゃも共にけて共に喜ぶ権利はことならない
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
アメリカなどからるようなかたち非常ひじようことなるものや大型おほがたのものは日本につぽんではあま發見はつけんされませんが、たいてい一寸前後いつすんぜんごおほきさのものが普通ふつうであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
俯向うつむきざまたなそこすくいてのみぬ。清涼きくすべし、この水の味はわれ心得たり。遊山ゆさんの折々かの山寺の井戸の水試みたるに、わが家のそれとことならずよく似たり。
清心庵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)