振舞ふるまひ)” の例文
答らるゝに伊豆守殿點頭うなづかれ成程當節たうせつは越前を名奉行と人々うはさを致すやに聞及べりされは越前はきらひなり兎角に我意がい振舞ふるまひ多く人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
尤もそれより口の悪い誰彼は、良秀の立居たちゐ振舞ふるまひが猿のやうだとか申しまして、猿秀と云ふ諢名あだなまでつけた事がございました。
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ゾオラが偶々たま/\醜悪しうあくのまゝをうつせば青筋あをすじ出して不道徳ふだうとく文書ぶんしよなりとのゝしわめく事さりとは野暮やぼあまりに業々げふ/\しき振舞ふるまひなり。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
をとこらしうもをなごらしうもえて、獸類けだものらしうもゆるともない振舞ふるまひ! はてさて、あきてた。誓文せいもんわし今少もすこ立派りっぱ氣質きだてぢゃとおもうてゐたに。
其頃そのころ歐羅巴エウロツパしよ新聞しんぶんふでそろへて、弦月丸げんげつまる遭難さうなん詳報しやうほうし、かの臆病をくびやうなる船長等せんちやうら振舞ふるまひをばいた攻撃こうげきするとともに『日本人につぽんじんたましひ。』なんかと標題みだしいて
さも無かりし人の顔の色のにはかに光を失ひたるやうにて、振舞ふるまひなどけて力無く、笑ふさへいと打湿うちしめりたるを。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
宗助そうすけこれより以上いじやうつて坂井さかゐこといたことがなかつた。學校がくかうめた當座たうざは、順境じゆんきやうにゐて得意とくい振舞ふるまひをするものにふと、いまろとおこつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それよりもなほ困るのは、いほりのなかのきゆうくつな生活です。上人さまらしい振舞ふるまひをしなければなりませんし、時々は病人にお祈りもしてやらなければなりません。
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
温かき情の身にしみし事もありしを、それすら十歳と指をるほどもなく、一とせ何やらの祝ひに或る富豪ものもちの、かゞみを抜いていざと並べし振舞ふるまひの酒を、うまし天の美禄
琴の音 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
唯真すぐに向を見るのみ、起居たちゐ振舞ふるまひ自由ならざる、如何どうしても明治の木曾殿と云ふ容子ありさま
燕尾服着初めの記 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
またいつもかげかたちふやうな小笠原氏をがさはらしのゐなかつたのは、土地とち名物めいぶつとて、蕎麦切そばきり夕餉ゆふげ振舞ふるまひに、その用意ようい出向でむいたので、今頃いまごろは、して麺棒めんぼううでまくりをしてゐやうもれない。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
祝言しうげんの座にしやうぜられぬ仁兵衛ではあるが、いつも厚くきやうせられ調法におもはれた。仁兵衛は持前の謡をうたひ、目出度めでたや目出度を諧謔かいぎやくで収めて結構な振舞ふるまひを土産に提げて家へ帰るのであつた。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
あはれ此程このほどまでは殿上てんじやうまじはりをだに嫌はれし人の子、家のやから、今は紫緋紋綾しひもんりよう禁色きんじきみだりにして、をさ/\傍若無人の振舞ふるまひあるを見ても、眉をひそむる人だに絶えてなく、夫れさへあるに衣袍いはう紋色もんしよく
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
それでもあいちやんは粗暴そばう振舞ふるまひこのみませんでしたから、出來できるだけそれをしのんでました。『競技ゲームいま工合ぐあひつてる』つてあいちやんはすこしく談話はなしはずませやうとしました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
掛て振舞ふるまひでも致すやうにたく夫に付金の五六十兩も持參で御出成いでなさるならすみやかに御相談が出來ますと云ひながら目顏めがほで夫れと知らするてい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ロレ まゝゝ、滅相めっそうなことをすまい。これ、をとこではないか? 姿すがたればをとこぢゃが、そのなみだ宛然さながら女子をなごぢゃ。狂氣きちがひめいたその振舞ふるまひ理性りせいのない獸類同然けだものどうぜん
じつに、きみ經歴けいれき小説せうせつのやうです。』とつたまゝ暫時しばしわたくしかほながめてつたが、物語ものがたりうちでも、春枝夫人はるえふじん殊勝けなげなる振舞ふるまひには、すくなからずこゝろうごかした樣子やうす
同時どうじかれつとめやすんでわざ/\此所こゝまでをとこであつた。紹介状せうかいじやういてれたひと萬事ばんじけてれる宜道ぎだうたいしても、あまりに輕卒けいそつ振舞ふるまひ出來できなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
此邸こゝにては煤取すゝとりさゝ座敷ざしきにこぼれて、ひやめし草履ぞうりこゝかしこの廊下らうかちりみだれ、お雜巾ぞうきんかけまするもの、おたゝみたゝくもの家内かない調度てうどになひまはるもれば、お振舞ふるまひさゝふて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
然るに、この貫一はどうか! 一端いつぱし男と生れながら、高が一婦いつぷの愛を失つたが為に、志をくぢいて一生を誤り、餓鬼がきの如き振舞ふるまひを為て恥とも思はず、非道を働いて暴利をむさぼるの外は何も知らん。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
のち煬帝やうだい遼東れうとうむるとき梯子はしごつくりててき城中じやうちう瞰下みおろす。たかまさ十五丈じふごぢやう沈光ちんくわう尖端とつさきぢてぞくたゝかうて十數人じふすうにんる。城兵じやうへい這奴しやつにくきものの振舞ふるまひかなとて、競懸きそひかゝりてなかばより、梯子はしごくじく。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ロレ まア、おちゃれ。たすかるすべおもひついたわ。必死ひっしやくのがれうためゆゑ必死ひっし振舞ふるまひをもせねばならぬ。
島秀之助が今日の振舞ふるまひのちに關東へ聞え器量きりやう格別かくべつの者なりとて元文ぐわんぶん三年三月京都町奉行まちぶぎやうを仰付られ島長門守しまながとのかみいひしは此人なりし同五年江戸町奉行となり延享えんきやう三年寅年とらどし免ぜらる
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『それにけても、にくきは海賊船かいぞくせん振舞ふるまひ、かゝる惡逆無道あくぎやくむだうふねは、早晩はやかれおそかれ木葉微塵こつぱみぢんにしてれん。』と、明眸めいぼう凛乎りんこたるひかりはなつと、日出雄少年ひでをせうねんは、プイと躍立とびたつて。
よし匿名かくしななりとも、このに感じは変るまじ。今日まで封じを解かざりしは、我れながら心強しと誇りたるあさはかさよ。胸のなやみに射る矢のおそろしく、思へば卑怯ひきよう振舞ふるまひなりし。
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかもこののらくらを以て、暗に自分の態度と同一型に属するものと心得て、中々得意に振舞ふるまひたがる。其上頑強一点張りの肉体をかさて、却つて主人の神経的な局所へ肉薄してる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
や、おもへば、もやのねば/\は、這個振舞ふるまひか。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
むねのなやみにのおそろしく、おもへば卑怯ひけふ振舞ふるまひなりし、おこなひはきよくもあれこゝろくさりの棄難すてがたくばおな不貞ふていなりけるを、いざさらば心試こゝろだめしにはいまゐらせん、殿との我心わがこゝろ見給みたま
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うで思案しあんにもあたはず、しほれかへる甚之助じんのすけ人目ひとめ遠慮ゑんりよなきをうらやみて、こヽろそらになれどつち箒木はヽき面倒めんだうさ、此身このみりしもゆゑかは、つれなき令孃ひめ振舞ふるまひ其理由そのわけぐれず
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)