山奥やまおく)” の例文
旧字:山奧
むかし、金太郎きんたろうというつよ子供こどもがありました。相模国さがみのくに足柄山あしがらやま山奥やまおくまれて、おかあさんの山うばといっしょにくらしていました。
金太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それなら、湯治とうじにゆきなさるといい。ここから十三ばかり西にし山奥やまおくに、それはいいがあります。たに河原かわらになっています。
石をのせた車 (新字新仮名) / 小川未明(著)
薯蕷じねんじやう九州きうしゆう山奥やまおくいたるまで石版画せきばんゑ赤本あかほんざるのなしとはなうごめかして文学ぶんがく功徳くどく無量広大むりやうくわうだいなるを当世男たうせいをとこほとんど門並かどなみなり。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
清造せいぞうはその朝になって、やっとにぎやかな町に出ました。それは、清造の生まれた山奥やまおくの村を出てから、もう九日目くらいのことでした。
清造と沼 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
「よウ、京都の葵祭あおいまつりにも人出ひとではあるが、この甲斐かい山奥やまおくへ、こんなに人間があつまってくるたあ豪勢ごうせいなもンだなあ……」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
泥棒どろぼう監獄かんごくをやぶつてげました。つきひかりをたよりにして、やまやま山奥やまおくの、やつとふか谿間たにまにかくれました。普通なみ大抵たいてい骨折ほねをりではありませんでした。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
いやしくも未来みらい有無うむ賭博かけものにするのである。相撲取草すまうとりぐさくびぴきなぞでは神聖しんせいそこなふことおびたゞしい。けば山奥やまおく天然てんねん双六盤すごろくばんがある。仙境せんきやうきよくかこまう。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たった一人ひとりで、そんな山奥やまおく瀑壺たきつぼへりくらすことになって、さびしくはなかったかとっしゃるか……。ちっともさびしいだの、気味きみがわるいだのということはございませぬ。
「何だと! おれたちは、この山奥やまおくに住んでる狼団おほかみだんといふ、えらい盗賊だぞ」
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
二人の若い紳士しんしが、すっかりイギリスの兵隊のかたちをして、ぴかぴかする鉄砲てっぽうをかついで、白熊しろくまのような犬を二ひきつれて、だいぶ山奥やまおくの、木の葉のかさかさしたとこを、こんなことをいながら
注文の多い料理店 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
とほいおやま山奥やまおく
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そこで夜更よふけにはかまわず、またさっきのしおりみちをたどって、あえぎあえぎ、おかあさんをてて山奥やまおくまでがって行きました。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
けれど、「なんでも、十三ばかり西にし山奥やまおくだということだから、西にしへいって、いたらばわからないこともあるまい。」とおもいました。
石をのせた車 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あはかゞみしてるやうな……おほきさはれば、たゝみ三畳さんでふばかりとゆる、……おとく、飛騨国ひだのくに吉城郡よしきごふり神宝かんたから山奥やまおくにありとふ、双六谷すごろくだにへる双六巌すごろくいはこれならむ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かつて、かれがまだ鞍馬くらま山奥やまおくにいたころは、朝ごとまきをとりに僧正谷そうじょうがたにをでて、森林のこずえをながめては、丈余じょうよの大木へとびかかって、れたる枝をはらい落とした——その練習れんしゅうによるのである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だんだん山道やまみちのぼって、もりけ、たにえて、とうとうおくおく山奥やまおくまで行きました。山の上はしんとして、とりのさわぐおともしません。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そのあくるは、いよいよそのやまなかにはいるのです。ちからつよ案内人あんないにん二人ふたりたのみまして、山奥やまおくへとみちけて、はいってゆきました。
大根とダイヤモンドの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
人間にんげんが、とりけだものよりえらいものだとさういつておさとしであつたけれど、うみなかだの、山奥やまおくだの、わたしらない、わからないところのことばかりたとへいていふんだから、口答くちごたへ出来できなかつたけれど
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ねえやの田舎いなかは、山奥やまおくのさびしいむらです。まちがなかなかとおいので、子供こどもたちは本屋ほんやへいって雑誌ざっしるということも、めったにありません。
おかめどんぐり (新字新仮名) / 小川未明(著)
をあせればあせるほどよけいみちからなくなって、とうとう人の足跡あしあとのないふか山奥やまおくたにの中にはいんでしまいました。
人馬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
前様めえさま小児こどもとき姉様あねさまにしてなつかしがらしつたと木像もくざうからえんいて、過日こないだ奥様おくさま行方ゆきがたわからなくつたときからまはめぐつて、采粒さいつぶまとふ、いま此処こゝさいがある……山奥やまおく双六すごろくいはがある。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それをさしてあるいた姿すがたは、まったく東京とうきょうおんなであって、どこにも、山奥やまおく田舎娘いなかむすめらしいところはえなかったのであります。
日がさとちょう (新字新仮名) / 小川未明(著)
月見つきみにといってあなたをさそして、こんな山奥やまおくれてたのは、今年ことしはあなたがもう七十になって、いつ島流しまながしにされるかからないので
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
このとき、キイー、キイーとさるのなきごえがしたので、かれは、ゆきって、山奥やまおくからさるがてきたのをりました。
深山の秋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こう山奥やまおくふかはいっては、もう今更いまさらかえして、うちへかえろうにもかえれなくなりました。仕方しかたがないので、今夜こんやは山の中に野宿のじゅくをすることにきめました。
忠義な犬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
でもよくかんがえてみると、こんな人のにおいもしそうもないふか山奥やまおくにだれかんでいるというのがふしぎなことですから、きっと人間にんげんではない、おにけたのか
人馬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
しかし、それらは、いま険阻けんそ山奥やまおくのこっていて、らえられたくまのことをおもしているかもしれませんが、そのくまの故郷こきょうは、だんだんとおくなってしまったのです。
汽車の中のくまと鶏 (新字新仮名) / 小川未明(著)
むかし、ひすいが、ひじょうに珍重ちんちょうされたことがありました。この不思議ふしぎうつくしい緑色みどりいろいしは、支那しな山奥やまおくかられたといわれています。そこで、国々くにぐにへまでながれてゆきました。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それはわたくしども山伏やまぶしのならいで、みちのない山奥やまおくまでもけて修行しゅぎょうをいたします。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
やがて、ときならぬいい音色ねいろが、山奥やまおくのしかもさびしい野原のはらうえこりました。ふえ胡弓こきゅうおと、それにじってかなしいうたふしは、ひっそりとした天地てんちおどろかせました。
春になる前夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「きさまたちはいったいどこからた。よくこんな山奥やまおくまでがってたものだな。」
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
なぜだか、あのふえくと、わたしは、おかあさんと、あの山奥やまおく温泉場おんせんばへいったときのことがにうかんでくる。あの時分じぶんは、おかあさんは達者たっしゃで、自分じぶんは、まだ子供こどもだった。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
頼光らいこうはこんな山奥やまおく不思議ふしぎだとおもって、これもおにけたのではないかと油断ゆだんのない目でていますと、おじいさんたちはその様子ようすさとったとみえて、にこにこしながら、ていねいにあたまげて
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
わか時分じぶんには、やはり、いま、ほかのわかいからすのように、元気げんきよくたかみねいただきんで、したに、たに松林まつばやしや、またむらなどをながめて、あるときは、もっと山奥やまおくへ、あるときは
一本のかきの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
うさぎやくまわかれると、金太郎きんたろう一人ひとりで、また身軽みがるにひょいひょいとたにわたったり、がけつたわったりして、ふかふか山奥やまおくの一軒家けんやはいっていきました。そこいらにはしろくもがわきしていました。
金太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「きっと、そうだろう、わすれていた山奥やまおくはやしや、父鳥ちちどりや、母鳥ははどりのことをおもしたのだよ。」と、にいさんが、いいました。にいさんも、いつしか、やまがらはかえってこないとおもったのでした。
山へ帰ったやまがら (新字新仮名) / 小川未明(著)
二日ふつか三日みっか四日よっかとたずねあるいて、どうしてもわからないので、六部ろくぶではありません。五日いつかめにはもうがっかりして、からだこころもくたびれって、とうとう山奥やまおくまよんでしまいました。
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
万歳ばんざい! 万歳ばんざい!」と、さけんでいました。汽車きしゃまどから、兵隊へいたいさんたちも、これにこたえていました。なかには山奥やまおくむらからきたものもありました。徳蔵とくぞうさんのそばにいた兵士へいしは、はじめて、うみ
とびよ鳴け (新字新仮名) / 小川未明(著)