つき)” の例文
但、御用繁多の折柄につき、広周一存を以て諸国手形相添え差許さしゆるす者也ものなり。尚本懐の上は父三郎兵衛の名跡みょうぜき相違なかるべき事、広周可含置ふくみおくべき者也ものなり
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
近習番きんじゅうばん木村丈八事、やがて其地に立寄り申すべくつき、領内にて相待ち、同道にて帰府のほう都合よろしかるべし——という指令なのであった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこでオカミサンにつきそはれて娘は伏目に現はれたが、なるほどゼンゼン美しい。処女の含羞、女子大学生、たゞ目が細い。
金銭無情 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
内談ないだんも既にきまり候につき、浄光寺の住職がたへは改めて挨拶あいさつ致し、両三日中さんにちちゅうには抹香まっこう臭き法衣ころもはサラリとぬぎ捨て申すべき由。
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
其方儀主人しゆじんつま何程なにほど申付候共又七も主人のつき致方いたしかた有之これあるべき處主人又七にきずつけあまつさへ不義ふぎの申かけを致さんとせし段不屆至極ふとゞきしごくに付死罪しざいつく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
定めし御聞込おんききこみの事とは存じそうらへども、杵屋おん家元様は死去被遊候あそばされそろそれつき私共は今日こんにち午後四時同所に相寄候事あいよりそろことに御坐候。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
……唐太からふと島の事につき魯国との関係をすみやかに処分し、両国の境界を判然各国に知らしむる事、実に今日の急務と臆想せり。
黒田清隆の方針 (新字新仮名) / 服部之総(著)
このたび「明治文士」といふ演劇大入につき当世の文士諸君を招いていささか粗酒を呈するのである、明治文士の困難は即ち諸君の幸福と化したのである
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
然し、これまで、考えて見ると、私はちっともいわつきの心臓について、具体的なことを申上げて居ませんでしたね。
むしろ剣法において当代一のきわつきの島田虎之助を突き出したことを勿怪もっけの幸いと感じたくらいのものであります。
第四十条 両議院ハ法律又ハノ他ノ事件ニつき各々おのおのノ意見ヲ政府ニ建議スルコトヲ採納さいのうヲ得サルモノハ同会期中ニおいふたたヒ建議スルコトヲ得ス
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
つてつてらうかといふ一寸ちよつとおこるやいなや、そりや五六年前ねんぜんことだとかんがへあとからて、折角せつかく心持こゝろもちおもつきをすぐして仕舞しまつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
阪を上り果てゝ、かこいのトゲつき鉄線はりがねくぐり、放牧場を西へ西へと歩む。赭い牛や黒馬が、親子友だち三々伍々、れ離れ寝たり起きたり自在じざいに遊んで居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
我等われら今度こんど下向候処げこうそろところ其方そのほうたい不束之筋有之ふつつかのすじこれあり馬附之荷物積所うまつけのにもつつみしょ出来申候しゅったいもうしそろつき逸々はやばや談志之旨だんしのむね尤之次第もっとものしだいおおきに及迷惑申候めいわくをおよぼしもうしそろよっ御本陣衆ごほんじんしゅうもって詫入わびいり酒代さかて差出申候さしだしもうしそろ仍而件如よってくだんのごとし
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
これらの事につき熟思つら/\おもふに、きぬおるにはかひこいとゆゑ阳熱やうねつこのみぬのを織にはあさの糸ゆゑ阴冷いんれいこのむ。さてきぬは寒に用ひてあたゝかならしめ、布はしよに用てひやゝかならしむ。
過日御示おしめし被下くだされそうろう貴著瘠我慢中やせがまんちゅう事実じじつ相違之廉そういのかどならぴ小生之しょうせいの所見しょけんもあらば云々との御意ぎょい致拝承はいしょういたしそうろう。昨今別而べっして多忙たぼうつきいずれ其中そのうち愚見ぐけん可申述もうしのぶべくそうろうまず不取敢とりあえず回音かいおん如此かくのごとくに候也。
曰く哀楽は感ず可く、歌ふ可し、然も人は斯多阿ストア学徒の心を以て忍ばざる可からずと。かのひたひつき、物思はしげに、長髪わざとらしき詩人等もこの語には辟易へきえきせしも多かり。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
玄関は真暗なので、身体からだ付きも分らないが「どうも失礼致しました。この頃ちょっと物騒ぶっそうなものでとんだ失礼を致しました。どうぞお上り下さいませ」という丁重な言葉つきである。
I駅の一夜 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
マチアとわたしに手まねをして、かれはろうそくを持って先に立ちながら、食事をした部屋へやの外にあるうまやへれて言った。そのうまやには荷台まで大きな屋台つき馬車があった。
主人半右衞門を殺害せつがいいたさせたる段、主殺しゅうころし同罪、はりつけにも行うべき処、主人柳の頼み是非なく同意いたしたる儀につき、格別の御慈悲ごじひをもって十四ヶ年遠島を申付くる、有難く心得ませい
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
右の写本しやほん一名いちめいつき三日間みつかかん留置とめおきおきてで社員へまわしたのです、すると、見た者は鉛筆えんぴつ朱書しゆがき欄外らんぐわいひやうなどを入れる、其評そのひやうまた反駁はんばくする者が有るなどで、なか/\面白おもしろかつたのであります
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
右者みぎは亡父遺言状仮葬之翌日相開き一覧致候処本葬云々うんぬん之儀有之これあり候につき遺言を
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
大きい文字を書く折にはわざと筆を用ゐないで、きぬをぐるぐる巻にして、その先に墨汁すみを含ませて、べたべたなすくるのをひどく自慢にしてゐたといふ事だが、これなどもまあ一寸したおもつきいたづらだ。
(ええくそそのつらつき。見だぐなぃ。どこさでもけづがれ。びっき。)嘉吉はまるでちはじめたなだれのようにぜんむこうへけばした。おみちはとうとううつぶせになって声をあげてき出した。
十六日 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
二三 同じ人の二七日の逮夜たいやに、知音の者集まりて、夜くるまで念仏をとなえ立ち帰らんとする時、門口かどぐちの石に腰掛けてあちらを向ける老女あり。そのうしろつき正しくくなりし人の通りなりき。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
迷惑につきはなはだ唐突不敬なれども実はお辰様を
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
其方儀そのはうぎ天一坊身分みぶんしか相糺あひたゞさず百姓町人を欺き金銀を掠取かすめとり候段かみないがしろに致し重々不屆につき遠島ゑんたう申付る(八丈島)
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
地所七十坪ほど家屋つき壱万五千円の由坂地なれば庭たいらならぬ処自然のおもむき面白く垣の外すぐに豊川稲荷の森に御座候間隠居所妾宅にはまづ適当と存ぜられ候。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
うまつき心配性な彼は、細君のうなり声を余所よそにして、ぶらぶら外を歩いていられるような男ではなかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それだけにては愚意わかりかね候につき愚作をも連ねて御評願いたく存居ぞんじおり候えども、あるいは先輩諸氏のいかりに触れて差止さしとめらるるようなことはなきかとそれのみ心配罷在まかりあり候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
嘉永二年三月七日に、抽斎は召されて登城とじょうした。躑躅つつじにおいて、老中ろうじゅう牧野備前守忠雅ただまさ口達こうたつがあった。年来学業出精につき、ついでの節目見めみえ仰附けらるというのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
たとへば日雇賃ひようちんにても借家賃しやくやちんにても其外そのほかもの貸借かしかり約束やくそく日限にちげんみないづれも一ウヰークにつき何程なにほどとて、一七日毎ひとなぬかごときりつくること、我邦わがくににて毎月まいつき晦日みそかかぎりにするがごとし。その一七日のとなへごと
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
先づ差当り白米の代価百文につき五合ならねば窮民口をし難しと記し、また或は米穀はもとより諸色しよしきの代価速かに引下ぐるにあらずんば忽ち市中を焼払はんなどと書裁しよさいなしたる所もあり
実に玉椿の八千代までと新枕にいまくらかわせ、それから夫婦共稼ぎを致しまして、少しも油断をしませんから、たちまち身代を仕出しましたにつき、多助はかねての心願通り沼田のいえを立派に再興致し
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
切出きりだしの小刀とか、はがね帯金おびがねいで作ったのみ位のものであるが、生れつきり性の上に、半年の間退屈まぎれに毎日朝から晩までこつこつ刻んでいたので、一廉ひとかどの彫刻家になってしまったのである。
由布院行 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
廿分と経たないうちに、金モールつき赤ビロードの舞台服を着た吾輩は、今の別嬪さんと一緒に、その頃まで絶対に珍らしかった自動車に同乗して、どこか郊外の山道らしい処をグングンと走っていた。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
第五十二条 両議院ノ議員ハ議院ニおいテ発言シタル意見及表決ニつき院外ニ於テ責ヲ負フコトナシ但シ議員みずかノ言論ヲ演説刊行筆記又ハノ他ノ方法ヲもっテ公布シタルトキハ一般ノ法律ニリ処分セラルヘシ
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
其方儀養子やうし又七にきずつけあまつさへ不義の申かけ致候樣下女きくに申つける段人にはゝたるのおこなひにあら不埓ふらち至極しごくつき遠島ゑんたうつく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかるに保は入舎を欲せないので、「母病気につき当分のうち通学許可相成度あいなりたく」云々という願書を呈して、旧にって本所から通っていた。母の病気というのは虚言うそではなかった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
だれの命令も文字通りに拝承した事のない代りには、だれの意見にもむきに抵抗した試がなかつた。解釈のしやうでは、策士の態度とも取れ、優柔の生れつきとも思はれる遣口やりくちであつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
小生も追々衰弱に赴き候につき二十句の佳什かじゅうを得るために千句以上を検閲せざるべからずとありては到底病脳の堪ふる所に非ず候。何卒なにとぞ御自身御選択ごせんたくの上御寄稿被下候様くだされそうろうよう希望候。以上。(二月十二日)
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
既に大阪市中にては小売の白米一升につき銭七百文に至れば、其日稼そのひかせぎの貧民等は又如何いかんとも詮術せんすべなく殆ど飢餓に及ばんとするにぞ、九条村且つ難波村など所々に多人数寄り集まり不穏の事を談合して
用番老中水野越前守忠邦ただくにの沙汰で、九郎右衛門、りよは「奇特之儀きどくのぎつきかまひなし」文吉は「仔細無之しさいこれなく構なし」と申し渡された。それから筒井の褒詞ほうしを受けて酉の下刻に引き取った。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
むつとする程たまらない路だつたが、構内へ這入ると流石さすがに樹の多い丈に気分が晴〻した。つきの戸をあたつて見たら錠がりてゐる。裏へ廻つても駄目であつた。仕舞に横へ出た。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かれうまつき理解りかいをとこであつた。したがつてたいした勉強べんきやうをするにはなれなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
自然に引き付けられたればとがも恐れず、世をはばかりのせき一重ひとえあなたへ越せば、生涯のつきはあるべしと念じたるに、引き寄せたる磁石は火打石と化して、吸われし鉄は無限の空裏を冥府よみつる。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)