一寸ちよいと)” の例文
「おや、此所こゝらつしやるの」と云つたが、「一寸ちよいと其所そこいらにわたくしくしが落ちてなくつて」と聞いた。くし長椅子ソーフアあしところにあつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
親仁おやぢわめくと、婦人をんな一寸ちよいとつてしろつまさきをちよろちよろと真黒まツくろすゝけたふとはしらたてつて、うまとゞかぬほどに小隠こがくれた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さうネ、いつか来てもいいけど、何にもつれやしまひと思ひ升よ、それにつりをするには針だのだのなければなりませんもの、一寸ちよいとは来られないの。
鼻で鱒を釣つた話(実事) (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
「先生、らつしやいますか」と大きなる風呂敷包ふろしきづつみを抱へて篠田長二の台所に訪れたるは、五十の阪を越したりとは見ゆれど、ドコやら若々とせる一寸ちよいと品の良き老女なり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
そゞろにゆかしく、なつかしく、まなこげて、目前もくぜん端然たんぜんたる松島大佐まつしまたいさおもてながめると、松島大佐まつしまたいさ意味ゐみありに、わたくし武村兵曹たけむらへいそうかほとをくらべたが、れい虎髯大尉こぜんたいゐ一寸ちよいとかほ見合みあはせて
その何だかしきりいやにお成りなされて何処どこへかかう行かうとおつしやる、仕方が御座りませぬでやつとまあ此処をば見つけ出しまして御座ります、御覧下さりませ一寸ちよいとこうお庭も広う御座りますし
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一寸ちよいと。』とその袂を捉へて、『可いわよ、智恵子さん、モ少し。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「おしゆんや、一寸ちよいと」と内儀は群集くんじゆの中よりその娘を手招きぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
『はがして頂戴よ。畑尾さん、一寸ちよいと。』
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
為様しやうがないねえ、)といひながら、かなぐるやうにして、細帯ほそおびきかけた、片端かたはしつちかうとするのを、掻取かいとつて一寸ちよいと猶予ためらふ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「あすこで一寸ちよいと買物をしますからね」と云つて、ちりん/\と鳴る間を馳け抜けた。三四郎も食つ付いて、向ふへ渡つた。野々宮君は早速みせへ這入つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「まあ、あの指環は! 一寸ちよいと金剛石ダイアモンド?」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
えゝ、一寸ちよいと引合ひきあはせまをしまする。このをとこの、明日みやうにち双六谷すごろくだに途中とちゆうまで御案内ごあんないしまするで。さあ、ぬし、お知己ちかづきつてけや。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
どころから婆さんが「どなたか一寸ちよいと」と云ふ。与次郎は「おい」とすぐ立つた。三四郎は矢っ張り坐つてゐた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
一寸ちよいと好いね」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
一寸ちよいと高樓たかどの何處どこだとおもひます……印度インドなかのね、蕃蛇剌馬ばんじやらあまん……船着ふなつき貿易所ぼうえきしよ、——おまへさんが御存ごぞんじだよ、わたしよりか
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
にいさんはいま一寸ちよいと」と後向うしろむきまゝこたへて、御米およね矢張やは戸棚とだななかさがしてゐる。やがてぱたりとめて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
一寸ちよいとつまづいても怪我けがをするのに、方角はうがくれないやまなかで、掻消かきけすやうにかくれたものが無事ぶじやうはづはないではないか。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「みんな狡猾ずるいなあ」と云つて笑つてゐる。尤も当人も一寸ちよいと太陽をけて見た。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
講釈筆記かうしやくひつき武勇談ぶゆうだんはうから一寸ちよいとる。——もつと略筋りやくすぢ、あとで物語ものがたり主題しゆだいともふべきところを、くらべてませう。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「えゝ、気迷きまぐれに一寸ちよいとつて見たかつたの」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
まあ、挨拶あいさつもしないで、……默然だんまりさん。おましですこと。……あゝ、あひだはとにばツかりかまつてたから、おまへさん、一寸ちよいとかんむりまがりましたね。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「本当に? そり一寸ちよいとなんてえかたなの」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
縁側えんがはきてひらき、「いざ御覽ごらんあそばさるべし」とつかふ。「一寸ちよいと其中そのなかはひつてよ」と口輕くちがるまをされければ、をとこハツといひて何心なにごころなくかごはひる。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
戸外おもてへはちかうござんすが、なつひろはう結句けツくうございませう、わたくしどもは納戸なんどせりますから、貴僧あなた此処こゝへおひろくおくつろぎがうござんす、一寸ちよいとつて。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
むすめも、白地しろぢ手拭てぬぐひを、一寸ちよいとたゝんで、かみうへせてる、びんいろまさつて、ために一入ひとしほゆかしかつた。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それ案山子かゝしどものはうへ、すゝめばすゝみ、うつればうつり、みちまがときなぞは、スイとまへんで、一寸ちよいとまつて、土器色かはらけいろくわつとしてつ。ともすればくもることもあつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……憂慮きづかひさに、——懷中ふところで、確乎しつかりけてただけに、御覽ごらんなさい。なにかにまぎれて、ふとこゝろをとられた一寸ちよいと一分いつぷんに、うつかり遺失おとしたぢやありませんか。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「でもなんだか、そんなくちくやうですと。……あの、どんな、一寸ちよいとどんなふうをとこでせう?」
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
御新姐樣ごしんぞさまうへ御無理ごむりは、たすけると思召おぼしめしまして、のおうた一寸ちよいとしたゝくださいまし、お使つかひ口上こうじやうちがひまして、ついれませぬこと下根げこんのものにわすれがちにござります
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
をんな一人ひとり、これは背向うしろむきで、三人さんにんがかり、ひとすくつて、ぐい、とせて、くる/\とあんをつけて、一寸ちよいとゆびめて、ひとづゝすつとくしへさすのを、煙草たばこみながらじつた。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わかつたかい、一寸ちよいといま思出おもひだせないから、うしておきな、またいたらまをさうから。
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
帰路きろ闇川橋やみがはばしとほりけるに、橋姫はしひめみやのほとりにて、たけたかくしたゝかなる座頭ざとうばう、——としてあるが、宇都谷峠うつのやたふげとは雲泥うんでい相違さうゐのしたゝかなるとばかりでも一寸ちよいとあぶみくぼませられる。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
へい、それ引込ひきこめ、と仰有おつしやりますから、精々せい/″\目着めつかりませんやうに、突然いきなり蝋燭らふそくしてたでござります。やまかげりますで、くるまだい月夜つきよでも、一寸ちよいとにはきますまいとおもひまして、へい。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「……あまつゝしんではないわね……一寸ちよいと、おはなしなかておいで。」
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ほゝゝ、色男いろをとこや、貴女あなた馴染なじんでからちやう半年はんとしりますわね。御新造ごしんぞ馴染なじんでからも半年はんとしよ。貴方あなたわたしもとるうちは、何時いつでも此方こちらたの。あら、あんなかほをしてさ。一寸ちよいと色男いろをとこ
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「あのはなつてゐなさいますか——一寸ちよいと、おけませう。」
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ひよい、とそらげて、一寸ちよいとてのひらけながらつてる。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其處そこへ。一寸ちよいとみぎはひつてもらひたいな。」
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一寸ちよいと菊屋きくやむかひかい。」
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「しばらく、一寸ちよいと。」
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)